地下500m、30万年大丈夫なのか
数十万年耐えられる敷地の研究急がれる
|
「新古里5・6号機の公論化」がたけなわだ。次に来るのは「使用後核燃料の公論化」だ。ムン・ジェイン政府は7月19日に発表した「国政運営5カ年計画」で、使用後核燃料政策を再公論化する、と明らかにした。敷地選定のやり方や日程などを論議する公論化が下半期中に始まる見通しだ。使用後核燃料は「足元に火がついた」形だ。責任を取るべき政府は、これまで無気力だった。基礎研究は遅々として進まず、原発付近の村には葛藤が芽生えた。どこから問題を解決しなければならないのか。我々はこの問題を解くことができるのだろうか。(「ハンギョレ21」編集部)
真夏なのに寒かった。地下トンネル内の温度は15度C。ちょろちょろと流れている地下水が清涼感を加え、避暑地としてはピッタリだろうという思いがした。じりじりとした日ざしが照りつけていた8月2日、大田・儒城区の韓国原子力研究院の裏山に設置された地下処分研究施設を訪れた。2029年以降に建設される高レベル放射性廃棄物処分場(放廃場)関連の研究がどれほど進んだのかを確認するためだった。実際に高レベル放廃場と同様に「地下」の環境で研究を進めている施設は国内ではここが唯一なのだ。
強固な花崗岩盤を掘って穏やかに下に降りていく道が250m程、続いた。地表から120mの深さに位置する地下トンネルは、冷たい空気で満ちみちていた。真っすぐな道が終わる地点で再び「ロ」の字に折れた道が現われ、その周辺に6つの洞窟が目に入ってきた。まるで炭鉱を連想させる構造だ。洞窟には採掘装備のかわりに実験施設がビッシリと並んでいた。使用後核燃料を数十万年もの間、地下洞窟に安全に埋めておく方法を求めている基礎研究装備だった。
高レベル放廃場は、よく「ゴミ捨て場」に比喩される。ゴミは原子力発電所で燃やして出てきた燃料棒(使用後核燃料)を意味する。もう利用することがなくなったのだからどこかに捨てればよいのだが、そう簡単ではない。炭はめらめらと燃えあがった後、火が消えてもしばらくの間は熱い。使用後核燃料も同じことだ。原子炉から出てきた後も一定期間は核分裂が続き、少なくとも数年間は使用後核燃料が吐き出す熱が数百度Cに達する。熱が強いだけに放射線も強く、人間が使用後核燃料の周辺で数時間程度、被曝すれば死亡する。5〜10年間、水で冷却し熱と放射線が危険な水準でなくなるまでには数十万年がかかる。だから使用後核燃料が安全になるまで、人間がしっかりと保管しなければならない。ゴミとしては実に厄介なわけだ。
放射線なくなる
まで数十万年
それならば、この頭の痛いゴミをどこに置くべきか。残念ながらも世界的に使用後核燃料を保管する高レベル放廃場を作るのに成功したケースはない。それでも最も先頭に立っている国はフィンランドとスウェーデンだ。両国は30年以上の研究の末に、使用後核燃料を地下500mの岩盤に埋める計画を立て、場所まで選定した。地下にした理由は、人間の生活圏から遠いからだ。30万年は長い時間だ。言葉や文字が変わるかも知れない。人類の文明がその時まで続いているのかも分からない。「危険表示」を設置しても読めない可能性が高いがゆえに、見えない所に埋めておくのが安全だ。
高レベル放廃場を深い地中に作る理由は、ほかにもある。地震が起きても地中は相対的に、ゆっくり揺れる。地下300mであれば地震の地盤加速度が地表面の半分以下の水準だ。深く入っていけば地下水の問題も解決できる。岩盤の割れたすき間から流れる地下水は高レベル放廃場の最大の敵だ。放射性物質が地表まで上がって来るとすれば十中八・九が地下水のせいだと考えればよい。使用後核燃料を地下深い所に埋めれば、高圧の岩盤が天然の防壁となってくれる。現在建設中のフィンランド高レベル放廃場では地下水が10万年の間に160mしか移動しない。
