沖縄報告:8月26日
辺野古ゲート前だより 8・23〜26
沖縄 T・N
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8.23
ゴボウ抜きに抗し
1人が逮捕された
水曜日は那覇・南部地区の島ぐるみ会議を中心とした集中行動日。平和市民連絡会が運営する県庁前六時発のバスは二四人が乗り、七時半前にはゲート前に着いた。いつもより少し遅めだが、八時半ごろから工事用ゲート前で集会が始まる。一五〇人くらいはいる。いつもの水曜日よりは多いかも。午前中は動きがないことから一〇時頃からメインゲートまでデモをして、向かいのテントで集会後、午後の搬入に備えて早めの昼食となる。
一二時一〇分トラックが国頭村の採石場を出たということで、工事ゲートに移動・座り込みを開始。一二時四五分頃からゴボウ抜きが始まった。人数が多いため一時半頃までかかった。
トラックは北から四九台。四台は資材、一台はクレーン車、残りは砂利が載っていた。南から五台。一台は港湾運輸、カバーがかかっていた。四台は砂利。これらが入り終わるまで歩道の一角に拘束されたまま、入ったトラックのうち五二台が二時頃までに出た。そのなかで同じバスで来た仲間の女性が一人怪我を負い救急車で搬送。その際、男性が一人いわゆる「ころび公妨」で逮捕される。二一日の月曜にも些細なことで一人逮捕され、翌日すぐに釈放されている。
午後三時、戻ったトラックがまた採石場を出たということで四五分頃からゲート前に座り込み。四時一五分頃この日二回目のゴボウ抜き。この時間まで残っているのは私たち平和市民のバスと那覇からの「島ぐるみバス」くらいでやはり人手が足りない。トラックは五〇台位か。貸し切りバスの時間制限もあり、排除された後は急ぎ帰途に着いた。
8.24
韓国・済州島の闘い
から熱い連帯あいさつ
木曜日はうるま市・沖縄市など中部地区の島ぐるみ会議を中心とした集中行動日。県庁前九時出発の「平和市民連絡会」が担当するバスに乗る。きょうは一六人、もう少し利用者が増えないとほぼ毎日バスを出す平和市民連絡会も赤字がかさんで大変だ。
一〇時半ごろゲート前に着くとすでに一〇〇人以上は集まっているようだ。そのせいか午前中の搬入はないとの見方で、新ゲート前のテントで集会が始まるところだった。
それに先立ち、早朝に大事件があった。六時頃新ゲート横の歩道の縁石に座っていた二人の仲間がひき逃げに会ったのだ。一人は辺野古への新基地建設計画が明らかになって以来、ずっと現場で闘い続けてきた平良悦美さん。もう一人はゲート前のスタッフとして活動してきた三浦俊一さんだ。二人とも救急車で病院に搬送されたが、とくに平良さんは足を骨折する重傷でしばらく入院して手術が必要だという。たいへんな目に遭われた平良さんの一日も早い回復をお祈りしたい。今回の事件がどういう背景で起こったのかは今のところ不明だが、今後の解明に注視していく必要があるだろう。
ゲート前集会はヘリ基地反対協の司会進行で、泰まことさんのいつもの歌声から始まった。
つぎに韓国済州島カンジョン村で二〇一一年から海軍基地建設反対運動の支援を続けてきたキム・ソンファン(金星煥)神父さんが連帯のあいさつ。
「工事ゲート前での座り込みと暴力的排除はカンジョン村での闘いと全く同じ光景だ。ただカンジョンでは生コン車の下に潜り込んだりして激しく闘ったので延べ七〇〇人余りの逮捕者がでて、二〇〇人余が裁判にかけられ四億ウォンの罰金が科せられた。基地はすでに完成し私たちが危惧した通り米軍の艦船が頻繁に寄港するようになった。しかし諦めることなくゲート前でミサや人間の鎖、百回礼拝をおこない平和と村の文化を守る闘いを続けている。沖縄の皆さんと同様、私たちが現場に集い声を上げ続けることで、いつか必ずアジアから米軍基地を追い出すことができると信じている。共に闘おう」。
