もどる

    かけはし2018年2月5日号

討論のために


朝鮮半島情勢をどう見るか

平和への可能性を広げるために

軍事的緊張と「制裁」を煽るな

 朝鮮半島情勢は、キム・ジョンウン政権の急速な核とミサイル開発、トランプ・安倍政権の強硬な対応を軸に、深刻な戦争の危機を高めている。その一方でピョンチャン冬季五輪を契機にした南北間の交渉も行われている。現在の局面をどう見るか。東アジアの平和と人権のために何が求められているか。討論を!(編集部)

再開された南北閣僚級会談

 一月九日から二年ぶりに再開された韓国と朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)による南北閣僚級会談は、一月一七日に一一項目からなる「共同報道文」を採択した。その主な内容は・平昌冬季五輪開会式で統一旗での合同入場行進・朝鮮からの応援団の派遣・在日本の朝鮮総連の応援団活動の保障・南北の合同応援などである。またこの採択文とは別に、南北軍事当局者会談の開催や五輪期間である二月八日(江陵)と一一日(ソウル)に三池淵(サンジヨン)管弦楽団が公演することなどが決まった。
 こうして韓国の文在寅大統領は二月九日から始まる平昌五輪開始の直前で、どうにか「平和的な雰囲気」を演出することができたのであった。
 朝鮮が昨年一一月二九日に発射したICBM「火星15」は、推定射程距離が一万三千キロで、これは米国本土すべてを射程圏内とするものである。専門家らによれば「弾頭部分を軽くして飛距離を伸ばしたのではないか」といった指摘もあるが「技術は着実に進んでおり、今回は大気圏に再突入した際のデータを取ろうとする技術的な意味合いの強い発射」実験だったのではないかとも言われている。
 また同月二〇日にトランプ米大統領が、朝鮮を「テロ支援国家」に再指定すると発表したが「火星15」の発射はその発表との関連はほとんどない。朝鮮の政治的スケジュールに基づく発射だった。そのことは発射同日に発表された「朝鮮政府声明」の内容からも明らかである。
 「声明」は「われわれが目標としたミサイル兵器体系開発の完成段階に到達した」「ミサイル強国の偉業が実現したと誇り高く宣言」「並進路線(核開発と経済建設)を忠実に支持してきた人民が勝ち取った勝利だ」「わが国の利益を侵害しない限り、いかなる国や地域にも脅威にならないことを改めて厳粛に表明する」といった内容である。
 この内容から朝鮮側の今後の動向をどのように読み取ればよいのか、最初に動いたのが国連だった。一二月八日まで実施された米韓合同軍事演習(航空機二三〇機が参加した空中戦訓練「ビジラント・エース」)が終了した翌日の九日に、国連のフェルトマン事務次長と朝鮮の李ヨンホ外相が会談した。そしてその会談で「国連と朝鮮の間の様々なレベルでの往来を通じた意思疎通を定例化する」ことで合意した。
 一二月一五日に行われた国連安保理の朝鮮問題に関する閣僚級会合では、何らの成果も上げられない米日主導の圧力一辺倒に対する異論が欧州やアフリカから上がった。米日への対案として提案されているのは中国による「朝鮮が核・ミサイル活動を一時停止し、米韓が大規模合同軍事演習を一時停止して対話を模索する」という内容であり、ロシアも同様の提案を行ってきた。そして一二月二二日の安保理では朝鮮への原油輸出問題をめぐって、米中が激しく対立するのであった。そしてここまで来てようやく文在寅政権が具体的な動きを開始するのであった。

