9.27
地球温暖化と生物・自然は共存できない
仙台石炭火力発電所の運転中止を
地域住民124人が運転差し止め訴訟
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【宮城】全国各地で石炭火力発電所の建設計画が進んでいるなか、九月二七日仙台パワーステーション(以下仙台PS)の運転差し止めを求め一二四人の原告が仙台地裁に提訴した。
関西電力・伊藤忠商事の子会社である仙台PSは、仙台港への火力発電所建設の目的を「富県宮城の実現」「ものづくり産業の復興」への「貢献」をうたい文句にしている。建設計画は「環境アセスメント逃れ」の「設備容量一一・二万KW」「住民説明の必要なし」と工事を進めてきた。
石炭火力から放出される大気汚染物質が与える健康や環境等への影響に対する不安が拡がり、住民の強い要求に押され渋々「住民説明会」を開いたが、まともに答えない企業の姿勢に住民の怒りは爆発した。「杜の都を石炭の都にするな!」と呼びかけた緊急署名は約五万筆に上ると言う。だが住民の声を嘲笑うかのような一〇月一日からの運転開始の宣言に、住民の怒りは一二四人を代表として「運転差し止め」訴訟を起こした。「石炭」火力発電所に特化した「運転差し止め」という全国初の訴訟である。
訴えの内容は、排出ガスに含まれるPM2・5などの有害物質の大気中拡散による「健康被害」、CO2等の温室効果ガスによる「気候変動への影響」、わずか八〇〇mの距離に国指定の鳥獣保護区蒲生特別保護地区の「自然破壊への影響」の三点を問い運転差し止めを求めるものだ。
東北に火発建設
が集中する理由
福島第一原発事故以降、安倍内閣はベースロード電源として「高効率火力発電」を推進、二〇三〇年電源構成「石炭二六%」を決定した。一方「企業の電力小売り全面自由化」によって多くの企業が発電事業に参入、「コスト競争」のもとで「安価」な燃料として「石炭」を使う石炭火力発電所建設に拍車がかかっている。
二〇一二年以降の建設計画は四九基、東北では一三基(宮城三基、秋田四基、福島六基)の石炭火力・バイオマス混焼、さらに二基のバイオマス発電計画が進んでいる。なぜ、東北・被災地に火力発電所建設が集中するのか?
関西電力等が仙台に石炭火力を建設する理由の第一は、被災地沿岸部の「地価」の安さだ。津波危険区域に指定された沿岸地域は一般住宅の建設を「不可」とし住民を立ち退かせた。その後、新たに「工業団地」として整備し税の免除、雇用助成金支給、低価格での土地の提供等の特典をつけ企業誘致をしているのだ。
第二には、工業用水と石炭輸送に欠かせない港の存在。第三には、大都市への送電網が確保されること。三点目については「再エネ事業者」の接続を規制し旧来の「原発再稼働」による大規模発電事業を維持することが背景にある。
「利便性は大都市に」「儲けは企業の懐に」「迷惑施設、環境・健康破壊は被災地に」と原発立地の構造と全く同じだ。PSに続き四国電力も進出計画を明らかにしている。まさに「電気は東京へ! お金は関西・四国へ! 汚染は東北・仙台へ!」ということだ。
昨年末、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」を世界の一四七カ国が批准し、温室効果ガス削減にむけ取り組むことが「合意」された。 「温室効果ガス」の元凶とも言える「二酸化炭素」排出量を削減すること。この流れに逆行するのが「石炭火力発電所建設」問題だ。
石炭火力は天然ガスに比べ二酸化炭素排出量は「約二倍」と言われている。ヨーロッパでは石炭火力を全廃する動きが拡がるなか、モロッコで開かれた第二二回締約国会議(COP22)で日本は「地球温暖化対策の前進を妨げている国」として不名誉な「化石賞」が贈られた。
