ろうそく革命から1年:評価と課題語り合う(下)
広場民主主義の実験まだ終わらず
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変化不足なら闘争への動き必至
キム「改革導く部門別の運動と連帯活動を促進してこそ」
パク「新しい社会の青写真、社会運動が先頭に立って作っていく」
アン「日常の変化を可能にする団体に加入しよう」
進行 振り返ってみるとこのろうそく抗争は、直接政治の可能性を内在した労働者、民衆が社会変化の主体に進出できる好機だった。しかし、今のところ、意味ある社会の構造的変化、さらには制度的変化も期待し難い状況だ。政界だけでなく、市民社会陣営でも「改憲」を通じて新しい社会へ転換するための下絵を描いてみようという議論が活発だ。最近、改憲議論の流れについてはどのような立場を持っているのか話をして見たら良いだろう。
キム 改憲に関連した議論は今労働、農民、貧民が一緒にしているが、民主労総は他の単位に比べて論議の速度が遅い方だ。農民の方は、議論が相対的に活発な方だ。最低賃金を憲法が保障する権利で条文化したように、コメ価格の保証も憲法上の権利にしようという話だ。とにかく、民主労総が話そうとする改憲は、権力構造の改編より労働の社会的地位と権利に関連された部分が多分あるのだ。「勤労」を「労働」に変えることが代表的だ。今、民主労総は中執単位でブリーフィングの水準で、改憲議論が共有されているため、この程度に大まかな方向を申し上げる。
パク 私が属している茶山人権センターは「国民主導の憲法改正、全国ネットワーク(略称「改憲ネット」)」に参加している。私はこの改憲議論を通じて人権の価値が基本権に含まれる可能性があるために、人権運動単位が主導的に参加すべきだという立場だ。現在、国会改憲特別委員会や改憲特別委員会の諮問委員会が打ち出した基本権条項を見ると、かなり前進している。
死刑制度の廃止や性平等条項、そして良心的兵役拒否権まで認めるなど、人権運動の長年の課題はひょっとすると、改憲論議を通じても解決できるという気がするのに……。ところで、ご存知でしょうが、これらの条項によって保守的キリスト教をはじめとした守旧勢力の広壮な抵抗にぶつかっている状況だ。
そのため、この広場の叫びがそうだったように、われわれの要求が得られなければ、この改憲論議が難航にぶつかる可能性が高い。統治形態の変化やいくつかの合意可能な部分を除くと、ほとんどの条項が争点として形成される素地が大きいことだ。
改憲ネットの核心の基調が「国民が主導する改憲でなければならない」だが、問題は国民不在の国会主導によるものだ、ということだ。実際に改憲が実現しても、いかなる闘いをしてその過程で人権運動は人権の価値をどのように付与するかが今後、カギだと思う。
アン 大きく二つのことが話されなければならないと見ているが、まず国民の基本権が強化される改憲でならなければならなくて、第二は国民が主導する改憲でなければならない。事実、改憲もろうそく集会の精神が込められた改憲でならなければならないと考える。5・18民衆抗争、87民主化運動、そしてろうそく市民革命まで実際の改正憲法の前文に反映されなければならないということだ。また、できるなら改憲内容に経済民主化、労働に関連した条項が含まればいいなと思っている。これに向けて全体社会運動陣営が積極的に対応してほしい。
進行 今、憲法をよく「87体制」で表現するが、その後韓国社会の変化を集約するキーワードは何だろうか。私はこれを「97体制」と表現しても「新自由主義体制」と表現しても過去20年間、韓国社会が経験した構造的矛盾を改憲過程で大っぴらにしなければならないと思う。
改憲をめぐる多くの談論が取りざたされているが、適者生存、競争体制の論理を経験したろうそく抗争の主役たちが社会公共性と国家の責任を新たな憲法精神に提起しなければならない必要があるのではないかだ。一方で、広場を通じて表出した大衆的な憤りと抵抗の力がどのように日常的な空間へと拡大される可能性があるか悩みも深い。
ろうそく抗争1周年を迎え、依然として残っている弊害の清算、社会大改革の課題を今後どのように実現しなければならないと見るか?
