もどる

    かけはし2017.年10月2日号

朝鮮半島危機と「国交正常化」


9.15

「日朝国交正常化の早期実現を」

危機が増幅されていく中で

市民の連帯・交流が大事


 【大阪】日朝国交正常化の早期実現を求める大阪集会が九月一五日エルおおさかで開かれ、西山直洋さん(日朝市民連帯・大阪事務局)が司会。立ち見が出るほど多くの人が集まった。
 この日の朝七時前に北朝鮮は順安から北海道の上空を通る高度八〇〇キロ、飛行距離三七〇〇キロの中距離弾道ミサイルを発射した。その直後からテレビの画面でJアラートの避難指示情報が一斉に報じられた。

敵視政策中止
国交早期樹立
日朝市民連帯・大阪の共同代表である大野進さんが主催者あいさつをし、「先日東京で朝鮮総連主催の記念集会が開かれたが、今まで来ていた連合関係の組合や平和フォーラムはほとんど参加しなかった。残念だがそれが現実だ。国交正常化をめざしたピョンヤン宣言はその後の政治状況で頓挫したが、二〇一四年ストックホルム合意が行われ、その一年後に調査内容を持ち寄り会談することになった。しかしその後、朝鮮総連への弾圧があり、合意はわざと反故にされた。この年の七月に集団的自衛権行使容認の閣議決定がなされ、さらにその翌年には安保関連法が成立した。そのような中での日朝合意は理屈が合わなかったからだろう。私らの大会(全港湾)でも、Jアラートの報道で仕事を止めなくていいのか、抗議をしなくていいのかなどの質問も出た。これから毎日毎日何が起こるかわからないが、少数ではあっても国交正常化をめざし、権力に忖度することなく皆さんと協力して日朝市民連帯も頑張っていく」と述べた。
続いて、康宗憲さん(カンジョンホン・韓国問題研究所所長)が「最近の朝鮮半島情勢と日朝関係の展望」と題して講演をした。康さんが力説したのは、北朝鮮に対する米国の基本的な見方が変わりつつあると言うことだった。
講演の後、安倍首相宛の要請文(朝鮮敵視政策と制裁の中止・ピヨンヤン宣言に則り「法的地位」の改善・朝鮮高級学校に無償化適用・自治体が行っている補助金の打ち切り圧力を中止・民族教育権を認める・日朝国交の早期樹立)が提案され、参加者全員で採択した。長崎由美子さん(日朝市民連帯・大阪共同代表)の閉会のあいさつで終了した。      (T・T)

康宗憲さんの講演

米国政府の冷戦後の
対北政策を検証する


クリントン政権は北朝鮮に対し先制攻撃・北朝鮮の核破壊攻撃を検討したが、リスクが大きすぎるとしてこれを止め、一九九四年にジュネーブ合意をした。そして、二〇〇〇年「共同コミニュケ」を発表し、北朝鮮の核凍結・先制攻撃はせず共存する、軽水炉の原発を認めることを表明した。
北朝鮮の体制を認め平和協定を結ぶという画期的なものだった。ブッシュ政権は、ジュネーブ合意を破棄し、北朝鮮を「悪の枢軸」と規定し打倒の対象とするが、二〇〇五年九月「六カ国協議共同声明」で、朝鮮半島の非核化と平和協定・修好で合意し、北朝鮮をテロ支援国から外すことで危機は去った。二〇〇六年に北は第一回目の核実験をしている。
オバマ政権は、核のない世界をめざし対話を模索した。ミサイル開発はしないことを条件に経済支援をするとしたが、北朝鮮が人工衛星を打ち上げたことで相互不信が生まれ、米国はそれからは戦略的忍耐(交渉拒否・屈服強要)の政策をとった。この政策の前提は、金正恩政権は非合理的で、予測不能性を持っており、早期に崩壊する可能性があるという見通しを前提としていた。北朝鮮は二〇一三年に対話の提案をしたが、オバマ政権は無視した。北朝鮮は二〇一五年一月には、米韓軍事演習を縮小するなら核開発を中止してもいいと提案した。オバマ政権はこれも無視した。そこで、北朝鮮の国防委員会は、対話は意味がないと判断した。挑発は米国に責任がある。
トランプ政権は、最大限の圧力と関与(制裁と対話を並行して行う)という政策で、オバマ政権のそれに近いが、安保理制裁を強化し、軍事的威嚇と経済封鎖を持続する。トランプの常套句は「ハンバーガーから鉄槌まですべての選択肢が机上にある」というもの。ハンバーガーとは、ハンバーガーを食べて交渉することらしい。対話といっても、核を放棄することが前提の対話だから、有効な政策にはならない。米韓合同演習は切れ目なく行われており、北朝鮮の占領が戦略目標である。作戦計画は5015(ハワイの司令部がつくる対北朝鮮作戦)で、斬首作戦と呼ばれる。このことに日本では疑問が出ていない。
制裁は効果を上げているのか。制裁はこの一〇年間で一〇回行われたが、ミサイル開発は中断していないし、人民の生活悪化は報告されていない。北の経済成長率はGDP三・九%だ。ちなみに、韓国は二・八%だ。 核放棄を前提の対話・交渉ではなく、核保有国になったことを認め、核技術をこれ以上向上させないための交渉が必要だ。米国は北朝鮮に大統領特使を派遣し、無条件の対話・交渉を復元すべきだとの声がある。

