もどる

    かけはし2018年7月23日号

韓半島の平和定着本格追求を


韓米同盟廃棄闘争構築が課題に

ジャン・ヒェギョン(京畿地域)

 朝鮮半島の非核化、平和が進展する時、われわれは日米軍事同盟―安保法制に基づく仮想敵攻撃可能な国防政策とどう闘うのか。日韓連帯の平和運動前進を考えるために社会変革労働者党の論文を紹介する。(「かけはし」編集部)

 6月12日、歴史上初の米朝首脳会談が開かれた。 これで70年余り続いた北米敵対関係の清算と韓半島平和の可能性が開かれる新たな情勢が造成された。お互いに核戦争で脅かしながら、激しく対立した昨年と比較すると隔世の感だ。米朝首脳会談の実現まで紆余曲折があった。ボルトンのリビア式の北朝鮮核問題の解決策に対する北朝鮮の強力な反発とトランプの首脳会談の取り消し騒ぎを経て、米朝首脳会談が実現したのだ。

米国政府と北朝鮮の利害一致

 米朝間の力比べとも言える紆余曲折を経ながらも、米朝首脳会談が実現した背景は何だろうか。北朝鮮と米国政府の利害関係がかみ合っているためだ。
まず、北朝鮮は米本土まで到達できる大陸間弾道ミサイルICBM能力の確保を通じて核とミサイルを基に対米関係改善の力を確保したという判断をしたとみることができる。この力を基盤に「人民経済向上」いう切迫した課題を解決するため対米関係改善を通じた国際的孤立状況を打開しようとするのだ。
つまり「米国の北朝鮮に対する体制安定が保障されたら積極的に非核化に乗り出すだろう」ということだ。これは4月20日[労働党全員会議]の決定事項と核・経済の並進路線廃棄や社会主義経済建設総力の集中、核とICBM試験の中止と、豊渓里核実験場の廃棄、でよく表れている。
対北朝鮮和解政策を展開する文在寅(ムン・ジェイン)政権の執権下にあるという韓国の状況も北朝鮮は考慮したのだ。自由主義政権の政権は通南通美(韓国とアメリカと通じる)の条件を形成できるためだ。
4・27南北首脳会談や米朝首脳会談の実現が危機に瀕した際に行われた5・28南北首脳会談が6・12米朝首脳会談に向けた架け橋の役割をした点がこれをよく示している。
米国はどうなのか? 米国に対し北朝鮮の核問題はジレンマだ。これまで米国政府は北朝鮮核問題解決を意図的に放置してこれを韓半島および北東アジアの覇権維持の口実として積極的に活用してきた。
しかし、これは北朝鮮の核武装を呼んで来て、核兵器不拡散という米国の核覇権政策と正面衝突する結果をもたらした。ここに北朝鮮が米本土に到達する射程を持ったICBM開発にまでにいたり米国政府にとって北朝鮮の核問題の解決は急務となった。
米国の主流の支配勢力の立場から見れば、異端児であるトランプの政治スタイル、北朝鮮核問題の解決を通じて再選を狙うトランプの政治的計算が米朝首脳会談の実現に大きな影響を及ぼしたが、このような米国の根本的なジレンマをいっしょにみる必要がある。

