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    かけはし2018年8月27日号

「天皇代替わり」キャンペーンと闘おう


8.15

天皇制と近代植民地主義を考える集会

侵略戦争賛美を許さない

戦没者追悼式典に抗議



「平和主義的」
天皇像ねつ造
 八月一五日、「明治150年」天皇制と近代植民地主義を考える8・15行動実は、在日韓国YMCAで8・15反「靖国」行動の集会を行い、一八五人が参加した。
 安倍政権はグローバル派兵国家建設に向けた改憲攻撃、天皇代替わりと「明治一五〇年」を一体化させた天皇制賛美キャンペーンを繰り広げている。連動して全国戦没者追悼式で天皇明仁は、最後の式典出席として「おことば」で「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」の一節を加え、またしても欺瞞的な「平和主義」天皇像をデッチ上げた。日米安保体制下、戦争準備態勢を押し進めながら米軍の派兵を応援し、自衛隊が共同参戦してきた歴史を覆い隠すことに加担した。天皇制の植民地支配の犯罪、戦争・戦後責任からの逃亡について居直り続け、なんら反省することもなく、新たな戦争を射程にしながら戦争の死者を「尊い犠牲者」として賛美したのである。
 マスコミは一斉に「おことば」が「長き平和に思い」を現したなどと持ち上げ、安倍首相の式辞が日本の戦争「加害触れず」などと対抗的に描き出す始末だ。
 安倍首相は、中国、韓国などの反靖国抗議を抑えるために靖国神社に玉串料の奉納で右派対策し、閣僚には参拝を行わせなかった。だが自民党主要幹部、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」が参拝することによって靖国派としてのアピールを押し出した。また、日本会議と「英霊にこたえる会」は靖国神社で集会を行い、安倍首相の総裁選三選と改憲の加速化に向けて意志一致している。あらためて天皇制賛美を許さず、「代替わり」を通した新天皇賛美状況に楔を打ち込んでいかなければならない。反「靖国」行動は、すでにスタートしている二〇一九天皇「代替わり」と侵略・植民地主義の「明治一五〇年」賛美に抗する闘いに向けたステップとして取り組まれた。

個人に「祝意」
を強制できぬ
パネルディスカッションに入り、四人のパネラーから問題提起が行われた。
坂田弁護士は、「即位・大嘗祭訴訟に関する問題提起メモ」を報告し、「三〇年前の即位・大嘗祭訴訟では『一切の儀式・行事に国費を支出してはならない』などを請求した。大阪地裁(一九九二年)・高裁(一九九五年)は、政教分離について疑義は一概に否定できないと認めた。さらに天皇の即位を祝うことについて、個人が祝意を表すことを国家が事実上にしろ強制すれば、私人の思想、表現の自由の侵害になると認めた。
しかし、控訴審判決では控訴人らの訴えを全面的に退けた。今回は退位の礼もあり、すでに過去の批判を踏まえた上で実施が検討されている。だから現時点における訴訟の論理構成として@政教分離A主権在民B納税者訴訟C天皇代替わりの手続きの問題を取り上げ、批判していきたい」と述べた。
黒岩さん(「北方領土の日」反対!「アイヌ新法」実現!全国実行委員会〈ピリカ全国実〉)は、八月五日の「天皇出席の 『 明治・北海道一五〇年式典 」反対、 アイヌ民族連帯決起集会」とデモの取組みを報告し、「式典はアイヌモシリ(北海道)の侵略・植民地化、アイヌ民族同化・抹殺政策の歴史の隠ぺいだ。天皇制国家による他民族侵略・支配の『原型』としてのアイヌモシリ侵略である。私たちは、この開拓史観、民族排外主義が問われている。『明治一五〇年』式典から天皇退位・即位式典とうち続く天皇制永続化攻撃と対決する統一戦線を構築しよう」と呼びかけた。
井上森さん(元号いらない署名運動)は、「署名は五〇〇〇筆を突破し、一万筆目指してさらなる行動をしていきたい。当初、二〇一八年夏に『新元号発表』だったが、自民党保守派などの反発もあり代替わり一カ月前に延ばした。すてに大迷惑な状況が発生しているが、中央官庁、JR、警察らは書類、コンピューター、免許証などでは元号を使わず西暦で統一化している。元号をめぐって天皇明仁は沈黙し続けている。その一方で『平成のうちに』ということでオウム大量処刑を強行している。やはり日本において最高度の国家暴力を正当化する論理は天皇制しかないことを現している。この論理を打ち破る闘いが問われているだろう」と発言した。
新孝一さん(反天連)は、「反天連第U期」(一九九一・四)のスタートをふり返り、「『国際化』時代の『ソフト』で『クリーン』で環境問題にも理解あるというイメージをふりまくアキヒト(天皇制)との正面からの政治的対決をこそ、主要課題として私たちは結集する」と位置づけ、明仁天皇制を性格、役割、犯罪性などを暴露し、批判してきたことを浮き彫りにした。
つまり、「結論を言えば、時に強い独自性や個性を発揮して明確なメッセージを発信することもあった、明仁天皇の言動は、歴史と政治によって大きく規定され、変化する。同時に、天皇の憲法の規定とは別の役割がある。この間の天皇主導の『退位』と天皇による天皇制の再定義したことに現れている。三〇年かけてここに収斂し、天皇像の到達点だとも言える」と集約した。
連帯アピールが沖縄一坪反戦地主会・関東ブロック、日韓民衆連帯全国ネットワーク、オリンピック災害おことわり連絡会、米軍・自衛隊参加の防災訓練に反対する実行委員会から行われた。
最後に集会アピールを確認し、靖国神社に向けてデモに移った。
権力・機動隊は、デモ隊列に対して不当な規制を行ってきた。天皇主義右翼や在特会などは、デモに対して挑発を繰り返してきた。だが仲間たちは毅然と対応し、「天皇制反対・靖国神社解体」などの横断幕、プラカード、のぼりを林立させ街頭の人々にアピールし、靖国神社に向けて抗議のシュプレヒコールをたたきつけた。     (Y)

