NAJAT(武器輸出反対ネットワーク)が集会
軍学共同への流れ断ち切れ
憲法9条改悪と連動した戦略
|
政府主導の武器
セールス許すな
一一月一五日、東京・文京区民センターで「亡国の武器輸出 日本版『軍産複合体』の今」をテーマにNAJAT(武器輸出反対ネットワーク)の集会が行われた。集会には会場をほぼ満員にする一三六人が参加した。
二〇一四年四月にそれまでの「武器輸出三原則」が撤廃され、「防衛装備移転三原則」が策定されて以後、安倍政権は「武器輸出」を日本経済の成長戦略の中に位置づけ、政府主導の下で官民挙げてセールスに乗り出してきた。しかし「武器輸出」は当初、政治家や財界が期待していたような実績を上げるに至ってはいない。だがこうした現実に「安心」するのではなく、労働者・市民の中から「武器輸出」を日本経済の成長戦略にする思惑に対して批判の声を強めていくことが必要だ。
奈良本英佑さん(法政大名誉教授)の開会のあいさつに続いて、青井美帆さん(憲法学者・学習院大教授)、池内了さん(宇宙物理学者、名古屋大名誉教授、軍学共同反対連絡会共同代表)、杉原浩司さん(NAJAT代表)の三人が講演した。
科学を軍事に
奉仕させるな
青井さんは九条改憲論議の中で武器輸出三原則の改変が行われたが、九条に「加憲」すれば(すなわち九条1項、2項をそのままにした上で3項として自衛隊の存在を明記)、ただちに1項、2項が骨抜きになるわけではない、と述べた。しかし政府が「武器輸出三原則」の改変についての国会論戦も、国民的議論・選択もなしに「武器輸出三原則」から「防衛装備移転三原則」に移転したことに正統性が伴っていないため、「もう済んだこと」にはならず、「私たちは承認していない」と主張することは十分に可能だ、と語った。
続いて池内了さんが「軍学共同の現状と反対運動の課題」と題して報告。「軍学共同」とは、「学」セクター(大学、研究機関)が「軍」セクター(防衛省・自衛隊)の下請けとなり、軍事装備品の開発を目的に、情報交換、アイデア提供、研究提案、開発研究の実施にあたる ことだ、と定義した。現在行われている事業としては防衛省技術研究本部と大学・研究機関等との「技術交流」、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」による委託研究がある。
戦後、日本学術会議は「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」(一九六七年、日本学術会議第四九回総会決議)としてきたが、二〇一三年閣議決定(「大学・研究機関との連携を強め、防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の活用に努める」)、二〇一四年閣議決定(「防衛装備移転三原則」)を通じて大転換が進められ、宇宙の軍事化にも積極的に対応するようになった(情報収集衛星、Xバンド衛星など)。
そして二〇一五年から防衛装備庁が公募して軍事研究のための資金提供を、大学、企業に申し出るようになっている。二〇一七年の応募総数は一〇四件で、うち採択されたのは一四件、公的研究機関が五件、企業が九件で大学はゼロだった。
学術会議の大西隆会長は、大学での「防衛目的の研究」を受け入れる立場を表明したが、二〇一七年三月二四日日本学術会議は五〇年ぶりに「軍事的安全保障研究に関する声明」を発表した。それは一九五〇年、六七年の声明を「継承」するという立場だが、軍事研究と見なされる可能性のあるケースについて「応募すべきではない」とまでは言っていない。それでも三〇以上の大学が「応募しない」ことを宣言している。
池内さんは、このまま軍学共同が進めば、科学は政府や軍に奉仕するものに堕落し、市民からの信頼を損ない、普遍的真理の研究から外れて政府や軍に奉仕するものになると警告した。そして大学での軍事研究の差し止め、公的研究機関への働きかけ、市民・平和団体との共同行動を積み上げていくよう訴えた。
池内さんは、「加計学園」の獣医学部新設に触れながら、「従来の獣医学部に加えて新しいニーズに対応するもの、すなわち生物化学兵器研究の必要性も視野に入れたものになる可能性」についても語った。
市民の力で経済
軍事化STOP
杉原浩司さんは「『武器輸出する平和国家』は存在し得ない〜日本版『軍産複合体』の現段階を見る」と題して報告。日本からの武器輸出は未だ目立った実績を上げておらず、武器本体輸出も難航していること(英国への対潜哨戒機、オーストラリアへの潜水艦などで他国に敗れた)、しかし武器の共同開発(ミサイル迎撃ミサイル、空対空ミサイルなど)は進展し、フィリピンやマレーシアへの練習機、対戦哨戒機の譲渡は進んでおり、それは英国主導の「対中包囲網」づくりと連動したものである、と指摘。科学技術の軍事化、民生技術の軍事転用が加速化すると警告した。