THAADめぐる緊張

 昨年三月の朴槿恵前大統領の退陣を受けて五月に大統領に就任した文在寅は、就任当初から朝鮮への制裁や在韓米軍のTHAADミサイル配備など、トランプ政権に追従的な政策をとってきた。文在寅にとっての主要外交相手は、米日、中国そして朝鮮である。そして米国に尻尾を振る文在寅に強力な圧力をかけたのが中国だった。
THAADミサイル配備に強く反発する中国は、韓国に対する「報復」として昨年三月から韓国への観光旅行を実質的に禁止した。その影響でソウル最大の繁華街である明洞は閑古鳥が鳴いている。この禁止措置だけでも経済損失は年間ベースで一・八兆円を超える。またTHAAD配備のために土地を提供したロッテグループに対する「攻撃」は凄まじいものである。中国国内で一〇〇店舗以上のスーパーを展開してきた「ロッテマート」は、当局による営業停止措置を受けて事業から撤退し、中国人の韓国内でのロッテグループの利用も禁止となった。そして現代自動車など韓国製品に対する激しい不買運動も展開されている。昨年一二月一四日に行われた中韓首脳会談で文在寅は事態の打開を図ろうとしたが、これといった成果を上げられなかった。
国連の動向などを見極めながら文在寅が打った次の一手が「反日カード」だった。一五年一二月に日韓両政府によって合意された「慰安婦」問題について、合意から二年目にあたる一二月二八日に文在寅は「声明」を発表した。昨年七月に設置された作業部会が検証作業の報告書を前日に発表していて「声明」はそれに基づくものとなった。
文在寅は日韓合意は「重大な欠陥があったことが確認された」「この合意では慰安婦問題は解決されない」と批判的な立場を明らかにしたが、合意の破棄や再交渉については曖昧化させるものとなった。最近の世論調査では韓国民の七割が「再交渉すべきだ」という立場だ。一方「慰安婦」問題で日韓合意に基づいて設立された「和解・癒し財団」は、理事が次々と辞任して年内にも解散することになった。こうして財団の解散によって日韓合意の履行は不可能となる。文在寅はこの状態をコンクリートして「破棄や再交渉」から逃れようとするだろう。
一五年一二月の日韓合意は、韓国人にとって対日「屈辱外交」であり、民族的にも人道・人権的にも決して許すことのできないものである。日韓合意後「慰安婦」問題を象徴する少女像が続々と設置されていて、韓国内だけでも六〇体以上に上っている。一六年一〇月の国会で安倍首相が、元「慰安婦」へのお詫びの手紙について検討する考えは「毛頭ない」とした発言は、韓国世論から猛烈な反発を受けた。

重要度薄れる日韓関係


現在の韓国にとって日韓関係は政治、経済的にもその重要度は低くなっている。逆に米国に追従しながら軍国主義化することへの警戒心の方が強いと言える。しかしトランプ政権にとって日韓間の政治的なギクシャクは「頭の痛い問題」ということになる。こうした状況を作ることによって文在寅は米国から譲歩を引き出そうとした。また中国と朝鮮はこうした政治状況を歓迎する。
一月一日の「新年の辞」で朝鮮の金正恩委員長は、対米強硬姿勢と核とミサイル開発・量産を宣言する一方で、韓国に対しては「凍結状態にある北南関係を改善し、民族史に特筆すべき重大な年として輝かさなければならない」と、南北対話再開を促した。同時に平昌五輪参加の意思表示を行った。そして中国も南北対話は「良いことだ」と歓迎した。
また一月四日には、韓国が要請していた平昌五輪期間中の合同軍事演習(例年三月から四月にかけて米韓三〇万人が参加する「フォールイーグル」)の延期を米国が受け入れた。こうして一月九日からの南北会談のための政治環境が作られて、平昌五輪に向けてトントン拍子で話が進むことになったのである。

強まる経済的圧迫


朝鮮はどれだけ経済制裁が強化されても、核・ミサイルの開発・量産・配備をやめるつもりはない。朝鮮の核弾道ミサイルは、戦争を引き起こそうとするものではなく、あくまでも「政治的な兵器」なのだということを主張しながら、それを国際社会に承認させるという方法を取り続けるだろう。そして平昌五輪期間とその後の南北対話の継続を通して、韓国政府が準備している九億円の人道支援や、平昌五輪に大量動員するであろう在日の朝鮮総連をはじめとした在外同胞などから「引き出せるものは全部引き出す」という展開になる。ただし平昌五輪後に米韓合同軍事演習が再開されれば、状況はまた変わるのだろうが。
朝鮮はこれまでに国連安保理による一〇回の制裁決議によって、じわりじわりと経済的な圧迫を受けてきた。
特に朝鮮の年間貿易額の九割を占めてきた中国による制裁の実施は、深刻な影響をおよぼしている。昨年二月、中国政府は一九日から朝鮮の石炭の輸入を「今年いっぱい」停止すると発表した。そう決定した背景には、同月一三日にマレーシアの空港で発生した朝鮮工作員による金正男殺害事件が深く関連していた。金正男は中国、マカオなどを拠点としてビジネスを展開してきた中国とパイプを持つ重要人物のひとりだった。張成沢の処刑に続く「中国人脈」の殺害は、中国政府を激怒させて本格的な制裁に踏み切らせたのであった。
この石炭輸出は朝鮮にとっては対中輸出の主力産品であり、一六年の実績は一五四〇億円だった。またその後も続いた追加制裁によって、八月からは鉄鉱石や海産物が、九月からは繊維製品も輸入を止められた。
中国発表の経済統計によると、一〇月の朝鮮からの輸入額は前年比で六二%減の約一〇〇億円で、輸出も前年比で一五%減の二七〇億円となり、減少は八カ月連続となった。ちなみに大韓貿易投資振興公社の発表によると、二〇一六年の朝鮮の貿易総額は七三〇〇億円で、貿易赤字は九九〇億円だとしている。
それでも九月一一日に決議された九回目までの経済制裁は、抜け道だらけの「ザル制裁」だったと言ってもよかった。中朝貿易総額の七割が鴨緑江に架かる中朝友誼橋を渡って、丹東を経由して中国内に入る。そこでは朝鮮との海産物取引は全面的に禁止されているのにもかかわらず、朝鮮産の貝類や魚介類、乾物などが水産市場で大手をふるって出回っていた。また郊外の工場でも、制裁以前同様に朝鮮人労働者が雇用され続けているという状況だった。