大田地下処分研究施設には決定的限界がある。深度が余りにも浅く、天然防壁の安全性をキチンと検証できない、という点だ。もちろん人間が作ることのできる「工学的防壁」の実験は活発だ。使用後核燃料に模した無害の物質に100度Cの熱を加えつつ、金属容器や粘土で作った防壁がどれだけ地下水をしっかり阻めるのか監察している。地下500mにボーリングをして岩盤や地下水の状態を確認した後、これを土台としてシミュレーションしたりもする。けれどもキム・ゴンヨン韓国原子力研究院責任研究員は「地下120mの環境は地下500mとは温度、圧力、溶存酸素量などが異なる。放廃場を作ろうとするのなら実際に地下500m規模の研究施設がぜひとも必要だ」と語った。
地下500m規模の研究施設必要
韓国はまだ使用後核燃料の埋め立て方式やその場所などを決めていない。フィンランドやスウェーデンに学んで地下500mに埋める技術を研究しているものの、技術格差は10年以上だ。そのうえ、北欧のやり方にそのままついていくということもできない。向こうは土地は広いし人口密度も低い。運営中の原子炉がフィンランドは4基、スウェーデンは10基だけで廃棄物の量も多くない。それに比べて韓国は正反対に土地は狭いし、人口密度は高い上に廃棄物の量は多い。
ソウル汝矣島(漢江の大中州島、国会議事堂などがある)の面積(2・9?)の2〜3倍。韓国で高レベル放廃場を設置する際に必要な敷地の面積だ。韓国原子力研究院放射性廃棄物処分研究部がフィンランドやスウェーデンの方式で埋め立てる仮定をして推算した。ムン・ジェイン政府の脱核案を反映して現在建設・運営中の発電所8機から出てくる使用後核燃料を除いたとしても、高レベル放廃場を作ろうとすれば5・65?の敷地が必要だ。仮にパク・クネ政府が決めた第7次電力需給計画通りに進めるとすれば9・02?が必要だ。つまりそれぞれ汝矣島の面積の2〜3倍だ。キム・ギョンス韓国原子力研究院責任研究員は「余裕面積まで含めれば10?が必要だが、現実的にこれだけの敷地は求めがたい。韓国の状況に合わせて敷地面積を最小化する研究が必要だ」と語った。
先進国の技術を追いかけると同時に、狭い国土に合う「韓国型高レベル放廃場」の技術がなければならない。敷地の面積を減らす方法としては地下を何層にも分けて埋め立てる方式などが考えられる。海外で一戸建てを作るなら韓国ではマンションを、という訳だ。はるかに複雑な技術が必要だけれども、研究の人材はこの上なく足りない。処分技術の開発要員は日本は200人、スウェーデンは250人に比べて韓国は29人にすぎない。
核廃棄物処理の研究に重心移すべき
高レベル放廃場にはさまざまな専攻の研究人材が必要だ。原子力と地質だけではなく、電磁、機械、土木、生物、化学工学などの専攻人材がいなければならない。巨大な地下空間を設計し、地下水の流れを分析しなければならない。人間が使用後核燃料を直接、移すことはできないので自動化の設備を備えなければならない。数十万年の間に氷河期がやって来て地下水の流れが変わり、大地が動く可能性、地下に生きるバクテリアが使用後核燃料に及ぼす影響まで分析しなければならない。
膨大な人材だけれども、依然として韓国の原子力分野で放射性廃棄物処理の研究者は極めて少数だ。アン・ジェフン環境運動連合脱核チーム長は「原子力の研究の中でも、これまでは発電や再処理に政府の予算の配分や人材の配置が片寄っていた」「核廃棄物の処理や原発解体の研究に重点を移さなければならない」と語った。
使用後核燃料は次第に増えて臨時貯蔵施設が遠からず飽和状態に達することになる。「韓国水力原子力」が7月19日に公開した「2017年第2分期使用後核燃料貯蔵現況」によれば、原発の臨時貯蔵施設の飽和率は85%に達する。2016年5月に産業通商資源省が発表した「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」によれば現在、各原発に用意された臨時貯蔵施設は2019年(月城)から2038年(新月城)まで順次、飽和となる予定だ。