さらにイエメンを無差別空爆しているサウジアラビアと結びついたUAE(アラブ首長国連邦)へのC2輸送機の輸出、インドの次世代潜水艦共同開発などの動きについても注意を促した。
杉原さんは、軍需産業による武器輸出の一つひとつの動きを敏感にキャッチし、それをストップさせる取り組みを、着実に積み重ねていくことの重要性を訴えた。
海外派兵国家のもう一つの姿は武器輸出=「死の商人国家」でもあるということだ。憲法九条改悪と結びついたこうした流れ、経済の軍事化との対決を!(K)
11.16
米「レイバー・ノーツ」との交流集会
「代行主義」にならないよう
共同センター・労働情報が主催
労働争議勝利
の経験を紹介
一一月一六日、東京の文京区民センターで「協同センター・労働情報」が主催して「運動をつなげ、拡げ、組織する〜米国『レイバーノーツ』との交流・対話」が行われた。
「レイバー・ノーツ」は一九七九年からアメリカの草の根の労働運動・社会運動の媒体として重要な役割を果たしてきた。それは日本の「労働情報」とほぼ同時代の経験を共にしてきた活動家グループであり、実際、「労働情報」と「レイバーノーツ」とは長年にわたる交流を積み重ねてきた。「レイバーノーツ」から参加したのは、ジェーン・スローターさん。GM(ゼネラル・モータース)の自動車工場で働き、全米自動車労組(UAW)組合員として活動するとともに「レイバーノーツ」の創設者の一人で、初代編集長でもあるベテランの活動家だ。
柚木康子さん(「労働情報」共同代表)が開会のあいさつを行い、松本千恵さん(「労働情報」編集人)の司会で進められたパネルディスカッションの日本側パネリストは鈴木剛さん(全国ユニオン会長、管理職ユニオン執行委員長)と須田光照さん(全国一般東京東部労組書記長、NPO法人労働相談センター副理事長)。二人とも中小労働運動のオルグとして実績を積み重ねてきた。
最初に日本側から、この間の両組合の代表的な闘いの映像が紹介される。鈴木さんが関わった闘いは茨城県のスガノ農機の闘い。スガノ農機は、労働者が強制的に寮に住まわされ、新入の女子社員に社長といっしょの部屋を押しつけられたり、ボディータッチを強要されるなどのセクハラ暴力を受けることもあった。
こうした社長の常軌を逸した振る舞いに、労働者たちが怒りの職場占拠に立ち上がり、社長の豪邸に押しかけて追及するなどの闘いを通じて勝利した映像が映し出された。
東京東部労組は一九六八年に結成された地域合同労組で、現在四〇の支部と八二三人の組合員を擁している。須田さんはメトロコマース支部の非正規の女性労働者の闘い、多摩ミルク支部の七二時間のストライキ、上野アメ横のガンショップでの全員解雇に抗して職場占拠で闘い、解決を勝ちとったマルゴー支部の闘争を紹介した。
東部労組の須田さんは、代行主義ではダメで、毎日働いている労働者自身が抑圧・差別・搾取に対して声をあげることが始まりであり、闘っている労働者たちはかわいそうな存在ではない、と強調した。
現場での闘い
を相互に交流
ジェーン・スローターさんも自ら自動車工場で闘ってきた経験をベースに、「トラブルメーカー・ハンドブック」を作成し、「抵抗するオルガナイザー」として、こういう闘いをやっている人がいる、と知らせることの重要性を強調。実際の闘いを見て、記録を読んで、自分もその闘いを体験することが重要だ、と語りかけた。一九七九年に発刊した「レイバーノーツ」はいくつかの変化を経ている。
各職場での反乱、闘いは現に起きているのだが、たとえば炭鉱労働者と鉄鋼労働者は、お互いの闘いについて知らなかった。「レイバー・ノーツ」はお互いの闘い、経験を知るために作られたと言ってよい。お互いのことを知るためにアンケートを取ることが実に有益だった。
ジェーンさんはキャデラックを製造するGMの工場にいたが、組合は弱体化していた。そこで始業のブザーが鳴った時に誰も工場に入らず、ピケットに参加する闘いが始まった。しかしGMの組合執行部はヒラの組合員が自発的に闘うことを気持ちよく思わず、会社と協定を結んで「会社とわれわれはあなたをクビにすることを決めた」と手紙を送った。
しかし怒った一般の労働者たちは、クビになった二人の労働者を全国大会に送った。クビになった労働者たちは結局GMに戻らず、クライスラーで働くことになり、クライスラーで組合の機関紙をつくるようになった。それが「レイバーノーツ」の発刊につながったのだという。
成功の実積を
積み上げる!
