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    かけはし2018年11月19日号

沖縄の民意が実現する日本の政治を


沖縄報告 11月11日

知事を先頭にした県民ぐるみの闘いに応え

沖縄 K・S

玉城知事が6人の県職員と共に訪米

米国は住民の声を聞く責任

沖縄の意思は明確だ!

 玉城デニー沖縄県知事は、辺野古新基地建設反対!普天間飛行場の一日も早い閉鎖・返還!という沖縄の民意を米国に直接伝えるために、一一月一〇日昼過ぎ、那覇空港から出発した。この日の那覇空港は多くの一般乗客に加え、修学旅行シーズンの中高生たちで大混雑。空港向かいの大型駐車場三基もどこも満杯、どの階も通常の駐車スペースに入りきらない車が通路に駐車する事態となった。
 急速に拡大する利用客に対しすでにパンク状態の那覇空港の隣接地には、陸上自衛隊と航空自衛隊の基地の緑が広がっている。何という対比! 対潜哨戒機や戦闘機など軍用機の運用で那覇空港の民間空港としての発展を阻害している自衛隊は、復帰前の米軍基地を引き継ぎ空港周辺の広大な土地を占有している。ここは沖縄だ。軍事優先の現状を打破して、当然にも自衛隊に対する沖縄県の行政の優位性を確立しなければならない。
 知事の出発に先立ち那覇空港一階ロビーには、「デニーさん、沖縄のこと伝えてください」「We Love デニー」「ヌチカジリ チバラナヤーサイ」などのプラカードを手にした県民一〇〇人余りが集まり、知事を激励した。激励集会の司会進行は、うるま市区から県議補欠選に当選した山内末子県議。赤嶺政賢衆院議員などの激励の言葉に続き、知事は「辺野古に新しい基地を造らせないという沖縄の民意をアメリカにはっきり伝える。県民はあきらめない」と話した。そのあと、報道各社の記者会見を行った知事はエスカレーターから手を振りながら一階ロビーを後にした。

外国特派員
協会での講演

 玉城デニー知事に対する国外の注目度は高い。訪米に先立ち一一月九日に東京の日本外国特派員協会で行われた会見にも世界各地の記者が参加した。中には沖縄のことを知らず、「埋め立て工事が年内に完成すると聞いた。二カ月で止められるのか」と頓珍漢な質問をする記者もいたという。
デニー知事は米海兵隊員の父とウチナーンチュの母の間に生まれた自身の出自を紹介し、「日本政府の強硬姿勢は県民民意を踏みにじるもの。新基地は絶対に認められない。知事権限を行使して止める。まだ土砂は一粒も投入されていない。政府は今の段階で新基地計画をストップすべきだ」とアピールした。AP通信、ワシントン・ポスト、FOXニュースなどの海外メディアも相次いで報じ、「日本政府が沖縄の声を米国に伝えていないので、その声を米国人に直接伝えるのは私の責任であり、米国は私たちの話を聞く責任がある」との知事の発言を伝えた。
またこの日、玉城知事は首相官邸での全国都道府県知事会議に出席し、「沖縄の現状は異常。日米安保が重要なら基地負担は全体で担うべきだ。政府は県民の心に真に寄り添い、県民が望む形での基地問題の解決に取り組んで欲しい」と訴えた。

ニューヨーク
大学で講演会

 玉城デニー知事は四泊五日の日程でニューヨークとワシントンを訪問し、米国政府・議会関係者との面談や国連本部の訪問を計画しているほか、ニューヨーク大学で県主催の講演会を開く。翁長知事の時代に設置された沖縄県ワシントン事務所が準備にあたった。今回の訪問には知事公室長をはじめ六人の県職員が同行した。行政中心の実務型の訪問団構成となった。
アメリカ社会は玉城デニー沖縄県知事が誕生したことに大きな関心を持っている。県知事選挙の結果はアメリカのマスコミでも大きく報道された。ニューヨーク・タイムズは「基地に反対すると公約した海兵隊員の息子が当選。日米両政府の計画に後退をもたらす」と指摘し、社説で「過重な負担を抱える県民にとって、知事選は米軍基地に対する住民投票であった。安倍首相と米軍司令官は県民と共に公正な解決策を探るべき」と主張した。玉城知事の米国訪問は、日本政府の「辺野古唯一」の欺瞞の宣伝を押し返し、県民民意がいっそう広くアメリカ社会に伝わっていくきっかけになるに違いない。