両首脳合意内容が示すものとは


米朝首脳会談の合意内容を見てみよう。 米朝首脳会談で発表された【共同声明】は4項で構成されている。
1、米国と北朝鮮間の新たな関係を樹立、2、韓半島の持続的かつ安定的な平和体制を構築、3、板門店(パンムンジョム)宣言の再確認と北朝鮮の韓半島の完全な非核化に対する約束、4、戦争捕虜、戦争の行方不明者の遺骨を収拾する約束だ。
ここに「共同声明に明記された事項の完全かつ迅速な履行および後続交渉の早期開催の約束」が入っている。
これをめぐって米国内の主流勢力と韓国国内の保守勢力はCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)が合意文に明示されなかったと批判している。
しかし、これは徹底的に米国中心の覇権的な見方だ。なぜなら米国が望むCVIDも除かれたが、北朝鮮が望む米朝関係改善と体制安定の保証の具体的内容も漏れている。
さらに、CVIDは、敗戦国などへも要求する過酷なものだ。米国が望む非核化は物質的で不可逆的なものになりうるが、北朝鮮が望む体制安全保障は意志的で文書の性格を持っており、いつでも可逆的なものになるためになおさらだ。
これは米朝交渉が傾いた運動場での交渉ということを意味し、このような状況でCVID明示は、北朝鮮に白旗降参を要求することに相違ない。
むしろ今回の合意は米朝関係の改善と朝鮮半島和平体制の形成に向けた第一ボタンを通したと見ることができる。共同声明の前文にある「トランプ大統領は安全保障を提供することを約束し、金正恩委員長は、朝鮮半島の完全な非核化に向けた揺れない確固たる約束を再確認」という文章にこれはよく表われるが、北朝鮮が要求する安定の保証と米国が望む非核化に対する包括的な内容が盛り込まれているからだ。
特に注目して見ることは共同声明の項目の配列だ。共同声明は、米朝間の新たな関係の樹立と朝鮮半島平和体制の構築という1、2以降に完全な非核化を3項に配置した。
これは、北朝鮮の非核化が北米関係の改善の始発ではなく北米関係の改善と朝鮮半島平和体制構築の中で北朝鮮の核問題解決を追求するということを意味する。「先に非核化、後で関係改善」という米国の覇権的フレームにいったん歯止めがかかったわけであり、北朝鮮の核問題の解決は段階的、同時的方向の下で推進されるしかないことを確認したものだ。
会談後の措置が続いていることも前向きなシグナルだ。 北朝鮮は初の履行措置として米軍の遺体の送還を開始した。共同声明に明示されなかったが、北朝鮮はミサイルエンジン試験場の閉鎖も約束したという。米国も首脳会談の成果履行のレベルで8月に予定された乙支(ウルチ)フリーダムガーディアンUFG合同軍事演習と韓米海兵隊連合訓練を中断することにした。これは、現局面が北朝鮮の核問題解決の入り口で話された双中断(北朝鮮の核ミサイル試験中止と韓米合同軍事演習中止)局面に入ったことを意味する。
以降、情勢の推移は、米朝首脳間で行われた非核化と安定保障に対する包括的合意がどれほど具体的な合意に達し、実質的な履行に推進されるかにかかっているだろう。米朝首脳会談の実現までのように多くの紆余曲折があるだろうが、履行時間はそれほど長くはかからないものと予想される。
トランプ再選のために米政府は非核化に対する可視的成果の時点をトランプの任期満了時点の2020年に設定していて、北朝鮮もトランプの任期内に最大の成果を出そうとする可能性が大きいからだ。

半島の完全非核化求める闘争を

 米朝首脳会談直後、トランプは、韓米両国がこれまで防御的な軍事訓練と強弁した韓米合同軍事演習の実体がまさに「ウォーゲーム」であることを吐露した。そして、対話局面を維持するため、UFGを中断することにした。 これは何を物語っているのか?
すぐの非核化と朝鮮半島の平和と韓米同盟は併存することができないということだ。韓米両国はUFGを中断すると言ったが、これだけで問題が解決するわけではない。核戦略資産が朝鮮半島への展開を中断しても米国はグァムや日本基地から30分あれば核兵器を朝鮮半島に持ってくることができる。また、通例的な韓米連合訓練を続けていくだろう。
つまり、米国の韓国に対する核の傘まで除去する完全な意味の朝鮮半島の非核化が行われなければ朝鮮半島に平和はもたらされない。
やはり、在韓米軍の韓半島駐留が続く限り、完全な朝鮮半島の平和は来ることができない。米議会は、在韓米軍の兵力を6月22日2万2000人に制限し、それ以下に兵力を削減しようとする時は米議会の同意を得るようにする「2019会計年度米国防守権法」を通過させた。
在韓米軍問題が米朝交渉の対象にならないように先に措置を取って、在韓米軍を梃にした韓米同盟および対東北アジア覇権戦略を維持するという考えだ。
ところが、米朝敵対関係、南北敵対関係が解消されれば在韓米軍は存在する必要がない。 対北朝鮮抑制を名分にした韓米同盟が維持される必要がない。したがって、韓国は北朝鮮の核廃棄を越えて米国の核の傘までなくす韓半島の完全非核化、サード配置の撤回、在韓米軍の撤退を含めた韓米同盟廃棄闘争に乗り出さなければならない。
社会変革労働者党 変革政治68号より。