パク 広場の感情をよく見なければならないと思う。広場に集まった1700万のろうそくは朴槿恵退陣という熱望として一体感を形成したが、社会大改革に向けた青写真では合一した声をあげられなかった。そのように見たとき、この弊害清算の課題は新しい社会を作ろうとする社会運動と積極的な市民たちの役割ではないかと思う。
それではこの底辺をどのように広げることになるかが今すぐ心配されなければならず、広場の政治をどのように私の人生の政治、私の人生の変化に引き出すことができるのかがカギであるようだ。端的に労組に加入する人が多く、市民社会団体のドアをたたく人が増え、実質的な変化を可能にする多様な層位の声が結集するべきだと考えている。そんな仕事をするには今がひょっとしたら好条件ではないかと思う。
アン ひとまず、ろうそく市民革命を標榜する政府だと言って私たちがあまりにも過度に同一視する必要はなさそうだ。社会の変化が不十分なら、当然それを早めるために労働者、民衆は声を出して闘争するしかないと思う。とにかく私たちの生きる道は、労組、市民団体、進歩政党ではないだろうか。
この前のろうそく抗争がそうだったように、労働者、民衆の権利のため労組と市民団体、進歩政党が連帯して応援することができるネットワークが、町や会社のあちらこちらで活性化されることが重要なようだ。
キム 事実、民主労総では退陣行動の解散が非常に残念だった。現在としては弊害の清算に向けて各エリア別で注力している事業に充実し、事案によっては連帯制を構成する方式が最善ではないかと思う。
例えば、民主労総が、下半期「労組活動をしやすい世の中運動本部」を構成したのだが、このように特定した事案やきっかけを通じて各単位が共同対応を行っていれば、遠からず運動の潜在力が爆発する時期が再び到来すると思う。
進行 ろうそくの抗争を通じて明らかになった広場民主主義の実験がこのまま座礁したと断言するには早いようだ。不平等と疎外、差別が温存する体制に閉じ込められていては弊害の清算、社会大改革は期待できないだろう。
今日の座談では具体的な代案や経路まで話して見ることはできなかったが、これを実現する主体として、労働者、民衆の組織化が切実だというのは皆、同じ意見だった。
以上で座談会を終えます。
(「変革政治」54号)
安全文化欠如は歴然(上)
核発電所の安全宣言は荒唐無稽
事故70%超深刻度ランク引き上げ
「(核事故は)日本の原発では絶対に起こりえない。マグニチュード8・0の地震でも耐えられる」。チェルノブイリ核事故の被害者たちの肉声を盛り込んだ「チェルノブイリの声」で2015年ノーベル文学賞を受けたスベトラーナ・アレクシェビッチが日本・北海道の核発電所を訪問した時に、勤務者が言った言葉だという。われわれみんなが知っての通り、2011年3月11日、マグニチュード9・0の強震とそれによって発生した津波が日本・フクシマの第一原電敷地内6基の原子炉を襲い、このうち3基で炉心溶融(メルトダウン)が発生した。フクシマ原発の惨事は国際原子力機構(IAEA)が実施している国際原子力事故等級(INES)の評価の結果、チェルノブイリ核事故と同じ最悪の等級、7等級となった。
安全断言信じ
てもいいのか
「われわれの原発は日本の原発と特性が違うので安全だ」「原発の格納建屋は航空機が時速800qで衝突しても亀裂は起きない」。韓国の核専門家たちは、ソ連や日本の専門家たちがそう言っていたように「安全だ」という言葉を繰り返している。韓国水力原子力(韓水原)の広報スローガンは「わが国土、わが家族、わが国民であることのわれわれの基準はただ1つ、安全です」だ。安全だという言葉、信じてもいいのだろうか。
飛行機がぶつかってもびくともしないという核発電所の格納建屋内部の鋼鉄内壁(ライナープレイト)では原因の分からない腐蝕現象が発生した。ハンピッ1、2、4号機とハヌル1号機、古里3号機など6oの鋼鉄の内壁が完全に腐蝕し穴が開いたところまで発見された。ハン・ビョンソプ原子力安全研究所長は「映画『パンドラ』は現実を反映できないという指摘があるが…映画で格納建屋が爆発するときまで12時間ほど時間があったとすれば、今のような状況では6時間あるいは3時間で爆発する」(「プレシアン」2017年9月23日付)と語った。
泣きっつらに蜂とでも言うか、去る8月にハンピッ4号機では長さ11pのハンマー様の金属の異物が発見された。結局、政府は稼働中の核発電所24基すべてに全方位調査を行うと9月18日に発表した。今回の調査は2015年7月に施行された「原発非理(不正)防止のための原子力発電事業者などの管理・監督に関する法律」(原発監督法)の最初の適用ケースだ。同法は2013年の核発電所6基の稼働中断の事態を招いていた「部品試験成績書偽造事件」以後に作られた。韓国は核発電所の安全な運営のために核マフィアの非理まで法によって規制しなければならない国なのだ。
