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    かけはし2018年4月30日号

米朝会談取りまく思惑と緊張


トランプ・安倍会談が示したもの

米中日の錯綜する関係


トランプへの
「お願いごと」

 朝鮮半島をめぐる事態から完全に「蚊帳の外」に置かれてきた安倍政権にとっては、四月二七日の南北首脳会談を前にして日米首脳会談を行って、トランプへの「お願いごと」を確認させる必要があった。
 そのひとつは「拉致被害者の帰国に向けて最大限の努力をしてもらう」ことだ。そしてもうひとつは、米国を射程に入れるICBMだけではなくて「日本を射程とする中・短距離ミサイルの発射中止と廃棄も求めてもらう」ことだ。トランプは安倍のこうした「お願い」に対して、鉄鋼・アルミの輸入制限からの除外、日米二国間貿易協定(FTA)合意といった通商分野で「取引」を図ろうとしたがそれは事実上失敗した。トランプはまたTPPへの復帰を否定した。
 トランプは会談のなかでポンペオCIA長官(現国務長官)を朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に極秘訪問させて、朝鮮で拘束されている三人の米国人の解放交渉が行われていることを明らかにした。さらに米朝首脳会談に関して「実りがないと思えば会談には行かない。会談に行っても実りがなければ打ち切る」ことを明言した。会談場所問題については候補が「五カ所ある」ことを明らかにした。朝鮮は平壌での開催を希望しているが、韓国大統領府は警護問題などを考えると板門店での開催が現実的ではないかと見ているようだ。
 トランプ外交のやり方は、相手を脅して譲歩を引き出そうとする「恫喝、取引外交」だ。米国大使館をエルサレムに移転すると発表したことについて、中東調査会主席研究員の中島勇は毎日新聞で次のように指摘している。トランプは自分は選挙公約を守る男だと自賛するが、米国内のイスラエル支持者向けの公約を現地情勢を考慮することなく実行したとして、「トランプの唐突な政策変更は、外交政策ではなく選挙対策だ」と。

深まる米中間
の貿易不均衡


 しかし、米中の「貿易戦争」をめぐっては、単純に「そうだ」とは言えない状況になっている。確かにトランプは中国に対する輸入規制によって、米国産業と消費者がどの程度のダメージを受けることになるのかということを考慮していないように思われる。だが米中の貿易不均衡は極めて深刻だと言わなければならない。
 米商務省が発表した一七年の物の貿易統計によると、貿易赤字は五六〇〇億ドル(六二兆円)前年比一二・一%増で、赤字国は上位から中国三七五二億ドル(赤字額に占める割合は六七%で約四一兆円)、メキシコ七一一億ドル、日本六八八億ドル、ドイツ六四三億ドルとなっている。また米国の対中貿易上位三品目は輸入(五〇五六億ドル)では、通信機器一六・四%、自動制御装置一〇%、玩具・スポーツ用品五・二%で、輸出(一三〇四億ドル)では、航空機関連一二・五%、大豆等九・五%、自動車八・一%となっている。
 米国は今年の一月に中国から輸入される太陽光パネルに対して高関税をかける輸入制限を発動した。そして鉄鋼・アルミに対する関税引き上げはその第二段目である。一七年の米国の鉄鋼輸入先は、カナダ一六・一%、ブラジル一三%、韓国一〇・二%……日本五%……中国二・二%……だ。中国の比率は少ないのだが、中国は反ダンピング関税を避けて、他国で加工して「他国製」として多くを輸出している。

南北首脳会談
に注目すべき


 米連邦通信委員会は四月一七日、中国製の通信機器に対してスパイ活動・通信妨害など安全上の脅威となりうるとして、事実上使用を禁じる規制案を承認した。この第三段目の措置の背景には、次世代移動通信システム「5G」をめぐる主導権争いがある。
 「5G」は人工知能(AI)や自動運転開発に不可欠で、安価な中国製品ということだけではなく、中国の技術が米国を脅かすほどに力をつけた。国際標準規格も中国が主導権を握りつつある。二五年には世界シェアの四〇%を中国が手にするだろうと予測されている。
 南北首脳会談と米朝首脳会談が準備されているなかで、米中間の深刻な「貿易戦争」と政治・軍事的な緊張関係が深まっている。一方では米露間の核をめぐる緊張関係も増大している。こうした情況を意識しながら、朝鮮半島の平和的な環境を作り出そうとする南北首脳会談にまずは注目する必要があるだろう。
       (高松竜二)
  