8.11

「平和の灯を!ヤスクニの闇へ」

改めて侵略の責任を問う

「明治150年」と植民地支配の批判へ



「靖国」が果た
した役割とは
 八月一一日、「平和の灯を! ヤスクニの闇へ」キャンドル行動実行委員会は、在日本韓国YMCAで「2018 『明治150年』とヤスクニ、そして改憲」をテーマに集会を行い三五〇人が参加した。
 実行委は、二〇〇六年、小泉純一郎首相の靖国参拝に抗し、靖国訴訟を取り組んできた東アジア四地域(日本、沖縄、台湾、韓国)の市民運動が靖国神社反対共同行動として開始した。その柱は、@靖国神社の歴史認識が、再び戦争のできる国へと右旋回する日本の現状と直結している、 A韓国・台湾・沖縄・日本の遺族に断りもなく合祀していることは許さない、B 首相の靖国参拝は憲法が定めた政教分離原則に違反する、―ことを確認しこれらの点を「ヤスクニの闇」として切り結ぶ共同行動として取り組んできた。毎年、八月に集会とデモを行い、今年で一三回目だ。
 安倍政権は、憲法改悪をめざして二〇一九年「天皇代替わり」と「明治150年」を結びつけ天皇制と植民地主義賛美キャンペーンを繰り広げている。この流れに日本会議など天皇主義右派勢力は、連動して侵略戦争と天皇制を賛美する靖国神社を位置づけ、民衆動員をしながら靖国史観を広げようとしている。実行委は、安倍政権と右派が一体となった改憲攻撃を許さず、靖国神社の犯罪をあらためて社会的に暴き出していくために行われた。

