もどる

    かけはし2018年5月14日号

米朝間対話の決定 次は何か?


揺れ動く韓半島情勢

ぺ・ソンイン(ハンシン大学) ソウル 

 多くの人たちの予想をあざ笑うようにこの数カ月の間金正恩委員長の行動は驚嘆そのものだった。金正恩委員長はなぜ南北首脳会談と米朝首脳会談に積極的で、先制的に非核化を公言したのだろうか。金日成(キム・イルソン)主席の遺訓が韓半島非核化だというのはいつも繰り返される常識的な理由であるため、決定的ではない。これを後押ししてくれる動機が必要である。

正常国家に向けた北朝鮮の選択

 北朝鮮が国際社会の強力な経済制裁にこれ以上耐えられず南北関係の改善を通じて突破口を用意しようと乗り出したという分析がある。対北朝鮮制裁の実効性が中国とロシアの参加が前提とされなければならないためにその実効性については確認が必要である。
国連安保理の3つの対北朝鮮制裁と最近の追加制裁で北朝鮮の輸出が遮断されるなど貿易が難しいのは事実だ。原油の輸入が厳しくなったのも事実だ。しかし、これは北朝鮮にとって全く新しくはない現実だ。
2017年後半から2018年1月まで制裁の効果を推し量る2つの指標である北朝鮮のコメ価格と為替相場は安定的に維持されている。原油の輸入が禁止されて原油価格が非常に大きく上昇したが、為替相場と穀物価格の安定は、北朝鮮経済の弾力性を示す重要な証拠だ。国際社会の対北朝鮮制裁は、輸出主導型ではなく、自立主導型の北朝鮮、そして、これまで制裁に対抗して適応力が強くなった北朝鮮を対象としているということを見過ごしてはならない。
トランプ行政部で提起されている対北朝鮮先制打撃に対する恐怖で南北関係の改善を通じて米国の軍事行動を防ぎたいという解釈もある。しかし、北朝鮮を相手にした「鼻血戦略(bloody nose strike制限的先制打撃)」はまだ完成された戦略ではない上、その方式や効果について総じて批判的な意見が多い。
北朝鮮が戦争拡大を恐れて、仕返しをできないという一握りの意見もあるが、北朝鮮の核開発と北米関係の歴史を考えれば報復手段と方法は多様であるために全く妥当しない判断だ。問題はこの戦略が公開されたことで、北朝鮮の対応が新たになりそれが2018年に入って韓半島情勢を揺るがした。
最も説得力のある解釈は、北朝鮮が自ら設定した戦略的なタイムテーブルによるものという分析だ。金正恩委員長の決断は「核兵器保有国家」としての自信があったと見ることができる。金正恩委員長は北朝鮮住民らに核兵器開発を基にして体制保障とともに、生活環境を改善するという意志を見せようとするだろう。どうせ非核化問題は短期間で決まる問題ではなく険しい交渉過程を経なければならないためにこれまで内部的に安定的かつ着実な準備をする時間を持つことができる。
その時間に経済的問題の解決と核兵器を高度化させる余地が発生することになる。これは、今年初めに発表した北朝鮮の共同社説で明らかにした内容を日程によって実践する過程として見れば理解される部分だ。
実際に金正恩政権の南北関係改善の意志表明は、対北朝鮮経済制裁や先制攻撃論が登場する以前から現れた。2016年5月の第7回労働党大会の時すでに金正恩総書記が党大会決定書を通じて、「現時期切迫に乗り出す問題は、南北関係を根本的に改善することだ」という立場を明らかにした。
また、2016年7月には共和国政府声明を通じて、韓国内の在韓米軍の核兵器の公開と撤廃及び検証、核使用権を握った在韓米軍の撤収など5大条件を提起し、韓半島非核化に言及した。この時点は、中国の対北朝鮮制裁の参加が本格化された2016年11月、国連安保理決議2321号や米国の対北朝鮮軍事行動論が登場した2017年8月より先立つ時だ。
つまり金正恩委員長の決断は、急なのではなく、この2012年に政権を獲得してから非核化と体制安全保障を交換して正常国家に進むための過程なのだ。そして自分が立てた「戦略的なタイムテーブル」によって動いてきたのだ。

