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    かけはし2018年11月26日号

経済に加え軍事でも存在感増す


中国

アフリカでの現実

人々を魅了する力はなお強いが
実際の行動は西側諸大国と酷似

パウル・マルシャル


 中国が世界を大きく左右する存在であることを否定する者は、今やおそらく誰一人いないと思われる。その意味で、中国指導部、あるいは中国共産党が何を原理として、あるいは動因として行動を決定しているのかが重要な問題になる。中国が事実として大きく変容し、なおかつその変化が進行形である今、そこでは、既成概念の当てはめによる分析を超えた、あくまで現に展開している事実に沿った検討が必要だと思われる。その一つの素材として、日本では情報の少ない、アフリカにおける中国の行動を伝える論考を以下に紹介する。中国のアフリカ政策が西側の帝国主義諸国のそれと大差のない実態が、具体的に示されている。(「かけはし」編集部)


 ファンタジーの対象、論争を呼び学術的な主題、アフリカにおける中国の存在は数多くの疑問を惹起する。
 それは民衆への便益だろうか、それともこの大陸に打撃を加えようとしているもう一つの大きな不幸だろうか? 六〇〇億ユーロにのぼる、アフリカに対し習近平が与える無条件の援助と貸し付けは、この疑問に対し肯定的に回答しているように見える。しかしそれでも……。

強調は同等な仲間間の関係だが


 自由主義は西側の政権に、アフリカにおける中国の存在を喜ぶふりをし、次にすぐさまアフリカの諸政権に、債務、経済的依存、環境悪化……のような多くの危険を警告する義務を課している。その危険は、中位の帝国がこの大陸に持ち込むと思われている。
 一方中国の当局者たちは、西側の利己主義を批判しつつ、同等の仲間同士の交換関係と「ウィンウィン」関係を力説している。たとえば人民日報の一人のジャーナリストは「現時点ではいくつかの諸国は、一方的行動主義、保護主義、商業的覇権追求に精力的に注力してきた」と指摘している。
 要するに、実質においてはそれほど違っていない議論に基づいて、各々が他の政策を批判している。そしてそれは、中国のアフリカ政策が事実において、またレトリックの先では、西側諸国のそれとほとんど違っていない以上、論理的であるように見える。
 アフリカは中国にとって非常に重要だ。その産業活動に必須な石油産品と鉱業産品の重要な部分を提供することによって、アフリカが中国に経済的拡張を支える可能性を与えているからだ。しかしそれだけではなくアフリカは中国に、供給源を多様化し、こうして、米国の戦略的な同盟国と見なされる中東の原油輸出国に、もっぱら依存することを回避する可能性をも与えている。この二国間の高度な経済的緊張は、中国の戦略的な警戒を正当化している。
 今日世界第二位の経済規模をもつ中国は、天然資源の輸入と製造業商品の輸出を基礎とした貿易総額の点で、アフリカにおける指導的経済大国にもなるにいたった。二〇一七年その額は、フランスの四八〇億ドルに対し、一七〇〇億ドルに達した。

それは南北関係のように見える


 中国は、原油供給をナイジェリアとアンゴラから得ている。そして鉄鉱石、マンガン、コバルト、銅……といった鉱物資源はザンビア、南アフリカ、コンゴ共和国、コンゴ・ブラザビルから来ている。
 これらの輸入と平行する形で、中国はその製造業製品を、質は必ずしもそうではないとしても、西側諸国のそれよりもしばしば安く大量に輸出している。
 購買力の点でアフリカと中国の取引先には強い類似性があるとしても、市場調査の専門家によれば、アフリカはまた、諸製品の試験場という役割も努め、西側市場の獲得に向けた発射台としても役立っている。一例としては、フウェイ・ブランドの携帯電話の場合がそのようなものだった。
 われわれが理解できるように、中国とアフリカの経済交換は基本的に、労働力の国際的分割を基礎とするものにとどまっている。その内部でアフリカ大陸は、天然資源の供給地という単一の役割に限られたままであり、加工品のほとんどを輸入するよう強制されている。中国が、ただ一つの国ではないとしても、もっぱら強化しているものは、植民地の過去というこの遺産だ。

