止めよう改憲!おおさかネットワーク
望月衣塑子(東京新聞)講演会
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【大阪】止めよう改憲!おおさかネットワークの秋の講演会が一二月二日、クレオ大阪西ホールで開かれ会場は満席、三五〇人を上回る市民が参加した。
長野たかし・森川あやこさんによるミニコンサートのあと、中北龍太郎さん(止めよう改憲!おおさかネットワーク共同代表)が主催者あいさつをした。その中で九条改憲の情勢を説明し、「今、九条を守りきるのか、改憲を許すのかの正念場に来ている。安倍首相は、自衛隊を憲法に明記したからと言って自衛隊の任務に変更はないと言っているが、これは歴史的な大嘘だ。九条三項で自衛隊を明記すると、二項の戦力不保持・交戦権の否認は死文化する。その結果、海外派兵が全面化し、米国の戦争に全面的に協力する日本になっていく。安倍首相の大嘘をきっぱりと見破って、九条改憲を阻止しよう」と述べた。
続いて、望月衣塑子さん(東京新聞社会部記者)の講演に移った。週刊誌の記事によると、望月さんは小さいころ子ども劇団に入っていたそうで、張りのあるよく通る声でたくさんの事柄をよどみなく話し切った。非常なバイタリティの持ち主であるとの印象を持った。(講演要旨別掲)
森友学園問題
新しい局面に
講演に続いて三団体からアピールがあった。
森友学園問題を考える会・木村豊中市会議員「価格交渉をしている音声テープが出たことで問題は終わっているのに、いまだに隠し、金額と価格は違うなどと訳の分からないことをいう。あれは何なのか。とにかくしかるべき人物にしかるべき責任を取らせるまで粘り強く追及しよう」。
九条の会おおさか呼びかけ人・木戸衛一さん「下の子どもが小学校からJアラート関連の印刷物をもらって帰っていうには、ここ(京都)にも一二月末には北朝鮮のミサイルが飛んでくると子どもたちで話しているそうだ。今の安倍政権はナチと同じだ。もう一つ、橋下の嘘をつくやり方をまねしている。衆議院選後の闘いについて、一二・一三九条の会おおさか『渡辺治講演会』にぜひ参加をしてほしい」。
戦争法違憲訴訟の会・三橋秀子さん「一二月二〇日、高作正博関大教授の意見書が提出され、第五回口頭弁論が大阪地裁大法廷で開かれる。ぜひ参加してほしい」。
最後に、松岡幹雄さん(止めよう改憲おさかネットワーク)から、全国三〇〇〇万署名運動への協力要請と当面の街頭署名活動の取り組みが提起された。(T・T)
望月衣塑子さん講演から
監視・批判こそ生命線
母は萩原朔太郎のファンだったので、朔の入った名前を付けた。東京新聞社会部記者になり、初めは千葉・神奈川支局勤務。本社社会部では、日歯連闇献金問題をスクープ。埼玉支局の時は、國井検事(のちに、厚労省の木村厚子さんねつ造事件にかかわった検事)の暴力団との癒着をスクープした。
その後出産、育児休暇を経て、武器輸出や軍学共同をテーマに取材。当時、あこがれていた読売新聞から、そんなに事件が好きならうちに来ないかと誘われたが、父の反対で結局東京新聞にとどまった。
武器輸出問題を
自分のテーマに
夜の取材ができなくなったので、昼間でもできるテーマを探し、武器輸出をテーマに選び、防衛企業や防衛官僚に取材していくが、企業は取材に協力してくれなかったり、官僚からは国防について長々と説教を聞かされたりした。でも、自分が書いた記事は読んでくれていることに気付いた。記者としてのテーマは、「権力側が隠そうとすることを明るみに出すこと」だ。キーマンを見つけて何度でも聞く・嘘をつかれて当たり前・でも隠すことにすべての関係者が納得しているわけではないと思う。やっていくうちに、嘘と真実の見分けがつくようになった。
武器輸出三原則を廃止し、防衛装備移転原則なるものができ、防衛企業でも技術の機密が垂れ流されるリスクについての疑問や危機感が強い。官邸主導の潜水艦・原発・新幹線の輸出について特にそうだ。日本の軍需産業は、相当の割合を三菱が請け負っているが、軍産複合体へ向かっていくことが本当にいいのか。
森友取材チーム
に入って活動
森友問題については、初めはどこも政府批判を控えていたが、一七年二月九日の朝日新聞スクープから、朝日に続けと各社が続々報道するようになった。籠池さんのキャラクターに助けられて、政府批判がやりやすくなった。東京新聞は当時、共同通信の記事を配信するだけだったが、わが社もこの事件を追うべきだと主張し、政治部記者中心の森友問題取材チームがつくられ、社会部の私も入れてもらった。
