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    かけはし2017.年11月13日号

鍵は自己決定権と憲法制定


カタルーニャ

複雑かつ不安定な政治情勢

アンドレウ・コル


 カタルーニャをめぐる情勢は、ラホイ政権による強硬対応とプッチダモン自治州首相のベルギーへの移動により、緊張の高まりの中不透明さを増している。この状況がどのような脈絡の中で生まれているのかを、現地の同志が伝えている。この情勢に対し、新たな民主的で社会的な共和国創出をめざす闘いで立ち向かうと訴える、カタルーニャのFI組織の声明と合わせて紹介する。(「かけはし」編集部)


  一〇月二七日のカタルーニャ共和国独立宣言は、それが何らかの統治行為に、あるいはこの領域で権威を発揮する意志に移されなかったがゆえに、もっぱら象徴的なものだった。
 以下にあげる基本的な三つの理由から、一つの国家を創出することはあり得ないことだった。
▼ゲネラリタート(カタルーニャ自治政府)は、それを機能させる手段(いわゆる「国家機構」)を欠いていた。。
▼スペイン国家とのある種の暴力的対立を避けることが不可能だった。そしてそのような対立は変わることなく、「プロセス」(カタルーニャの決定権を求める運動に結びついているあらゆることを明確に限定している主権運動の短縮形)によって反対されてきた。
▼これらの特性をもつ一つの対立を維持できる、独立派の明白な社会的多数が存在しているかどうかがはっきりしていない。

自治州政府に
諸々の弱さが
われわれには、先頃のできごとを解釈するための十分な情報がある。
▼一〇月一日の国民投票の決行は、カタルーニャ自治政府とその公職者たちの消極性にもかかわらず、市民社会(オムニウム、カタルーニャ民族会議、しかしまたはるかに決定的に国民投票防衛委員会)の、またボランティアのおかげで可能になった。自治政府は、国民投票が実行不可能になっていたとすれば、単にその抑圧を非難しただけだったと思われる。
▼交渉に対する中央政府の拒絶、および権力問題を解決する不可能性(国家があくまで暴力を使う用意を整えていた以上)を前提に、自治政府は始めから、一〇月一日の権限付与を実行に移す不可能性を分かっていた。
▼一〇月二六日のプッチダモンの提案――UDI(一方的独立宣言)を実行せず、通常の選挙を行うという――は、憲法一五五条発動を維持するというPP(国民党)のあからさまな意志によってというよりも、独立派ブロックの亀裂を避けたいという切望によって反対を受けた。
▼自治政府は、情勢悪化を回避した。そして一〇月二七日に共和国を守るために無抵抗案を必要とした。自治政府は短期的に抑圧から自身を防護することを、またラホイからの選挙という挑戦を受け入れるにしても、この紛争を諸国とEU諸機構に直接訴えて国際化することの方をよしとした。

スペイン国家の
深い政治的危機
カタルーニャ政府の「亡命」によって生み出された混乱、決起を求めてあげられる具体的な声の不在が引き起こした士気阻喪、さらに他の場合であればむこうみずなラホイの戦略に検事総長が足並みをそろえたという事実にもかかわらず、スペイン国家の公然とした政治的危機は、次のようないくつかの理由から大きな重要性を抱えたまま持続している。
▼憲法一五五条は、極めて深刻な反民主主義の先例をつくり出している。それは、君主制を支持する三党体制(PP、シウダダノス、PSOE〈社会労働党〉)を好まないすべての自治コミュニティに敵対して、また政治的退行の危険の点から含みのあるすべてを付随して、特に欧州でもっとも腐敗した政党の都合に合わせて、全体化される可能性があるのだ。
▼君主制支持の三党体制の政権形成方式は、中長期的に、ラホイが少数のまま首相にとどまることにPSOEが力を貸した後では、この党を不可逆的な歴史的低落の道においている。そうでありながらラホイはその首相職を、カタルーニャでは最弱な議会勢力でありながら事実上の自治政府首相に変えることを促進してしまった。そしてラホイは、システム全体の腐食を避けるための予備品をまったく確保していない。
▼君主制は、憲法がそれに割り当てた調停者と仲裁者という役割とはまったくかけ離れた、明確に権威主義的かつ脅迫的役割を演じることで、弱体化された姿として現れることになった(国王は国民投票に対し脅迫的演説を行った:訳者)。

