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    かけはし2017.年8月7日号

歴史的な勝利かちとる


7.28

大阪「朝鮮高級学校無償化」裁判

安倍政権の言い分認めず

「堂々と生きぬくことができる」

 【大阪】朝鮮高級学校を無償化の対象から外した国の処分を取り消し、指定を義務づける画期的な判決が七月二八日、大阪地裁であった。七月一九日に無償化の件での訴訟の判決が広島地裁であり、こちらの場合は原告全面敗訴だったので、ほとんどの人が不安の中で二八日の判決を迎えたが、予想を大きく超えた本当にうれしい画期的な内容の判決だった。
 二〇一〇年四月に導入された無償化制度では、国公立高校や私立高校以外で、各種学校に属する外国人学校も文部科学相の指定を受ければ対象となった。しかし国は一三年二月、大阪を含む全国一〇の朝鮮高級学校について、「在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)や北朝鮮との密接な関係が疑われ、就学支援金が授業料に充てられない懸念がある」などとして不指定を決定。二月二〇日、文部科学省令を改め(規則一条一項二号イは大使館を通じて確認されている民族系外国人学校、二号ロはインターナショナルスクール、二号ハは朝鮮高級学校が該当するはずだったが、ハの項を削除)、無償化の対象となる外国人学校から朝鮮学校だけを外した。
同日大阪市東成区民センターホールで報告集会が開かれ、たくさんの在日の人々や支援者が参加し、あちこちで握手をする姿が見られた。長崎由美子さん(朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪事務局長)の司会で集会は進められ、発言者に対して盛んに拍手がわいた。最初に、大阪朝鮮高級学校生徒による歌と踊りでオープニング。金英哲弁護士が、いまだ興奮がさめないと言いながら判決の解説をした。

政府の主張は
無償化原則逸脱
訴訟の請求内容は、@無償化対象の指定をしない旨の処分を取り消すA大阪朝鮮高級学校について規則一条一項二号のハに基づく指定をせよ、の二点。弁護団の説明によると特にAは、大阪独自の要求だったとのことだ。判決は、@・Aとも認め、訴訟費用は被告の負担とした。
弁護団の説明では、国際人権規約や子どもの権利条約にもとづく子どもの教育権を前面に押し出した主張をしたが、この主張は採用されなかった。朝鮮高級学校は「高等学校の課程に類する課程を置くもの」に該当する各種学校であるが、無償化の適用除外とされた。その理由は、適用校に指定すると拉致問題について軟化したメッセージを与え、拉致問題解決の妨げになる、などの外交的・政治的な理由だった。その判断は、主として自民党下村博文議員(一二年一二月より文科相)や義家議員らによるもので、外交上の配慮による判断はしないという民主党政権時代の統一見解は無視された。判決は、上記の判断は、教育の機会均等の確保に反し、無償化規則の趣旨を逸脱しているので、無効だとした。
また判決は、就学支援金は授業料に確実に充当されるべしという規程一三条に関して、大阪朝鮮高級学校は財産目録・財務諸表の作成や理事会の開催、大阪府知事の随時立ち入り検査の際の法令違反はなく適合性が認められるとした。

民族教育の意義
を認めた判決
北朝鮮政府から不当な支配を受けているとの疑念に関して、被告は産経新聞などの報道内容を書証として提出していた。報道の一つ一つや民団新聞・公安調査庁の書証について判断し、特段の事情があるとはいえないとした。
朝鮮総連が朝鮮高級学校の教育に一定程度関与しているが、朝鮮総連は在日朝鮮人の民族教育の実施を目的の一つとして結成された組織であり、朝鮮学校が朝鮮総連の協力の下、自主的民族教育として発展してきた歴史に照らせば、両者の関係が不適当とは言えないとした。そして、朝鮮高級学校での母国語と母国の歴史・文化についての教育は、民族教育にとって重要な意義を有し、民族的自覚・民族の自尊心を醸成する上で基本的な教育と言うべきであり、北朝鮮の指導者や国家理念を肯定的に評価することも朝鮮高級学校の教育目的それ自体に沿うもので、不当な支配とは認めがたく、一定の理論や観念を強制していないとした。このようにして、文科大臣の無償化適用除外という判断は、裁量権の逸脱・濫用であり、取り消しを免れないと結論。
最後に、適用対象に指定義務付けの可否について判決は、規程一五条:「指定をするには審査会の意見を聞くものとする」に言及するが、この規程は裁判所が文科大臣に対して指定を命ずることを妨げるものではないとし、原告の申請について規程に基づく指定をすべき旨を命ずるのが相当だとした。