五月一七日またも朝日新聞による「総理のご意向」スクープ記事が載った。与党は参議院法務委員会での共謀罪法案の採決を省略し中間報告を行い、本会議で法案を強行採決。その数時間後、文科省の加計問題に関する再調査の結果報告がでて、萩生田文書が発覚した。獣医学部新設の三要件(広域的に・存在し・限り、の文言の挿入)を追加したこの文書を、菅官房長官は怪文書と呼んだ。国家戦略特区諮問会議では、和泉洋人首相補佐官(国交省出身)は、影の総理と言われ官僚から恐れられており、武器輸出にもかかわっている人物だ。官房長官のことを呼び捨てにする。
前川前次官の
教育への情熱
五月二二日読売新聞が報じた「前川前次官 出会い系バー通い、文科省在職中 平日夜」の記事、違法行為を犯したわけでもない官僚の私的行為をネガティブに報じたのは驚きだったが、私も一度は、内心やっぱりと思った。そのころ、官邸の和泉補佐官が会いたいと言えば会えるのか、との(官邸からの)問い合わせがあったという。
すぐ前川さんは記者会見し、「総理のご意向」等の文書は確実に存在すること、出会い系バー通いは女性の貧困の実態調査のためだったと説明。それで、前川さん本人に会って話を聞きたいと思い、六月一日、四時間近くのインタビューをした。それで分かったことは、前川さんの教育への情熱だった。
高校でドロップアウトする女子高生の実態から、高校の数学をもっと易しくすべきであるなどの意見を聞いた。前川さんは、夜間中学の先生や子どもの貧困・中退対策として、土曜日に学習支援を行う団体に所属しボランティアをしている。その人となりがよく分かった。前川さんは、規制撤廃と教育は両立しないという。
国際戦略特区の竹中平蔵氏や八田達夫氏は、大学を大量につくり、淘汰され残った大学が良い大学だという考えだ。文科省は、数の論理では高度な教育、教員の質は確保されないという。前川さんは、二〇〇六年安倍政権による教育基本法改正を危惧し、民主主義の危機を感じていた。
籠池さんが安倍首相を信奉するようになったのも教育基本法改正だった。前川さんの先輩で愛媛県知事だった加戸さんは最も安倍首相に近い日本会議のメンバーだ。
詩織さん・前川
さんの思いを胸に
前川さんや自分の顔をさらして告発した詩織さんの思いに応え、記者会見の時に安倍首相に質問しようと思ったが、安倍さんはあらかじめ当てる人を決めている。あるときなどは、手を挙げてもいない人に当てたり、IWJの一人しか挙手をしていないのに、「誰もいませんね」と無視したときもあった。そこで、菅官房長官に質問しようと思った。
官邸動画を見ると、多くの記者は質問しないし、追及もしない。番記者ならそういう気持ちになるのかなとも思うが、でも・・。
六月六日、「東京新聞の望月です」と、夢中で手を挙げ、前川さんの行動確認をしているのか、官房長官も出会い系バーに足を運んでみてはどうかと言ってみた。意外と聞けた。
この日の午後、詩織さんにインタビューした。前川さん、詩織さんは、目に見えない巨大な権力と向きあっている。悔しくて眠れず、菅さんに直接彼らの怒りをぶつけたいと思い、六月八日官房長官との二回目の会見。通常は一〇分ほどで終わるのが、三〇分の会見になった。詩織さんの件では、中村格警視庁刑事部長の判断は正しかったのかを聞いたが、警視庁の捜査はし尽くされたこと、検察庁では不起訴になっていると答えるだけだった。
前川さんの件では、前回「教育者としてあるまじき行為」と発言していたが、自身の見解かと聞いたら、答える必要はないとかわされた。文書の出所について職員が危険を覚悟で告発したら、適正な処理をするのかと聞いたが、仮定の話には答えられないと逃げるだけ。
ジャーナリズム
の役割は何か
NHKクロ現(クローズアップ現代)ほかで新事実が続々。獣医学部新設のためのプレゼン資料でも、京都産大のそれは、詳しく且つ非常にレベルの高いものだったが、加計学園のものはお粗末だった。なのになぜ加計が……と思ったが、それらを検討した記録は残っていない。森友学園の土地取引も記録が残っていない。第三者による検証が必要だ。政権中枢は裸の王様だ。第三者を交えしっかり調査し国民に報告すべきだ。
記者会見では、最近官邸報道官が質問を遮るようになった。官邸広報室が東京新聞へ書面で注意をしてきた、未確定事実や憶測に基づく質疑応答で、国民に誤解を生じさせるような事態は断じて許容できないと。ミサイル前夜の首相官邸宿泊を追及したことが影響したからか。あれから、首相官邸に宿泊しなければならなくなって、安倍首相は不平を言っているとか。
