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    かけはし2018年10月22日号

築地で「お買物ツアー」開催


10.13

中央卸売市場の豊洲移転反対!

働く人々の命に関わる問題だ

築地市場営業権組合が抵抗の意思



築地市場は廃止
されていない
 一〇月六日築地での営業が停止し、一〇月一一日に都の中央卸売市場が豊洲で開場とされた。しかし、問題続出だ。宮原洋志さん(築地市場営業権組合)は言う。「すでに豊洲市場ではフォークリフトが築地市場の時のように自由に使えない、駐車場が足りないなどの不満が仲卸業者から出ています。さらに心配なのが、豊洲市場が働く人の『命』に関わる問題を抱えていることです。地盤がゆるく、地震で液状化が起きる可能性がある。そうなれば地下の汚染土壌が噴き出し、有害ガスが発生するかもしれない。施設内も完全密閉型で、湿度が高くカビが発生しやすい。食中毒が起これば人の命に関わります。そういった不安は、現在でもまったく払拭されていません」(AERA.com)。
 一〇月一〇日に、東京・都庁記者クラブで、築地市場移転に反対する築地市場営業権組合から、築地市場の閉場・解体事業について―営業権存続―の説明が行われた。同組合は豊洲への移転の認可は「必要に応じ施設の改善を図ることができる中央卸売市場」から築地市場が外れただけで、廃止はされていないと主張。豊洲市場開場以降も築地市場の場内で仲卸業者六店舗が営業を続けることを発表した。
 築地市場で営業権を持つ約五〇〇人のうち約一五〇人が同組合に参加し、営業権の放棄を拒否しているという。「営業権は憲法二九条で守られている財産権の一部で、都が勝手に権利を失効させることはできない」と同組合は主張している。同組合の宮原洋志さんらは、「市場内を見学しながら築地の歴史を学び、買い物もする。一般客の参加」も呼びかけた。一〇月一一日午前八時からは支援者らが「場内お買い物ツアー」を開催し一〇〇人が参加した。同様に一二日も開催された。
 
「築地には心
があるんだよ」
 一〇月一三日午前八時半に、私は「場内お買い物ツアー」に参加するために、築地市場正門に到着した。すると、「築地市場は豊洲市場に移転するため、一〇月一〇日をもって閉場した。引っ越しを目的とする旧築地市場の場内事業者以外は入場できない」と看板が出され、都の職員がガードして入場を拒否している。支援者ら数十人が集まり、「なぜ、一昨日、昨日は入れたのに入れないのか。根拠を示せ。中で営業している店がある。買い物に来たのだ。入れろ」と詰め寄るが、「営業はしていない。閉場している」の一点張り。
 支援者が「政府の中央卸市場の整備計画で、『必要に応じて施設の改善ができる』の中に、築地が入っていたが、それをはずしただけだ。築地は廃止されたわけではなく存続している」と入ることのできる根拠を示したのに、都の役人は自らの根拠を示そうともしなかった。
 中に仲卸の人がいることが入る条件なので、中の業者と確認をとり、正門前に来てもらった。「買い物と片付けの手伝い」ということで、市場の中に入った。東京ドームの何倍もある広さというだけありとても広い。しかし、ほとんどのお店が閉まり、発砲スチロールがあちこちに残り廃墟のようだった。ネズミ捕りがあちこちに仕掛けられていた。
 そんな中で、明かりが灯されている「明藤」さんのお店で、干物や乾物の買い物をして、片付けをした。都の役人はビデオを回し、「豊洲市場で営業許可を得ている店が豊洲市場外で営業すると豊洲市場での営業許可の取り消しを含む処分の対象となる」と、脅しをかけてきた。
 こうした妨害もものともせず、仲卸業者に連帯する買い物ツアーで、用意した物はすべて完売となった。「都民の台所であり、都民の土地に都民が入ってなぜ悪い。入る権利がある」という声も聞かれた。「築地は小さな家族経営で成り立ってきた。築地には心があるんだよ」という仲卸の女将さんの言葉がずしりと響いた。
 この後、築地市場場外市場に行ってみた。外国人観光客などがいっぱいつめかけ、美味しそうに「寿司」を食べていた。ここには築地が残っていた。