米国「対北政策」
の発想転換を
北朝鮮の国際政治における地位が変わった。北朝鮮は非核化(核放棄)を前提とした対話を拒否する。制裁と対話の並行論も無効だ。このような中で、米国内部の論調に変化が起きている。北朝鮮の核保有を容認し、核・ミサイルの現状凍結を目標にするという論だ。
例えば、クラッパー元国家情報長官「北朝鮮にとって核は生存のチケット(非核化は不可能)、凍結が次善だ」、また今年六月二六日、「双方の首都に利益代表部を設置、核開発の中断と平和協定の交換をするべきだ」。リチャード・ハース米国外交協会長「経済制裁の効果はない。核と共存か先制攻撃の二者択一しかない」。スーザン・ライス前国家安全保障補佐官「核保有大国ソ連と共存したように、北朝鮮の核とも共存可能だ」。ロバート・ゲイツ共和党重鎮「(ウォールストリート・ジャーナルのインタビューで)北朝鮮の体制を認め、平和協定を結ぶべきだ」。今年八月一日ニューヨークタイムス社説は「虚勢を張らず、北朝鮮と無条件で直接交渉を開始すべきだ」とトランプに提言している。

文政権の対北
政策の評価は
文政権は、南北関係より韓米同盟を重視している。大統領に就任した後、米・日・中・露・欧に特使を派遣したが、ピョンヤンには派遣しなかった。最優先は、南北関係の改善であるはず。開城工業団地の再稼働、金剛山観光の再開、交流往来の拡大が課題だ。文政権は北に対し対話メッセージ(軍事会談、赤十字会談)を出したが、北朝鮮は応答しなかった。しかしこれは拒否ではない。文政権による南北合意履行と当局対話の意思表明も、北朝鮮の核・ミサイル開発の中断が前提だ。なぜ、米政府の前提条件に同調しなければいけないのか。
文在寅大統領は、金大中やノ・ムヒョンのような思想をきちんと持っている人ではないが、韓国の同意なしに朝鮮半島で戦争になることは許さないといった。素晴らしい発言だ。国民の圧倒的な支持率を背景にしているのだから、文政権には成功してもらわなければいけない。

日朝関係をどう
展望するのか
今年の六月、九月に日朝実務者交渉が行われているが、それは日朝ピョンヤン宣言の内容に帰結するべきだ。日朝国交正常化はゴールではなく入り口だ。“北朝鮮の脅威”という虚構の克服(“在日米軍の抑止力”という神話からの解放)、日米関係正常化(日米安保体制から日米平和友好条約へ)という二つの正常化が必要だ。日朝ピョンヤン宣言は、歴史問題と懸案問題の同時解決をめざす。それは、拉致・核・ミサイルの解決が前提ではない。国交正常化は、交流と往来の活性化をめざし、敵対関係の解消・不信と敵意を克服することだ。

冷静な視点と
正確な認識を
北朝鮮はなぜ、核・ミサイルの開発に執着するのか。米(韓日)政府の政策目標は、経済制裁と軍事的圧迫による北朝鮮の体制転換である。これに対し、北朝鮮政府は、核・ミサイル開発による体制保全を考えている。核保有は米朝敵対関係の産物だ。
朝鮮半島核問題の本質、“北朝鮮の核・ミサイル脅威”は「症状」、根源的な「病因」は朝鮮半島の停戦体制である。確実な「治療」は平和体制の構築(朝鮮戦争の平和協定と米朝・日朝の修好と南北の平和共存)である。先入観にとらわれず、あるがままの朝鮮を理解する努力、客観的な認識、正確な情勢分析、道徳的アプローチ(善悪・好悪、体制転換)ではなく現実的アプローチ(相互尊重、交渉による解決)を!
プーチン「制裁には意味がない」、メルケル「トランプの居丈高が問題だ。中・米・日は北朝鮮の視点から見てみるべきだ」、酒井隆(元公安調査庁第二部長)「金正恩は合理的に国を運営している。日本の政治家は北朝鮮の正確な情報を持っていない」。注目すべき発言だ。私たちは、自信を持って国交正常化に向けて進もう。(文責:編集部)