世界のウチナーンチュが知事を応援

 世界のウチナーンチュたちは玉城知事のアメリカ訪問に呼応し「玉城デニー知事を支持する声明」を一一月七日、英語、スペイン語、ポルトガル語、日本語で発表した。発起人は、ニューヨーク大学東アジア研究助教授の島袋まりあさんなど九人。すでに六〇〇人以上の署名が集まった。県内外の沖縄関係者の総力を結集した辺野古NO!の県民ぐるみの歴史的闘争に応え、沖縄の民意を実現する日本の政治を築き上げよう!

〈世界のウチナーンチュの声明(簡略要旨)〉

 「日本政府は沖縄との合意形成を怠り、情報開示や説明責任を果たさないまま、独断的な法解釈や一方的な解釈の変更により新基地建設を強行している。世界各地のウチナーンチュ、特に米国に住むウチナーンチュが立ち上がり、声をあげるべき時だ。米国の多くの政治家が沖縄の米軍基地の問題を直視しないのは日本が世界でも最大で熱心な米軍の財政支援国家だからだ。沖縄は米軍基地や日本の一県としての地位よりもはるかに豊かな遺産を継承していることを忘れてはならない。私たちは玉城知事と沖縄の人びとへの惜しみない支持を表明する」。

11.7

講演集会に130人

「辺野古埋立は違法かつ不可能」

徳田博人琉大教授と北上田毅さん軸に

 一一月七日、那覇市内の教育福祉会館で、沖縄平和市民連絡会主催の「安倍政権の行政不服審査法の悪用を糾弾する緊急講演会」が開かれ、一三〇人が参加した。司会は平和市民の真喜志好一さん。県の埋立承認撤回に対し、行政不服審査制度を悪用して防衛省という国の機関が同じ国の国交省に審査請求と執行停止を申し立て、執行停止を認めるという自作自演劇に対し、その違法性に対する認識を共有し、今後の闘いの土台として行きたいとの趣旨を述べた。はじめに、徳田博人琉大教授が壇上に上がった。

徳田教授「国のやり方は脱法行為」
行政法の専門家である徳田教授は「辺野古埋立承認撤回の意義と国の対抗措置の法的問題点―民主的法治国家の法原則から問う」と題して、要旨次のように講演した。
――県の埋立承認取り消しに対し国が取ると考えられる方法は四つあった。@沖縄県と話し合いを進め、工事断念も含めてどうするのかを決める。これはまさに、二〇一六年の国地方係争処理委員会が提示した方法であり、今回玉城知事が主張した原則的で正しい途だ。A地方自治法に基づく「国の関与」に関する規定を用いて裁判所の判決を得て工事の再開をはかる。例外ではあるが適法。B行政事件訴訟法に基づいて抗告訴訟を提起し裁判所に執行停止の申し立てをして認可を得て工事の再開をはかる。適法ではあるが、例外の例外か?Cそして今回の違法な方法。沖縄防衛局が私人に成りすまして、国交相の執行停止決定を引き出し、工事を再開する。完全な脱法行為。
国が取った方法は上下権力関係。民主的に機能している自治体に対する政府の権力的介入は憲法の趣旨からも地方自治法の立場からも大問題。脱法を突っ走るとすれば怖い政治だ。憲法の原則は人権規定による私人の自由の原則と統治規定による明文化条項以外してはならないという権力に対する縛りの原則である。国による私人の偽装は法律を根底から覆す脱法行為だ。許されるはずがない。