「敗訴」の可能性
も想定していた
大阪朝鮮学園の声明を読み上げた玄英昭理事長は、大阪府の補助金裁判での敗訴や広島地裁での敗訴から、今回も敗訴した場合の声明文を読み上げる練習をしていたと告白。
この後、大阪朝鮮高級学校オモニ会会長:高吉美さん、東京朝鮮高校生の裁判を支援する会共同代表:長谷川和男さん、日朝教育・文化交流をすすめる愛知の会事務局長:竹内宏一さん、広島朝鮮初中高級学校オモニ会会長:朴陽子さん、九州朝鮮中高級無償化弁護団:朴憲浩さんが次々登壇し発言をし、勝訴判決を喜び、今後の闘いの決意を述べた。
アピールの最後に、オープニングで踊りを踊った大阪朝鮮高級学校の在校生が登壇し、ウリハッキョが好きだ、これから堂々と生きていっていいのだと思ったといい、自分たちがこれからのウリハッキョを発展させていくのだと決意を述べた。支援に感謝しつつ、今はチマ・チョゴリを着ているが、登校時はこんな服装はできない、それは危険だからだと、ヘイトクライム・ヘイトスピーチが彼らを傷つけている日本社会の現実についても語った。
また、韓国の「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」の代表が声明文を読み上げた。この声明は、韓国の労働組合・政党・宗教団体・市民団体など六五団体連名の声明だった。朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪の共同代表・伊地知紀子さんが声明文を読み上げた。弁護団全員が登壇し、歴史的な判決に関われてうれしいと一言ずつ発言した。最後に丹羽雅雄弁護団長が閉会の辞で判決が民族教育を正当に評価したことにふれ、よくぞ書いてくれたと述べ、八月七日に開かれる大阪府・市補助金裁判の控訴審への支援を訴えた。           (T・T)

7.23

第7回「日の丸・君が代」問題全国交流集会

国家主義の「洗脳」に抗して

「領土」・五輪・「教育勅語」など


今こそ反撃へ
闘いの共有を
 七月二三日、「全国から集う!全国で闘う!洗脳『教育』はゴメンだ! 第7回『日の丸・君が代』問題等全国学習交流集会」(主催・実行委員会)が日比谷図書館文化会館で行われ、一三〇人が参加した。
 安倍政権は、グローバル派兵国家建設の一環として新自由主義と国家主義をセットにした教育を押し進め、子どもたちを戦争動員へと導こうとしている。その一つが学習指導要領の改悪だ。とりわけ@幼稚園から「君が代」に親しませるA小学生の段階で「北方領土」、「竹島」、「尖閣列島」などを教えるB「国威発揚」のために「オリンピック・パラリンピック」への総動員体制の着手C道徳教育の教科化を通した国家のための人間形成、など国家主義教育の全面化に入りつつある。さらに戦争法を支える人材づくりとして教育現場への自衛隊の浸透を押し進めている。防災教育と称して愛国心と国防意識への「洗脳」アプローチだ。このような教育攻撃とセットで東京都教育委員会による「日の丸・君が代」強制の「10・23通達」(二〇〇三年)に抗議する教育労働者に対する大量処分攻撃はさらに悪質化し、同時に全国的に「日の丸・君が代」強制と教育労働者に対する管理・統制が強まっている。実行委員会は、教育攻撃を分析し、様々な闘いを共有化することを通して反撃に向けたステップを構築していこうと交流集会を取り組んだ。