2018全国労働者大会

下半期総力闘争10万人で決議

最賃改悪法と非正規職の撤廃へ

 文在寅(ムン・ジェイン)政府スタート後、最大規模の労働者集会が開かれた。10万人近く集まった労働者たちは「非正規職撤廃」と「最低賃金改悪法の廃棄」を掲げて下半期のゼネストと総力闘争を宣言した。
 6月30日午後3時前民主労働組合総連盟(民主労総)はソウル光化門(クァンファムン)広場で「2018非正規職撤廃、全国労働者大会」を開催した。
 彼らは▲最低賃金削減法の廃棄▲非正規職のない職場▲差別のない同一賃金▲実質的な財閥改革などを叫びながら下半期の全面スト、総力闘争を決議した。
 同日の集会には全国各地から上京バス900台あまりに乗って集まった労働者10万人(主催側推算)が参加した。光化門前の三叉路から世宗(セジョン)大路の交差点まで、光化門広場を労働者の隊伍が埋め尽くした。
 彼らは「非正規職撤廃」、「最低賃金削減法の廃棄」、「詐欺するな文在寅政府」などの文字が書かれたプラカードを持った。「最低賃金改悪廃棄」と書かれた垂れ幕が大型アドバルーンにかかって空中にたなびいていた。労働者たちは「最低賃金改悪法闘争で廃止しよう」、「非正規職のない世の中闘争で勝ち取ろう」、「問題は、財閥だ財閥体制を解体しよう」などの掛け声をしきりに叫んだ。
 キム・ミョンファン民主労総委員長は「下半期のゼネストの総力闘争を宣言する」、「2000万労働者の不平等解消と労働基本権の全面拡大に向けて前進しよう」と叫んだ。キム委員長は「反民主積弊が清算され、民主主義は進展している。韓半島の恒久的平和体制入りも目前にしている」と述べながらも、「まだ韓国社会は労働者なき未完の民主主義社会」と強調した。
 彼は「労働者4分の1が勤労基準法の死角地帯に放置されていて、全体労働者の10%を超える特殊雇用労働者も憲法が保障する労働3法と社会保障の保護の外にいる」、「2000万労働者の半分に達する非正規職労働者は極限の環境に追い込まれている」と指摘した。
 さらに、キム委員長は「ろうそくの風が今文在寅政権を誕生させ、文在寅政府自ら労働政府と自任してきたため期待もあった」と述べながらも、「国会のせいにして労働基本権拡大の約束を履行しない政府がどうして労働尊重政府か」と尋ねた。
 彼は「最低賃金を削減して制度の改悪の刀の柄まで使用者に握られる政府を労働尊重政府だとは言えない」、「子会社に無期契約職雇用、賃金差別型職務成果給制の導入など『でたらめな非正規職ゼロ』政策などでは労働尊重、政府と呼ばれる資格がない」と強調した。
 そして、「再びろうそくになって社会改革の車輪を転がしたい」、「漂流して後退する文在寅労働政策を越えてろうそくの抗争で始めた真の社会大改革を自ら完成させる」と力を込めた。
朴錦子(キム・クムジャ)、全国民主労働組合総連盟のサービス連盟、全国の学校非正規職労組委員長は「最低賃金1万ウォンの社会的合意が破棄された」と責任を問うた。彼は「政権与党の洪永杓(ホン・ヨンピョ)院内代表は年間所得2500万ウォン未満労働者は最低賃金法改悪の被害がないと、被害があれば院内代表から辞任すると言った」、「私が被害者だ。17万校にいる非正規職労働者が被害者だ」と指摘した。
 さらに、「我々の通帳に入る給料が毎月19万ウォンずつ少なくした」、「すぐに最低賃金改悪法を廃止し、洪院内代表は責任を持って辞退せよ」と要求した。
