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    かけはし2018年8月13日号

安倍の働き方改革について行こうという韓国資本


日本の「完全雇用」に隠された真実

イ・ジュヨン(政策宣伝委員長)



  社会変革労働者党の機関紙 変革政治69号で、安倍の進める働き方改革を取り上げ、韓国の労働市場と比較。的確な指摘をしている。(「かけはし」編集部)

 最近、新規大学卒業者の就職率が97・5%に達し、全体失業率は2・5%に過ぎず、経済学者たちが「完全雇用状態」に近いと評価する日本。高齢化速度が速く、生産可能人口が急速に減り、事業主たちが、働く人を探し歩くという話によく接することがある。
 企業が労働者たちを「お招きすること」に熱を上げるという言葉まで出ており、まるで日本の労働者たちは働き口の心配なしで安定的で余裕のある労働条件を享受するような印象さえ与える。指標を見ると、最近の就業者数の増加率が大幅に減って青年失業率が10%を超えた韓国とは対照的だ。 果たして日本は、労働者に「希望の国」になったのだろうか。
 この6月29日、日本の国会では矛盾したシーンが繰り広げられた。この日、日本の参議院は、安倍政府が「働き方改革」という名前を付けた一連の労働法改正案を可決した。日本の慢性的な長時間労働慣行を根絶するというのが法案の表面的な目的だった。参院本会議場には過労に苦しみ命を失った労働者らの遺族たちが喪服を着て犠牲者たちの写真を持ったまま参観していた。
 ところで遺族たちがこの日、傍聴に乗り出した理由は、該当法案通過に反対するためだった。過労死被害家族たちが長時間労働を根絶するという法案に抗議するとは、おかしくないか?しかし、問題は、法案そのものにあった。
 名分とは違って、この法案はむしろ長時間労働を助長するとともに賃金体系も柔軟化しようとする毒素条項がそのまま込められていたのだ。

「仕事も、人生もいずれも苦しい」


 2015年12月25日、クリスマスの朝、東京でひとりの労働者が自ら命を絶った。 そしてこの死は日本社会にかなりの反響を引き起こすことになる。
 犠牲者は世界的な規模を誇る日本最大の広告会社電通で働いていた24歳の女性労働者高橋まつり。大学を卒業したばかりの就職1年目の新入社員だった彼女を死に追いやったのは、まさに殺人的な長時間労働だった。高橋まつりは月100時間に及ぶ超過労働を強要され、命を断つ2カ月前の2015年10月にはおよそ130時間の超過労働に苦しめられた。
 過労でうつ病まで経験することになった彼女は上司に業務を減らしてほしいと要請したが、帰ってきたのは、性差別が混ざった暴言だった。絶望と苦痛の末に高橋まつりは結局、「愛するお母さん、もうさようなら。人生も仕事もいずれも苦しいんです」というメッセージを残して社員寮から飛び降りた。
 この悲劇は日本に蔓延した超過労働の弊害を赤裸々に表わした。 日本の年間労働時間は1719時間でOECD2位の悪名をはせる韓国(2113時間)よりは少ないが、ドイツ(1371時間)やフランス(1482時間)、スウェーデン(1612時間)など、米国を除く先進資本主義諸国の中で最も長い方に属する。さらにパートタイム(短時間労働者)や派遣労働者など不安定な非正規職の雇用を量産し、平均労働時間が減ったものの、実際の長時間労働はさらに深刻だ。
 従来日本の労働基準法(韓国の勤労基準法に該当)は、法定労働時間を週40時間と規定して、超過労働は、厚生労働省告示によって月45時間・年間360時間と制限していた。
 しかし、この超過労働規制は強制力がなかったため、事実上無制限労働が可能だった。労働者たちの過労死や過労自殺が繰り返される中、高橋まつりの死を契機に長時間労働を撤廃するという大衆的要求が噴出した。
 これによって安倍政府は労働時間規制立法を推進するしかなかった。
 しかし、この6月29日、議会を通過した安倍政府の「労働時間短縮」法案はその趣旨をつぶすことになった。月100時間、年間720時間まで超過労働を可能にすることを認めたからだ。
 高橋まつりが月100時間の水準の超過労働に苦しめられていたことを考えれば、これは、合法的に過労を助長するものでしかない。さらに自動車運転、建設、医師業務については適用を5年間猶予して研究開発業務は、規制対象から除外した。
 さらに、たとえ高所得専門職に限定することにはしたが、労働時間規制を廃止し、超過労働手当てをなくし、労働時間とは関係なく使用者の成果評価だけで賃金を策定するいわゆる「脱時間給制度(「高度プロフェッショナル制度」としても知られる)」を導入して無制限労働を正当化する一方、今後賃金体系を完全に柔軟化する布石を置いた。
 同日、通過した労働法改正案について、韓国の対外経済政策研究院や経済新聞は「韓国に比べて規制の強度と硬直性が弱く、柔軟な対応が可能になった」とうらやましがった。しかし、まさにその理由のために、高橋まつりの母は娘の遺影を持って法案通過に抗議するしかなかったのだ。

