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    かけはし2017.年10月30日号

市民社会共同の取り組みが必要


長時間労働との闘い「過労死OUT共同対策委員会」発足

 チェ・ミョンソン民主労総労働安全保健局長に聞く


 長時間労働による死の行進を止めようと「過労死OUT共同対策委員会」が去る9月12日に発足した。対策委発足宣言文によると、「毎年、労災と認定された過労死亡は労働者だけで310人に達しており、自殺の中で労働者の割合が35%を超えている」また、「1日16時間以上働くバスだけでなく、実労働時間が最も長い1人1車制のタクシーは交通事故率が68・9%に達して、病院従事労働者の長時間労働は、医療事故を頻繁に起こし続けている」。企業の利潤のために労働者を長時間労働に追いやっている現実をどうすれば変えることはできるだろうか? チェ・ミョンソン民主労総労働安全保健局長に会い、「労働時間特例59条の廃止」と「法定公休日有給休日化」など過労死OUT共同対策委員会の主要事業と、その後の活動方向についての考えを聞いた。

Q こんにちは。先ず過労死OUT共同対策委員会を発足することになった背景と推進経過に対するお話を願いします。

A 過労死OUT共同対策委員会が発足する前には個々の事案に対する対策委活動がそれぞれ進行していました。 ネットマーブル過労死・過労自殺と関連して金属労組、ソウル支部南部地域支部と「労働者の未来」(ソウル南部地域労働者権利を取り戻すため事業団)の対応があり、イハンビッPDの過労自殺関連にしても、対策委活動が進められていました。
しかし、このように個別対策委活動がほとんど労働組合と労働安全保健団体、市民社会団体を中心に進められている過程で、民主労総にこのような問題提起がありました。まず一番目はこの問題が結局は長時間労働による問題だが、個々の懸案に対応するだけでは問題の解決は難しいということでした。それで民主労総が労働時間短縮のためにこの闘いを共同の戦線として作っていくべきではないかということでした。
二番目は個別の懸案に対して、一生懸命に戦って一部成果を出したりもするんですが。 これが結局は個別事業場の労働時間短縮にはつながらないというのです。
例えば、イハンビッPDが過労自殺で死亡してから結局、遺族に謝罪もしてTVNと合意に達したが、再発防止対策が本当に重要じゃないでしょうか。この死を通じて、何らかの改善が行われなければならないが、これが事案別対策委レベルで非常に難しい問題だという点を確認したということです。
これまで労働安全側では墜落、下請散在のように主に事故性災害や感情労働(感情を統制して顧客サービスを行う仕事)に集中してきたが、過労死と関連しては私たちが全くアクセスがなかったのです。このような反省をしながら、一応現在、個別対策委の活動は維持していっても共同対応を通じて根本的な問題解決に進む対策委員会を構成すると、このような共感を形成したものが過労死OUT共同対策委員会を構成するようになった背景です。
いったん、民主労総は、産別を中心とした内部懇談会を2回行いました。そして市民社会団体とともにこの対策委がどんな目標を持って事業をするか共有する懇談会も5回ありました。他の一軸として、労働時間特例、長時間労働と関連して集配労働者過労死問題をはじめとする状況がずっとあったために、これは対策委発足以前でも懸案対応をしなければならないという声が多かったです。それで準備委の名前で優先してできる懸案対応から進めました。このように対策委員会の構成、組織拡大についての論議とともに懸案対応もしていき、9月12日正式に発足をするようになったのです

労働時間特例制度が抜け穴に


Q 無制限労働とそれによる過労死、過労自殺をあおっている主な要因に、労働基準法の労働時間の特例条項(労働基準法第59条)を言及したんですよね。この制度の問題点について具体的に教えてくれませんか?

A 長時間労働を強制する労働時間法制度はとても多いですが、その中でも労働時間の特例が代表的な弊害だと考えているんです。もともと1961年にこの法が導入された時には非常に特別な場合のみに限定して労働時間や休憩時間を現行の法を超えてできるように許容したのでした。それでその要件も公益、国防上の必要程度であり、当時は保健社会部長官の承認と一定の上限時間を規定して導入されたのでした。 ところで、これが規制緩和となり、現在は労働者代表の書面合意さえあれば労働時間と休憩時間を勝手に変更して行うことのできるそんな制度に変わったのです。
特例の業種に関係してもこれまで業種縮小に対する議論がまともに進行できなくなったため、現在は26業種が適用されて全体労働者の半分に上る労働者が無制限労働に苦しんでいます。今、労働組合の組職率が10%に過ぎない現状での労働者代表との書面合意ということはほぼ形骸化した実情でしょう。労働時間や休憩時間を事業主の一存で行使できるから。それが端的に表れたのが集配労働者問題という気がします。集配労働者過労死・過労自殺が最近相次いで発生しているが、労働基準法の適用を受ける労働者も郵政労組(韓国労総所属の)が書面合意を通じて特例を持ち込んでおり、無制限に長時間労働を通じて人が死んでいっても、法違反がないんです。 何の処罰も受けていないんです。
とにかく、これが対象業種の労働者があまりにも広くなると、労組が全くないか、力が弱くて書面で合意してやったり、それとも、自分も知らない新しい書面合意になって長時間労働をする労働者たちがとても多いのです。この点から、労働時間の両極化でも特例がもの凄く重要です。労組があったり、支払能力のある大企業はこんなに長時間労働をしないが、労組がない又は支払能力が脆弱な事業場では長時間労働が次第に拡大されているんですから。
しかも、市民安全・公共安全と直結する特例業種が多いんですが、バスやタクシー、航空地上操業、病院まで全部特例業種に指定されているためです。そのため、対策委は労働時間特例制度を長時間重労働の原因であり、市民安全まで脅かす問題だと主要に提起しています。