幾多の幻想をはびこらせたまま


 公的な発言が技術移転と工業化を話題にしている中で、現実にはほとんど何も起きようとはしていない。二、三の製造業企業だけが、特にエチオピアで広く売り込まれた形で、より魅惑的な役割を演じている。
 実際北京はアフリカの諸政権に、それらの政府はいくつかの中国企業の移転から利益を得ることができるだろう、と約束し続けている。そしてある者たちはそれを信じている。たとえばトーゴの独裁者のファウレ・グナッシンベは「中国には移転の用意ができている職が何千万とあることをわれわれは知っている。そうであれば、移転の用意ができている中国のすべての企業は変わることなく歓迎だ」と語っている。
 しかし、この現象が今後形になるということは、コストと生産性の理由からありそうには見えない。たとえば一つの論評は次のように見ている。
 つまり「中国を本拠とする諸企業は、賃金上昇を前に、それらの生産ラインを自動化できる(生産請負企業のフォックスコンの行動のように)。また沿岸域を離れることを考えている諸企業にも、広い範囲の選択肢がある。つまり、中国西部、東南アジア、バングラデシュ、インドはすべて可能性のある行き先になる。世界銀行による比較は、エチオピアを除くアフリカ諸国には、労働集約生産の場合、中国やベトナムよりも低い生産性しかない、と示している。単位労働力コストに対するある評価は、アフリカのそれらは、インドネシア、バングラデシュ、ベトナムのそれより高い、と結論づけている」と。
 また特に中国企業は、法の遵守や環境保全という点で模範どころではない。法の侵犯に関する定期的な報告があり、いくつかの企業は、特に丸太に関し、産業的な規模の密輸に今も関わっている。中国企業は、二、三年の内に地域全体を産業廃棄物捨て場に変えた西側多国籍企業のシェル、アレバ、トラフィグラと、軽々と競争可能だ。

国の資産を担保にした債務膨張


 中国は、アフリカ諸国におけるインフラ開発への貢献を誇り続けている。これらのインフラは何よりも、アフリカのエリートたちが自らを富ませるための機会であり、必ずしも住民の社会的で経済的な必要に対応していない。それは特に、ブルンジ、モーリタニア、スーダン、モザンビークのように、スタジアムや会議場や大統領官邸の建設となる場合にそうだ。
 しかしながら何よりも、これらの投資はアフリカ諸国の債務を相当に高めている。ほとんどの場合それらは、国の資産によって保証されている。そしてその資産は、鉱山や港湾、また鉱業生産や原油の利権であるかもしれない。近年の商品価格低落はそれゆえ、アフリカ諸国にのしかかる債務の重さを自動的に高めることになった。
 結果は以下のようになっている、まずIMFは、五つのサブサハラアフリカ諸国は過大な債務を負い、他の九ヵ国もまもなくそれらに加わるかもしれない、と評価している。またケニアの債務はつい先頃、五兆シリング(四三〇億ユーロ)の限度を超え、その額の七二%は中国に対する債務だ。今春、ムーディーズはケニアの格付けを引き下げた。情勢はまたジプチでも限界点にある。その債務はGDPの八四%に当たり、北京がその八二%を保有している。ザンビアとコンゴ・ブラザビルの場合は、中国企業から不明瞭な貸し付けを引き出した。その詳細は未だ公開されていない……。
 アンゴラの対中国債務は二五〇億ドルだ。この国の原油資源がその保証に使われている。中国は二〇〇八年、いくつかの銅鉱山とコバルト鉱山を操業する権利と引き換えに、コンゴ民主共和国に六〇億ドルの貸し付けを与えた。ギニアでは中国が政府に対し、二〇〇億ドルの貸し付け商品の類を与えた。そしてそれは中国にアルミニウム利権獲得を可能にした。
 最終的に、北京が諸国の富を接収する中で、予算の拘束という政策が自らに押しつけられるのを見つつ、その結末に遭遇するのは民衆だ。

