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    かけはし2018年5月14日号

改憲阻止へ安倍政権を倒せ


5・3憲法集会に6万人

「平和といのちと人権」掲げて

労働者・市民運動の共同と攻勢へ

私たちの力で倒そう

 五月三日、東京・江東区の有明公園で「9条改憲NO 平和といのちと人権を! 5・3憲法集会」が開催された。心配された雨もあがり、さわやかな天候の中で六万人(主催者発表)が安倍改憲NO!の声を上げた。
 主催者を代表して発言した高田健さんは、「安倍政権は自然に倒れることはない。私たちの手で倒そう」と呼びかけた。
 学者や市民のリレートークと共に、立憲民主党の枝野幸男代表、民進党の大塚耕平代表。共産党の志位和夫委員長、社民党の又市征治党首が、壇上であいさつした。沖縄から平和運動センター議長の山城博治さんも力強く連帯のあいさつ。
 集会の後、晴れた五月の空の下、安倍改憲を許すな!とデモ行進に出発した。

破綻する改憲プログラム

昨年五月三日、極右改憲団体である「日本会議」系の集会にビデオメッセージを送った安倍首相は、東京五輪の年である二〇二〇年を「新しい憲法が施行される年にしたい、と強く願っています。私はこうした形で国の未来を切り拓いていきたいと考えています」と述べた。
このビデオメッセージの内容は、五月三日当日の「読売新聞」に掲載された安倍首相のインタビューでも述べられた。安倍は国会での答弁で「私の考えは、『読売』に掲載された私の発言を熟読してほしい」と語った。
「二〇二〇年の新憲法施行」、「九条一項、二項はそのままにした上で、三項として自衛隊を明記する」という改憲プログラムが、安倍首相本人の口からハッキリと宣言されるにいたったのである。この内容は「日本会議」のイデオローグの一人であり「生長の家」出身の伊藤哲夫が、『明日への選択』二〇一六年九月号に掲載したものと内容的には全く同一である。すなわち一項・二項を形式上は維持して反発をかわしながら、三項に自衛隊を明記することで事実上一・二項を空文化するという手の込んだ仕掛けだった。
しかしこのあからさまなペテン的手法は、護憲派からだけではなく自民党内からも多くの批判・反発を呼んだ。今年三月二五日に開催された自民党大会は、いわゆる改憲四項目(自衛隊の明記、緊急事態の規定、合区解消、教育「無償化」関連)については確認したものの、その条文内容については全く論議されなかった。そして、昨年に打ち出された「二〇二〇年新憲法施行」というアドバルーンは表面的には消えてしまったのである。

定まらぬ改憲項目


今年、五月三日の「日本会議」系集会にも、安倍首相は昨年と同様、ビデオメッセージを送った。
その内容を紹介しよう。
「憲法はこの国のかたち、理想の姿を示すものです。二一世紀の日本の理想の姿を私たち自身の手で描くという精神こそ、日本の未来を切り開いていくことにつながっていくと信じております」。「私たちは時代の節目にあって、まさにどのような国づくりを進めていくのかという議論を深めるべきときに来ていると思います」。
この憲法観(憲法とは国の理想の姿を示すもの)が、少なくとも「圧政に抗する個人の権利の尊重と保障」を基軸に据えた「近代立憲主義」の原理を履き違えるものであることは明らかだが、それは安倍にとって全く意に介する必要がない話のようなので、これ以上は語らない。
安倍は今年のメッセージの中で、「四項目(@自衛隊、A統治機構のあり方と緊急事態、B一票の格差と地域の民意が問われる『合区解消、地方公共団体』、C国家百年の計たる「教育充実」)について大変議論が深まってまいりました」と述べている。
しかしその内実はどうか。昨年の改憲メッセージでは、二〇二〇年の「東京五輪」を「新しい憲法」で迎える、と明言していた。そして自民党のスケジュールではさる三月の自民党大会で改憲四項目の条文案を確定するはずだった。しかしそれは先送りになったのである。
自民党大会で具体的な「党」としての改憲案が先送りにされたことにより、二〇二〇年に「新憲法施行」という目標に大きな齟齬が生じている。その結果、今年の改憲派5・3憲法集会に安倍首相が送ったメッセージにも「二〇二〇年新憲法施行」の言葉は消えてしまった。

