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    かけはし2017.年12月18日号

世界の憲法と地政学の散策 B


革命の伝統は生かされているか

フランスの場合

たじま よしお

EU最大の
農業国として

 フランスはEU最大の農業国です。穀物、根菜、畜産などにおいて、世界上位の生産高を誇り「ヨーロッパのパン籠」と言われています。
 国土の六○%が海抜二五○m以下で、地形が概して平坦で、国土の三六%が耕作地、一八%が酪農用地となっています。さらに憲法前文に「共和国は、加盟意思を表明する海外所領に対し」とあるように、地中海に浮かぶコルシカ島、南米のフランス領ギアナ、カリブ海のマルティニーク、グアドループ、インド洋のレユニオンといった四海外県、さらにはニューカレドニアやフランス領ポリネシアなどオセアニアの属領をも含んでいます。可住地の面積は日本のおよそ三・五倍、フランス本土だけでも日本の三・五倍あります。
 そして、フランスは一七世紀以降一九六○年代まで、大英帝国に次ぐ海外植民地を有していました。一九一九年から一九三九年、フランスの面積は最大となり(一二、三四万七○○○平方キロメートル)、世界の陸地の八・六%を占めていました。
 アフリカにあった植民地のほぼすべては一九六〇年に独立を果たしています。フランス政府は農業を重要輸出産業として国際競争の強化を図るほか、農業経営の近代化、若年層の就農促進等の政策を進めています。

少子化対策
の先進国

 また早くから少子化対策に取り組み、GDPのおよそ二・八%にも相当する巨額を投じて国を挙げて出産・育児を支援する制度を様々に取り入れてきました。現在先進国で、出生率が二人を超えている国はフランスの他にはアメリカ合衆国とニュージランドくらいです。
ちなみに国防費はGDPの二・三%で、二○○二年の総兵力は四四万人、国外駐在兵力は約三万人となっていますす。フランスはEUの創立メンバーであり、特に隣国ドイツとの経済的・社会的統合をすすめています。
エ ネ ル ギー政策では原子力発電への依存率は七八%で世界で最も高く、近隣諸国にも多くの電力を供給しており、EUで最大の電力輸出国となっています。

フランス革命
の引き金は?


一七八三年にアイスランドで起きたラキ火山噴火による火山灰で、ヨーロッパ全域での日照激減による農作物不作による飢餓が背景の一つとされています。
当時フランスは第一身分の一四万人、第二身分の貴族四○万人がそれぞれ領地を持ち、年金と免税特権を認められていたのです。そして平民二六○○万人からは、これ以上増税しようがないほどの税ををとっていたのです。
当時のフランスの台所事情は、ルイ一四世以来続いた対外戦争の出費と宮廷の浪費、そしてルイ一六世によるアメリカ独立戦争への援助などで、歳入の九倍もの赤字を抱えていました。そこで貴族階級の特権に制限を設けるほかに道はなく、そのことでルイ一六世は貴族階級の猛反発にあい、支配層のなかの内部矛盾が噴出したのです。
そのことが塗炭の苦しみに喘ぐ民衆の怒りに火をつけたというのが、フランス革命に至るまでの舞台裏といってよいと思います。

