沖縄報告:10月14日
海兵隊CH53Eヘリ 高江で炎上大破
沖縄 K・S
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10.11
放射性物質使用する米軍機
何も知らされていない!
ガスマスク姿で調査する米兵
一〇月一一日午後、普天間基地所属のCH53Eヘリが飛行中エンジンから出火し、緊急着陸した東村高江の民間の牧草地で炎上大破した。事故を起こしたCH53E型機は、一三年前沖国大に墜落したCH53Dヘリを大型化した後継機だ。プロペラのローター部分に放射性物質ストロンチウム90を使用しているのも共通している。
事故直後、炎上したヘリを消火するため国頭消防本部の消防車四台で駆け付けた消防士は、米軍及び沖縄防衛局から放射性物質について何も知らされないまま懸命に消火活動に従事した。ヘリ事故現場の牧草地の持ち主、西銘(にしめ)晃さんも近くで見守った。しかしその後、米兵はガスマスク姿で焼け焦げた機体の調査にあたったのだ。
米軍の治外法権と
米軍を守る日本政府
普段隠されていることもこうした事故が起こるといっぺんに明るみに出て、可視化される。現場は米国の治外法権、日本が米軍に対し主権を持たず、沖縄を軍事植民地として踏みつけている現実をはっきりと示した。「航空危険罪」を掲げながら日本の警察は事故を調査する権限がない。内周規制線の外側の外周規制線で人々が近づくのを止める役割をしているだけだ。
マスコミも入れない。事故現場から二〇〇〜三〇〇mの西銘さんの住宅から牧草地に至る道は四人の警官が封鎖していた。外周規制線だ。写真に撮ろうとすると、警官は両脇によけた。事故の翌日、現場を視察した翁長知事は外周規制線を通過したが、内周規制線までだ。内周規制線をこえて中に入ることができたのは自衛隊だ。日本政府・防衛省はここぞとばかり、自衛隊の米軍のもとへの一体化に余念がない。
米軍は早々に「九六時間の飛行停止」を発表した。原因解明まで飛行しない、というのとは全く違う。大きい事故が起こった場合の彼らの習慣にしか過ぎない。小野寺防衛相はあたかも日本政府の要請により米軍が飛行停止したかのようにつくろったが、米軍は小野寺に会う前に九六時間の飛行停止を発表していた。「米軍が主人」、日本が主権を持たない事実を国民の目から何とか隠そうとする、こざかしい日本の政治家と防衛省の官僚たち。
沖縄県は事故機について調査に加わることを求めている。命の危険にさらされている県民の立場から当然の要求だ。しかし、米軍、日本政府は認めない。一九七二年の沖縄の本土復帰後これまで四八件米軍機の墜落事故が起きている。一年に一回の割合だ。いつどこでどんな事故が起きるか分からない。沖縄戦が終わって七二年、米軍は日本軍と戦争をするために沖縄に上陸したのだから、戦争が終わったからには米軍がいる正当な理由はない。日本国民は主権者として、沖縄の現実をよく見て、沖縄県民と共に米軍撤退の声をあげてほしい。
新しい6カ所のヘリパッドの使用禁止を
高江区は事故翌日の緊急行政委員会で「北部訓練場の新しい六カ所のヘリパッドの使用禁止」を求める決議を採択した。県議会も高江区の決議に沿った抗議決議案を採決する予定だ。一五日には北部訓練場メインゲート前で、ヘリパッドいらない高江住民の会と高江現地行動連絡会の主催で、ヘリ墜落に対する抗議とヘリパッドの使用禁止を求める緊急集会を開催した。安倍や菅が繰り返していた「北部訓練場の返還は負担軽減」はウソだ。高江ではヘリやオスプレイの飛行回数と騒音が飛躍的に増えた。墜落の脅威は、昨年の安部沖のオスプレイ墜落に続き、今回のヘリ墜落炎上で、いよいよ現実のものとなった。高江住民のいのちと生活を守れ! 北部訓練場の新しい六カ所のヘリパッドを使用禁止にせよ!