九月一五日まで沖縄に滞在して、市民団体・宗教団体の人たちにアンケート調査とインタビューをする予定とのこと。
続いて元裁判官でうるま市九条の会の仲宗根勇さんが、二三日に控訴審判決があった米国でのジュゴン裁判について説明。二〇〇三年に日米の環境保護団体などが米国の文化財保護法に違反するとして、連邦地裁に国防総省を提訴した。地裁は〇五年三月の中間判決でジュゴン保護につき同法が適用されると認めたものの日本政府の政権交代など紆余曲折の末一五年二月、基地工事の中断は政治・外交問題として原告の申し立てを却下し、原告が控訴していた。控訴審判決は再び原告資格を認定し、原告の主張は政治問題ではないとして一審判決を破棄し、連邦地裁で審理するよう差し戻した。差し戻し審で国防総省は文化財保護法に基づいた措置を求められることになり、場合によっては工事が停止される可能性もあるなかで、知事には一日も早く埋め立て承認を撤回し、県の姿勢を明確にしてほしいとのことだった。
荻堂さん、東浜さん二人のうるま市議は、「佐賀へのオスプレイ配備を巡って住民の意向に言及する官邸の姿勢は沖縄とあまりにもかけ離れた二重基準であきれ果てる」「法を捻じ曲げてでも沖縄に押し付けてくる安倍政府に対し、昨日出馬表明した稲嶺名護市長を支え、辺野古を明確な争点にして圧勝しよう」と呼びかけた。
一一時過ぎに採石場からダンプが出発し、監視の仲間たちが止めている、との情報。午後からの搬入に備え早めの昼食に入る前に島袋文子オバーが、一七日参議院議員会館で開かれた「沖縄に連帯する市民のつどい」に招かれたことを報告。高校生とのディスカッションなど五〇〇人程の市民を前に自らの思い出したくない戦争体験を語り、軍隊は決して住民を守らないこと、軍事基地は直接戦争につながっていること、安倍政権が押し付ける辺野古新基地を止めない限り死んでも死にきれない。力を貸してくださいと訴えてきたという。
食事を終え一時過ぎに炎天下の工事ゲート前に移動して日傘をさしながら座り込む。二〇分ごろからゴボウ抜きが始まるが機動隊の数に比べ市民の抵抗が強く、ゲートを開けるまで四五分もてこずっていた。砕石を積んだダンプなどが北から三八台。砂利、資材などが南から一〇台ほど入られた。
その後一旦テントに戻り、各島ぐるみの得意な歌など聞きながら休憩。朝からの人たちが大方帰った四時過ぎに二回目の搬入。残っていた二〇人程で座り込んだがすぐに排除され、私たち平和市民のバス組はぎりぎりの四時四〇分ごろ第二辺野古バス停を出発し、県庁前の到着は六時を過ぎていた。
最近、午前中の結集が多い日にはこうした貸し切りバスの時間切れに合わせた搬入がたびたびある。
大浦湾海底の地形・地質や美謝川河口の切り替えなど翁長知事のもとでは手がつけられず全体計画の見通しが全く立たない状況の下でも、防衛局は前知事が承認した仮設道路や一部の護岸などの工事を来年二月の名護市長選までにやみくもに進め、もう元に戻せないという印象操作に専念しているように見える。
8.26
オール沖縄訪米団の
活動報告を受ける
県庁前九時発の那覇島ぐるみバスに乗る。三四人、上々の人数だ。一〇時半過ぎに辺野古に着くと二〇〇人近くの結集だ。六時に県庁前を出た「平和市民連絡会」のバスは一七人で先に着いている。普段の結集は退職者が多い中、土曜日は現職の労働者にも参加してもらおうと「平和運動センター」が司会進行を担当することになったが、どれくらい参加しているのかはわからない。この人数なので今のところ採石場でもダンプの動きはないらしく、新ゲート前のテントで集会が続いていた。