相変わらずのイメージ操作


しかし安倍の自民党大会での演説、そして五月三日の改憲派集会に送ったメッセージに共通している内容が一つある。
それは防衛大学校の卒業式に出席した安倍が受けた「感動」表明である。
「私は毎年、防衛大学校の卒業式に出席し、陸海空の真新しい制服に身を包んだ任官したばかりの自衛官たちから、『事に臨んで危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託に応える』、この重い宣誓を最高指揮官、内閣総理大臣として受けております。そうです。彼らは国民を守るために、その命をかける。しかし残念ながら近年においても『自衛隊は合憲』と言い切る憲法学者は2割にとどまり、違憲論争が存在します。その結果、多くの教科書に合憲性に議論がある旨の記述があり、自衛官たちの子供たちもその教科書で勉強しなければなりません。皆さん、この状況のままでよいでしょうか」。
「この状況に終止符を打つため、憲法に、わが国の独立と平和を守る自衛隊をしっかりと明記し、違憲論争に終止符を打たなければならない。それこそが、今を生きる私たち政治家の、そして、自民党の責任です。敢然とその責任を果たし、新しい時代を切り開いていこうではありませんか」。
「いよいよ、私たちが憲法改正に取り組むときが来ました。主役は国民の皆さまです。憲法改正は国民の代表者たる国会議員が議論し、草案を作り発議する。そして最終的に国民投票によって国民の皆さまが憲法改正を決定する。憲法改正を成し遂げるためには、国民の皆さまのご理解、幅広い合意形成が必要です。その意味で、このフォーラムが果たす役割が極めて大きいと思います。皆さま方『民間憲法臨調』・『美しい日本の憲法をつくる国民の会』のこうした取り組みを大変心強く感じています」。
防衛大学校卒業式での、新任自衛官たちによる「命を懸ける」という決意表明に感動したことで改憲への思いを新たにする、という安倍の言葉は、「九条」をめぐる論戦を徹底的に回避したいという「思い」と「焦り」の表現ではないだろうか。

怒りを行動へ


「二〇二〇年改憲」へのプログラムが、自民党大会でも、「改憲派」5・3集会へのメッセージでも正面から掲げられなくなったという事実は、二〇一八年秋の臨時国会での改憲発議、二〇一九年改憲国民投票、二〇二〇年東京五輪を「新憲法」で、という安倍政権が描いていたタイムスケジュールを安倍本人が放棄したことを意味しない。ただしその際、二〇一九年四月末の退位、同五月一日の新天皇の即位という確定的となった「代替わり」式典との関係で、改憲「国民投票」のスケジュールをダブらせることには安倍政権としても慎重とならざるを得ないだろう。この中でわれわれは「改憲反対」「天皇代替わり式典反対」の訴えを結びつけてアピールしていく必要がある。
在任中の改憲を至上命題としている安倍政権は、いま多くの難関に直面している。言うまでもなく安倍首相夫妻との密接な個人的関係をベースにした「森友・加計」問題にかかわる財務省による公文書偽造や偽証、そして現役財務次官によるセクハラ犯罪、さらには自衛隊のイラク、南スーダン派兵に関わる「日報」隠蔽の露呈など、あらゆる分野で安倍政権の下で民主主義の根幹をむしばむ犯罪的行為の数々が露呈している。
五月二日の「朝日新聞」世論調査では安倍政権の下での改憲に反対する意見が五八%に達し(昨年は五〇%)、賛成の三〇%(昨年は三八%)を大きく上回った。九条一項、二項を維持して自衛隊の存在を明記する安倍首相が示唆した改憲案については反対が五三%に対し賛成は三九%にとどまった。とりわけ無党派層の間では安倍改憲賛成が二〇%なのに対し、反対は六七%に達した。
こうして安倍改憲への批判は、「森友・加計」問題での安倍首相・首相夫人の関与があからさまになるにつれて、拡大の傾向を示している。さらに財務省トップの福田淳一前事務次官の新聞記者へのセクハラ問題も、「沈黙」や「敵意」の壁に抗し、勇気をもって発信する女性やLGBTの人びとへの共感を生み出している。
「安倍一強」の厚い壁は、いま明らかに決壊しつつある。今こそ安倍九条改憲反対、朝鮮半島の平和と人権を、原発再稼働反対、STOP!「働き方改革」の訴えを軸に、安倍政権打倒の民衆的共同戦線を築き上げよう!       (純)



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