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    かけはし2018年10月29日号

沖縄を守り抜く運動を全国に


沖縄報告 10月21日

民意を踏みにじる安倍官邸の強権に対し

沖縄 K・S

沖縄防衛局が国交相に審査
請求と執行停止申し立て


ウソとごまかしを深める安倍政治
 安倍官邸の沖縄に対する強権発動がまた始まった。玉城デニー新知事との会談からわずか五日後、安倍官邸は「対話による解決」を訴えた玉城デニー知事に対し、「政府のやることにつべこべ言わず従え」とばかり、力ずくの新基地押しつけに再び乗り出してきた。安倍官邸は沖縄県知事選挙の結果を尊重しようという気はさらさらないようだ。
 一〇月一七日、沖縄防衛局は沖縄県の埋め立て承認撤回の取り消しを求める審査請求と執行停止の申し立てを、同じ内閣を構成する国土交通省に行った。記者会見で、岩屋防衛相は「行政不服審査法は国であっても処分によって大きな損害を被る場合には申し立てができるようになっている」と述べた。
 二年前の行政不服審査法の改正に伴い新設された第七条二項では「国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない」と明記している。
 実際、年間一〇万件以上の国または地方公共団体に対する行政不服審査の申立ては、生活保護、社会保険、国税、情報公開、労災などに関する個人や企業からのものばかりだ。『政府広報オンライン』でも、「国や地方公共団体が国民や住民などに対して行使する処分に不服がある場合に利用する制度」と紹介し、改正法の特徴を@公正性の向上、A使いやすさの向上、B国民の救済手段の充実・拡大、の三点を挙げている。
 安倍政権のウソとごまかしの政治はその度合いを深めている。国家権力は腐敗する。映画『1987年』に描かれた権力者たちのウソと傲慢、最近でも反政府ジャーナリストの殺害をめぐるサウジアラビア政府のウソの上塗り。権力者たちが共通して恐れることはウソがばれること、国民が広く真実を知ることだ。

県知事「自作自演の不当な決定」と批判
玉城デニー沖縄県知事は直ちに記者会見を開き「安倍首相や菅官房長官との面談で対話による解決を求めた。国の姿勢は県知事選挙で示された民意を踏みにじるもので、到底認められない。非常に憤りを持っている」と怒りをあらわにし、「内閣の内部における自作自演の極めて不当な決定」と批判した。そして「国民の皆さまに政府の強権的な現実を見ていただきたい」と訴えた。
国交省は翌一八日、担当者を沖縄県庁に差し向け、執行停止に対する意見書を一〇月二五日までに提出するよう求めた。また承認撤回を取り消す審査請求に対しては一一月二〇日までに弁明書を提出するよう求めた。沖縄県は急ぎ、担当部局の海岸防災課や辺野古新基地対策課でのチェック、弁護団との意見交換の上、政府に対する対応体制を確立することになる。
石井国土交通相は公明党。三年前もそうだったが、この人は安倍政権の沖縄支配の先兵の役割を果たしている。戦後「反戦平和」を至上の価値観として再出発したはずの学会を想起するなら、創価学会の人たちは石井国交相に、沖縄の民意を尊重し県の承認撤回を擁護するようにさせるか、さもなければ辞任させるべきだ。大臣の椅子に固執すればするほど、その手は汚れていく。

埋立て工事停滞にあせる安倍政権
三年前、翁長知事の埋立承認取り消しに対し、行政不服審査法を悪用して、沖縄防衛局が国土交通省に埋立承認取り消しの取り消しを求める審査請求と取り消しの効力を無効化する執行停止の申し立てを行い、県と国との全面的な裁判闘争の始まりとなった。行政による国民の被害救済を目的とした法律の趣旨をねじ曲げ、政府を私人に偽装した行政不服審査法の悪用に対し、行政法の専門家たちも強く批判した。そのため、今回は行政不服審査法ではなく、裁判所に対し申請するのではないかと見られていた。その時期も那覇市長選が終わってからではないかと言われていた。
ところが、予想に反して、那覇市長選の最中に、行政不服審査法を使った悪名高い対抗策に打って出てきたのである。安倍官邸は相当あせっているようだ。彼らは、台風と盆休みと県の埋め立て承認撤回により実質的に八月上旬から二カ月半以上止まっている工事をこれ以上放置すれば、本当に辺野古新基地の断念に行きついてしまうのではないかと危機感を抱いた。アメリカ政府が、日本政府の政策実行力に不信感を持つのではないかとも危惧した。
岩屋防衛相は「行政不服審査法は迅速に答えを出すために用意されている法律」と述べた。厚顔無恥とはこのことだ。また、岩屋はアメリカを安心させるために、マティス米国防長官に会い「辺野古唯一」の再確認をしたのである。
日本政府による埋立て工事の再開強行を許してはならない。菅や安倍がお題目のように唱える「法治国家」が聞いてあきれる。自分勝手に法を解釈し、法をねじ曲げる安倍官邸の横暴、政治の私物化、国家権力の乱用にもほどがある。沖縄は玉城デニー知事を先頭に県民が一丸となって日本政府安倍官邸の埋立て工事の再開強行に断固反対し、辺野古新基地建設の断念を求めて全力で闘い抜く。
全国の皆さんは、沖縄を踏みにじる安倍官邸の強権発動に対し、沖縄を守れ! 沖縄の民意に従い辺野古を断念せよ! の一大国民運動を全国各地の草の根から強くつくり出して欲しい。沖縄と全国が力を合わせて、安倍政治に終止符を打とう。