一二日の県民大会を受けて一六日に出発し、二四日に帰ってきたオール沖縄会議訪米団の伊波洋一さんと糸数慶子さんの二人の参議院議員が参加している。
団長を務めた伊波さんは、一九日にカリフォルニア州で開かれたアジア・太平洋系アメリカ人労働組合(APALA・66万人)の二五周年記念総会に招待され「新基地建設計画は絶対に阻止する。米国でも支援を」と呼びかけ、それに応じてAPALAは辺野古基地建設に反対する「沖縄との連帯」を決議し、連邦議会や自治体に賛同を呼びかけ、解決に向けて行動することを決めた。
そのほか国連人権委員会特別報告者のデイビッド・ケイ教授や女性人権団体、環境団体、連邦議会議員とも面談し、沖縄の米軍基地では日米の航空安全基準に違反する運用が行われているのに、うその報告がなされ、それを日本政府が隠していることを伝えたという。トランプ政権のおかげで政府批判にも耳を傾けてくれたようだと報告。
糸数さんは、VFP(平和のための退役軍人の会)とともにサンディエゴにある海兵隊のミラマー航空基地への抗議行動に参加。ヘリ機の飛行訓練がすべて敷地内で完結できるほど周辺に住宅のない広大な基地で、待ち合わせ場所に到達するのに苦労した。これを見ただけで普天間はあり得ないと感じたという。また米軍の性犯罪など女性人権問題に取り組んできたカマラ・ハリス上院議員の上級補佐官やナンシー・ペロシ下院議員の補佐官と会って沖縄の実情を訴えることができた。悲しいことだが一九九五年の少女暴行事件のあと高里鈴代さんたちが取り組んできた女性たちの国際ネットワークキャラバンが作り上げた成果だと報告。
赤嶺政賢衆議院議員は、議員会館での文子オバーを迎えた集会の後長野県へも招請されたことを紹介し、二〇一四年の島ぐるみ選挙以降一五年の安保法制反対の大衆行動、一六年伊波洋一さんが圧勝した参議員選挙での一人区共闘など、野党共闘+市民運動の形で辺野古の闘いが全国に広がっているとし、来年二月の名護市長選挙、一一月の知事選挙を勝ち抜き安倍政権を打倒しようと訴えた。
木曜に続き五〇人余で結集したうるま市島ぐるみの伊藝さんは、昨年六・一九うるま市民の女性が犠牲となった事件に抗議する県民大会で海兵隊撤退の決議がなされたのを受けて毎週月曜日にキャンプコートニー前で午後四時から海兵隊撤退を求める市民行動に取り組んできた。来週の月曜で一周年になる。二度と犠牲者を出さぬようすべての基地をなくすまで共に闘おうと訴えた。
昼食をはさんで午後は島ぐるみ沖縄市のM君による歌とシュプレヒコールのパフォーマンス。
那覇島ぐるみバスの岩村さんは、北海道での日米合同演習にオスプレイが参加したことを受けて、低空飛行訓練や墜落の危機が全国の問題となるこの機会に、辺野古基金を活用して、四〇歳以下のメンバーで構成する「辺野古・高江全国キャラバン」を作り、沖縄から全国に発信しようと提案。
三〇人で参加の島ぐるみ糸満の大城のり子さんは、ドキュメンタリー「ザ・思いやり」の上映会の取り組みを報告。ワーキングプアがどんどん増える中で米兵一人当たり年間一五〇〇万円もの税金が使われているなんて許せない。しかもこの映画を作ったのはアメリカ人で、日本の報道は一体何をしているのか?こんなおかしな国をどうにかしないと、と憤った。
朝から参加の文子オバーの帰宅を見送った後、一時半頃機動隊に動きがあり工事ゲート前に移動。
一時四五分頃からゴボウ抜きが始まるが、熱暑の上一〇〇人近くが座り込んだため機動隊も汗だくヘトヘトで排除に二時半過ぎまでかかった。しかも入った車両は空に近いダンプが八台ばかり。