「主権者」教育
が重要になる
開会あいさつが永井栄俊さん(実行委)から行われ、「安倍政権の暴走が続いている。戦争法、共謀罪の強行採決はその現われだ。同時に教育現場でも同様な事態が発生している。教員に対する『日の丸・君が代』強制をはじめ強引な管理・統制が行われてきた。そのうえで今、北朝鮮のミサイル発射を利用し、『緊急避難』訓練などによる戦争動員を行いながら子どもたちに対して『洗脳教育』が行われている。安倍政権の教育改革を許さない取り組みを作り出していこう」と訴えた。
高島伸欣さん(琉球大学名誉教授)は、「蘇る『教育勅語体制』と『日の丸・君が代』強制を迎え撃つ ─洗脳教育を教材にし、無力化と反転攻勢の力量育成をめざす─」をテーマにして講演した。
高島さんは、冒頭、安倍政権下の「教育勅語体制」による「洗脳教育」の悪影響を払拭するための方針として「主権者教育」の重要性を提起した。つまり、「一八歳選挙権の行使準備を兼ねた『請願権』理念の学習と『請願権』行使体験の実践学習の取り組みがあるが、現行の中学『公民』と高校の『現代社会』『政治経済』の教科書の大半が誤った内容、生徒に誤解を与える内容になっている」と批判した。
そのうえで具体的な取り組みとして、例えば、生徒たちに対して次のようなビラ配布を校門前で行うことも効果的だと紹介した。「君たちが使わされている教科書は内容に誤りがある。そうした誤りのない教科書を選ぶように学校側に要望しよう! 正しい内容を教えてくれるように学校に要望しよう! 学校も公的な役所の一つであるのだから、そうした要望を文書で提出すると、学校側はそれへの誠実な対応が『請願法』で義務づけられている。中学生・高校生の皆さん、正しい学習ができるように自分でも行動しよう!。中学・高校生自身に批判力の定着、底力の育成を目指したい」と強調した。
また、@「旭日旗」問題に見る加害者「日本(本土)」社会と被害者・近隣諸国(沖縄)社会の落差A「洗脳教育」の再構築をめざす安倍「教育再生実行」政策B今こそ安倍政権による「洗脳教育」への反転攻勢、について提起した。

弾圧をはねかえ
して前進を!
東京の闘いの報告は、増田都子さん(都教委を訴える会)、都教委による被処分者、東京「君が代」裁判第四次訴訟、東京「再雇用拒否」原告、河原井さん・根津さんらの「君が代」解雇をさせない会、都教委包囲首都圏ネットから行われた。
大阪からは、奥野泰孝さん(不起立被処分者)、井前弘幸さん(戒告処分取消し訴訟)、野村尚さん(「君が代」不起立解雇撤回訴訟原告)、松田幹雄さん(大阪市「君が代」不起立戒告処分当該・グループZAZA)などから行われた。
すでに東京は、「10・23通達」以降、四七八人が処分されている。今年も都教委は、三月の卒業式で「君が代」斉唱時に不起立した都立高校教員二人に対し「懲戒処分」(戒告、減給一カ月)を発令し、「服務事故再発防止研修」(思想転向強制研修)を強行している。大阪でも「日の丸・君が代」処分は六二人、再任用拒否が九人になっている。報告者は、不当処分に抗議し、「思想・心情・良心・教育の自由」破壊を許さず全国ネットで反撃していくことを呼びかけた。
闘いの報告(3)では、東京「再雇用拒否」第三次訴訟、石井泉さん(千葉高教組「日の丸・君が代」対策委員会)、「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会、土屋聡さん(「女川から未来をひらく夏の文化祭」実行委員会)、静岡県学校労働者組合メッセージ、小野政美さん(憲法の理念を生かし、子どもと教育を守る愛知の会)、「日の丸・君が代」の強制に反対する阪神連絡会、「日の丸・君が代」新潟被処分者を支える会、「日の丸・君が代」反対の闘いを行う福岡・佐賀の仲間、村上理恵子さん(各種学校専修学校関係労働組合連絡協議会)、片山かおるさん(小金井市議)、保護者の立場から、永井栄俊さん(パンフレット「教育に浸透する自衛隊 『安保法制』下の子どもたち」〈同時代社〉を紹介)、ひのきみ全国ネットなどから行われた。
最後に集会アピールを採択し、銀座デモに移った。「日の丸・君が代」強制反対・「洗脳教育」ノーを街頭の人々に訴えた。二四日には、「日の丸・君が代」問題等に関する文科省交渉が行われた。 (Y)



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