中国による「制裁」強化

 また植民地解放闘争への軍事支援などを通じて、歴史的に友好関係にあったアフリカ諸国との経済的関係も辛うじて維持されていた。貿易額はピーク時で八〇〇億円ほどであった。
しかし事態が大きく変化するのは、昨年の九月二一日に発表されたトランプによる追加の独自制裁措置によってであった。その内容のなかに「北朝鮮制裁対象の個人・団体との取引や、北朝鮮との貿易に関連した取引について、それと認識したうえで行った外国銀行を米金融システムから排除」するという項目がある。またこの制裁内容は発表する前に中国の人民銀行総裁に伝えられており、米中間で議論があったことも明らかにされた。そして発表の同日に中国人民銀行は国内の銀行に対して「朝鮮との取引を即時中断するよう指示」したのであった。発表後にトランプは「世界中の銀行は米国と取引するのか北朝鮮の無法な政権を助けるのか選択しなければならない」と豪語したのである。
対米貿易で年間三〇兆円ほどの黒字を上げ、金融においても莫大な利益を上げてきた中国の動きは迅速であった。朝鮮との貿易で最大の窓口となってきた丹東市政府は「朝鮮人を新規雇用した場合、一人当たり八万五〇〇〇円の罰金を科し、労働者も強制送還する……既に許可を得ている朝鮮労働者は、期限内までの中国滞在を認める」という内容の通知を出した。その結果、丹東にある朝鮮経営のレストランが次々と姿を消した。また中国国際航空は北京と平壌間の週二便の定期運航も停止した。
一一月二九日に朝鮮が「火星15」を発射したことに対して、国連安保理は一〇回目となる制裁決議を発表した。しかし制裁材料はすでに出つくしており、残ったのは原油・石油精製品をどうするのかということが焦点となった。トランプ政権は全面停止や海上封鎖を主張したが、実際にほぼすべての石油を朝鮮に輸出してきた中国がこれに強く反対したために「現状を維持した上で数値による上限を明記する」という内容にとどまった。
兵糧攻めされている朝鮮の現状はどうなっているのだろうか。状況は具体的にはほとんど入ってきてはいないが、電力不足はさらに深刻化しているようだ。毎日新聞が入手したとする党幹部向けの内部文書によると、火力発電用の石炭と水力発電用の水が不足し、また発電所も管理状態が悪く「節電闘争」が叫ばれている。そして自然エネルギーを活用するなどして、中小の発電所をいたる所に建設せよと奨励している。さらに原発の早期建設を促している。いずれにせよ朝鮮の人民は、厳しい寒さに耐えて今年の冬を乗り切らなければならないということなのだ。
現在朝鮮は世界の一六〇カ国と国交を結んでいて、四七カ国に大使館、七カ所に代表部・総領事館を置いている。しかし九月の制裁以降、他国の関係者から無視されたり批判されるなどして、ほとんど相手にされない状況になった。そういう厳しい状況のなかで、制裁決議に違反しないで外貨稼ぎができるのは「朝鮮レストラン」などの飲食、ホテル、娯楽、スキーリゾートなどの観光といった、対象を個人とする場合に限られてきている。あとは密輸と制裁決議違反の労働者の国外就労ということになる。
密輸のいくつかの事例も明らかになってきている。中朝航路の監視が厳しくなるなかで、朝鮮北東部の羅先からロシア極東のウラジオストクに入るという朝ロ航路を使った「物々交換」による取引である。さらには北西部の鴨緑江をはさんだ中朝沿岸で、船の国旗を変えるなどして海産物などの小規模密輸取引が行われている。特に今期記録的な不漁だったスルメイカは、一キロ当たり一三八〇円前後が相場だという。また一月二〇日には、上海沖の公海上でドミニカ船籍のタンカーから朝鮮船籍のタンカーに積み荷の受け渡し「瀬取り」が行われているのを日本の海自が撮影している。