 われわれが自己決定権とカタルーニャでの憲法制定プロセス開始の闘争に対する支持を維持しなければならない理由こそ、こうしたことだ。そしてそのプロセスは、スペイン国家の残りの地に全般化される可能性をつくり出し、一九七八年の君主制体制と決裂する必要を再確認する。実際その体制は、カタルーニャ危機によってはっきり示されたように、改良されたフランコ体制以外の何ものでもないのだ。

▼筆者は、アンティカピタリステスのメンバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年一一月号)

カタルーニャ

声明

共和国を防衛し

憲法制定プロセスの開始を

アンティカピタリステス

 本日〔一〇月二七日〕州議会は、カタルーニャが独立共和国となるという、また一〇月一日の国民投票で示された民衆の意志を基礎とした憲法制定プロセスの開始を求める決議を承認した。われわれはこの決定を支持し歓迎するが、それはまだ、カタルーニャの民主主義ブロックの全体を納得させているわけではない。現体制との決裂は、一〇月一日が不可逆となるための必要な一歩だった。しかしながらそれは、憲法制定プロセスの中に含まれなければならない、その親独立派ではない人びとの微妙な感情を統合する左手を欠いている。
 同時に上院は、カタルーニャの主権に敵対するクーデターである、憲法一五五条の発動を確認した。憲法秩序と一九七八年体制に対する挑戦は今、カタルーニャ共和国の宣言をもってその頂点にある。この理由から、クーデターに対決してカタルーニャの主権を防衛することは、差し迫った任務だ。
 寡頭支配層と既成秩序の諸政党は、カタルーニャにおける彼らの権力を回復するために、可能なあらゆる装置を使うだろう。彼らは、われわれが国民投票を実現したように、彼らのもくろみに対決する、不服従と組織された社会を見つけるしかない。そうしてわれわれは、復古を避けることができるのだ。抑圧に反対するだけでなく、建設的な構想としての新しいカタルーニャ共和国の防衛としても、幅広い民主的な戦線を作り上げることが必要だ。
 かつて以上に今基本となることは、カタルーニャの歩みが孤立しないこと、またその歩みが、カタルーニャの外にある組織や運動との、連携と連帯を追求しなければならない、ということだ。カタルーニャの外でも、多くの組織と運動が、一九七八年体制を終わりにするために、またこの体制を生き長らえさせようと準備中のPP(国民党)および全国家機構の権威主義的展開に反対する協働作用を求めるために活動中なのだ。カタルーニャの運動と腐敗した制度的枠組みに反対するスペイン国家を貫く闘争との間にあるこの弁証法をはっきり表現することが、カタルーニャ共和国の防衛にとっては戦略性をもつ。
 この時にあたって、鍵となるものは憲法制定プロセスだ。それを、一つの原理的支柱としての民衆組織の諸空間から発展させよう。われわれが生きているこの日々が確実に不可逆となるよう、労働者階級を確固として主役にしよう。
 二〇一一年以後のカタルーニャにおける決起のサイクル、ディーセントワークを求める闘争、そうして住宅がある種の特権とはならないようにする闘争、エネルギーの乏しさを根絶し、性差別的暴力に終止符を打ち、公共財としての水を防衛し、難民と移民にとっての受け入れ国となるための、こうした多くの闘争は、共和国の建設にわれわれが行うことのできる最良の貢献だ。独立派潮流の多数派がこれまで裏面に置いておきたいと願ってきたすべては今日、また正統性拡張のためにも、主権獲得の中心に置かれなければならない。
 共和国をカタルーニャの社会的多数の必要を満たすことのできるものにすることが、それがエリート内部の単なる交代になることを避けるただ一つの道だ。われわれはこの何週間か、確立された憲法秩序に対するどのような異議申し立ても直面する、諸々の困難と脅迫を経験してきた。カタルーニャ、スペイン、また欧州の寡頭支配層は経済、メディア、さらに諸機構を支配しているのだ。
 われわれは、憲法の起草に限定されない、自らを議会に従属させない、そうした一つの勢力を築き上げなければならない。むしろ逆にわれわれはその勢力を、彼らの脅迫への対抗力を街頭や広場で構築するものとして、われわれが通過中の困難な時を貫いて底辺の人びとを保護する民衆的な権力を築き上げるものとして、必要としている。そしてその目的は、ここ何日間の失望と不安を取り除き、確実に彼らを、われわれが切り抜けようとしている決定的な日々の主役にすることだ。
二〇一七年一〇月二七日、バルセロナ
▼アンティカピタリステスはカタルーニャにおける第四インターナショナル組織。スペイン連邦レベルでは、アンティカピタリスタスの一部。(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年一一月号)  


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