潮待ち茶屋も
廃止された!
仲卸で買い付けた品物を、潮待ち茶屋に運び、そこで氷を入れたりして、トラックでお店に運ぶシステムが潮待ち茶屋。発祥は江戸時代で、船で運んでいたのでこの名前が残ったようだ。仲卸業者などが資金を出し合い、三〇〇人が働いていた。ところが、豊洲ではそうした場所を作らず、駐車場でやっているという。潮待ち茶屋では真水と塩水を使い、ハエや蚊の発生をふせぎ食中毒の管理もしていた。豊洲移転により、この三〇〇人の仕事がなくなってしまったという。
さらに、築地移転問題は、約五七〇〇億円もかけた整備費用のうち、三六〇〇億円を市場会計の借金に当てるという。これをどうするのか。年間一〇〇億円の赤字予想が一四〇億円に拡大するということもどうするのか。都は赤字解消について「効率的に市場を運営する」としているが具体策は不明確だ。業者らには、使用料が上がるのではないかと懸念が消えない。
そして、築地の跡地はとりあえず、東京オリンピック・パラリンピックの駐車場・輸送拠点とするとしているが、その後どうなるのか。、銀座に一番近い一等地は、巨大開発の目玉として、さまざまな利権屋がねらっている。今、築地を守ろうと立ち上がっている人々と連帯し、寄り添っていかなければならない。築地を都民・民衆のための憩いの場との要求を掲げ、築地市場の再誘致にもつながる可能性もひめて、民衆運動が監視していかなければならない。 (M)

築地市場の移転差し止め訴訟原告団より


築地市場の移転の差し止めの仮処分を求めた訴訟は、一〇月四日、東京地方裁判所から「申立をいずれも棄却する」という決定が出されました。
私たちの訴えは不当にも認められなかったということです。私たち原告団は、宇都宮健児先生ほかの弁護団の先生と相談の上、直ちに「決定」に異議の申し立て(抗告)をいたしました。諦めずに「納得がいかない!!」の旗は立てていこうと思っております。今後もよろしくのご支援をお願いいたします。
(2018年10月5日)

投 稿

愛知の朝鮮高校無償化裁判

差別に満ちた人権破壊だ

愛知:青木達郎

 九月二七日、大阪の「高校無償化」裁判控訴審判決が大阪高裁から言い渡されました。結果は敗訴。四月二七日には朝鮮高校側が勝訴したのですがそれを完全に覆す結果になりました。その内容は大阪朝鮮高校が勝訴した同じ日に愛知の名古屋地裁で出された判決(愛知朝鮮高校の敗訴)とよく似ているような気がします。それは、「規程13条の適合性」に照らし合わせて「朝鮮学校を『不当に支配』している総聯組織が受給した就学支援金を不当に巻き上げ、授業料以外の使途で流用」するというものでした。何の事実的根拠もなく、自らの差別意識のみを根拠にした全く不当な人権じゅうりんの判決だと思います。

名古屋地裁の
不当判決とは
愛知では先に書いたとおり、四月二七日に名古屋地裁から原告敗訴の判決が下されました。その判決で裁判官は「不指定処分の結果は……年額一一万八八〇〇円の就学支援金の受給資格が認められないというものにとどまり」と軽んじ、朝鮮高校を「法令に基づく学校運営が適正におこなわれていない疑いのある学校」と一方的に決めつけ、朝鮮学校の教科書には北朝鮮の指導者を礼賛する記述があって教育内容が偏しており朝鮮総連による不当な支配が疑われる、と結論づけました。
これが朝鮮高校の訴えを退けた内容ですが、これも裁判官、ならびに日本社会の民族差別を根拠にした酷い内容だと思いました。そもそも日本社会が朝鮮学校や民族教育のために一切協力せず、それどころかこれをつぶすために弾圧を行ったのは日本国家です。これに対し在日朝鮮人民衆を組織し貧困と差別を覆し、ついには自らの手で朝鮮学校を建設し、民族教育の「言語」「文化」「歴史」を取り戻す闘いを実践したのは朝鮮総連であり、それを指導、協力したのは北朝鮮の指導者たちだったのです。
そういう組織や人々に感謝や尊敬の文言があって何がおかしいことがあるでしょうか。確かに「拉致問題」というのはありますが、その責任を在日朝鮮人の子どもたちや父母におしつけるのは全く不当な差別であり人権侵害だと強く思います。また北朝鮮国内における朝鮮労働党=金体制の下での人権侵害や脱北者の問題もありますが全く別問題であり、これを根拠にするなら「子どもの権利条約」に明確に違反します。