「日毒」の消去
という課題を
主催者あいさつが今村嗣夫さん(共同代表)から行われ、「安倍首相は、『長期政権の維持と権力の拡大強化』を図り、『平和憲法の改正』をもくろんでいる。靖国神社は、大日本帝国の下での植民地台湾・朝鮮出身の日本兵の戦没者やキリスト教徒の戦没者についても例外なく『合祀』している。『合祀』は『個』を『全体』に優先する民主主義社会の条理に背くものだ。今年も靖国神社に対して『アジアの遺族の人権を侵すな』、安倍政権に対し『平和的生存権を侵すな』と訴えていこう」と発言した。
シンポジウムは、「『明治150年』とヤスクニ、そして改憲」をテーマに内海愛子さん(恵泉女学園大学名誉教授)の司会、三人のパネリストが問題提起した。
高橋哲哉さん(東京大学教授)は、「『日毒』の消去という課題」をテーマにして提起。「日毒」とは、石垣島の詩人の八重洋一郎の日帝侵略を糾弾した詩集のタイトル。
高橋さんは、「日毒」を紹介し、「明治維新一五〇年」を貫く日本の植民地主義の克服という課題を八重が言うように「必ず果たさなければならない」課題であることを強調した。
また、「朝鮮半島情勢が激動した。さしあたり戦争の危機が遠のいたばかりか、朝鮮戦争終結と在韓米軍撤退の可能性まで話題に上るに至った。今後についてはなお予断を許さないとしても安倍政権は、帝国期の植民地支配の責任を否認し続け、戦後日本が加担し続けてきた朝鮮戦争の終結にも背を向けるに至っては、『断絶』の克服どころか、新たな極東アジアの国際地図のなかで孤立を深めるばかりとなるだろう」と指摘。
さらに「明治維新以後一五〇年経った今も、日本はその継続する植民地主義によって、近隣諸民族との信頼関係を構築することができないでいるということではないか」と批判した。

兵士たちの加害
と被害の関係
吉田裕さん(一橋大学教授)は、『日本軍兵士』、靖国、そして明治憲法体制」をテーマに提起。
吉田さんが執筆した『日本軍兵士』(中公新書)の問題意識について語った。
「『日本軍兵士』は、兵士の目線、兵士の立ち位置から戦場の凄惨な現実を再構成するために兵士の身体へと着目した。ミクロな視点とマクロな視点を組み合わせた。戦場のリアルな現実に対する想像力を鍛え上げることが重要だ」と述べた。
そのうえで「アジア・太平洋戦争期における日本軍の現実」として「全戦没者三一〇万人の約九割は一九四四年以降の死者だ。指導者の責任の問題があり、遺族のわだかまりへとつながっている。いかに殺されたか。具体的には戦病死者、餓死者の異常な多さ、海没死、特攻死の特異な死、自殺の多さ、傷病兵・投降兵の殺害、食料強奪のための日本軍兵士殺害などだ。兵士たちの死の無残さ、兵士たちのおかれた状況の苛酷さを事実をもって対置することが重要だ。『英霊』にまつりあげることへの拒否へとつながる。兵士たちの加害と被害の関係性をどう考えるかは残された課題だ」と強調した。

「安保のために
歴史を殺す」
権赫泰さん(韓国・聖公会大学教授)は、「韓日関係:『安保が歴史を殺す』」をテーマに問題提起した。
「朴政権は日本と歴史的争点である『慰安婦合意』(二〇一五・一二)を内外の反対世論を押し切って合意した。この合意は、ラオスで開かれた朴・安倍会談(一六・一〇)で日韓軍事情報保護協定締結(一六・一一)を確認し、そのために拙速で処理したのだ。つまり、『慰安婦』合意と軍事情報保護協定は、『安保のために歴史を殺した』のである」と指摘。
さらに「文在寅政権の登場と南北会談を通じた南北対立の緩和の可能性の台頭は、『安保のために歴史を殺した』既存のシステムの廃棄を要求するものである。靖国問題、『慰安婦』問題などの歴史問題の解決の努力が平和秩序の構築の最も重要な要素だ。『安保を殺し歴史を活かさねばならないという』理由がまさにここにある」と呼びかけた。
遺族証言では李明九さん(ヤスクニ合祀取消訴訟原告)が父の思い出を語り、「私の父は日本の名前で今も靖国に利用されています。一日も早く父を靖国から解放させてあげ、私もこの苦痛から抜け出したいのです。私はその日まで皆さまとともに頑張って行きたいと思います」と訴えた。
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動のアピール後、コンサート。閉会あいさつを李煕子(共同代表)が行った。
集会終了後、靖国神社に向かうキャンドルデモに移り、「靖国反対!改憲やめろ!」のシュプレヒコールを九段下一帯にわたって響かせた。      (Y)


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