Q 長時間労働をあおる要因として包括賃金制問題も取り上げられています。包括賃金制契約が長時間労働につながる理由は何ですか?

A 今、私たちが労働時間短縮を語る時もう一つの重要な問題が低賃金じゃないですか。 賃金問題が解決できないから、労働時間を短縮しても毎日、基本的な生活ができない条件で結局、長時間労働を選択するしかないんです。このような現実で包括賃金制まで適用になるから実質的には労働者たちが長時間仕事をしても、その賃金すらきちんともらえない状況です。
今かなり多い業種で長時間労働が行われる背景には包括賃金制問題が大きく作用しています。それで包括賃金制で契約したら長時間労働をしても、延長勤労手当て、夜間勤労手当てや休日労働手当てのような法定手当てを別々に計算せずに総額「いくら'」で支給するようになります。こうなれば、実際に事業場では10時間、11時間ずつ働くように強制できる、週40時間労働は法典にだけある良い話に過ぎないようになるのでしょう。
日本のような場合には労働時間を記録するのが法制化されているそうです。労働時間が記録されるという意味は結局、賃金形態を可視化して見られるってことじゃないですか。ところで私たちはそんなのないんです。包括賃金制の下では労働者たちが16時間を働こうが12時間を働こうが、10時間を所定労働時間として賃金を計算することですからね。しかもそこに成果と連動して年俸制まで入っているのが実情なので問題がかなり複雑に絡み合っています。

無制限労働を是非なくしたい

Q では、労働者だけでなく、市民安全まで脅かしている長時間労働問題を解決する代案は何だと思うんですか?

A 最近市民安全問題で露見したのがバス交通事故だったでしょう。 事故が発生した時に国土交通部で連続運行時間を制限し、少なくとも休憩時間の確保を義務化する告示を出したんです。 それでこれに違反した事業場については処分をして、該当する運輸労働者も直接処罰する方式で国土部が対策を出したんです。例えば、何回か違反すれば、その運輸労働者の免許を取り消すことに決めたんです。ところで、公共運輸労組レベルでは、国土部がこのようなやり方で問題を扱うことに大きく反発したんですよ。なぜなら、これは労働者が勝手にできる問題じゃないからです。根本的には長時間労働をする運輸労働者の労働環境で始まった問題だというのです。
それでこの問題は特例制度を廃止し、労働時間を短縮して交代制で運営すれば解決できることです。 欧州では長時間運行が避けられない路線の場合にはバス一台に運転手2人が搭乗して必ず交代で運行できるようにすると言います。 また、米国やドイツのような国を見ると、大型交通事故をたくさん誘発する貨物トラックの場合には特定の高速道路で深夜の運行を全面禁止させたりするとか、このようないないろいろなアプローチもあるようです。
結局、労働者たちが、一定時間労働をしたら、それ以上の超過労働を禁止して適正な休憩時間が保障されるようにするのが最善です。

Q 対策委は法定公休日有給休日化に向けた活動にも力を入れていることを知っています。 雇用が不安定な非正規職や中小零細事業所労働者にとって今回の秋夕連休がそんなに嬉しいだけではなさそうです。

A 法定公休日有給休日化要求は中小零細事業場が密集している地域で組織事業を進めている共同事業団(労働者の権利を取り戻すため事業団あるいは戦略組織事業団)で提出している事業です。先ずは国会の立法推進を活動の柱の一つとしています。共同事業団では10月末や11月初めに有給休日と関連して、国会討論会を準備しています。
そして国会立法に向けてはどうしても社会的な公論化が多くならなければならないじゃないですか。これに先立ち労働時間の両極化問題を申し上げました、事実労働組合がいる事業場は、全体労働者に比べて相対的に有給休日の保障をよく受けている側面があるのです。それにもかかわらず、全体労働者の有給休日化に向け、民主労総の組合員から先にこれを主張することを出発地点にしようとします。
それで一次的には民主労総の組合員の署名運動を進めています。これからはこの問題において脆弱な労働者たちが密集している地域、主に中小零細事業所労働者たちを対象に有給休日関連した戦略キャンペーンも進める計画です。一部の地域では先刻申しあげた署名運動を工業団地地域の宣伝戦とともに、並行する予定です。もちろん、過労死OUT対策委員会もこの事業に結合することにし、秋夕の連休前に「赤い日はみんなで休もう」はオンライン署名運動と認証ショットデーも進める予定です。