北上田さん「辺野古に基地はつくれない」

 そのあと、北上田毅さんが「工事再開にどう対応すべきか?―辺野古新基地建設は頓挫する」と題してパワーポイントを用いて要旨次のように報告した。
――今後工事はどのように進められるか。@大浦湾へのフロート敷設、A埋め立て土砂の海上輸送―すべて本部港から、B工事用仮設道路と中仕切り護岸(N1、N2)着工か? その場合、資材は工事用ゲートから搬入。埋め立てに使用する土砂(岩ズリ)の総量は一二九万立米、一〇トンダンプ換算で二六万台分だ。埋立承認願書では土砂は海上搬送とされている。陸揚げ護岸は現在K9護岸しかないが、一日にダンプ二〇〇台分の陸揚げがやっと。すると、土砂の陸揚げに三年半から四年かかることになる。
防衛局は、@中仕切護岸NI、N2を造成し陸揚げ用桟橋とするとともに、A陸上搬送を行おうとするのではないか。陸上搬送は違法で、知事の承認が必要だが、無視して強行する可能性もある。
本部港の使用は、沖縄県港湾条例第三一条「事務処理の特例」によって、通常の管理、港湾使用許可は本部町に移管されているが、港湾施設用地使用許可は県の権限だ。県は第三者ではない。沖縄防衛局の本部港(塩川地区)の岸壁使用許可申請に対し、本部町は台風による岸壁の破損を理由に不受理とした。台風による岸壁の修復は国庫補助の災害復旧事業で県が補修するが、国の査定もまだ行われていない。年内に予算計上し工事着工は年明けになるとみられている。
問題は補修後だ。沖縄県と本部町に補修後の港湾使用許可を出させないことが求められる。本部半島へ行ったことのある人ならわかる通り、一帯の採石場のひどい状態を放置できない。無秩序な採掘を規制する県土保全条例の適用や各自治体との公害防止協定の締結が必要だ。
県の承認撤回の最大の理由のひとつにもなった大浦湾の軟弱地盤について、防衛省も「構造物の安定、圧密沈下、液状化の詳細検討が必須」と認めている。ケーソン護岸の地盤改良や構造変更が不可避となるので、設計概要の変更申請が必要だが、知事に承認権がある。知事権限を毅然として行使すれば工事は頓挫する。さらに、県民投票で民意が示されれば、「公益」を理由とする埋立承認の撤回が新たにできる。そして何よりも、県民が決してあきらめなければ、辺野古に基地はつくれない。ゲート前、海上、本部港に結集しよう!

 質疑の中で、徳田さんは、「公有水面埋立法は国と私人をはっきり区別している。私人は免許、国は承認。私人の免許の場合改めて竣工時の認可が必要となるが、国の承認の場合、そのまま国有地になってしまう。国が私人を装うのは違法」と述べた。国が犯罪を犯しているのだ。国家の犯罪を止め裁くためにどうすればよいのか。答えはひとつ。主権を持っている国民が国家権力を掌握し行政を私物化している政治家・官僚を放逐することである。

11.2

チェジュ道の中学生の沖縄平和紀行

戦争と基地の現場を訪ね、交流

 一一月二〜六日の四泊五日の日程で、韓国チェジュ道の中学生八人と引率の教師が沖縄を訪れた。このグループは歴史教訓旅行サークルと言い、四・三事件やカンジョン村の海軍基地建設の現場を訪ねてきたが、今回、海外に足を延ばし「??? ??? ??---??????? ???」とのテーマのもと、沖縄の自然・歴史・文化と共に戦争と基地の現場を訪れ、さまざまな人に出会い、話に耳を傾け、生徒同士で交流もした。
立ち寄ったところは、ひめゆり平和祈念資料館、韓国人慰霊の塔、平和の礎、師範健児の塔・ガマ・カー、県立博物館屋外展示場、辺野古浜のテント、ゲート前、瀬嵩の浜、ジュゴンの見える丘、伊江島のアハチャガマ、ワージー、タッチュー、伊江ビーチ、読谷村のシムクガマ、チビチリガマ、恨之碑、嘉数高台、首里城など。
辺野古ゲート前集会に参加した際のインタビュー記事がタイムス、新報の両紙に紹介された。話を聞いた人たちは、浜のテントの田中宏之さん、二見以北の浦島悦子さん、大浦湾貝博物館の西平伸さん、伊江島反戦平和資料館の謝花館長、佐喜真美術館の佐喜真館長、普天間爆音の高橋事務局長など。
珊瑚舎スコーレの小中高生との交流会には、互いに相手の言葉での自己紹介とお互いの学校紹介、ゆんたくタイム、歌、フルーツバスケットという椅子取りゲーム、カチャーシーを楽しんだ。そのあと、生徒同士の国際通り・市場通りの散歩、牧志公設市場二階での食事と、和気あいあいとした五時間余を共に過ごした。チェジュ道の中学生と珊瑚舎スコーレの小中高生に終始笑顔がはじけた。最後は互いに並んで対面し、あいさつのあと一人ひとりと握手して別れ、交流を終えた。


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