日本を習おうという韓国資本の本音

 長時間労働とともに日本の労働構造を特徴づけるのは低賃金の非正規職の拡大だ。日本政府の公式統計だけを見ても、全体労働者のうち非正規社員の割合は持続的に上昇し、もう37%を上回る。
そして、まさにこれが最近、日本の高い就職率と低い失業率の背景として働いている。この20年間、日本の生産可能人口が約1千万人減少して高齢化速度が早まっているにもかかわらず、雇用指標が改善されるのは、女性や高齢人口が大規模に労働市場に参入している中で、これらの多くが非正規職として雇用されるためだ。
韓国銀行によると、2000から2017年中日本の女性労働者は464万人増加したが、このうち94・4%(438万人)が、非正規職で、老年層労働者は284万人が増加した中で、84・5%(240万人)が、非正規職だった。日本の非正規職労働者の賃金水準は正規職比65%に過ぎなかったが、これは、雇用指標が改善されてきたにもかかわらず、実質賃金が全く上がらない主な原因だ。
現在、日本は所得不平等を表すジニ係数や貧困率がOECD平均はもちろん、韓国よりも悪化している。一方、安倍政権発足後、日本企業の利潤は引き続き増大した。
大規模な量的緩和を通じて企業の財政悪化を国家が代わりに引き受けてくれると同時に円の価値を落として輸出価格を引き下げることで、大企業の収益性は大きく改善された。増えた利潤は、賃金上昇へとつながらず、企業内部に蓄積された。
この時期に、日本企業の内部留保額(社内留保金)は大きく増加し、製造業基準で2011年111兆円から2015年には132兆円と、およそ19%増えた。日本全体のGDP実質経済成長率が1%の水準に止まっていたのとは対照的だ。
数年前から韓国では経済新聞と保守マスコミを中心に安倍政府の労働政策を高く評価しながら、労働時間を減らして「多様な勤務形態」を導入して高齢化と産業の変化に柔軟に対応していると主張する。これを見習い、韓国の「硬直した」労働市場の構造を変えなければならないという提言も忘れない。
しかし、資本が要求する柔軟化はまさに労働者らにとっては人生の不安定を意味し、韓国も1997年以後この20年間この破壊的な労働柔軟化を経験している。高い就職率と低い失業率、企業利潤の上昇に隠された日本の労働構造の実状をきちんとチェックしなければならない理由だ。

声明

財閥を庇護する検察の「甘い捜査」は積弊である

現代車資本のユソン企業、労組破壊の犯罪行為を直ちに再捜査し、厳正処罰せよ

社会変革労働者党忠北道



 財閥企業に非正規職が組合を作ると、非正規職を雇用している下請けごと電話一本で解雇したり、整理解雇の1番目に非正規職を解雇するなどの攻撃が、ますます強まっている。以下は現代―起亜自動車が下請け請負のユソン企業の労働者を解雇したことに対する闘いの声明だ。(「かけはし」編集部)