一旦テントに戻り休息。ゴボウ抜きに間に合って駆けつけた社民党現地闘争団の地方議員一〇人を代表して狩俣信子県議があいさつ。実際に排除に遭って改めて機動隊の暴力はひどいと感じた。議会で追及すると明言。参加者からの指摘で、拘束中の警察車両からの排気ガスについても議会で取り上げると約束し大きな拍手。
泰まことさんは、先程ゲート前でのもみ合いの中で「転び公妨」行為を現認し機動隊指揮官に指摘したと報告し注意を喚起した。また先日の国連の軍縮会議に日本の高校生が二一万人分の署名をもって参加したおり、恒例の演説が日本政府の妨害でキャンセルになったことを指摘。その黒幕が防衛官僚当時アメリカにオスプレイ隠しを進言した安倍腹心の高見沢将林(現国連軍縮大使)とわかって皆が「ああやっぱり」。納得したところで「安保廃棄・沖縄返せ」をみんなで熱唱。泰さんが最後にフィリピン革命の歌を披露した。
三時前、機動隊が突然帰り始めたので皆歩道に出て手を振ってお見送り。「二度と来るなよ〜」。私たちも貸し切りバスに連絡し、のぼりを片付けて早々と解散、帰路に就いた。
現場の闘い軸に「辺野古
不可能」突きつけよう
八月に入って今年はまとまった雨がほとんど降らず、今まで台風も来ないため現場は例年になく暑い。高齢者と女性中心の現場は曜日ごとに人数と参加者が固定化気味だ。高江の工事もまだ続いている中で、人員のやりくりはとても厳しくなっている。
現場に来る人の意気は高いが、連日のやみくも搬入であっても「埋め立ては進んでいるよ」との政府の「印象操作」の影響はそれなりにあると思う。沖縄タイムスや琉球新報でさえ途中で止まった護岸工事の写真のキャプションに「工事が着々と進む」と書いたり、記事の中で「普天間代替施設」の用語が現れたりする。
加えて四月以降は、些細なことでのひとりずつ一泊二日逮捕が頻発している。二一日に逮捕された仲間の話では県警が送検する調書があまりにずさんで、地検で検事から書き直しを求められたそうだ。そもそも道交法違反では逮捕する必要もないのに起訴もできない逮捕を繰り返す。それでも地検や県警が黙って従っているのは明らかに官邸の意思が働いているからだ。逮捕された当事者は萎縮どころか返ってますます意気盛んだが、現場に来たことがない人にとっては「辺野古に行くと逮捕される」という抑制効果があるのだろう。
この二つの「印象操作」で安倍・菅官邸は当面県民や全国世論のあきらめを誘い、二月の名護市長選挙で稲嶺市政を阻止する戦略だ。現に相手候補は「埋め立てが始まった以上辺野古は終わった問題」として焦点外しに努めている。
森友・加計問題をはじめ安倍の化けの皮が剥げつつあり、ジュゴン訴訟や労組・人権団体の支援などトランプ政権の下で米国世論が動きつつある中、今こそ現場の結集を軸にして「辺野古不可能」を突きつけ、安倍打倒の声を全国に広げたい。
沖縄でも基地引き取り運動の評価や独立論、知事の埋め立て承認撤回の時期や住民投票の是非などいろいろ意見の違いがあるが、現場ではかつての集中行動日のように二〇〇人以上集めることができず、水曜、土曜でも搬入を完封できていない中で週二〜三回参加できる仲間が熱中症とも闘いながら歯を食いしばって耐えている。火曜や金曜は五〇人にも満たない日があるのが現実だ。意見の違いを議論するのも大切だが、その前にゲートからの資材搬入がある以上とにかく週に一日でもダンプを止める日を取り戻したい。
全国の仲間の支援で現場のスタッフが維持できていることに感謝するとともに、それを承知で敢えて、さらなる辺野古・高江への仲間の結集をお願いします。
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