9.16

ピョンヤン宣言15周年

安倍の「戦争国家」政策反対

東アジアの平和を作り出そう

 「二〇一七日朝ピョンヤン宣言一五周年─朝鮮半島の緊張を利用した安倍政権の改憲・戦争国家化反対!朝鮮半島と東アジアの平和を求める九・一六集会」が、文京区民会館において同実行委員会の主催で行われた。集会には一五〇人が参加した。
 主催者を代表して発言した渡辺健樹さん(日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表)はまず、朝鮮高校無償化を求める裁判で一三日に東京地裁が下した不当判決を厳しく糾弾した。さらに朝鮮のミサイル発射を理由に行われている「Jアラートによる準戦時状態の演出」を批判した。
 そして先日NHKで放映された「沖縄の核スペシャル」による米軍の核配備に触れ「韓国には九一年まで核が配備されていた」こと、「その後も様々な軍事演習が繰り返されてきた」ことを指摘して、「米朝が軍事行動を中止して、平和協定を結ぶべきだ。ピョンヤン宣言で確認された日朝国交正常化を実現すべきだ。朝鮮半島と東アジアの平和のために闘っていこう」と訴えた。

米派遣主義と
追随者たち
続いて纐纈厚(こうけつあつし)さん(山口大学名誉教授)による講演「南北朝鮮の和解と統一を阻むもの─アメリカの覇権主義と追随者たち」が行われた。講演は以下のような内容だった。
@朝鮮はなぜ分断されてしまったのか。それは今日まで続く大国のエゴイズムと、日本の植民地支配によってである。分断に手を貸した筆頭は日本だと考える。その意味で日帝の支配はいまでも続いている。日本は分断の責任を回避することはできない。その責任は朝鮮が統一するまで終わらない。
A朝鮮戦争は「脱植民地戦争」であった。「自主的平和的統一」は南北の「復元」ではなくて「創造」だということであり、まったく「新しい朝鮮をつくる」ということだ。そのために日本人として何をなすべきか!朝鮮人民の自主的平和的「創造」の力になるということではないか。日本は米国の懐に飛び込んでしまい、それをやってこなかった。
B「サードを持ってうせろ!」これが韓国でのスローガンだ。米軍は休戦協定を破って韓国に核砲弾などを持ち込んだ。いまでも在日米軍基地の弾薬庫や艦船、潜水艦に、そして在韓・グアムの米軍が核を運び動かしているかもしれない。
米軍はいつでも攻め込める態勢にある。米軍が行けば、軍の指揮権が米軍にある韓国も行くしかないし日本も行くかもしれない。米韓合同軍事演習は事実上の戦争行為であり、その目的は「北の国力を消耗させる」ということだ。そして北も「戦闘態勢」に入らざるをえない。しかし、米国が侵攻作戦を発動しない限り、北が先んじて動くことはありえない。
C脅威の根源は米国にある。北朝鮮だけではなく韓国も「道づれ」という恫喝にさらされている。また「核の傘」と言うが、米国が日本を守るわけがない。日本は地理的に使いやすいということだ。
「非核化」は南および周辺を含むものとしなければならない。米軍の核すべてを公開して、段階的に撤去すること。核強国の側からそれを進めるべきだ。安倍は北と中国の脅威を煽り続けるが、本当の脅威は米国にある。核の誤った「脅威論」を払拭しなければならない。

朝鮮高校「無償化」
差別裁判に反対
集会は小休止をはさんで、ノレの会による「徴用工像とともに二〇一七仁川平和文化祭」の映像上映と「リムジンガン」の合唱で再開された。
特別報告は「朝鮮高校『無償化』差別裁判の判決(広島・大阪・東京)と今後の闘い」を、長谷川和男さん(「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会共同代表)が行った。長谷川さんは「東京で勝てれば歴史が変わる」という思いで福岡から東京まで行脚して、東京地裁前の大結集を呼びかけた。そして判決日には一四〇〇人が地裁前を埋めつくした。
広島の判決はあまりにもひどかった。その内容たるや「その使い道は本当に授業料に使われるのか疑問だ」とした。朝鮮高校運営の現状と朝鮮学校の歴史を学びさえすれば、そのような判決内容が書けるわけがない。大阪の判決は本当にうれしかった。涙が止まらなかった。歴史的なものになったと思う。しかし同時に「東京の判決は大変だ」と思った。もしも東京で勝利すれば「歴史が大きく転換できる」。だが権力の側はその流れを止めようとするだろう。
弁護団も「東京だけは勝ちたい」と考えて、論点は法の論理・精神に従った内容となった。しかし判決は現実の「政治と世論」が反映された。世論を変えなければ勝てない。
長谷川さんは報告の最後に「歴史に責任を持つ日本人として、いま立ち上がらなければならない」と発言して、一〇・二五代々木公園で開催される集会への結集を訴えた。
諸団体からのアピールは、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、「戦争と女性への暴力」リサーチアクション[VAWW RAC]、許すな!憲法改悪・市民連絡会、在日韓国民主統一連合のそれぞれの代表から発言を受けた。
集会は最後に集会アピールを満場の拍手で確認して終了した。 (R)

 

 



もどる

Back