 昨日(7月25日)のマスコミには、「現代自動車資本のユソン企業労組破壊介入が事実」というユソン企業の元幹部の証言が報道された。現代車資本が直接主導したユソン企業の労組破壊事態がユソン企業の役員の口から再び確認されたという点で、現代車資本の労組破壊犯罪はこれ以上隠せない真実として浮上した。
 メディア報道によると、ユソン企業の元役員は、労組破壊に重要な役割を果たした役員にまで触れた。さらに、会社主導で設立された第2労組について、現代車の役員や従業員らは随時業務指示や報告を受け、期間別に第2労組への加入目標人員まで決めて、ユソン企業の役員らを圧迫した事実まで暴露された。
 この事実は全く新しいものではない。2016年1月、検察がユソン企業を家宅捜索した資料にも、現代車の介入状況が含まれていた。
 これに対してユソン企業支会は、数回に渡って下請け会社の労使関係に不当に介入した現代車資本の犯罪行為を捜査するよう要求してきた。元請会が加わった不当な労組破壊を断ち切らなければ、ユソン企業では現場弾圧が続くためだ。
 しかし、検察はこれを拒否し、結局同年、ユソン労働者は仲間を失ってしまった。 現在までもユソン企業の労働者は、労組破壊で困難を強いられている。
 検察がきちんと捜査を行い、関連者を処罰するばかりだったが、処罰をきちんとしていれば、ユソン企業の事態は今まで続いていなかったはずだ。しかし検察は、労働部の労組破壊責任者らに対する起訴意見を常に黙殺した。社会的に労組破壊問題が公論化されるや、遅ればせながらの起訴だったが、その時も現代車の資本は欠けていた。
 6年ぶりに現代車資本を相手どった裁判が開かれたが、現代車資本は、小細工を使って裁判は見送られた状態だ。検察は「積弊清算のための検察過去史委員会」を構成し、ユソン企業の労組破壊事件が事前調査の対象となったが、裁判に影響を与えるという理由で本調査の決定を保留してしまった。「財閥の下僕」という汚名をそそぐ機会を自ら取り除いてしまったのだ。検察の再調査委員会は直ちに、ユソン企業の労組破壊事件に対する再調査に着手しなければならない。「見逃し捜査」担当検事も捜査対象だ。元請の権力を前面に出して、下請け関係にある部品メーカーの労働組合を破壊した責任を徹底的に捜査し、犯罪者の鄭夢九(チョン・モング)をはじめ、その一味をすべて処罰しなければならない。
 それだけが、この8年間を労組破壊で苦しめられた労働者たちに、検察が少しでも償う道だ。 7月26日
社会変革労働者党忠北道

朝鮮半島通信

▲朝鮮中央通信は7月26日、金正恩朝鮮労働党委員長が江原道の「松涛園総合食料工場」を視察したと報じた。報道では、金委員長の妻である李雪主氏の呼称が従来の「女史」から「同志」に変更された。
▲朝鮮中央通信は8月4日、金正恩朝鮮労働党委員長が平壌市内の工場で新型のトロリーバスや路面電車の試運転を視察したと報じた。視察の日時は不明。金委員長のトロリーバス工場の視察が報道されたのは今年2月以来。
▲韓国と朝鮮の将官級軍事会談が7月31日午前、板門店の韓国側施設「平和の家」で始まった。
▲ソウルから平壌、そして朝鮮と中国の国境の都市である新義州へつながる京義線鉄道の連結に向け、鉄道の現状を点検する韓国側の調査団が7月24日、都羅山南北出入事務所を通じて朝鮮側に入った。南北首脳が4月に発表した板門店宣言を受け、7月20日には東海線の連結区間の点検が南北共同ですでに実施されている。
▲韓国女性家族省は7月24日、慰安婦問題の日韓合意に基づいて日本が拠出した10億円を韓国政府の予算で置き換えるため、予備費を計上する案が同日、閣議で承認されたと発表した。

 


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