第4共和制か
ら第5共和制


レジスタンス運動を経て第二次世界大戦後に第四共和制憲法が制定される。この制定過程で、レジスタンスを指導したドゴールは「強い政府」を確立する憲法を求めたが、左派が多数を占めた憲法制定議会は、議会優位の憲法を採択した。
この憲法は、所有権を大幅に制約する人権条項を含んでいたことなどが原因となり、国民投票で否決されてしまう。そこで、人権保障規定を憲法本文に組み込むことをあきらめ、憲法前文で一七八九年の人権宣言と「共和制の法律が承認する基本原理」に言及するにとどめた憲法案を作り、これが国民投票で承認されて第四共和制憲法となる。
しかし、この憲法は政府の強力なリーダーシップを可能とするものでなかったために、独立を求める植民地の問題を適切に処理することができず、それをドゴールに委ねる。政界に復帰したドゴールは、かねての構想通り「強い政府」を可能とする憲法の制定に着手する。その最も特徴的な構造は、議会権力の徹底的な封じ込めであった。こうして、一九五八年の第五共和制憲法(ドゴール憲法)は、議会優位から「強い政府」へと画期的な転換を図ったのである。
しかし、この憲法も、制定後幾多の改正を経験し、「強い政府」の構造は基本的に維持されているものの、さまざまな側面で制定当時のものとは異なる性格を発展させてきている。
以下に、現在のこの憲法の主要な特徴を略記しておこう。
第一に、制定当初は大統領は間接選挙で選ばれていたが、ドゴール亡き後も大統領が政治の中心となりうる権威を確立するために、一九六二年に直接公選制に改正された。ゆえに、基本的には大統領制的な政治体制といってよい。
しかし、同時に、首相の下に構成される政府が国民議会に責任を負う、議員内閣的構造も維持しており、大統領と議会多数派が対立するコアビタシオン(共同体制)という状況が発生した場合には、どのように行っていくかという困難な問題を内包している。
第二に、法律の違憲審査を行う憲法院の設置と、今日におけるその劇的な発展である。もともと憲法院は議会を封じ込めるための機構として設置された。憲法が議会の権限を厳しく制限し、それを逸脱しないように憲法院に監視させようとしたのである。
その目的で、憲法院には法律が発行する前に合憲性を抽象的に審査する権限が与えられたが、提訴権者は、当初、大統領、首相、両院議長に限定され、人権保障のための裁判所というより政治機関の性格が強いと指摘されていた。
ところが、この憲法院が、一九七○年代以降、人権保障の観点から法律の審査を行い始め、これが国民の広範な支持を受けると、憲法改正により各議員六○名の署名による提訴を認めた。これにより少数派による提訴が可能となり、憲法院が政治勢力の均衡に影響を与える重要な機能を果たすようになった。
第三に、人権規定が憲法上の法的効力を獲得した。第五共和制憲法は人権規定に関しては第四共和制憲法を踏襲して、前文で過去の人権的文書に言及したに留まったために、法的効力をもつかどうかも明確でなかった。
ところが、右でのべたように憲法院が前文で言及された人権文書を根拠にして法律の審査をするに至り、一七八九年の人権宣言や「共和制の法律が承認する基本原則」等に言及する第四共和制憲法前文が憲法的効力をもつ規定として蘇ることになったのである。さらに、二○○五年には環境憲章が前文に挿入され、これもまた憲法的効力をもつことになった。そこで、ここでもこれらの三文書を第五共和制憲法を構成するものとして訳出してある。

1958年
憲法の前文


フランス人民は、一七八九年宣言により規定され、一九四六年憲法前文により確認かつ補完された人の諸権利と国民主権の諸原理に対する忠誠、および、二○○四年環境憲章により規定された権利と義務に対する忠誠を厳粛に宣言する。
これらの原理および諸人民の自由な決定の原理の名において、共和国は、加盟意思を表明する海外諸領に対し、自由・平等・博愛の共通理念に依拠し、諸領の共通理念に依拠し、諸領の民主的発展をめざして構想された新制度を提供する。(この憲法前文は人と国民を分けていて「すべて国民は」で始まる日本の憲法二五条とを比べて考察してみる必要があるとおもいます)

教育制度の
特徴を見る


フランスの教育は中央集権制度で、六?一六歳までの学業が義務教育だ。教育はフランス教育省に帰属するあらゆる教育施設によって行われている。
フランスの児童、生徒、学生は約一五○○万人。総人口の二五%が学業に専念している。生徒一人あたりの年間教育支出(R&D関連を除く)は一○三○九米ドル(PPP調整)で、EU平均は八三三四米ドルとなっています。フランスの国内総生産に占める教育支出の割合は六・三%(うち公費が五・八%)となっている(EU平均は六・○%、うち公費が五・五%、個人負担が○・五%)。
一方、進級認定はたいへん厳格で、大学入学時、教授に「恋愛か勉強か選びなさい」と言われるという逸話があるほど勉強しなければ進級できないという。それで、だんだんふるいにかけられ、約三割が義務教育しか受けていないということになる(wikipediaより)。

11.27

けんり春闘発足総会・学習会

名ばかり「働き方改革」許さない

平和で平等な社会めざそう


 「18けんり春闘発足総会・学習集会」が、一一月二七日午後六時三〇分から全水道会館で行われた。
 来春闘は、安倍首相が一〇月総選挙で確保した衆院自・公三一三議席を背に、改憲発議に本腰を入れ、返す刀で、「働き方改革」法案強行成立を通して労働者の権利に大なたを振るおうとする中で闘われる。同時に、沖縄辺野古の米軍基地建設阻止の闘争がより一層重大な局面を迎え、朝鮮半島をめぐる緊張も緊迫の度を増すなど、民衆が平和の中に生きる権利を守る課題がより切実に具体性をもって問われる。まさに18春闘では、全労働者の生活と権利を守る春闘の意義がこれまでに増して問われることになる。
 「18けんり春闘発足総会・学習集会」では、この情勢に自覚的に立ち向かうべく、「働き方改革」をテーマとした上西充子法政大学教授の記念講演が学習集会として組み込まれ、さらに、平和フォーラムの勝島一博さんから安倍9条改憲阻止闘争について、沖縄・一坪反戦地主会の青木初子さんから辺野古新基地建設反対闘争について、特別報告が行われた。

