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    かけはし2018年7月9日号

「働き方改革」法案強行採決糾弾


「残業代ゼロ」許さない

絶対にあきらめない 必ず廃止実現を 安倍政権打倒 


過労死遺族の
声に応えよう
 六月二八日、安倍政権の詐欺政治を象徴し、労働者の命すら危険にさらす「働き方改革」一括法案が、立憲民主、共産、自由・社民の徹底審議要求をはねつけ、国会前につめかけた多くの労働者市民の激しい抗議が響く中、安倍政権と与党により採決が強行された。同法案は翌二九日、まさに一年前娘の美和さんの命を奪われた佐戸恵美子さん、わざわざ安倍から官邸に招かれ過労死を亡くすとの白々しい決意を伝えられた高橋まつりさんの母親の幸美さんなど、過労死遺族が悔しさと悲しみを抑えて見守る中、力ずくで採択された。賛成は自民、公明、維新、希望の四党。
 この法案が労働者に何を引き起こすことになるのかへの責任を投げ捨てた、また徹底審議を拒否しその結果への関心すら見えないようなこの暴挙を、決して許すわけにはいかない。安倍政権とそれを後押しした先の四党には必ず責任をとらせなければならない。
 同時に、長時間残業の規制にも非正規労働者の差別是正にもほとんど実効性が期待できない一方、残業代ゼロをはじめ猛毒だらけのこの危険な法は、必ず廃止させなければならない。労政審や職場を含めた多種多様な抵抗でこの法の実効化を阻止すると共に、一刻も早い廃止を要求する幅広い共同の運動を直ちにつくり出そう。まさに過労死遺族は六月二九日記者会見を開きその決意を明らかにした。そして六月二八日夕刻、参院議員会館前で抗議の声をあげた労働者市民も、採決強行の暴挙を見守った過労死遺族、さらに野党各党の議員多数と共に、今この時から連続的に廃止に向け決起することを共通の決意とした。

時間無制限で
企業の拘束下に
特に、労働時間規制がまったくない労働者をつくり出す残業代ゼロ、高プロ導入は、必ず過労死の増加に行き着く非道性だけではなく、審議の過程で、この法案のうたい文句とされた「労働者の目線に立った改革」どころか、経営者のためのものであることが安倍自身によって明らかにされ、本当の狙いが労働時間規制解体への蟻の一穴であることが明け透けになっている。
労働時間規制は、労働者にとってまさに生命線と言うべき基軸中の基軸である規制だ。この規制に穴を開けることは、労働者が時間無制限に使用者の拘束下に置かれることを意味し、賃金労働を奴隷労働に変えることにほかならず、絶対に許すことのできないことだ。ILO条約の第一号が八時間労働制であることに、この規制の決定的重要性は明瞭に示されている。
そして、さまざまな理由を付けてILO一号条約の批准を今もって拒否している自民党政権と日本の経営者は、まさに労働時間規制への一貫した敵意を示しているのだ。高プロ導入は紛れもなくその延長上にあり、高プロ適用対象の職種規定、年収規定を省令に委ねその拡大に道を開いていることを含めて、その行き着く先は自ずから明らかだ。この制度の一刻も早い廃止は、特に労働者運動が絶対に達成しなければならない課題として提起されている。
そしてその観点から言えば、この法案に対決する大衆行動を何一つ組織しようとせず、あたかも労働者が同意しているかのように語った安倍の言い分になにがしかの根拠を与えた連合の姿勢には厳しい批判が必要だ。この姿勢は連合が労働組合であることを自ら投げ捨てていることに等しく、その傘下団体には、今後のあり方の見直しを真剣に考えることが求められている。

はぐらかしと
嘘だらけの答弁
そしてあらためて安倍政権打倒が待ったなしの課題だ。この法案はそこに掲げられた目的自体が最初から詐欺と言えるものだったが、データでっち上げから「ご飯論議」などと言われたはぐらかし強弁答弁にいたるまで、その詐欺的性格は審議を重ねるほどにあらわになった。しかも答弁が日によって変わったり、大臣答弁と厚労省事務方答弁が食い違ったり、法案としての事前検討自体がおざなりだったこともあらわにされた。
共産党の調査によれば、何と九〇項目もが政省令に委ねられているという。それは行政符が立法府の立法権を無視しているに等しく、本来なら法案として体をなしていないのであり、差し戻すしかないものだった。法案のこのデタラメさは、与党自体、四七項目もの付帯決議に同意せざるを得ないという前代未聞の事態をも生み出した。
にもかかわらずこの事態を承知の上で法案の採択が強行された。おそらくその背後には、この法案を今国会の最重要法案と位置づけた安倍の面子と求心力を守る、という配慮が働いていたのだと思われる。しかしそれは、人びとには関係のない勝手な都合でしかない。

不信・怒りを
行動で示そう
こうしてこの法案審議は、データ偽装や法案の生煮え的曖昧さもチェックできなかった労政審、特にその公益委員のだらしなさを、ついでに言えばことあるごとに自慢げに語られる自民党内法案事前審査のいい加減さの暴露も含め、安倍の下で日本の政治機構全体に進む恐るべき退廃をもあぶり出した。
この法案審議は、安倍政権の打倒を何よりも重要な課題としてあらためて具体的に照らし出したのだ。そしてそれ故にこそ、審議最終盤になって採決容認を決めた国民民主党には厳しい批判が必要だ。どのような理由を付けようが、抵抗し闘うべき時に尻込みする勢力は、米国の民主党や、欧州の中道左派政党がはっきり示すように、民衆から見放される運命にある、時代はそのように転換しようとしている、ということを彼らははっきり知らなければならない。そして安倍政権の姿は、それが徹底した闘いの対象であることを見間違いようもないほどに明らかにしているのだ。
四七項目という前例のない付帯決議は、それに対する恐れがおそらく与党内部にも兆していることを示している。今こそ多くの人びとの安倍に対する不信を行動として突き出し、その力で野党の共闘を再度押し上げ、安倍打倒のうねりを作り出そう。残業代ゼロ廃止、「働き方改革」一括法案廃止の運動をその重要な一翼として作り上げよう。(神谷)  



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