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    かけはし2017.年8月14日号

茨城県に脱原発の知事を


8・27は投票日

鶴田まこみさんに投票を

東海第2原発の運転期間延長止めよう

8・26は東海村「人間の鎖」へ

 東日本大震災によって東海第二原発は自動停止、外部電源を喪失したため非常用電源装置が自動起動、三台のうち一台が浸水のためストップ、冷温停止まで三日半かかった。二〇〇四年のスマトラ沖地震を受け国は都道府県に必要な対策を行うよう指示、茨城県は一六七七年の延宝房総沖地震を想定して津波の高さを再評価し、日本原電に防潮壁かさ上げを要請した。原電は二〇〇九年にかさ上げ工事を開始、未完成ながらかさ上げ工事中の防潮堤は津波被害を抑制し、間一髪でメルトダウンを免れた。
東海第二は一九七八年の運転開始、運転期限の四〇年を来年一一月二八日に迎える。運転期間延長の申請は、この運転期限の一年三カ月から一年前までに行う必要があり、その解禁日は八月二八日だ。
原電は今年度の「経営の基本計画」で延長申請を明記、申請に必要な特別点検を五月一九日に開始した。東海第二原発再稼働問題・署名実行委員会、茨城平和擁護県民会議、さよなら原発いばらきネットワークは、こうした動きをうけ「八・二六原発いらない茨城アクション―東海第二原発二〇年運転延長を許すな! 人間の鎖」への参加をよびかけている。
茨城アクション翌日の八月二七日は茨城県知事選挙の投開票日(一〇日告示)、東海村では村長選挙とダブル首長選となる見込みだ。知事選へは三名が立候補を表明。自公が推薦する元経産省職員でニコニコ動画を運営するドワンゴ役員の大井川和彦(五三)、七選をめざす無所属現職の橋本昌(七一)、共産党など六つの政治団体が推薦するNPO法人理事長の鶴田まこみ(五二)の三名だ。民進党は自主投票を決めた。
八月二六日の「人間の鎖」を成功させ、二七日の知事選で廃炉を決定づける茨城県民の判断を勝ち取り、二八日から申請可能となる運転延長を断念させよう。

住民投票か全県アンケートか


大井川が役員をするドワンゴは大飯原発三・四号機再稼働直後の二〇一二年八月、原発アンケートを行った。ニコニコ動画登録ユーザー二八〇八万人のうち一二七万人が回答する「大規模」なものだ。「大飯原発再稼働の賛否について」の全国集計の結果は、賛成三三・五%、反対二八・六%。地域集計では、反対が賛成を上回ったのは福島と沖縄の二県で、茨城県は賛成三四・七%、反対二五・五%だった。「今後の原発政策について」は、すぐにでも全廃一〇・九%、徐々に減らしいずれは全廃五八・六%、安全性の向上を図り減らす必要はない三〇・五%であった。
公明党県本部は震災後、東海第二原発は「再稼働させずに廃炉」を主張してきた。「再稼働にかかる七〇〇億円を超えるといわれる投資を考えると、経済的に考えても合理的」としている。
県本部代表の井手義弘県議は今年の三月三日の代表質問で次のような意見を述べた。――いばらき自民党が推薦する予定候補者は、記者の質問に対して「再稼働については時期尚早。住民の皆さまの直接の意思表明という機会も与えてもいいのではないか、その上で判断するというのも一つの方法ではないかと思っています。住民投票ということです」と答えていました。毎年県が行っている県民世論調査の設問として、この問題を取り上げる必要があると主張します。(井手公式HP「ほっとメール@ひたち」より)
橋本知事は、他県の事例がないので「慎重な対応が必要」とし、再稼働については国の具体的な方針が示された段階で県議会、県原子力審議会や地元市町村の意見などから総合的に判断すると答弁した。
東海村の山田修村長は、「責任放棄となる」と住民投票を否定。「村長と議員だけで決めるのはよくない」として住民アンケート、村長自ら地域に出向いて意見を聞くなどの方法の可能性を住民集会で示した。昨年一月の村議選で再稼働派が絶対多数を取り戻した。村議会ではさっそく「安全審査を早急に行うことを国に求める」請願を可決した。八月二二日の告示まであとわずか、まだ山田以外からの出馬表明は聞こえてこない。

「トーンダウン」する自公陣営


いばらき自民党は県議会で定数六三名のうち四五名を占め、全国屈指の自民党勢力を誇る。橋本を四選まで推薦。多選批判から五選は独自候補を擁立したが大敗、その責任をとって「県政のドン」と呼ばれてきた県連会長の山口武平県議は引退、六選は不戦敗だった。今回は党本部が中心になり茨城出身の元官僚の大井川を擁立、新聞織り込みチラシには小泉純一郎元首相と映しこんだ写真を掲載させるなど挙党態勢をとっている。今回の組閣では、菅官房長官が師と仰ぐ梶山静六の息子、現県連会長の梶山宏志を地方創生相に担ぎ上げた。
公明党県本部は四月に大井川推薦を依頼されたが態度を保留してきた。県本部は七月一八日、党本部から都議選後の自民党との関係回復のため態度決定を求められ、大井川と政策協定を締結、推薦を決めた。
七月二九日の毎日新聞県内版は「住民投票トーンダウン」との見出しで次のように報じた。――原発への姿勢が不明瞭な大井川氏との整合性を報道陣から問われると、県本部代表の井手義弘県議は「大井川氏の支持者には(原子力関係の)事業者もいるので、今後協議する」と明確には答えなかった。大井川氏は今月二〇日、県庁で記者会見を開き、選挙政策を発表した。報道陣から住民投票について聞かれると、「選択肢の一つ。必ず実施するわけではない」と答えるにとどめた。
この記事の画像を井手県議は自身のブログにアップしている。「党本部への異議」とも「自己批判」とも読める。橋本多選批判票が鶴田さんに流れることを阻もうと、大井川陣営は公約を更新し「犬猫の殺処分ゼロ」を加えた。