そもそも、メディアの役割とは、権力の監視とチェックだ。ジャーナリズムとは、報じられたくないことを報じること。それ以外は広報に過ぎない。会社がどうかではなく、ジャーナリストとしての信念を強く持ちたい。自分の五感を信じて、人々のために。最後に、幣原喜重郎首相の言葉を読み上げる「……世界は今一人の狂人を必要としている。自ら買って出て狂人にならない限り、世界の軍拡競争の蟻地獄から抜け出せない。世界史の扉を開く狂人、その歴史的使命を日本が果たすのだ」(日本国憲法―九条にこめられた魂)。(発言要旨、文責編集部)
読書案内
『反東京オリンピック宣言』
小笠原博毅、山本敦久編 航思社刊 2500円+税
「レガシー」などと語るな
リオ五輪のフィナーレ。「スーパーマリオ」と化した安倍晋三が地球を貫通してメインスタジアムに登場するというパフォーマンスで、あらためて二〇二〇年の「東京五輪」の持つさまざまの意味合いが強く印象づけられることになった。
二〇二〇年東京オリンピックは、権力者たちのそのような戦略にとって、カナメの位置にあることは確かだ。そしてこの目論見に対し、東京五輪に反対する人びとの運動のネットワークがいま手探りの中で作りだされつつある。ここで紹介する『反東京オリンピック宣言』(小笠原博毅、山本敦久編 航思社刊 二五〇〇円)は、内外の研究者、活動家たちによるオリンピック批判の論稿が掲載された、実に多様な視角からのオリンピック批判の書であるが、分量・中身からいっても相当なボリュームがあり、それほど容易に読みこなせるものではない。しかしおそらく二〇二〇年までに、折に触れて読み返し、参照すべき書であることは間違いない。
「惨事便乗型資本主義」と「祝賀資本主義」
ここでは一つのテーマに絞って紹介したい。今日のオリンピックを、いわゆる「災害資本主義」「惨事便乗型資本主義」との関連で捉えることである。ナオミ・クラインなどが指摘する「惨事便乗型資本主義」とは、自然災害、武力紛争、財政危機などにより従来の社会的紐帯が破壊されることに乗じて新自由主義的競争原理に基づく秩序が一挙に導入されることを意味する。鵜飼哲は本書巻頭言の「イメージとフレーム――五輪ファシズムを迎え撃つために」の中で「災害便乗型資本主義の最悪の形態として強行されつつある二〇二〇年東京大会」と強調している。福島原発事故について「アンダーコントロール」の暴言で、東京開催をもぎとった安倍の言にそれは体現されている。
「惨事便乗型資本主義」と表裏一体の関係にあるのが本書で鈴木直文が紹介しているジュールズ・ボルコフ「祝賀資本主義」論である。「祝賀資本主義」の特徴は@統治機構が超法規的措置を乱用する例外状態、A過大な経済効果と過小な開催費用の見積もり――負債返済のための増税と緊縮政策による生活への重圧、B事前イベントによる興奮の喚起、Cテロ対策名目の厳重な警備・野宿者排除、D環境への配慮・社会参加を隠れ蓑にした搾取の強化、E観る者・演ずる者の分断による「スペクタクル」の演出、である。これらの批判は、私たちが多くの機会に実感していることだろう。
スポーツの
成長産業化
ここで、二〇一五年六月二日に閣議決定された安倍政権の「ニッポン一億総活躍プラン」(概要)について見ておこう。そこでは「『戦後最大の名目GDP600兆円』にむけた取組の方向」として一六の項目が挙げられているが、そのうちC「スポーツの成長産業化」、D「二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた見える化プロジュクト」の二つが、直接的な東京五輪関係だ。Dはどう言っているのか。「?二〇二〇年をゴールと見立て、改革・イノベーションの成果をショーケース化して世界に発信、二〇二〇年以降に向けたレガシー(遺産)として後世代へ承継 ?自動走行、分散型エネルギー、先端ロボット活用など未来を切り拓くプロジェクト推進」だ。
気持ちの悪いオリンピックの「レガシー」なる言葉がメディアでも氾濫しているが、本書を通読すれば、少なくともこんな言葉だけは何が起きても絶対に使うものか、という気になる。そのためにもぜひ読んでください。 (国富建治)
(この読書案内は、昨年「反天皇制運動Alert」に書いた文章を短縮したものです)
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