もどる

    かけはし2018年2月26日号

安心して病院に行けない!


2.15

都立病院の地方独立行政法人化反対!

都議と共に考える学習講演会

都立病院の充実を求める連絡会



経営優先では
病院に行けず
 二月一五日午後六時半から、都議会会議室で、「第一回、都立病院の地方独立行政法人化を都議と考える学習講演会」が都立病院の充実を求める連絡会主催で開かれ、都議・区議九人、病院で働く仲間など九三人が参加した。
 一月一七日に行われた都立病院経営委員会は都立直営病院を廃止し、都立病院を地方独立行政法人として東京都から切り離すことを確認した。直営が廃止されれば「経営優先」、「独立採算制」になってしまう。そうすれば患者の負担が増え、病気になっても病院にかかれない都民が増える。また、独立採算できない医療を担い、安定的に提供することができなくなる。こうした状況の中で学習講演会が開かれた。
 氏家祥夫さん(連絡会共同代表)が「二月九日に都知事に都立病院を地方独法化しないように要請した。知事はいろいろ考えている。改めて検討すると話した。今がチャンスだ。みんなの病院にするためにがんばろう」と開会のあいさつを行った。
 参加した都議・区議の紹介がありその後、尾林芳匡弁護士(八王子合同法律事務所)が「都立病院の地方独立行政法人化を考える」と題して講演を行った。八ページにわたるレジメに基づく詳細な報告であった。

医療法の目的
に反する施策
第一、都立病院をめぐる動き。一九九九年石原都知事が誕生し、都立病院改革マスタープランが作られ、反対運動を押し切る形で民間企業を入れる施策が進められた。二〇〇三年、大久保、多摩北部、荏原、豊島を公社移譲。二〇〇九年、地方独立行政法人「健康長寿医療センター」(板橋)。二〇〇九年、がん感染症医療センター(駒込)改修PFI(三菱商事一八六二億円)。二〇一〇年、三小児病院(清瀬・八王子・梅ヶ丘)の廃止。多摩総合医療センター(府中)PFI(清水建設二四九〇億円)。松沢病院PFI(日揮七三五億円)。
「経済性や経営」と医療の問題で忘れてはならないのは、憲法二五条の生存権と医療法で「医療は、生命の尊重と個人の尊重と個人の尊厳の保持を旨と」する。また、「都道府県知事等は営利を目的として病院を開設しようとする者に対しては、病院の開設許可を与えないことができる」としていることだ。

地方独立行政
法人化とは?
第二、PFI・地方独立行政法人化とは。
民間の資金やノウハウにより公共施設の建設と調達を行う法律(一九九九年)。庁舎等施設、道路や鉄道・水道等の大規模な建設事業を企画から建設・運用まで民間に委ねる。@財政難のもとでも施設建設推進A自治体の関与と住民の立場の後退B自治体と大企業のゆ着のおそれ(長期契約の莫大な利)C事故等の損失の負担。具体的事例としてはPFI方式で破綻し、再び直営化される地方の事例が紹介された。
都立病院PFIの契約書について。病院運営業務「自ら又は協力企業に対する委託若しくは請負の方法により、次の各号に掲げる病院運営業務を行う」。医療業務、検体検査業務、物品管理業務、食事の提供業務、滅菌消毒業務、リネンサプライ業務、医療作業業務、一般管理支援業務、利便施設運営業務。どこに下請けされるのか、果てしない無責任体制だ。

交付金の削減で
サービスの低下
第三、地方独立行政法人。交付金削減。一%等。中期目標期間ごとに「業務を継続させる必要性」や「組織の在り方その他その組織及び業務の全般」について見直し、解散も含めた措置を想定。問題点。@住民サービス後退のおそれA住民自治・住民参加の後退B議会の関与の後退・空洞化C職員・労働者の身分保障と権利のはく奪。事例、国立病院機構が独法化され、国の運営交付金が削減。診療事業二〇〇九年、七五億円が二〇一一年、二億円に。結核、小児救急、精神、救急救命、周産期母子、ゼロに。地方独立行政法人「健康長寿医療センター」では病床が七一一床から一五一床削減された。