トランプにも積極的になる理由


トランプが米朝首脳会談を受け入れた過程を見れば、トランプ行政部発足後、復元されたものとされる「ニューヨークチャンネル」を通じて2017年からチェ・ソンヒ局長などと米朝対話が行われていたためそれほど驚くことではない。これは、ティラーソン米国務長官が2017年9月末、中国訪問当時、北朝鮮と2つから3つの対話チャンネルを念頭に置いているということを確認してくれたし、チェ・ソンヒ北朝鮮外務省北米局長の発言を通じて確認した。チェ・ソンヒ局長が最近、外務次官に昇進したという記事が出たのを見れば、米朝対話チャンネルの実務陣の割合が双方高まったことを知ることができる。
今回の過程でトランプの政治スタイルがもう一度確認されたのだが、それはティラーソン国務長官とマックマスター補佐官の更迭だ。これはティラーソンとの対立が非常に大きかったという反証とともにトランプの独善的で自己中心的なスタイルを確認してくれる部分だ。トランプは自分の話をよく聞く側近が必要であり、小言が多いとか異議を提起する側近は不要であった。
金正恩がティラーソンと対話する機会が多いにもかかわらず、あえて会話する必要がなかったのは彼の能力とは別にトランプと直接対話を通じて直談判しないと、すべての交渉が無駄になることがありうるためだ。
ティラーソンの後任であるポンペオは米朝対話を水面下で指揮して実現させた人物だ。したがって、彼を実務単位でさらに信頼するきっかけとなって事業家出身のトランプには自分とコードを合わせることができる側近として親政体制を再構成するきっかけにしたのだ。
このような背景にはトランプが、米国内の不安な立地を挽回し、中間選挙を有利に引っ張って行きたい欲とともに2020年再選まで考慮した決定だと見ることができる。トランプが再選に北朝鮮の核問題を活用するためには、2020年初めまでは、非核化に対する具体的な計画が合意されて出ていなければならない。時期的に今が適切だ。

米朝間対決構造は予測不可能


北朝鮮が米国を攻撃できる能力を完全に立証したわけではないが、北朝鮮の核問題を扱う国際的メカニズムは、このような北朝鮮の「政治的宣言」によって変わるしかない。国家戦略も当然変わらなければならない。
トランプが提示したCVID、つまり完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄の非核化は現実的に可能ではない。北朝鮮が2017年11月完全な核保有国になったと宣言したが、米国が少なくとも韓国に対する米国の核の傘の撤回と同等な措置を取っていない以上放棄することはできないだろう。代わりにICBM試験中止と核施設の閉鎖などの可視的な措置は可能だ。したがって、CVIDは、北朝鮮側としては相当な保障なしには、到底受け入れられない条件だ。
米朝首脳会談で北朝鮮の核問題を妥結しても北米関係正常化につながる経路は別問題だ。トランプが再選に成功した後、北朝鮮との約束を遵守しない可能性が濃厚なためだ。北朝鮮核問題の妥結までは米国の国益に役立つだろうが、米朝関係正常化は役立たないためだ。
米朝間の再対決構図は予測不可能だ。順調に出発するとしても周辺に根付いている変数があまりにも多くていつ座礁するかもしれない。北朝鮮としては米帝国主義との対決になるだろう。米国の世界覇権戦略が北朝鮮の「核拡散の可能性」に亀裂を入れる余地が多い。もうボールは米国に渡された。
北朝鮮米国間の対話が失敗に終わった場合、戦争の「予兆」と誤って解釈される可能性がある。最も大きな危険はトランプが望むものを得なかった状況だ。これは戦争に向かう前提条件を形成する可能性がある。果たしてトランプは何を選択するのか?(「変革政治」63号、社会変革労働者党)

【訂正】前号(4月30日付)3面、4・14国会前集会記事中上から4段目左から1行目「立教大学特任教授」を「立教大学大学院特任教授」に、コラム「架橋」上から4段目右から1行目の「驚異」を「脅威」へ訂正します。