4.14

国会正門前を埋める5万人

安倍を退陣に追い込もう

噴き出す政権のウソ・悪事


腐り切った政権
今すぐ倒そう!
 森友・加計疑惑と公文書改ざん問題、防衛省のイラク日報隠し、財務省の福田事務次官のセクハラ発言など問題が次々と明らかになるなか、四月一四日、国会正門前で安倍政権の退陣を求める大行動が行われた。この日の集会は戦争させない・九条壊すな!総がかり行動実行委員会、未来のための公共、スタンドフォートゥルースの共催で実現した。そして怒れる三万人(延べ五万人)の市民が国会前を埋めつくした。
 「腐り切った安倍政権を必ず倒そう!今すぐ退陣!みんなの力で政治を変えよう!」怒りの大コールが響きわたるなか集会が始まった。総がかり行動実行委員会を代表してあいさつを行った福山真劫さんは「安倍を絶対に許さない。国家権力を私物化して政治と官僚を腐らせた。ウソと悪事があふれ出して、もう隠しきれなくなっている。それでも延命を図ろうとしている。しかし原因のすべてが安倍にある。ただちにやめてもらおう!世論は安倍の退陣を求めている」とアピールした。

すべてのウミ
を出しつくせ
続いて国会議員から発言を受ける。立憲民主党の長妻明議員は「自民党は『追及はやめて防止策をつくろう』と言ってきている。しかし問題はすべてのウミを出しつくすことだ。証人をすべて出せばすぐにでも真相は究明できる。また自衛隊の日報隠し問題はシビリアンコントロールの重大な危機だ」と発言した。
共産党の志位和夫議員は「森友問題は背後に圧力がなければできなかったことだ。加計問題は愛媛県にウソをつく動機がない。ウミは安倍首相自身だ。防衛省による日報隠し問題は、自衛隊が戦場に行っていたことを隠そうとしたのではないか。安倍が『ない』と言うものはだいたいある。市民と野党の共闘で安倍首相をやめさせよう!日本の民主主義を取り戻そう!」と訴えた。
社民党の又市征治議員は「権力は腐敗する。政治倫理もあったものではない。安倍自身がウミだ。やめてもらおう!いま必要なのは行政と政治の信頼を取り戻すことだ。ウソつき安倍内閣を一日も早く打倒しよう」と発言した。
その後リレートークが続き、セクハラ問題、改憲問題、オスプレイ配備問題、署名活動などの発言が行われた。立教大学特任教授の金子勝さんは「公文書改ざん問題は統治機構が崩壊しかねないという深刻な問題だ。自衛隊の日報隠し問題は証拠を何とでもできるようになるということで、情報を隠蔽するなどして何でもやりたいことがやれるということになる。社会の民主的な部分が破壊されるということだ。安倍は歴代の首相のなかで最悪だ」と訴えた。
その後もトークが続けられ、沿道から人々があふれ出すように国会前の道路は人で埋めつくされた。皆が皆、安倍政権に対して怒りの拳を振り上げる。今度こそ腐敗しきった安倍を退陣に追い込もう。   (R)

4.2

辺野古実が防衛省行動

「海上座り込み」の成功を

現地と連帯した4〜5月行動へ

 四月二日午後六時半から、辺野古への基地建設を許さない実行委員会が防衛省に申し入れ行動を行った。最初に、司会者が「三月三一日、新崎盛暉さん(82歳、沖縄大学元学長)が亡くなった。先生の意思を受け継いでがんばろう」と話し集会を始めた。次に5・3憲法集会の呼びかけが行われた。いつもなら、沖縄からアピールがあるが、那覇の県庁前で新基地建設反対、森友学園問題で安倍政権の責任追及と退陣を求める集会・デモが行われているので、今回はないということだった。
 ストップ埋立阻止実行委が「辺野古で埋め立て工事を行っている大成建設の新入社員に向けて宣伝を行った。そして、同じように護岸工事をしている戸田建設本社に明日抗議申し入れを行う」と発言した。ウチナンチュの島袋さんが「嘉手納基地騒音で、卒業式当日やめてくれと要望したが米軍は無視した」と報告し、基地問題が深刻なのを訴えた。
 MXテレビ問題、4・29女たちの集会が話され、辺野古実や一坪関東ブロックが今後の行動予定を明らかにした。四月二五日(水)で辺野古大浦湾への護岸工事が始まってから一年。沖縄辺野古の海では「新基地許さない4・25海上座り込み」が行われる。首都圏でも、この行動に呼応し、官邸前抗議行動午後六時半から。沖縄の元海兵隊員による性暴力殺害から2年 基地・軍隊はいらない4・29集会実行委員会、午後六時半から、全水道会館四階大会議室。5・13「辺野古新基地NO!沖縄『日本復帰』46年を問う集会」稲嶺進さん(前名護市長 オール沖縄会議共同代表)が講演、午後六時から、南大塚ホール(JR山手線大塚駅南口から五分)。防衛省申し入れはピースサイクルが行った。      (M)