「トイレがないのに腹からはシグナルが来ている状況」だ。ところで、トイレを作る技術は大した問題ではない。それをどこに作るのか決定する問題に比べれば、ということだが。
政府の放廃場についての選定作業は1983年以来、実に9回も失敗を重ねてきた。そのほとんどは地域住民らの反対によってダメになった。イ・ホンソク・エナジー正義行動代表は「政府や地方自治体が安全性をキチンと確認せず、一方的に推進したから」だと説明した。
政府は1990年に忠清南道泰安の安眠島に、住民たちに内緒で放廃場を建設しようとしてバレて激しい抵抗にあった(「安眠島事態」)。1994年には政府が一方的に仁川の屈業島を放廃場の敷地に指定して地質調査をしたが、活性断層が発見されて中止したし、2004年には全羅北道扶安郡守が郡民の意見集約をキチンとせずに放廃場を誘致しようとして大規模な反対デモや流血の衝突をひき起こしたりもした(「扶安事態」)。この事態を契機に政府は高レベル放廃場と中・低レベル放廃場を分離することに決定する。
地質の特性上ジュラ紀花崗岩が最も安全
中・低レベル放廃場は順調に建設されるようだった。2005年、放廃場誘致の意思を明らかにした9つの地域を対象に敷地の適合性を調査したが、8地域が適合するとの結果が出てきた。最終的に住民投票で賛成率が最も高かった慶州地域が選定された。ところが実際に土壌を掘ってみると、調査結果とは違って地盤が弱く地下水が多かった。工事は数年間、遅延し現在まで論難が続いている。イ・ホンソク代表は「慶州のケースで明らかなように、安全性は(調査結果を公開するという)透明性および民主的手続きと深く関係している」と語った。
中・低レベル放廃場は300年間使用するけれども、高レベル放廃場はその1000倍になる30万年に耐えなければならない。はるかに厳格な基準が適用されざるをえない。実際のところ韓国において高レベル放廃場を建てるのに適した土地は多くはない。地質学界では韓(朝鮮)半島の地質の特性を考慮するとき、堅固な結晶質岩であるジュラ紀の花崗岩が最も安全なものと予測している。
キム・ユホン韓国地質資源研究院放射性廃棄物地層処分研究団長は「岩質の種類だけで敷地を決定するわけではない」とただし書きをつけながらも、ジュラ紀の花崗岩が「広い地域に分布し均質で(放廃場を設置するのに)もっとも良い」との意見を明らかにした。
ジュラ紀の花崗岩は江原道や忠清道、全羅道一帯で主に発見される。南韓の面積の25・6%を占める。ところが除外の条件が多い。岩種がよくても活性断層のある地域はダメだ。地震が起きれば使用後核燃料を入れた容器が壊れかねず、岩盤のすき間に地下水が流れ込みかねない。ヤン・イウォニョン環境運動連合処長は「現在製作中の活性断層地図がある程度のけりがつかなくては地質学的安全性を語ることはできない」と指摘した。
石灰岩のある所もダメだ。未来の世代が鉱物を掘ろうとして地面を掘るということもあり得る。もちろん、文化財のある所もダメだ。
使用後核燃料の移動経路まで考慮すれば、敷地の候補はさらに狭まる。原発は大部分が海辺にあり、内陸深い所には放廃場を建設するのはたやすくない。使用後核燃料を入れている容器が余りにも重くて道路や橋が支えきれないからだ。ファン・ヨンス韓国原子力研究院責任研究員は「運搬していてひょっとして転がり落ちる事故が起きても安全なように100tの重さの輸送容器に入れるが、国内の道路の大部分は最大40tまでしか耐えられない。汽車で内陸輸送する方法はあるけれども、路線の相当数は大都市を通るので、鉄道を新たに敷設しなければならないという難点がある。