民主労総、労働者平和統一の集い開催

南北労働者代表者会議の開催を

 南北首脳会談を1週間後に控え、民主労総が4月21日、光化門広場北側広場で、労働者たちの要求を広場で直接話す「労働者平和統一の集い」を開催した。
 民主労総は「労働者平和統一の集い」を通じて首脳会談が韓半島の平和と統一をもたらす重要な契機になることを期待し、今後、民間交流の重要性と平和統一に向けて、労働者の役割を語り、平和と統一を実現するための様々な文化公演を続けた。民主労総加盟傘下の統一委院長らが舞台に上がって「青年が出会う労働者の平和統一」トークショーが行われた。出席者らは、南北労働者統一サッカー、6・15共同授業、大陸鉄道などのテーマで話を交わした。
 2018年の南北労働者統一サッカーの実現を決意し、今年も相変わらず6・15共同授業を計画して進めている教師たちと今後の統一交流事業について意見を交わした。ともに、鉄道労働者らと大陸鉄道に対する話を交わして労働者たちが、和平鉄道の構築に向けて何を最も優先的に準備するのかについて話を交わした。
 分断時代の積弊の歴史問題の解決にも労働者たちの役割を話した。強制徴用労働者像建設を通じた日帝植民地の歴史をきちんと究明すること、北東アジアの平和を深刻に脅かすサードを撤去することにも労働者が先頭に立つと決議した。
 民主労総釜山本部統一実践団は「チリンリン」を改詞した曲に合わせてダンスを、サード配置で「失われた春」を生きているソソンリ住民たちの闘争も映像で上映された。今日ソソンリでは「韓半島に春が来る! サードを抜いて平和を植えよう! 第7次ソソンリ汎国民平和行動」が開かれた。
 金明煥(キム・ミョンファン)民主労総委員長はあいさつを通じて「南北、米朝首脳たちが『終戦宣言』、『平和協定締結』の知恵を集めているというニュースが聞こえてきている。平和より優先されるものは何もない。 韓国労働者たちも『韓半島平和協定締結』に向け、主人になった姿勢であらゆる努力を尽くさなければならない」と話した。
 さらに、「われわれ労働者たちは73年分断の歳月の間、積もった不信と反目の傷ついた心たちを洗い出すために努力しなければならない。このため、『南北労働者代表者会』の開催も急いでいる」と伝えて、「数多くの分断の積弊、戦争の積弊を労働者の力で取り除こう」と声を高めた。
 民主労総は「平和協定を締結しよう」、「祖国統一を実現しよう」、「自主交流拡大をしよう」「南北労働者代表者会を実現しよう」と叫んだ。「労働者平和統一の集い」に続いて「和解と平和の春」組織委員会が「首脳会談の成功開催、平和と和解・協力実現の国民の集いろうそく平和の春を呼ぶ」を開催した。
 「和解と平和の春」組織委員会は先月10日、11年ぶりに開かれる南北首脳会談を歓迎するため、市民、社会、宗教など、各界各層の団体と個人が集まって発足記者会見を開いて出帆した。
 放送人のキム・ミファさんの詩の朗読、訪朝芸術団の平壌公演出演歌手のチェ・ジンヒさんの公演が続いて、平昌の雪 子供合唱団公演や演劇、コント「オッケドンムネ トンム」などの文化公演が行われた。また、行事会場の周辺に李ジンソク作家の統一の絵画展、似顔絵を描くこと、大型の単一旗への訴願などのイベントが運営された。(「労働と世界」より)

朝鮮半島通信

▲金正恩朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅大統領は4月27日、板門店の韓国側施設「平和の家」で首脳会談を行い、「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」に合意・署名した。朝鮮の最高指導者が軍事境界線を越えるのは1953年に朝鮮戦争が停戦されて以来初めて。
▲「国家情報院による特殊活動費上納事件」の初公判が4月24日、行われた。公判には朴槿恵前大統領は出廷しなかった。
▲韓国の財閥韓進グループ会長で大韓航空の会長兼CEOである趙亮鎬氏は4月22日、次女趙顕?氏をグループ内の全役職から退任させることを明らかにした。また長女の顕娥氏もKALホテルネットワーク社の社長から退任させるとした。
▲朝鮮中央通信は5月4日、金正恩朝鮮労働党委員長が3日に中国の王毅国務委員兼外相と会談したと報じた。
▲朝鮮は5月5日、標準時を30分早め、韓国と同じ標準時に統一した。
▲韓国軍は5月1日、軍事境界線付近で行っていた宣伝放送に使う拡声器の撤去を始めた。
▲収賄などの罪に問われた韓国の李明博元大統領の初公判となる公判準備手続きが5月3日、ソウル中央地裁で開かれ、弁護人は起訴内容の大部分を否認した。李明博氏自身は出廷しなかった。
▲大韓航空の趙顕?前専務が今年3月にパワハラ行為をした疑惑について、ソウル南部地検は5月4日、警察の逮捕状請求を棄却した。




もどる

Back