10.14
辺野古ゲート前行動
高江のヘリ炎上大破後
辺野古の資材搬入ナシ
一〇月一四日の土曜行動は早朝から数十人がゲート前に座り込んだ。この日のマイク担当は平和運動センターの大城悟事務局長。低い落ち着いた声で「辺野古阻止、四区すべてでの選挙の勝利」を訴えた。一一日水曜日の高江での米軍ヘリ炎上大破後、辺野古での資材搬入はない。警察機動隊も辺野古には全く姿を見せない。ゲート前は、選挙運動の最中とあって、いつもに比べて参加者は少ないが、毅然として座り込みを貫徹した。
ゲート前の集会で屋冨祖(やふそ)昌子さんは「墜落した米軍ヘリに使われている放射性物質について話したい。ストロンチウム90は微小の物質で、貫通力一〜二cmのベータ線を出す。空気中に飛散し、吸い込めば体内被曝が起こる。セシウムと違い、体外に排出されない。半減期は二八年。微量であっても放射能障害が起こる。ストロンチウムの特徴は三つ。すべての臓器に入る、排出されない、半減期が長い。着陸した牧草地の草や家畜、下流の川は放射能により汚染された可能性がある。米軍、政府は事実を知らせないし、責任を取らない」と訴えた。
名護市議の大城敬人さんは「昨年一二月安部沖でのオスプレイ墜落事故の事故報告書が出た。沖縄防衛局から六〇〇ページの内、二一八ページが英文で開示された。名護市議会が強く求めて、英文報告書二部を受け取った。今ボランティアが翻訳中だ。英文では、事故現場のことをcrash siteと書いてある。日本政府はまだ不時着とごまかすつもりなのか。早めに翻訳を終え、みなさんに伝える」と述べた。
その後テントに移動したあとでの集会で、ハワイに住む沖縄四世のアメリカ人、ロバートさんが「ハイサイ、グスーヨー、チュウウガナビラ」と切り出し、参加者の驚きと歓迎の大きな拍手が起こった。
ロバートさんは「沖縄の歴史や文化が失われて行っているのではないかと危惧している。自分のルーツ、自分のアイデンティティは沖縄だ。ハワイはアメリカとは歴史も文化も違う。むしろ沖縄に似ている。自分はウチナー四世として沖縄の基地にもハワイの基地にも反対だ。多くの四世はみんな基地反対だ。座り込みを続けている皆さんに心から敬意を表する。頑張ってほしい」と述べた。
沖縄県の海外移住者子弟研修受け入れ事業の一環として、ハワイ、ボリビア、アルゼンチンなどから、毎年多くの若者が先祖の親戚筋にホームステイでやってくる。期間は三カ月。一二〜三年続いているという。ロバートさんはホームステイ先で「沖縄の若い人たちはどうしてウチナーグチを使わないのか。クトゥバウシナイン、クニウシナイン(言葉を失うと国を失う)」と話したという。
10.11
辺野古ゲート前に120人
3回の排除・資材搬入に抗して座り込み
一〇月一一日の水曜行動は前日公示の衆院選のただなかに行われたが、各地から一二〇人が集まりゲート前に座り込んだ。進行係の平和市民連絡会の高里鈴代さんは「昨日の差し止め裁判で翁長知事が述べたように、裁判合戦をしているわけではない。沖縄の民意を訴えているだけだ。政府自民党は、沖縄の四つの選挙区をつぶそうと躍起になっているが、負けられない。辺野古NO!の四人を勝利させよう。アルソックの皆さんも辺野古NO!の候補に一票を!」と訴えた。
そのあと、島ぐるみの発言が本部、八重瀬と続いた時、機動隊が出動し始めた。強風のため海上行動が中止になったカヌーチーム「辺野古ブルー」メンバーも座り込みに参加し、スクラムを組んだ。座り込みの断固たる抵抗に、機動隊の排除も手間取っているようだ。排除・囲い込みのあと強行された資材搬入は、砕石ダンプのほかに、足場パイプ、鋼材などを積んだトラック、クレーン車、圧送車、ユニック車等七〇台が進入した。生コン車も一六台あった。工事車両が出て行き拘束が解除されるまで約一時間、ゲート前は「違法工事やめろ」との抗議の声が響いた。
再開されたゲート前の座り込み集会で、熊本の女性は「オッペケペ、オッペケペ。人ば殺して金もうけ。原発いらん、辺野古いらん」とアピールした。島ぐるみ糸満は「昨日街頭スタンディングで、辺野古反対と