県の承認撤回は地方自治体の正当な権限
県による埋立て承認撤回は地方自治体が有する行政権限の正当な行使だ。八月三一日の記者会見で沖縄県の謝花、富川の両副知事は「辺野古に新基地は造らせないという翁長知事の強く熱い思いをしっかりと受け止めた上で、埋め立て承認の取り消し処分の権限を有する者として、公有水面埋立て法に基づき適正に判断した」と述べた。
二〇一五年の翁長知事による埋立承認取り消しが承認を与えた時点の瑕疵が理由だったのに対し、今回の承認撤回は、承認後に新たに生じた、ないし新たに判明した事実をもとに行われた。
謝花知事はその理由を「留意事項に基づく事前協議をせずに工事を開始したという違反行為があり、行政指導を重ねても是正しないこと、軟弱地盤、活断層、高さ制限および返還条件などの問題が承認後に判明したこと、承認後に策定したサンゴやジュゴンなどの環境保全対策に問題があり、環境保全上の支障が生じることは明らかと認められた。県としては違法な状態を放置できないという法律による行政の観点から、承認取り消しが相当であると判断した」と明らかにした。
さらに、県民の根強い新基地反対の民意がある。これまで二〇年以上にわたって辺野古新基地建設に固執してきた日本政府としてももう諦めるときがきた。これまで投下した金額を持ち出すのはやめた方がいい。今ここでやめなければさらに桁違いのムダなカネを使うことになることは目に見えている。安倍官邸は悪あがきをやめて、辺野古・大浦湾の埋め立てを中止し、新基地建設を白紙撤回せよ!アジアの新しい情勢に対応して、辺野古に新基地を造らず、普天間を早期に閉鎖・返還する道すじを立てる決断をせよ。

地方新聞はほと
んど沖縄支持
県知事選挙で玉城デニー知事が大差で当選したあと、全国の中央紙、地方紙は一斉に社説を掲げた。安倍官邸の御用新聞・読売が「辺野古移設は普天間返還のための唯一の現実的な選択肢」と述べ玉城デニー当選に冷や水をかけたのを除き、さまざまな論調で沖縄の民意の尊重を訴えた。
朝日新聞は「辺野古ノーの民意を聞け」との見出しで、「安倍政権は県民の思いを受け止め辺野古が唯一の解決策という硬直した姿勢を改めるべき」と書いた。毎日新聞は「再び辺野古ノーの重さ」との見出しで「八月に死去した翁長雄志氏に続き再び辺野古ノーの知事を選んだ県民の審判は極めて重い」と述べた。東京新聞は、「辺野古基地は白紙に」との見出しで、「民意が示された。政府は直ちに辺野古移設を見直すべきだ」と訴えた。
北海道新聞は「新基地拒否で県政継続」との見出しで「国が説得すべき相手は沖縄ではない。米国だ。首相は沖縄に寄り添うと言い続けている。ならば行動で示してもらいたい」と断じた。西日本新聞は「この民意を無視できるか」との見出しで「くりかえし発せられる沖縄の民意。その重さを政府は無視できるのか」と問うた。高知新聞は「政権は立ち止まり対話を」との見出しで「安倍政権は強権的な姿勢を改め、沖縄の声に誠実に向かい合いなおさなければならない」と主張した。
沖縄の県民ぐるみの闘いに共感し、支持・支援する世論をもっと強力に全国津々浦々につくり出そう。この世論の大きさ・強さが安倍を追い詰めていく力になる。地方の世論をしっかりと固めて霞が関を孤立させ、安倍を退陣へと追い込もう。

那覇市長選挙・城間幹子那覇市長が再選

玉城デニー知事と共に平和で誇りある沖縄の未来へ!

 県知事選、豊見城市長選に続き、一〇月二一日投開票の那覇市長選に勝利した。県民の意志は軍事基地の重圧に苦しめられることのない沖縄、アジアの架け橋として発展する平和な誇りある沖縄だ。安倍官邸と自公維希の総力を挙げた工作は不成功に終わった。振興予算による利益誘導や政党・企業・団体・地縁血縁を通じた圧力も役に立たなかった。玉城デニー知事を生み出した沖縄県民の新基地NO!の揺らぐことのない意志は引き続き、豊見城市長選、那覇市長選において明確に示された。
投票結果は次のとおりである。
有権者数255487、投票総数123113、投票率48・19%。選管最終の得票数は
城間みきこ 79677(65・2%)
翁長 政俊 42446(34・8%)
ダブルスコアに近い。
九月三〇日の県知事選挙での両陣営の那覇市での得票と比べてみると、
玉城デニー 92624(58・6%)
佐喜真 淳 65524(41・4%)
投票率が低下したが、得票の比率の差は一七ポイントから三〇ポイントに拡大した。相手陣営ははじめから戦意喪失、選挙運動も低調な中、城間陣営の運動だけが活発で熱気にあふれていた。
城間市長は苦労人だ。生まれは伊是名島、小さい時那覇に移住した。大学受験の年に父親を亡くし、アルバイトをしながら大学を卒業した。三〇年にわたる教員生活で教育現場の様々な問題に直面した。シングルマザーとして二人の娘を育て上げた。
城間さんの市政は人に寄り添うことに重点が置かれている。過去四年間、待機児童の解消や子供の医療費補助、貧困対策に成果を上げてきた。キャッチフレーズは「平和・こども・未来」。玉城デニー知事と連携して、辺野古新基地NO! 一日も早い普天間飛行場の閉鎖・返還を主張している。
安倍官邸は三つの選挙で明確に示された沖縄の民意を無視し、なりふりかまわず向かってくるだろう。負けられない。絶対に負けられない。選挙の闘いの日々が終わり、再び、現地の闘いの日々が始まる。県民ぐるみの大闘争で必ず勝利する。


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