Q 10月中には「過労死予防センター」を通じて法律や医学の相談支援体系ももうけるという消息も聞きました。 過労死予防センターはどのように設立されましたか。

A 過労死予防センターは過労死OUT対策委の参加団体の一つでもあるそうです。 この予防センターは仕事と健康、民弁の労働委員会、そして労務士の方、職業環境学医師の方たちが一緒にやっています。2014年に日本で過労死防止法が作られたそうですが、仕事と健康でその間、日本と交流事業を進めており、過労死防止法とか過労死を予防するための様々な過程と活動を国内に紹介しながら、我々もこのようなものが必要だという問題意識で2年ずつ、引き続きセミナーをしてきた過程だそうです。今、予防センターの活動に参加したいという方たちがおよそ50人くらいと言うが、かなり多い数字に見えてこれがまた、全国に分散すればそれほど多くない数字なんです。
それで今急務は専門家単位で支援・相談システムを構築することで、その次に過労死OUT対策委が懸案が発生した時、民主労総と様々な単位が連携して一緒に共同で戦っていこうという体系を整えます。そして、対策委に対して過労死予防センターにいらっしゃる方たちが政策研究チームとしても結合していらっしゃいます。 先刻申しあげた懸案支援だけでなく、長期的には制度改善に向けた政策的なアプローチも模索しています。

過労死続出する企業に社会的圧力を


Q その他に過労死OUT共同対策委員会が展開しようとする事業(活動)に対する今後の計画もお話聞きしたいです。

A 一方では今、私たちがこのような部分も悩んでいますが。労働時間短縮がただ法だけで解決できる性質の問題ではないと思うんですよ。過労死や過労自殺が発生した時これが個人の問題ではなく成果圧迫や長時間労働を強制することで、結局労働者を死へと追い込んでいる問題が、必ず提起されなければなりません。それが社会的にずっと公論化されなければならないと思っています。
例えば郵政事業本部が代表的だと見ることができます。今ここで公共機関にもかかわらず、継続して過労死、過労自殺が起こっているじゃないですか。それでも郵政事業本部がこの問題の責任を認めたり、状況を改善しようという意志を全く見せていません。 結局は該当事業場の労働者たちが闘っていくべき問題でもあるが、過労死OUT対策委のような市民団体らが各自の領域でこのような企業について絶えず問題提起することが本当に重要なようです。それでこれらの企業が社会的な圧力を感じることができるようにして、労働部も労災補償に止まるのではなく、企業に対する管理監督や処罰までつながりかねないようにしなければならないと思います。
今悩んでいるのは私たちが事故性災害が多発する事業場を毎年選定して社会的な非難を受けるようにする活動をこれまでしてきたじゃないですか。 これは過労死が多く発生する企業に対しても、(それなりの基準や指標を作るべきだが)社会的な公論化過程が必要と思います。
他方では市民のサービスと連携している業種についても悩みが多いです。集配労働者たちの長時間・重労働問題の一つで「東洋宅配」問題が提起されています。外国のような場合には夕方になればほとんどすべてのサービスが中断されるでしょう? みんな休みますよね。
ところで今韓国は24時間フル稼働しながら、土・日曜日にも公共の領域でも民間の領域であれ、どのようなサービスでも提供されることがサービス品質が良いと評価されているという話です。まさにこうしたものが長時間労働、休日のない労働の風景の一つだと思います。 私たちがこんな経験もあるじゃないですか。「サービス労働者たちに椅子を」この労働者に椅子を与えるべきだという意味は長い時間立ったままで顧客に応対しなければならないためにサービス労働者が大変な理由もあるが、まるでこれがお客様を一番に扱うサービスの最高頂点だと認められる風土も一役買ってと思います。
だから長時間労働問題も、韓国がサービス労働者にいつも親切な微笑みを強要する感情労働の問題を提起して「サービス労働者に椅子を」くださいと要求したように、顧客と呼ばれる市民にもコンセンサスを広める運動が並行されなければならないようです。

(インタビュー=イムヨンヒョン機関紙の委員長)

 

朝鮮半島通信

▲朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)で10月7日、朝鮮労働党中央委員会総会が1年5カ月ぶりに開かれた。金正恩党委員長は総会で、核・ミサイル開発の継続を表明した。労働新聞は、総会で新たに選ばれた政治局員5人と政治局員候補4人を報道。政治局員候補には、金正恩党委員長の妹のキム・ヨジョン氏(朝鮮労働党宣伝扇動部副部長)が含まれていた。

▲朝鮮の祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」とインターネットメディア「メアリ」は10月6日、昨年2月に操業停止している開城工業団地について、朝鮮の労働者が開城工業団地で働いているとしながら、「開城工業地区に対するすべての主権はわが共和国(朝鮮)にある」などと主張。これに対して韓国統一部の当局者は同日、韓国と北朝鮮の経済協力事業で現在は操業を中断している開城工業団地について、「北は開城工業団地内のわれわれの財産権を侵害しないようすべきだ」と述べた。


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