「東京、広島」
よりも悪質だ
ところでこの愛知の判決については「無償化連絡会・大阪」共同代表の藤永教授が韓国のネットメディア「プレシアン」に寄稿した論文によると名古屋地裁の判決内容は「広島や東京の不当判決とは、また別の問題点を抱えた、ある意味では一層悪質な判決だと感じる」との分析をしていました。
それはまず第一に生徒・保護者が「民族教育が受けられる点を重視して朝鮮高校を進学先に選択していること」を認めながらも、「民族教育の価値を尊重すべきことと、『不当な支配』が疑われることは別個の問題」と断じていることを指摘しました。
第二に、判決では、「拉致問題が不指定の理由にならないことは、原告らの主張のとおりである」と、政治的・外交的理由による不指定処分の不当さを認めるような態度を示しているにもかかわらず、しかし、朝鮮学校には朝鮮総聯の「不当な支配」が疑われるのだから「いずれにしても文部科学大臣としては不指定処分をせざるを得なかった」と、結局はその違法性を認定しなかったことを指摘しました。
このように原告の主張を完全に無視した広島と東京の判決と比べると名古屋地裁は原告の主張をすべて認めたうえで、しかし「不当な支配」が疑われるから却下。という形になっていると述べ、「リベラルを装った傲慢な判決」と批判しています。さらに藤永教授は「不当な支配」の「疑い」だけで不指定処分にするのはおかしいと批判し、「朝鮮学校の民族教育を妨害したりしませんよ」「民族教育や多様性を認めますよ」「理解」「理性」を形だけ示し、その裏で「洗脳教育されている」という固定観念で今回の不当判決がだされたと批判しました。藤永教授の指摘するとおり愛知の判決の場合は二重三重の意味で悪質で差別的だったと思います

愛知から植民
地主義変える
しかし、愛知の朝鮮高校の生徒たち、父母たち、支援者は決して屈することなく次の闘い、名古屋高等裁判所への控訴審の闘いを開始しています。九月一五日には名古屋市教育館で「愛知朝鮮高校無償化裁判控訴審勝訴にむけての愛知総決起集会」が行われ一五〇人が参加しました。基調講演では大阪から在日朝鮮人人権協会の金東鶴(キム・トンファ)さんを招き「民族教育の過去と現在」と題して基調講演を行いました。その内容は日本の植民地主義が日帝敗戦の8・15以前と以後も何も変わっていないことを詳細に分析したものでした。8・15以降の日本政府による在日朝鮮人に対して行った様々な差別政策をことこまかに明らかにし、その思想的背景に植民地主義がなにも変わらずに現在まで続いている日本社会の現実をわかりやすく解明しました。そして朝鮮高校無償化裁判の闘いは反植民地闘争であると述べ、植民地主義を変えることで日本の教育問題も変えられるし住みよい社会を作ることができると講演を締めくくりました。

住みよい社会
作りましょう
愛知の無償化裁判は五年以上にわたって続けられています。途中で方針の違いや考え方の違いで日本の支援者がいくらか離れていったこともあります。正直、私もそういう時期がありましたが、九月一五日の講演を聞いてやはり支援を続け、共に闘いたいと思いました。日本の植民地主義をあぶり出し、朝鮮民衆との国際連帯で朝鮮高校の無償化を勝ちとりましょう。

※藤永教授の分析は「無償化連絡会・大阪」のホームページから参考にさせてもらいました。
http://renrakukai-o.net/


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