9.30
どうする「核戦争」の危機
圧力では解決できない
「ピース・デポ」田巻一彦さんが講演
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【大阪】戦争させない一〇〇〇人委員会・大阪主催、おおさか総がかり行動実行委員会協賛の集会が九月三〇日PLP会館で開かれ、二二〇人の労働者・市民が参加した。
主催者あいさつをした米田彰男さん(一〇〇〇人委員会・大阪共同代表、大阪平和人権センター理事長)は、「秋の闘いの理論武装のために企画したが、国会解散・小池新党への民進党の合流というびっくりするような事態になっている。安倍首相は消費税の使い道や国難打開のための選挙だと言っているが、改憲が最大の目標であることに変わりはない。希望の党と維新が連携するとなれば、われわれはこれと対決する。堺市長選は竹山さんが勝ったが、維新は力をつけてきている。選挙は苦戦が予想されるが、護憲の仲間の議席を確保するために頑張りたい」と述べた。
続いて、田巻一彦さん(NPO法人ピースデポ代表)が、「朝鮮半島危機には『圧力』ではなく、『非核兵器地帯』を」と題して講演をした。(別掲)
二つ目の講演は、福山真劫さん(平和フォーラム共同代表)の「憲法改悪阻止に向けた総がかりの取り組み」と題する講演だった。
「野党共闘」で
勝ちぬくぞ!
福山さんは総がかり行動実行委員会ができ、さらにそこに九条の会が加わり「安倍九条改憲NO全国アクション」がつくられていった経過を述べた。市民運動と労働組合が手をつなぐこと、さらに、安倍の暴走を止めるためには野党と市民の共闘が不可欠だと述べた。希望の党への民進党の合流は野党共闘つぶしだ、われわれは野党共闘で勝つと述べ、三〇〇〇万筆の一大署名運動(戦争法廃止は一六〇〇万筆、共謀罪廃止は一六〇万筆、国鉄分割民営化反対は三七〇〇万筆、原水爆禁止は三二〇〇万筆)を提起し、野党共闘で立憲主義の再生と安倍政権の打倒を目指すこと、自公政権・そして希望の党の最大の狙いは野党共闘つぶしであることを述べた。
辻元清美前衆議院議員と服部良一社民党大阪府連代表のメッセージが紹介された。
連帯のあいさつを山田憲司さん(大阪憲法会議・共同センター事務局長)が行い、「安保法制反対・立憲主義回復をめざす市民運動と野党の連携が大切」であることをのべ、安倍対小池という選挙図式を演出しよとしているマスコミを批判した。まとめを中北龍太郎さん(一〇〇〇人委員会大阪共同代表、しないさせない戦争協力関西ネットワーク共同代表)が行い、「九条改憲は九条の死文化であり許せない。希望の党はもう一つの改憲勢力だ。一〇・二一戦争あかん・基地いらん関西のつどい、一一・三おおさか総がかり集会に結集を、三〇〇〇万署名運動に全力で取り組もう」と述べた。 (T・T)
田巻一彦さんの講演から
米国と北朝鮮が互いにことばのやりとりをエスカレートさせているが、これは言葉のやりとりだけではすまない。どちらかが計算間違いをすれば予期しない事態になることもある。安倍首相は圧力をかけると煽るだけで、事態を平和的に解決する道筋を持っていないから危険だ。
核兵器禁止条約は五〇カ国以上が署名しているから、条約が発効することは間違いない。この条約に反対した国が北朝鮮を批判している。この条約は、北朝鮮のみではなく、誰であろうと核兵器は持ってはいけないという条約だ。核兵器の開発・実験・生産・製造・取得・占有・貯蔵を禁止し、核兵器の使用や威嚇・禁止された活動の援助・奨励の要請・配置や設置・配備を禁止している。核兵器保有国でも廃棄計画を提出すれば、廃棄はその後でもよいとされている。
米英仏は二〇一七年七月七日共同声明を発表し、禁止条約に反対であること、条約により北朝鮮の核拡散行動が広がり、世界を分裂させるといっている。二〇一七年三月二七日、日本の高見澤軍縮大使は、条約に核兵器所有国が参加していないから役に立たないと述べ、日本が参加しないことの理由とした。
軍拡では危機
回避はできぬ