軍事的存在感の高まりも明確に


 中国の公式的議論の中で経済的存在は「一帯一路」という大構想に結びつけられ、「国境のないグローバリゼーションに対する中国の献身を際立たせる」ことを中国に可能としているが、その中で、このシステムにおけるアフリカの位置は、本質的にいわば港湾としてあり、特に東海岸に集中し、それゆえジブチの役割に重要性がある。
 ジブチは、インド洋、紅海、中東そしてアフリカの間のまさに十字路、バブ・エル・マンデブ海峡で鍵となる位置を占め、その戦略的な位置をいわば商いに変えている。この小国家には今、五つの軍事基地がある。もっとも古いものはフランスの基地であり、スペインとドイツの部隊に駐屯の場を提供している。イタリア、米国、さらに日本は各々一つの基地を確保している。
 そしてもっとも新しいものが中国の基地であり、この基地は、およそ一万人の部隊を収容できる。中国によってソマリア海岸沖合の海賊に対する戦闘への貢献として描かれたこの基地は、中国経済にとってのもっとも重要な海路の一つの安全を確保する上で、鍵を握る役割を果たす。そしてその海路は、将来さらにもっと重要となるはずの通路なのだ。
 アフリカにおける中国の軍事政策は、ジブチに限定されているわけではない。それは、第一回「防衛と安全保障に関する中国・アフリカフォーラム」に証明されている。そしてそのフォーラムは、国防省スポークスパーソンのレン・グオキアンによれば、「中国とアフリカの共通する運命の構築を促進し、アフリカの新たな安全保障情勢と中国・アフリカ防衛協力の必要を満たす」ことを目標にしている。
 北京はすでに、「平和維持」作戦に対する、基本的には資金拠出だが、米国に次ぐ第二位の貢献国だ。とはいえ中国はここに来て、国連の賛同の下に素早く介入する能力を持つ、八〇〇〇人の実戦部隊を編成した。
 軍事について語ることはまた、兵器の売却について語ることをも意味する。そしてこの分野では、中国の政策は今もって西側諸大国のそれと同じほど有害だ。実際この中位の帝国は、それを求めるあらゆる政権に対し、その兵器、特に小火器(もっとも多くの負傷者を生み出している兵器)を売り込むことに躊躇がない。そして、戦争を長引かせるだけであり、その戦争を人間の命の点ではるかに犠牲の多いものにしている、そうした安価な突撃ライフルをアフリカにあふれかえらせている。
 西側の諸大国の政策、そして中国のそれやインドのような他の新興国のそれは、互いに原理的に違いがあるわけではない。奴隷化や植民地主義の歴史がこれまでなかったという中国の歴史、そして中国が貧しい国の浮沈をアフリカと共有しているという事実は、中国の当局者の主張を人を引きつけるものにしている。
 しかし中国は指導的な帝国主義的大国へと到達した。そして今、中国の指導者たちがアフリカの指導者たちと共有しているものは、権威主義的で腐敗した統治であり、住民に対する搾取と抑圧であり、さらに環境の破壊にほかならない。(「ランティカピタリスト・ラ・レヴ」二〇一八年一〇月号より英訳)

▼筆者は、「インターナショナルビューポイント」通信員。「アフリケス・エン・ルッテ」編集者であると共に、フランスの第四インターナショナルの一員。  


デンマーク

EUめぐる対立

完全に新しいEUへの攻勢を

エゲ・スコフリント

権力の委譲には
人々は常に反対

 EUに関するデンマーク国内の討論は全体として、「支持」か「反対」かの問題となる傾向がある。これは最終的に残留か離脱かに関するものだが、しかしもっと多くの場合、論争が提起する問題は、EUが保持する権力を大きくすべきか、小さくすべきか、すなわち、政策諸方策が決定されるべきところがEUか、それとも国民国家レベルか、というものだ。
 EUに関する有権者の懐疑は、EU諸条約からのこの国の離脱に関するいくつかについて行われた国民投票に映し出されてきた。一九九三年以来、デンマークは、安全保障と国防、市民権、警察と司法、さらにユーロ導入に関するEU諸政策からの離脱を保持している。
 もっとも近いところでは、二〇一五年、内政事項と司法事項に関する現在の全面離脱を、ケースバイケースによる離脱、参加に転換すべきか否かに関し、国民投票が行われた。主要全政党による支持にもかかわらず、この提案は有権者の五三%から拒否された。二〇〇〇年にも、有権者は五二%によってユーロ導入を拒否した。
 有権者は常に、権力のEUレベルへの委譲について、諸政党よりもはるかに批判的だった。これこそが、主要な既成政党が、基本的にはEU統合を支持しつつも、支持者を失わないという目的の下に、「EUに友好的」となりすぎることを極度にためらっている理由だ。