コラム

ありふれた悪事

 通販で韓国映画「ありふれた悪事」のDVDを購入した。「その国で普通の人≠ヘ正義に殺される」というキャッチフレーズが付けられたその映画は、全斗煥軍事独裁政権末期一九八○年代のソウルを舞台に繰り広げられる社会派サスペンス。昨年、たまたま映評を見て、ぜひ観たいと思ったが上映期間がなんとも短く、新宿と大阪が会場とあって図らずもその機会を逸してしまったのだ。
 モスクワ国際映画祭で「主演男優賞と最優秀アジア映画賞」の二冠を獲得したというだけのことあって、121分という長尺にも関わらず、中だるみを感じさせることなく濃密なストーリーを堪能できた。粗筋はこうだ。
 国民による民主化闘争の激化に伴い不安定な政情が続く中、政府と情報機関である国家安全企画部は、その耳目をそらせるために連続殺人事件をでっち上げる。その手先に利用されたのが正義感あふれる平凡なカン刑事。彼には、耳が不自由な妻と足が不自由な息子がいた。その弱みにつけ込んだ国家安全企画部は、金や車、息子の治療といった報酬をちらつかせ、別件で逮捕している無実の青年が犯人であるとの極秘資料を渡し捜査を命じるのだ。しかし、裏付け捜査をすればするほど犯人の可能性は少なくなる。
 また、親友の新聞記者チュもねつ造であると断じ、手を引くように諭すが、状況はすでに泥沼化し身動きができないほど、国家の陰謀によってがんじがらめにされていく。そして、その陰謀を暴こうとしたチュは、国家安全企画部に逮捕され凄惨な拷問によって殺される。
 この映画を観て思ったことは、モチーフこそ違うが現在の日本が置かれている政治状況とまさに酷似しているということだ。憲法改悪を頂点とし、森友学園、加計学園問題をはじめ沖縄、福島第一発電所放射能汚染放置など安倍政権が日常的に垂れ流している政治は、国民に対する「ありふれた悪事」であり、民主主義に対する拷問的行為と断罪せねばなるまい。朝鮮の驚異や中国の軍事力強化を口実に国民の耳目を欺き強行採決した安保法制や共謀罪はその最たるものである。加計学園の選考過程に異議を唱えた文科省前川事務次官を貶めるために行った新聞リークなど政府は、自らの保身のために手段を選ばないということだ。
 また、佐川元国税庁長官や柳瀬元首相秘書官による国会虚偽答弁も、なにがしかの見返りに応えるがための作為的行動であるとしか思えまい。さらには、セクハラ疑惑が報道された財務省のナンバー2の福田事務次官は、辞任するのかと見ていれば厚顔無恥にもそれを否定し、名誉毀損で『週刊新潮』への提訴を考えているとコメントを出しているから呆れてしまう。しかし、恥ずかしいかなこれが日本の姿なのだ。
 もはや国民の怒りは沸点に達している。安倍政権べったりの日本テレビでさえ、政権支持率三〇%割れを報じるほどだ。
 四月一四日、国会議事堂前には安倍退陣を叫ぶ労働者、市民五万人が結集しシュプレヒコールをあげた。その勢いは、機動隊による規制線の鉄柵を突破し、行く手を警備車輌に阻まれながらも辺りは解放区と化した。
 正義は、国民の手にある。韓国民衆が軍事独裁政権を打倒し、汚れた朴槿恵政権を退陣させたように、憲政史上最悪な安倍政権の「ありふれた悪事」に今こそ終止符を打とう。      (雨)




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