世界の核兵器は、核弾頭で七〇〇〇〜七三〇〇発ほどを米ロがそれぞれ持っている。英・仏・中はそれぞれ二〇〇〜三〇〇発。印・パキスタンは一〇〇〜一三〇発、イスラエルは八〇発、北朝鮮は一〇発。北朝鮮は、二〇一七年になって一四回のミサイル発射実験をし、九月一五日には宇宙空間を三五〇〇キロ飛翔して太平洋に落下させた。核実験は二〇〇六年一〇月九日の第一回から二〇一七年九月三日の六回目まで、わずか一〇年ほどで急速に技術が高まっている。
ミサイルに核を搭載し、目標に命中させる技術があるかどうか分からないが、あと二年もすれば実戦配備されると言われている。準中距離弾道ミサイルであるノドンなら、一〇年前から日本列島をすっぽり射程に入れている。なのに、そうなった当時なぜ騒がれなかったのか。それは、日本は独自の視点で分析したことが一度もなかったからだ。米国が危機感を抱くようになって、慌てて日本も騒いでいる。
危険状態になったらどうする? 安倍首相は安全保障と軍拡で対応している。しかし、いまだかってそのやり方が危険を止めた試しはない。核軍縮に向けすぐ着手するべきだ。通常弾頭も含め弾道ミサイルを禁止する国際法はない。緩やかな約束ごと(弾道ミサイルの拡散に抗するためのハーグ行動規範)があるのみだ。最大の核大国である米国が、他国に持つなと言い、弱者を差別している。これに対し北朝鮮は怒り、方向は間違っているが核武装を強化している。北朝鮮は本気だ。
日本は最近、F35への対地ミサイル装備を検討している。世論にも、日本は北朝鮮のミサイルの被害国だから何をやってもいいという傾向が出てきている。しかしある意味でホッとするのは、韓国ではそんな声が出ていないことだ。韓国には、北朝鮮との協議を最優先している文在寅政権の存在がある。北朝鮮の長距離砲は、国境地帯に射程四〇キロ〜六〇キロのものが三〇〇門存在する。軍事境界線からソウルまでの距離は三〇キロ程度なのだ。
非核のための
プログラムを
米国内で最近提案されている米朝交渉の要素として、北朝鮮が求めるもの:朝鮮戦争の終戦、国家体制の維持の保証、核の脅威からの解放等がある。一方、米韓日など五カ国が提示しうるもの:朝鮮戦争終戦宣言と平和協定、相互不可侵協定と非敵視宣言、敵国条項解除、核先行不使用宣言、核ミサイル開発凍結と軍事演習凍結のバーター、制裁の段階的緩和・解除、朝鮮半島非核地帯交渉の開始などだ。
非核化協議に応じるための北朝鮮の条件が二〇一六年七月八日に発表された。これは日本では伝えられなかった。日本は北朝鮮との交渉を拒んでいるが、発表された条件の柱には、朝鮮戦争の休戦協定を終結して「平和協定」を締結することが含まれている。そのほか、朝鮮半島の全ての核兵器の存在を公表する、核兵器と核基地を検証可能な形で撤去する、朝鮮半島の近傍に核兵器を配備しない、北朝鮮に核による威嚇をしない、核兵器を使用する権限ある部隊すべての韓国からの撤退宣言、である。
この内容は、一九九二年「南北非核化共同宣言」と二〇〇五年「六カ国共同声明」(米中韓北日ロの六カ国)ですでに合意している。日本は忘れているのか。
米国のNGO・元外交官らは「包括的安保合意で核の脅威を終わらせる」新しい提案をしている。第一ステップとして、ミサイル開発の凍結と米韓合同演習の縮小。第二ステップとして、北朝鮮の核物質製造プラントの解体、六カ国協議再開、開城工業団地再開、エネルギー支援開始。第三ステップとして、北東アジアの非核兵器地帯の設立、拘束力ある非核プロセスの開始。全体として一〇年かけ非核化を完了するというものだ。
この長い期間に耐えうる精神は、日本国憲法にしか見いだせない。圧力を強めるというが、問題は何をめざす圧力なのかだ。北東アジアの非核化地帯化のために、この地域から政治的リーダーシップをつくることが重要だ。日本国憲法前文、九条を東北アジアで活かすことだ。(発言要旨、文責編集部)
よびかけ
メキシコで頻発する巨大地震
救援活動続けるメキシコの
同志たちに支援カンパを!