ジェーンさんは現場の労働者が、闘いの中心にいる活動家をどのようにして支持するようになるのか、労働者をつなぎとめストライキをどのように決断していくのか、一人ひとりが一人でも闘うことを決意しながら、真剣に周囲に働きかけることで職場を変えていくのかと問いかける。
「どうやって仲間に働きかけるのか」―ジェーンさんは「周囲の人々は無関心だから動かないわけではない」と語る。成功の体験を積み上げることが必要だ、と言う。「社長にモノを言うときの恐怖感はみんなが経験してきたことだ。それを忘れないことが重要だ」とジェーンさんは語る。
アメリカでは職場の労働者の過半数を参加させなければ、労働組合は作れない。そのような条件の中でアメリカの労組組織率は一〇・七%だという(日本は一七%程度)。
ジェーンさんは最後に昨年の大統領選についても話した。AFL─CIOは事実上、民主党の大統領候補を決めてしまうほどの力を持っている。しかしバーニー・サンダース支援の動きが高まってくると、大きな組合もなかなか支持候補を決められないほどだった。
組合員にとっては誰を大統領候補として支持するのか、ということはあまり関係なかったのだが、今回はヒラリー・クリントンじゃダメという一般組合員の声が出てきたという。それはAFL─CIOにとっての民主主義的経験であり、普通の労働者が変わっていく契機になるかもしれない、とジェーンさんは語った。(K)
11.18
辺野古実が新宿デモ
緊迫する現地に行こう
土砂搬出阻止の行動へ
一一月一八日、冷たい雨の降る新宿駅東口アルタ前から、辺野古への基地建設を許さない実行委は、定例の新宿デモを行った。午後二時から始まったデモ前集会でのメインテーマは「辺野古埋め立て差し止め訴訟支援・米軍基地をつくらせない!」。
集会では、昨年四月に起きた元米海兵隊員で軍属のシンザト・ケネス・フランクリンによるうるま市の女性会社員への暴行・虐殺事件の公判に触れながら、一一月二五日の「女性に対する暴力撤廃国際デー」への結集(午後六時半〜、午後七時半〜の二回キャンドルアクション 渋谷駅ハチ公前ひろば 主催:日本軍「慰安婦」問題解決行動)などが呼びかけられた。
また来年二月四日投票の名護市長選で稲嶺進市長の三選勝利に向けて、応援の体制をとることも訴えられた。さらにデマで辺野古新基地反対の闘いを誹謗する東京MXテレビ、さらに「ニュース女子」の制作を行っているDHC(化粧品、サプリメントなどの販売企業)への行動が紹介された。
辺野古現地では、一〇月、一一月の第一土曜日の行動に続き、一二月二日(土曜日)にもゲート前での土砂搬出阻止の行動が呼びかけられている。ヤマトからも一人でも多くの参加を!というアピールも行われた。
この日の集会は約一〇〇人と、いつもに比べてやや少なかったが、冷雨をついて大成建設本社のある新宿センタービル前で抗議の声をあげ、さらに新宿東口のメインストリートで道行く人に訴えるデモを行った。
(K)
|