信頼基礎に安全性の高い地域選定
最も現実的な方法は高レベル放廃場を海の近くに建て、使用後核燃料を船で運ぶことだ。ファン研究員は「スウェーデンの場合、1980年代から3千t級の輸送船を利用して海から使用後核燃料を安全に移動させている」と説明した。ただし船で運ぼうとすれば3千t級の船が停泊できる港湾が必要だ。西海岸は水深が浅く潮水の干満差が大きくて、適当な場所を求めるのが難しいということがある。
こういうわけで、将棋で言えばあの駒もダメ、この駒もダメ、残る地域と言えばいくらもない。ムン・ジェイン政府で日程が多少、変わることがあろうが、これまでの産業省の計画によれば12年のうちに放廃場の敷地を選定しなければならない。万が一、最も安全な地域の住民たちが反対すれば相対的に危険度の高い地域に行かざるをえない。韓国において安全を最優先にしがたい理由は、原子力界に対する「信頼不足」のせいだ。政府や原子力界に対する信頼が高いスウェーデンでは高レベル放廃場を建てる時、住民の受容性よりも安全性を優先視した。放廃場の最終候補は2カ所だったが、このうち住民投票の賛成率が高かった地域ではなく安全性の点数が高い地域が最終選定された。住民の反発はなかった。
このように順調に処理された背景には長期間にわたった透明な情報公開があった。フィンランドやスウェーデンでは高レベル放廃場の事業者が地質調査の結果から処分場の設計、処分容器の技術、安全性の評価など、すべての情報を公開した。規制機関もまた規制審査の報告をすべて公開した。このおかげで韓国のような後発走者たちが、両国が公開した資料を土台にして技術の開発も行った。キム・ギョンス責任研究員は「情報をすべて公開すれば後で技術を海外に輸出する際に損害が生じかねないけれども、事業よりも自国民の安全を優先視したようだ」「我々も自信をもってすべて公開してこそ、国民の信頼を得ることができるのではないのか」と語った。(「ハンギョレ21」第1174号、17年8月14日付、大田=ピョン・ジミン記者)
民主労総
間接雇用労働者、労働組合活動をする権利保障のための改善闘争決議
民主労総傘下の間接雇用非正規職の労働者が労組活動をする権利を保障するため、労働法の全面再改正闘争を宣言した。彼らは「労働尊重、社会の核心は組合活動をする権利保障を通じて実現可能だ」、「このため、間接雇用労働者の完全な労働3権保障が優先されなければならない」と強調した。
民主労総は20日午後、ソウル汝矣島(ヨイド)の国会近くの国民銀行の前で「間接雇用の撤廃。労組活動をする権利の戦取!間接雇用労働者決議大会」を開催して非正規職量産の主犯である間接雇用問題の解決なしに文在寅(ムン・ジェイン)政府が約束する「非正規職ゼロ時代」は飾り物の公約だと主張した。
…… チェ・ジョンジン民主労総委員長職務代行は「非正規職撤廃は労組活動をする権利だ。労組活動をする権利を確保してこそ、人間らしく生きることができる」と、大会の辞を述べた。 チェ職務代行は「新政権が発足してから4カ月が過ぎている。しかし、最も基本的かつ普遍的な労組活動をする権利はまともに行われていない」と言い「憲法上保障された権利だが、数十年間弾圧とイデオロギーでまるで労働組合活動をすることは敵視されてきた」と指摘した。
さらに、「労働尊重と述べている新しい時代が発足したが、依然として私たちの行く道は遠い。公共部門の非正規職はゼロだと言ったが、前回学校非正規職労働者を正規職に対する審議委の結果は当事者を欺瞞して民主労総を愚弄するものである。非正規職ゼロではなく正規職をゼロにした」、と言い「下半期の法制度改善闘争を通じて実現しなければならない。労働組合を作ったとしてリストラされて、労組活動したとして死ぬしかないこの絶望の世界を終わらせるべきだ」と強調した。……
(9月20日、「労働と世界」より)
|