都民に訴え
署名集めを
第四、公の施設の指定管理者制度。
二〇〇三年、公の施設の管理者は自治体出資法人等への限定がはずれ営利法人にも可能にされた。意図は経済界の商機拡大にあった。非営利の原則があるので株式会社参入ができないが「特区」の活用。
第五、公立病院など公務・公共サービスを考える視点。
公務・公共サービスの充実を求める運動と「官製ワーキングプア―」根絶の運動との合流。世界の運動・多彩な国民共同の運動で三〇年ぶりに、新自由主義脱却の兆し。
尾林弁護士は「公立病院しか頼る所がない人たちがたくさんいる。都立病院は弱い立場の人にも等しく享受できる病院でなければならない。直営のままで充実させよう。独立行政法人化にストップをかけよう」と講演をしめくくった。
質疑応答があり、最後に行動提起が行われた。@「都立病院の独立行政法人化をやめ直営を堅持してください」とする署名を三月末までに三〇〇〇筆、五月末までに三万筆を集めようA多くの都民に独法化の問題点を知らせようBともに学びましょう。次回学習会、三月二七日午後六時半から、都議会二階第二会議室。署名用紙は「都立病院の充実を求める連絡会」のホームページからダウンロードできます。なお、この問題で都庁職病院支部が反対の声明を出していますので資料として別掲載します。(M)

資料

都庁職病院支部は都立病院の地方独立行政法人化に反対します

都庁職病院支部執行委員会


 一月一七日に行われた病院経営本部の諮問委員会である都立経営委員会が行われ今後の都立病院の経営形態として地方独立行政法人が最もふさわしいとする報告を行いました。地方独立行政法人化では、行政的医療を安定的に提供する都立病院の使命を果たすことはできません。

都立病院独法化は
都民の意思ではない
過去直近の都議選、一昨年まで三年連続で行われた都知事選で都立病院の経営形態が争点にはなりませんでした。なぜなら都立病院の経営形態について早急に結論を出さなければならない理由は何もないからです。現に都立病院の経営は、2016年度を除けば黒字経営が続いて極めて安定しています。経営委員会は毎年約400億円の一般会計からの繰り入れを問題にしていますが、都立病院の累積赤字が都政を圧迫しているなどということはありません。都の調査による都民の医療要望トップ3は、「夜間・休日診療や救急医療体制を整備する」の51・0%に続き、「高齢者などが長期療養するための病院や介護施設を整備する」(38・9%)、「地域の中心となる病院を整備する」(36・8%)です。この都民の切実な要望にストレートに応えるには、都立病院の充実こそが必要です。

独法化ではサービスは向上しない
経営委員会では、独法化されれば経営にかかわる意思決定が迅速になり経営が効率化されサービスも向上すると議論されました。しかしこの主張には何の根拠もありません。病院の経営効率化とは2年に一度改定される診療報酬制度にいかに対応するかということです。病院が診療報酬に新設された医療を柔軟に提供するためには、新たな人材の確保、つまりは増員が不可欠になります。独法化されれば増員の決定は迅速にできるかもしれませんが、新たに医療人材を確保するには資金が必要になります。この資金が増えなければ人材確保は困難です。独立採算を強制される独法化で、都立直営より運営資金が潤沢になるなどということは決してあり得ません。なぜなら独法化の真の狙いは一般会計からの繰入金の削減にあるからです。繰入金が削減されれば新たな医療人材の確保は困難をきたし、都立病院の医療水準を保つことはできないでしょう。現に先行して独法化された大阪府立病院では、人材確保どころか保育器を購入する予算がなくクラウドファンディングで保育器を購入する事態になっています。経営優先の独法化になれば患者負担増を招きかねません。

独法化は労働条
件を悪化させる
一般会計からの繰り入れ削減は労働条件をさらに劣悪化します。現在都立病院ではずさんな労働時間管理が行われ膨大なただ働きが発生しています。独法化され人件費抑制の圧力が強まれば違法なただ働きがさらに広がることは確実です。なぜなら繰り入れが削減されても都立時代と同じ医療を提供すれば、人件費率を下げなければ赤字になってしまうからです。しかし労働条件の劣悪化と非公務員化は早期退職を招き、結果として看護師など医療人材不足を招き医療水準の低下、そして収益の低下につながることは確実です。
2018年1月17日 

資料

医師 香山リカさんに聞く

ひとりの医師として都立病院の独立法人化に反対します

 

 私は長く精神科臨床に携わり、現在はより総合的に「こころとからだ」を診る医療を目指して総合診療科でも臨床を行っています。「調子が悪い」と訴える患者さんを心身両面から診ていく中、いつもぶち当たるのが「採算」や「効率化」の壁です。
 もちろん、それらを度外視して行う医療が必ずしもよいものとは思えませんが、十分な時間や人手もかけられず、必要な検査や治療もできないというのは、医療に携わる者としては自らの誇りや尊厳を踏みにじられる思いです。
 そんな中、これまでいわゆる「行政的医療」という扱いで、「採算よりも命を守る」という医療を続けてきてくれた都立病院は、私にとっても心の支えであり頼るべき命綱のようなものでした。
 ところがそれさえも、独立法人化しようとする動きが起きています。