核発電にはチェルノブイリ、フクシマのような極めて危険な事故だけがあるのではない。核発電所は、いつ、どこで、何が起きるのか分からない時限爆弾のような存在だ。核マフィアたちの非理はもちろん、核発電所を運営している人々のばかげたミスによって放射性廃棄物が漏出されるさまざまな危険が横たわっているからだ。IAEAはINESを通して全世界の核発電所で起きているさまざまな故障および事故事件をゼロ等級から7等級まで全8段階に分類する。「ハンギョレ21」は韓国が国際等級評価を実施した1994年以降に発生した1等級以上の事件26件を全調査した。原発安全運営情勢システム(opis.kns.re.kr)に挙がってきた事件の概要と事件調査報告書や原発事件等級評価委員会の会議録などを参考にした。昨年9月12日、慶北・慶州のマグニチュード5・8の地震当時、慶州市陽南面羅兒里の海辺に位置する月城1〜4号機が地震警報の作動によって手動停止した事件が0等級の評価を受けた。1等級以上の事件は、慶州地震の時よりも原発内部でより深刻な状況が発生したという意味だ。韓国の故障事件の最高等級は2等級だ。26件のうち3件が2等級を受けた。
核事業所関連の
弱い環は「人間」
興味深いのは、韓国で発生した26件の1等級以上の事故のうち19件(73・1%)が「安全文化の欠如」のせいで1等級ずつ上向訂正された、という点だ。2015年7月を基準として原子力安全法が定めた報告対象事件693件を全数調査した結果(「国内原発の故障・事故事件についての安全文化の要因分析」、ハム・ジュンユン漢陽大修士論文)も大きく違っていない。約半分に相当する334件(48・1%)が、安全文化が欠如して繰り広げられたことだった。核発電所内の安全文化とは核発電所の運営において安全を最優先の価値とみなす組織や個人の態度として理解される。「安全文化の欠如」は核発電所の運営過程で安全が後ろの順位、つまり後回しにされているということだ。
安全文化と関連して最も弱い環は機械ではなく人間だ。原発安全運営情報システムが「人的ミス」だと分類した事件が26件のうちの10件(38・5%)であったし、事件調査報告書などを探ってみた結果、人的ミスが含まれた事件がさらに4件あった。26件のうち半分を超える14件(53・8%)が人間によってなされた故障だった。
2013年4月に発生した古里4号機の1等級故障事件では蒸気発生器から直径4p×高さ2・1pのボタン様の金属異物が発見された。韓国原子力安全技術院の調査結果、2年前の2011年の計画予防整備当時、照明灯をつけた鋸状の磁石だった。作業後、使用道具を回収せず、異物残留の有無も確認しないミスが累積して発生した典型的な「安全文化欠如」の事件だった。それによってこの事故はゼロ等級の故障事件から1等級へと「加重処罰」された。異物が発見された蒸気発生器は核発電所の3大重要設備だ。蒸気発生器内に異物が入流して、連結した細管を損傷させれば細管を通過する冷却水が漏出してしばしば故障が発生する。最近問題になったハンピッ4号機の長さ11pのハンマー状の金属異物が発見された所もまた蒸気発生器だった。漏出冷却水が放射能に汚染されていることも問題だけれども、冷却水が適時に統制されなければ核燃料が冷却されない。最悪の場合、フクシマ原発の惨事の時のように核燃料が溶け落ちる炉心熔融が発生しかねない。フクシマの原発惨事は発電所を襲った津波によって電源供給が断たれ、冷却水の供給ができなくてメルトダウンが起きた事故だった。
2014年10月、ハンピッ3号機の蒸気発生器でも6・8×2・7×0・34oの小さくて薄い金属異物が細管を損傷させる故障事故が発生した。調査結果、この金属チップは2012年の計画予防整備の過程で2012年の計画予防整備の過程で作業服、足場、工具箱などにくっついて流入したものと推定された。
(つづく)
(「ハンギョレ21」第1182号、17年10月16日付、チン・ミョンソン記者)
朝鮮半島通信
▲朝鮮中央通信は10月29日、金正恩朝鮮労働党委員長が改修された平壌化粧品工場を李雪主夫人と視察したと報道。安正秀党副委員長、金与正党宣伝扇動部副部長らが同行した。視察の日時は不明。金正恩氏の父の金正日氏も、14年前に同じ工場を訪問している。また朝鮮中央通信は11月4日、金正恩氏が自動車生産拠点の3月16日工場を視察したと報道。日時は伝えていない。金正恩氏の動静報道で製造現場の視察が伝えられたのは10月19日報道の改修されたリュウォン靴工場視察以降、3回連続。
▲著書「帝国の慰安婦」の記述が元慰安婦の名誉を傷つけたとして名誉毀損罪で在宅起訴された韓国・世宗大の朴裕河教授に対する控訴審判決で、ソウル高裁は10月27日、「歴史的事実をねじ曲げ、被害者たちに大きな精神的苦痛を与えた」として、1審の無罪判決を破棄し、罰金1000万ウォンの有罪判決を言い渡した。
▲韓国旧与党である自由韓国党の洪準杓代表は11月3日、収賄罪などに問われ、公判中の朴槿恵前大統領の除名を発表した。大統領経験者の除名処分は初めて。
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