九月になってからメキシコの南西部を震源とする巨大地震が三度発生し、チアパス州からメキシコシティに至る、広範な地域に甚大な被害を与えたことは、読者の皆さんもテレビや新聞の報道で良くご存知のことと思います。特に大きな被害が伝えられているのがモレーロス州です。
ここはメキシコ革命の英雄、エミリアーノ・サパタが拠点とした地方であり、そのことによって、メキシコで最も自営農民の多い地方です。
その州都がクエルナバカで、ここは第四インターナショナルのメキシコ支部である革命的労働者党(PRT)の活動の拠点になっています。そして、その中心的な活動家がホセ・マルチネスとフリアーナ・キンタニージャ夫妻です。
彼らはクエルナバカのソカロ(メキシコの都市の中心にある広場)の近くで、フェアトレードを旨とする、協同組合方式のレストランを経営しています。このレストランでは食事を提供するだけではなく、市民団体の交流の場所としても提供され、クエルナバカ近郊の先住民集落で活動をしている女性たちが作った民芸品の販売もしています。
また、彼らはモレーロス独立人権委員会(CIDHM、代表=フリアーナ・キンタニージャ)を設立し、先住民の人権擁護運動、行方不明者の真相究明運動、文化活動等幅広い活動をモレーロス州で展開しています。
現在、彼らはCIDHMを中心にして、クエルナバカ近郊の先住民集落への救援活動、また先住民団体の運動の再建のために全力で取り組んでいます。
私たち、佐藤と尾形は一九九一年以来、たびたびメキシコを訪れ、彼らの家に長期間泊めてもらったり、先住民の集落に連れていってもらったりと、大変お世話になりました。微力ではありますが、なんとか彼らを支援したいと思っています。支援カンパをよろしくお願いします。
佐藤 博
尾形 淳
*カンパの振り込み先
振替口座 00910―8―308136 関西新時代社
通信欄に「メキシコカンパ」とご記入ください。
コラム
彼女の「希望」とわれわれの「希望」
「今度の選挙では『希望』に入れようかな」――私が近寄ると照れくさそうに笑う。あり余る蓄えで定年後は介護医療温泉付きの施設を買うと豪語していた。ところが厚生年金組合が破産。退職前に「どんでん返しになった」。公務員を妬み、増税分を教育費に使うと打ち出した首相安倍に反発。同僚はそれでも、革新陣営ではなく「維新」などの保守勢力を選ぶ。「自民も『希望』も、たいして変わらないよ」。業務中ゆえひとこと釘を指して、私はその場を去った。
突然の衆院解散。「希望の党」の旗揚げと民進党の分裂。枝野幸男による新党の発足。風雲急を告げるとはまさにこのことだ。都知事の仕事もそこそこに新党党首に就任した小池百合子。民進党代表前原誠司は自党公認を断念。あっさりと小池の軍門に下り、配下の放出に手を染めた。「希望」は民進議員に「改憲」や「批判の禁止」など、一〇項目の「踏み絵」を強要してみせた。
小池は都知事就任直後、舛添要一前都知事が掲げた都立高跡地を韓国学校へ貸与する方針を撤回、実行した。関東大震災時の朝鮮人虐殺では、式典への追悼文を拒否するだけでなく、史実への無視を貫いた。彼女の言う「多様性」や「寛容」も疑わしいが、それすら外国人は対象にしていない。すなわち小池は、ソフトなイメージで戦略を貫き政敵を翻弄する、狡猾で知能的な極右排外主義者なのだ。右派週刊誌が安倍を見限り始めたタイミングを逃さず、野党第一党を分断、自民でも共産でもない浮遊票獲得を狙う。
腐敗と汚職にまみれた現在の自公政権を許し支えてきたのは、盤石な創価学会の組織票と、ひたすら景気回復に望みを託し、そのおこぼれにあずかろうとする中間層の、消極的であいまいな保守意識であろう。とはいえ、森友・加計疑惑に数々の不祥事。北朝鮮ミサイルの脅威を煽るだけでは、さすがに大衆は支持しなくなった。秋葉原での「辞めろ」コールに恐れをなし、街頭演説先を隠すこの国の最高権力者は今、見苦しい断末魔を演じている。「戦争のできる国」をめざす思想があれば、本来どの党が政権についても構わないはずだ。それでも当選に執着するのは、権力への煩悩以外に何があろうか。
楽観は許されない。与党が議席を減らしても「希望」が躍進すれば、それは改憲勢力が過半数や三分の二を占めることを意味する。「二大政党」制や「三極構造」など、それこそ希望的憶測に過ぎない。
立憲民主党に対する市民の期待も大きい。ただ安保や沖縄問題ではあくまで中間的だ。どこまで社民・共産党との候補者調整が進むかが焦点となろう。小池の「希望」とわれわれの「希望」を、しっかりと見極めねばならない。 (隆)
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