漁船遭難事故の背景

 また低賃金で劣悪な労働環境で搾取されている朝鮮の出稼ぎ労働者(中国・ロシアを中心に推計五万人)についても、各国地方の経済活動の実態などから「抜け穴」はすでに準備されているようだ。
昨年の秋以降、日本海沿岸にイカ漁に使われたと思われる朝鮮の木製の小型漁船と遺体が次々と漂着した。彼らは日本海のほぼ中心に位置する「大和堆」で漁をしていたのではないかと推測されているが、打ち上げられた小さな漁船がそれぞれ単独で、朝鮮本土から直線距離で五百キロ以上離れている大和堆にたどり着くのは不可能である。小型船に燃料や水・食料などを供給し、獲れたイカを本国に持ち帰りする「母船」が数隻は伴っていたはずである。しかし流された男たちは、エンジンの故障や燃料の枯渇、例年よりも早く到来した北西風による荒波によって、母船に救助されることなく漂流したと考えるほかない。
日本のイカ釣り漁師の話によると、彼らは日本漁船が照らす集魚灯の周りに集まってきて網を仕掛けたという。この極貧国の人民を命がけの無謀な漁に向かわせたのは、軍事対決状態を作り出したことによる残忍な経済制裁の結果であった。まさしく彼らはその犠牲者の一部なのだ。
朝鮮をめぐる軍事的緊張を解決する唯一の方法は、一九五三年から続く朝鮮戦争停戦という戦争継続状態から平和状態に移行させることである。それはアジアから米軍を叩き出す闘いでもあり、沖縄の反基地闘争はその最前線に位置している。     (高松竜二)

1.22

第196通常国会開会日行動

改憲NO!森友・加計疑惑追及!

600人の参加で意気高く


降り出した雪
をついて結集
 一月二二日正午から、雪が舞い始めた国会議事堂前で、第一九六通常国会の召集に合わせて「安倍9条改憲NO! 森友・加計疑惑徹底追及! 戦争煽るな! 共謀罪廃止! 安倍退陣! 国会開会日行動」が行われた。戦争させない・九条壊すな!総がかり行動実行委、安倍9条改憲NO!全国市民アクション、共謀罪NO!実行委の三団体が共催した集会には六〇〇人以上が参加した。
 最初に国会議員のあいさつ。社民党副党首の福島みずほ参院議員、日本共産党の志位和夫委員長、「沖縄の風」の糸数慶子参院議員、立憲民主党の近藤昭一衆院議員が各党を代表して「安倍改憲阻止」の強い決意を込めて発言した。
 志位和夫さんは空母型護衛艦いずもを改装して戦闘機搭載可能な文字通りの「空母」に改装するという戦争国家の道ではなく、沖縄とともに「九条を生かす・平和な日本へ」と訴えるとともに、財界による財界のための「働かせ方改革」に反対し、「原発ゼロ」を目指す小泉純一郎、細川護熙両元首相の提案に「全面賛成」し、野党共闘を推進しようと訴えた。
 「沖縄の風」の糸数慶子参院議員は、前日(一月二一日)投票の沖縄県南城市長選で、自民支持の現職に対し「島ぐるみ」候補の瑞慶覧長敏さんが競り勝って初当選した、と報告した。糸数さんは「沖縄は雪は降ってはこないけど、ヘリが降ってくる。県議会で米軍ヘリの飛行を止める決議を全会一致で採択した」と自信に満ちて訴えた。
 立憲民主党の近藤昭一衆院議員は、国会審議で首相の答弁を減らそうとする動きを厳しく批判した。

「働き方改革」
にも反対の声
戦争法違憲訴訟弁護団に続いて発言した雇用アクションの柚木康子さんは、月一〇〇時間残業容認、高度プロフェッショナル制度を批判し、「安倍内閣の言っていることはみんなウソだ。差別は当然と言わんばかりの判決が続いている。権利を行使させないための法改悪に反対し、一日八時間働けば生活できる賃金が支払われる『真の働き方改革』を」と呼びかけた。
共謀罪対策弁護団の米倉弁護士は、共謀罪廃止のための活動を強めるとともに改憲原案を作らせない状況を作り出そうと訴えた。最後に行動提起を行った戦争させない一〇〇〇人委員会の藤本泰成さんは安倍政権による「明治一五〇年」キャンペーンを取り上げながら、侵略戦争に突き進んだ歴史を繰り返さず、改憲を阻止して平和を作り出そう、と訴えた。
国会前集会が終わった後、引き続き国会前では「雇用共同アクション」の安倍「働き方改革」反対の行動、議員会館では共謀罪廃止のための集会が開かれた。
あらゆる分野から安倍改憲に反対する声をあげ、改憲発議を絶対にさせない行動で、安倍政権を打倒しよう!        (K)



もどる

Back