「採算」と「経営効率化」で何が切り捨てられるのか。

 それは、何より医療を必要としている都民の方の健康そして命、それからそこで働く人たちの労働環境の安定です。
「都立病院だから」と安心してかかっていた患者さん、仕事に打ち込んできた医療従事者たちは、今後どこに行けばよいのでしょう。また、公立病院ならではの適切な検査、治療を受けられた人たち、医療費を少しでも抑えたいと願っている低所得の都民たちは、「自分の健康や命は自分で守るべき」といった自己責任論を押しつけられ、泣く泣く医療を受けるのを控えなければならないのでしょうか。
少なくとも東京都は今回の決定をするにあたり、都民や医療従事者意見をきくなど議論を開かれたものにするべきです。
いざというときに安心してかかれる公立の医療機関があってこそ、都民は思いっきり仕事や子育てをがんばることができるのです。都立病院の灯が消え、独立法人のキラキラのネオンサインが輝くといった改革は、誰も望んでいません。 都立病院が東京都の直轄の医療機関として運営されることを、強く願っています。
(「都立病院独法化ってなんだ!? 独法化反対署名キャンペーン」ホームページより)

コラム

蕗のとう めっけ。

 「安倍の国」という傘!施政方針演説は「一五〇年前、明治と言う時代が始まったその瞬間を山川健次郎は、政府軍と闘う白虎隊の一員として……」から始まった。
 会津戦争の発端と会津への卑劣な仕打ち、殉難の歴史は闇に葬られてきた。「白虎隊」を登場させたのは薩長藩閥政府が飾り立てた「明治維新」の「素晴らしさ」を際立たせるためだろう。
 大日本帝国の朝鮮、中国、東南アジア諸国への侵略と殺戮の歴史は消え去ることのない歴史だ。文科省が公表した新指導要領案は「領土」「自国を愛する」等「国が積極的に教育内容に関与」する改定案だ。「明治の歩みをつなぐ つたえる」明治一五〇年事業は「美化し修正した歴史」を認知させようとするものだ。
 抑止力という「核の傘」。「核兵器禁止条約」への不参加理由は「日米同盟と核抑止力」だと言う。「米国の核の傘」での安全保障に依拠しているから「核抑止否定」の条約には参加できないと言う。一方で「(政府は)唯一の被爆国として核兵器のない世界の実現を主導する使命を有す」とも国会で言っている。安倍政権は、ノーベル平和賞受賞の「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)と会うことを拒み、世界に向けて核兵器禁止について「ICAN NOT!」と声をあげた。「国是」とは主権者が認めた国の基本方針なのに政府は「無視」をしたのだ。同様に、米国「核戦略見直し」で「使用する小型核兵器の開発」に政府はもろ手を挙げて称賛した。国是「非核三原則」はどこに飛んで行ったのか影も形も見えない。
 「(トランプ大統領との)個人的な信頼関係の下、世界の様々な課題に、(トランプ大統領と)共に、立ち向かってまいります」と全国民に表明。すべては、安倍・トランプの個人的信頼関係のなかで「自らが行う努力」としてイージスアショア弾道ミサイル防衛システム、長距離巡航ミサイル、F35ステルス戦闘機、電子攻撃機等、トランプ米国大統領の要求のままに武器購入と湯水のような大盤振るまい。つまり「信頼と言う力強い絆」は「お金」の過多によって決まると言うことか?喰えぬ武器より、国民が腹をすかして生きることの無いよう「貧困」と「格差解消」に使うべき国民の税金なのだ。「金の切れ目が縁の切れ目」と言う諺があるが果たして……。
 そして「玉虫色」の破れ傘にご注意!「働き方改革」「人づくり革命」を叫び政権スローガン「同一労働同一賃金」「非正規と言う言葉の一掃」で着飾る。じっくり見ると「残業代ゼロ」「裁量労働制」が透けて見える。「同一労働同一賃金」は「実現の時」と語って「法案」には印刷漏れなのか一文字も見えず。にこやかに差し出す傘においそれと入ってはいけない。
 一八春闘が始まった。仲間が集い心を一つに闘うのが一番だ。怒る者はストレス「ゼロ!」、動く者は足腰丈夫で病「ゼロ!」と勝手な理屈で吾が身を鼓舞し支援に行く。(朝田)




もどる

Back