政府は「二〇三〇年までに一三年度比で排出量を二六%削減」としたが「この値を世界の目標にすれば今世紀に気温が三〜四度上昇する」と批判が起きている。計画中の小規模火力発電が全稼働したら三〇年のCO2排出量を超過することも既に明らかだ。
再生可能エネル
ギーにシフトを
九州豪雨(7月)の要因として「東シナ海中部の海面水温が平年より一〜二度高い」点も注目されている。「一日二〇〇ミリ以上の大雨」や「一時間当たり五〇ミリ以上の強い雨」の年間発生数は最悪の場合「今世紀末には2倍以上」との気象庁報告がある。
世界では化石燃料事業から撤退する企業が増え、同時に化石燃料事業を進める企業を「投資対象除外」の動きも拡がり「脱石炭」の動きが加速している。石炭火力の稼働によって二酸化炭素を始め硫黄酸化物、窒素酸化物、PM2・5、煤塵など様々な物質が大気中に放出され大気汚染の拡がりと健康被害が懸念されている。「地球温暖化」の影響が拡がり、異常気象、海水温上昇、豪雨、干ばつ、急速な氷河の縮小等が起きている。
直面している地球温暖化問題は人類・生物の生存を脅かす最大の問題と言われており、石炭火力は温暖化を加速し危機を深める役割でしかない。原発に頼らない! 化石燃料に頼らない! 再生可能エネルギーの道を目指そう。 (朝田)
9.2
福島原発事故から6年
避難の現状と今後の
支援を考える交流集会
棄民化される
原発事故被害
九月二日、午前に行われた福島原発刑事訴訟支援団の集会に続き、午後一時半から、田町の交通ビルで「避難の現状と今後の支援について考える交流集会」が開かれた。主催は福島原発事故による避難者とその支援グループで立ち上げた「避難の共同センター」。
今年の三月三一日、いわゆる「自主避難者」、すなわち「避難指定区域外」からの避難者への住宅支援が打ち切られて以後の現状を共有するために、この日の集会が企画された。
「支援打ち切り」当時、追及したジャーナリストに対して「自己責任」「裁判でも何でもやればいい」と切り捨て,その後、「あの事故が東北でよかったが、首都圏で起きたら大変だった」と語って解任された今村復興担当相の暴言に、安倍内閣の原発事故被災者への態度が如実に示されている。
いわゆる「区域外」避難者の生活は、三月の住宅無償支援打ち切り以後、困窮の度を深めている。「避難の共同センター」代表の松本徳子さんが開会のあいさつを行った後、避難の共同センター事務局長の瀬戸大作さんが、現状報告を行った。
瀬戸さんは住宅補償打ち切り以後の状況を「原発被害者が棄民化されている」と規定し、自主避難者も「賠償をもらっている」という誤解と偏見の中で、経済的貧困のみならず、周囲との関係性、生きていくための知識といった領域もふくめて複合的な貧困の中にあると指摘。住宅・雇用・健康などを含めたサポート活動の重要性を強調した。
地域で孤立する
ことがないよう
避難の共同センターの第二期(二〇一七年度)の活動として、避難者の「生活・就労」などの相談と支援、避難当事者と支援者が共同して、避難者が地域で孤立することなく生活できるような活動、国に対して「原発事故・子ども被災者支援法」で定められた避難先での住宅保障、就労、教育などをふくむ総合的生活支援、避難先自治体に対し、人道的観点から貧困・孤立を防ぐ支援、などがあげられている。
居住貧困に関す
る切実な討論
各地からの報告では、北海道(こだまプロジェクト)、岡山(一般社団法人ほっと岡山)、千葉(松戸黄色いハンカチ)、山形(チーム毎週末みんなで山形)、福島原発被災者フォーラム山形・福島から、避難当事者が孤立しない地域での支援と当事者自身の主体的取り組みが報告された。
立教大学コミュニティ福祉学部教員の葛西リサさん(『母子世帯の居住貧困』の著者)の「居住貧困に向けた提言」と題した講演をはさんでパネルディスカッションが行われた。