 金星煥(キム・ソンファン)民主労総、民主一般連盟全国民主連合労組委員長は「最低賃金の改悪と職務給制の導入は労働者の賃金を下方平準化させる作業」と批判した。彼は「文在寅政府は、非正規職の正規職化という名目の下で、最低賃金を基準にすべての労働者にも等級をかけようとする」、「(このままなら)正規社員転換者たちは20年働こうが30年働いても最低賃金の近くで抜け出せなくなる」と話した。
 さらに、彼は「職務級制は、現代版奴隷制であり身分制だ」と言い「公共部門で開始されるが、民間に拡大することも火を見るより明らかだ」と懸念した。
 ナムチョンス民主労総スポークパーソンは「民主労総の組合員の10分の1近く参加することになった背景は、文在寅政府と与党の労働政策が相次ぐ労働法改悪と財閥と資本偏向労働政策に180度方向転換し、労働尊重の社会の基調が空しいスローガンに転落し、現場の労働者たちの怒りが爆発した結果」と話した。
 彼は「民主労総は最低賃金改悪法の廃棄、きちんとした非正規職の正規職転換、財閥の弊害の清算と財閥体制の解体、すべての労働者の労組権利保障を明確に要求する」と明らかにした。
 同日の集会の主要要求事項は▲公共部門の非正規職労働者の差別のない正規職化▲民間部門の不法派遣の撤廃▲最低賃金改悪と賃金の改悪の中止▲標準の賃金体系廃棄▲、元請業者と下請不公正取引や不正な請負根絶▲不平等、両極化の主犯財閥体制の解体▲ILOの中核協約即時批准などだ。
 本大会は幹部の主要発言以後に闘争宣布式をもって終了した。キム・ミョンファン委員長をはじめ、公共運輸労組、公務員労組、金属労組など16の各加盟組織の代表者たちが舞台に上がって決議文を朗読した。キム委員長は「民主労総はこれから各産別労組とともに世の中を変えるゼネスト総力闘争を作っていく」と声を張り上げた。
 集会を終えた労働者たちは、大統領府の前青雲孝子洞住民センター、三清洞(チョンログ・サムチョンドン)首相公邸、安国(アングク)駅交差点などに向かって行進したこの日、本大会に先立ち、民主労総傘下の14団体はソウルの都心各地で事前集会を開いた。
 午後1時から全国の学校の非正規職労組がソウル広場で、公共運輸労組が光化門(クァンファムン)北側広場で集会を開いた。金属労組は瑞草区(ソチョグ)三星本館前で、公務員労組は、中区(チュング)のファイナンスセンターの前で集会をした。彼らは事前集会を終えて本大会に合流した。

朝鮮半島通信

▲朝鮮中央通信は7月10日、金正恩朝鮮労働党委員長が両江道三池淵郡の建設現場やジャガイモ農場などを現地指導したと報道。日時は不明。
▲航空機の航路を追跡するウェブサイト「フライトレーダー24」によると、金正恩朝鮮労働党委員長の専用機「チャムメ1号」が7月9日、ロシアのウラジオストクまで飛行し、朝鮮に戻った。
▲韓国政府は7月10日、8月の米韓合同軍事演習にあわせて行われる予定であった韓国軍主体の有事対応訓練「乙支(ウルチ)演習」を中止すると発表した。
▲韓国の大田で開催される卓球のワールドツアーの韓国オープンに参加する朝鮮選手団が15日、空路で韓国入りした。朝鮮選手の韓国オープン参加は、今回が初めて。
▲平壌で7月4〜5日に開催された南北統一バスケットボール大会に参加する韓国の選手団や政府代表団など101人が7月3日、軍用輸送機で訪朝した。バスケの南北親善大会は2003年に平壌で行われて以来、15年ぶり。大会に金正恩朝鮮労働党委員長は欠席した。


もどる

Back