共同の政綱で
新しいEUへ


議会では、EUの諸政策に対する反対は、特に急進左翼の赤緑連合(RGA)および右翼で外国人排撃のデンマーク人民党(DPP)で代表されている。前者は経済、環境、労働、移民、消費者問題の領域におけるEUの親資本家政策を強調しているが、一方後者は、EUに対するその敵意を、民族主義的土壌に据え、特に「福祉ツーリズム」(すなわち、デンマークに居住するEU市民が社会的給付を受けていること)と移民と国境管理に批判的だ。DPPは右翼政権との関係で議会で多数を確保しているが、EUに関するその立場が、全面的な入閣に対する主な障害になっている可能性がある。
他方RGAは、EUに対置する一つの国際主義的なビジョンを掲げている。それは一つの目標としてEU離脱を言明し、EU議会選では今までEUに反対する「人民運動」を支持した。この運動は現在、RGAメンバーでもある一人のEU議員を確保している。
しかしながらRGAは、二〇一九年六月の次回選挙では、先の運動との選挙連合の中で、自身の名簿を提出することになるだろう。党は今年六月、不屈のフランス、ポデモス、左翼ブロック、スウェーデン左翼党、フィンランドの左翼連合であるファセミストリットと共に、来年五月のEU議会選キャンペーンに向けた共同政綱を発足させた。党のスポークスパーソンのペルニレ・スキッパーは、この政綱を公表する中で以下のように言明した。
「われわれは、EUにとっての完全に新しい方向を必要としている。そしてわれわれは、民主主義、連帯、持続可能性を基礎とした諸国間の協力を必要としている。われわれはその目標を、メルケルやマクロンの緊縮に対する、また右翼ポピュリストの非人道的な難民政策に対する一つの回答を届けることができる、そうした強力な欧州規模の、同時にEU批判の左翼運動にもとづいてのみ、達成するだろう」。

移民規制反対
への逆風今も


欧州に何百万人もの難民がやって来た時、ほとんどのデンマークの都市では「歓迎委員会」がつくり出され、法的なまた物質的な支援が提供された。これらのネットワークは今も存在しているが、デンマークに到着する難民数の劇的な減少を条件に、支援活動もまた低調化することになった。
政治的な挑戦課題は、国際諸条約をも破る形でデンマーク政権が採択した、極度に無慈悲な難民政策と対決して立ち上がることだ。難民相は、省のウェブサイト一面を使って、現政権が二〇一五年に権力を握ってから導入した締め付け策の数を、得意気に公表している(現在九八を数える)。これらの方策のほとんどは、社会民主党から支持されている。こうして社会民主党は、DPPから一定の支持者を取り戻すことを期待している。この党は、国連の条約に規定された難民割り当てを適用させないとする政権を支持することまで行った。
もちろん難民危機への解決策は国際的なレベルで、また欧州のレベルで見つけ出されなければならない。しかしながら現在の移民政策への断固とした反対派は守勢にあり、全体としての欧州レベルの解決策を焦点化するよりも、特定の方策に反対する傾向がある。

平等を保証する
社会的議定書を


全体として民衆の注意は、EUの政策というよりも国内に向いている。その理由は、次の議会選挙が二〇一九年六月より遅くはならないはず、というものではまったくない。
しかしながら、働くために移動した労働者(つまり、海外で働くEUの住民)に関するEUの規制は、多年の間進行中の課題となってきた。悲惨なほどの賃金しか受け取っていない(あるいは払われてさえいない)、時には奴隷のような条件を強いられている、ルーマニア、ポーランド、リトアニア出身の人々に関しては、これまで多くの話がされてきた。
諸労組もまた、低賃金が雇用主との労働協約として達成されてきた諸成果を掘り崩し続けている、と案じている。これこそが、働くために移動した労働者に、彼らが移った先の国の労働者と同じ賃金を保証する、新たなEU規制を求めて彼らがキャンペーンを行った理由だ。
このキャンペーンは欧州労組会議(ETUC)から支援を受け、EU諸機構に指令を最新化し、働きに出た国に対応する賃金といくつかの実質的な改善を保証するよう、圧力をかけることができた。今も行われていないのは閣僚理事会による正式の採択だけだ。依然として、実生活における結果は今後分かることとして残されている。
EUの骨格をなす「移動の自由」――資本と労働力の――は、労働者の諸権利を掘り崩す可能性をはらんでいる。それこそが、労働者の諸条件に対する必須な保証として、一つの社会的議定書をEU条約それ自身に加えるよう、ETUCと他の者が今求めている理由だ。

▼筆者はSAP(第四インターナショナルデンマーク支部)、およびその機関誌である「社会主義情報」の編集陣の一員。彼はまた、RGA広報書記をも務めてきた。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年八月号) 

 


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