松本徳子さん(避難の共同センター共同代表)は、「三・一一」をなかったことのようにしてしまう動きに抗して、お互いに助け合って子どもたちの安全を確保しようとする取り組みについて語った。岡田めぐみさんは「東京に避難してきて、自分がどういう理由で故郷を離れなければならなかったのか語れない」現実を訴えた。
福島から静岡に避難している長谷川克己さんは「被害者がバッシングを受ける現実」を見つめ、「原発事故があったからこうなった」と言える子どもにしていきたい、「避難している人をまとめる役割を果たしてほしい」と語った。
共に生きていく
ためのつながり
熊本美弥子さんは「住宅無償提供打ち切りの不当性にちゃんと声を上げて生きていきたい。支援する組織を作ってほしい」と呼びかけた。
宍戸隆子さんは「避難者が声を上げることの難しさ」について訴え、「学生には三・一一のことを知らない人もいる。また三・一一を語れない人も多い。子どもたちにも何が起きたか知ってほしい」と語った。
この日の集会は、福島原発事故で避難を強制された人々が直面している困難な孤立した現実の中で、ともに生きていくためのつながりの重要性を、あらためて実感させる機会となった。(K)
9.2
天皇生前退位─何が問題か
「翼賛化」にあらがう
言論と行動の積み上げ
【神奈川】九月二日、横浜・紅葉坂教会で「生前退位、何が問題か」と題する集会が開かれた。一二〇人が参加した。日本キリスト教団神奈川教区社会委員会ヤスクニ・天皇制問題小委員会と、「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会の共催だ。
「祭祀大権」の
復活とは何か
まず天野恵一さんが退位特例法に至る天皇周辺の概観を講演した。アキヒトによる「お気持ち」について、勅語としての性格、皇室典範が帝国憲法下で持っていた発議権復活として指摘した。国内外巡幸として宣伝される「公的行為」をはじめ、日本国憲法すら大きく逸脱した天皇制が浸透しているにもかかわらず、民衆の抵抗にあわず進行してきた代替わり状況を歴史的観点からひも解いた。
天野さんはいくつかの著述を引用したが、例えば帝国憲法下で天皇が持っていた大権(統帥、統治、皇室ほか)の図表を示しながら、「祭祀大権」は宮中でこっそりと行われ続け、ほかにも天皇家が持つ権限らしきものが巧妙に温存され、あるいは復権していく経過を具体的に解説した。
問題意識の持続 と深化のために パネラーとして三人の方から発言があった。桜井大子さんは女性と天皇制研究会の活動から見る代替わりの問題を平易に語った。家父長制の性格を残し、「安定的継承」を図ろうとしながら「失敗」を続けざるを得ない天皇家についてどう認識を共有し、どう覆すかという点は、天野さん等と共通した問題意識に違いない。
遠田哲史さん(ヤスクニ小委員会)は八月一五日などにみられる天皇に関連付けた記念日などの概念、「情動」でからめる天皇制の在り方について提起があった。ちなみに集会当日の九月二日は、七二年前に降伏調印した日である。
堀江有里さん(信仰とセクシュアリティーを考えるキリスト者の会)は、戸籍制度にみられるような、異性愛主義と家族国家観につらぬかれた天皇制と日常生活について問題点が切り出され、かつて日本キリスト教団の前身が翼賛的に戦争国家化を後押しした歴史を繰り返してはならないと警鐘を発した。
集会に賛同した日本キリスト教団のいくつかの委員会活動が紹介された後、オリンピックおことわりんくの宮崎さんから二〇二〇年問題へのアピール、反天皇制連絡会の新さんより一一月に予定されている代替わり儀式に対抗する行動への参加呼びかけがあった。翼賛的な言論封鎖と、反民主主義的な傾向の象徴ともいえる天皇制の在り方に危機感を募らせ、怒る人は多い。各地での取り組みに参加しよう。 (海田)
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