私たちが求める
改革の中身は
上西さんは、働き方改革一括法案に込められた労働者の権利を空洞化する重大な問題点、および推進されようとしている「雇用によらない働き方」の危険性・無権利性を具体的に解説し、この法案が労働者のためではなく経済論理を優先したものであることを明快に解き明かした。しかしそれでも現実の苦難の中でこの安倍の打ち出しが一定の期待を集めていることを直視することも必要だと指摘し、私たちがどのような働き方を求めるのか攻勢的に打ち出すことが重要だ、と特に強調した。
勝島さんからは、政界という舞台では困難な情勢が生まれているが、多くの市民の自覚的立ち上がりというもっとも重要な力が作られつつあることを基礎に、安倍9条改憲反対全国市民アクション三〇〇〇万人署名運動に全力を尽くそうと訴えられた。
青木さんは、沖縄での米軍の傍若無人な行動が今現在も繰り返されていることを怒りを込めて告発した上で、他方でオール沖縄が国際的平和賞を受賞したことなど沖縄の闘いが世界的に認められつつあることを報告、本土からもより一層辺野古の新基地建設阻止の闘いに結集するよう訴えた。そして当面の取り組みとして、特に来年二月に控える名護市長選必勝に向けた取り組みへの協力が強く求められた。
都内を中心に結集した一一〇人以上の労組活動家は、これらの講演、報告に応える、東水労、全国一般全国協、郵政産業労働者ユニオン各代表による決意表明と共に、提起された訴えを共有した上で、問われた課題にこの秋の闘いと一体的に挑戦する春闘の組織化に全力を挙げよう、との以下の方針を確認した。

ストライキを軸に
意欲的な闘いを
18けんり春闘の方針は、同春闘共同代表の金澤壽全労協議長の代表あいさつに続いて、同事務局長を務める中岡基明全労協事務局長から次のように提案され満場一致で承認された。
まず課題と目標は、「17春闘から始まった、いわば『貧困と格差と差別と闘う総がかり行動』をさらに拡大させると共に、非正規労働者の処遇改善を柱にどこでも誰でも『8時間働けば生活できること』、『戦争をしない、させない社会』に向けて安倍政権と対抗し、安倍自民党政権の打倒によって平和で人間らしい生活を取り戻すこと」とされた。
その下で、「どこでも誰でも一五〇〇円、今すぐ一〇〇〇円への引き上げ」の最低賃金要求を軸とした賃金要求、一日二時間、月二〇時間、年一五〇時間の時間外法規制、8時間労働に基づく時短・要員増要求が決定された。
さらに非正規労働者の処遇改善として、労働契約法18条による無期転換の実現、労働条件引き上げなどが取り組み課題とされ、特に脱法行為を許さない職場闘争に力を入れることが確認された。またけんり春闘が意識的に重ねてきた外国人労働者・移住労働者の人権無視、奴隷労働の根絶、権利拡大を追求する行動をさらに進めることも確認された。
その上で、働き方改革推進一括法案廃案、9条改憲阻止、沖縄新基地建設阻止、などを中心に政治社会課題にも全力を挙げることとされた。
そしてこれらの闘いにあたっての行動方針は、ストライキを積極的に配置し、全職場でのスト権確立に挑戦、ストライキ支援を含んだ大衆行動を基礎にした要求実現をめざすこととされた。さらに18春闘では新たな試みとして、「8時間で働けば生活できる賃金」全国キャンペーンを、広範な協力と共同行動を追求する中で実行委員会を形成しつつ、来年四、五月にかけて実施することも決定された。このキャンペーンには、新たな政党の情勢を踏まえ国会院内闘争と大衆闘争、全国闘争を結びつける社会運動の一歩、という位置づけが与えられている。
他方で連合は今年夏、最終的には阻止されたというものの、高度プロフェッショナル制度容認へと動こうとするなど、国家との癒着の中で一部の利益のみを守ろうとするかのような姿勢をあらめて満天下にさらけ出し、労働者の運動主体としての信用を著しく失墜させている。18春闘は労働運動の草の根からの再建と強化という点でも重要な意味を与えられ、けんり春闘の役割はそれだけ重要になっている。まさにその自覚に立ち、全体を代表する闘いに打って出よう、労働運動の強化、それを牽引するけんり春闘を作り上げよう、との松本耕三共同代表(全港湾委員長)の閉会あいさつは満場の拍手で応えられ、この日の集まり全体は宇佐美雄三共同代表(全造船関東地協)の音頭による力強い団結ガンバロウで締めくくられた。 (神谷)



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