仲里当選を訴えた。一〜四区すべて勝とう」と訴えた。区の仲里さんの相手候補・自民党の西銘は、「辺野古反対」を公約に当選しながら、自民党本部の石破の恫喝で公約を覆し辺野古推進に走る張本人だ。絶対に落とさなければいけない。
那覇バスターズの佐藤さんは「もも太郎」の替え歌で歌う仲里応援歌を披露した。
仲里さん、仲里さん
ユクサー退治に国会へ
ハルサーパワーで勝ち抜こう
仲里さん、仲里さん
強い決意と情熱は
沖縄自慢のサラバンジ
(注 ユクサー=嘘つき、ハルサー=畑を耕す人、サラバンジ=真っ盛り)
そのあと、テントに移動し集会を続けた。平良悦美さんを見舞ってきたという女性は写真を回しながら「若松病院で頑張ってリハビリに励んでいる」と報告した。救護班で宮城県から参加した二人の女性は「とにかく海がきれいだ。暑くて死にそう」と述べた。カヌーチームのメンバーは六人が並んで立ち、一人ひとり海上行動の経験を話しながら、一〇・二五海上座り込みへの参加を訴えた。那覇島ぐるみバスは、横浜、名古屋など初めて参加の県外の四人があいさつした。「沖縄への機動隊派遣は違法」との裁判を起こしている東京のメンバーは「府中の機動隊への抗議も数回取り組んだ。活動家を付け回す公安警察を許さない」と怒りのアピールをした。
二回目の資材搬入は、砕石ダンプのほかに、足場パイプや木材、鉄板、汚濁防止膜を積んだトラックがあった。この時、機動隊の囲い込みの中で「ペットボトルの水がかかった」のは公務執行妨害だと一人の女性を逮捕連行した。県警の不当逮捕にはあきれるほかない。沖縄署に留置されていた女性は翌日釈放され、ゲート前に元気な姿を見せた。
10.10
工事差し止め裁判第1回口頭弁論
翁長知事が意見陳述
くしくも七三年前の一〇・一〇空襲のこの日、沖縄県が沖縄防衛局による違法な埋立て工事の差し止めを求めた訴訟の第一回口頭弁論が開かれた。
法廷に先立ち、衆参六人の国会議員をはじめ、主催者発表で三五〇人が城岳公園に集まり、裁判勝利の決意を固めた。司会は那覇市議会会派「ニライ」に属する平良識子さん(社大党書記長)。はじめに稲嶺進名護市長が「今日は公示日。埋立阻止の裁判と選挙の二つの闘いが始まった。三年前のオール沖縄の力をもう一度見せよう。今度こそ差し止めを勝ち取り、辺野古を諦めさせよう」と訴えた。
四人の衆院議員も次々決意を述べる中、仲里利信さんは「七三年前の一〇月一〇日。忘れもしない。家の裏の壕から那覇が燃えているのが見えた。戦争のない沖縄を」と語った。続いて、宮国弁護士、翁長知事が決意を語った後、全員でガンバロー三唱した。
翁長知事の法廷
での陳述要旨
このような訴訟を起こすことは本意ではないが、国にくりかえし文書照会をするなどしても誠意のある対応が全くない中、やむをえず提訴に至った。沖縄の生物多様性の海を守るために各種漁業関係制度があるが、その代表的なものが岩礁破砕等の許可だ。沖縄防衛局は前知事から今年三月三一日までの許可を受けていたが、許可期限が切れる直前、許可申請を行わないと通知してきた。根拠は、今年三月一四日付の水産庁長官の文書だが、これまでの政府見解や水産庁自らが行ってきたことに整合しない。長年積み重ねられてきた見解を辺野古案件のために恣意的にねじ曲げたわけであり、法治国家のあり方からほど遠いものだ。
県民は誇りと尊厳をもって新基地反対の声をあげ続けており、その主張は一点の曇りもない正当な権利だ。辺野古に新基地を造ることは絶対に許すことはできない。一方で法治国家において一行政を預かるものとして先の最高裁判決の趣旨に従うことがあるべき態度だと判断し埋め立て承認取り消しを取り消した。しかし、埋め立てにあたって必要な手続きを行うよう求め適正に審査することは当然であると考える。
国が法的義務を履行しないまま工事を進めるという開き直りを率先して行い、司法がそれにお墨付きを与えてしまえば、日本の法秩序はどうなってしまうのか、切実な危機感を持って憂慮している。この裁判を通して守るべきルールは国も当然守るべきであると、当然のごとく判示していただきたい。
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