一枚岩が崩れる「県民党」

 橋本は四月はじめ、県市長会と町村長会の要請で七選出馬を表明、陣営は「県民党」を自称する。選対本部長は市長会会長で「脱原発をめざす首長会議」(以下、首長会議)の会員でもある豊田北茨城市長が務める。連合茨城のほか、建設業協会、農政連、医師会の推薦も得て現職の強みをみせている。
県内四四市町村のうち、つくば市長、石岡市長、小美玉市長、美浦村長も首長会議に加わる。茨城では二〇一三年五月までに二三首長が再稼働反対を表明、三〇以上の市町村が東海第二原発の廃炉、再稼働反対などの議会決議をした。また、二〇一六年以降、運転延長反対の請願が一六議会で可決されている。
造反も出ている。ひたちなか市長、笠間市長、高萩市長、坂東市長、古河市長、利根町長の六人は大井川陣営にまわった。
現行の安全協定では、日本原電が再稼働の事前同意を求めるのは県と東海村の二自治体のみだ。隣接する五市村は東海村同様の安全協定への改定を日本原電に求めているが拒否されている。また、国の防災指針の見直しで防護措置の準備が必要となった五市町は日本原電に新たに安全協定締結を求めたが同様に拒否されている。関連する一五の市町村で構成する「東海第二発電所安全対策首長会議」はあらためて三月二日、日本原電に申入れ書を提出している。
先の毎日記事は「橋本氏が二八日に発表した政策には、『原発再稼働問題は重要課題。安全性と避難体制の実効性が確保できない状況では、再稼働は認められない』と慎重姿勢をアピールする一文が加えられていた」と報じる。
大井川サイドは「六対四で橋本優位」と陣営引き締めを図ってきた。橋本は、同郷で親戚の村上達也元東海村村長が鶴田支援を明確にすると、「つくば方面の動きが気になる」と発言し、自民党への批判票が割れることに危機感を持ち始めた。

いのち輝くいばらきへ


七月三〇日、つくば国際会議場を埋める一三〇〇名を集め「鶴田まこみと変えるいのち輝くいばらきへ―県政を変える大集会」が開催された。ステージには「いのち輝くいばらきを子ども達に」「原発の再稼働を決めるのは知事 知事を決めるのはあなた」と染め抜かれたのぼり旗が並べられた。
まず、「いのち輝くいばらきの会」代表の松下明行さん(物質材料研究機構研究員)、六つの政治団体(茨城一新会、新社会党、つくば・市民ネットワーク、とりで生活者ネットワーク、日本共産党、緑の党グリーンズジャパン)の代表らによるあいさつが行われた。「茨城一新会」は小沢一郎後援会。村上達也さんを含め「いのち輝くいばらきの会」共同代表は「安保関連法の廃止、立憲主義の回復を求める茨城県市民連合」の共同代表とほぼ重なる。三期目、四期目と橋本を推薦してきた社民党系は加わっていない。
首長会議の前湖西市長の三上元さんと村上達也さん、弁護士の海渡雄一さんによるゲストスピーチが行われた。三名とも、新潟県知事選では再稼働問題を争点の中心に据えたことで勝利したと語った。米山隆一新潟県知事からの「大願成就を願う」とのメッセージが読み上げられた。神田香織さん、広瀬隆さんもメッセージを寄せている。
海渡さんは「弁護士で夫婦別姓、妻が政治家と共通点が多い」と発言、鶴田さんの夫は弁護士の坂本博之さんだ。八ッ場ダム、福島県鮫川町焼却炉、全国各地の産廃処分場などの訴訟に携わり、住民とともに国や県に立ち向かってきた。水戸地裁で係争中の東海第二原発運転差止訴訟弁護団の中心でもある。まこみさんは坂本事務所の事務を担いながら住民訴訟に関わってきた。
坂本さんは立候補を打診されたが「私より適任者がいる」と妻のまこみさんの名をあげた。鶴田さんは複数の大学やNHKテレビのイタリア語講座の講師を務め、茨城ではNPO法人「いばらき子どもの虐待防止ネットワークあい」発起人やNPO法人「動物愛護を考える茨城県民ネットワーク」理事長などを務め、小さな弱い命に向き合う活動を続けてきた。住民避難後の福島でも被災犬猫のレスキューに出向き、ボランティアの後方支援を担ってきた。こうした活動などで多様な意見をまとめ、成果につなげる行動力を評価したものだ。
東海訴訟の弁護団でもある海渡さんは「福島みずほも動物ネットワークを通じて交流がある。今日は私の分まで応援してこいと言われてきた」「新潟県知事選でも民進党は自主投票と決めていたが、終盤では蓮舫さんが応援にかけつけてくれた。そうした席を残しておくことも大事」と発言した。
鶴田さん本人のスピーチ後、「いのち輝く竜ケ崎の会」など二九地域の「いのち輝く会」が登壇、同会は県内全域での結成を目指す。つくばと取手のネットワーク、新社会党、ゲストスピーカーなどを除き、登壇者の過半が共産党支持者と見受けられた。

弱者に寄りそう鶴田さん


社民党系はじめ、震災以前から反原子力の共同行動を担ってきた市民グループは「人間の鎖」をよびかけている。署名など県や関係自治体へ要求や学習会を活動の中心としてきた。震災後に「原発ゼロ」政策に転換した共産党と公明党に「即時」「やがて」と再稼働への姿勢の違いはあるが、四〇年延長と廃炉がセットの東海第二原発では県民には差が見えない。
政府は八月九日に「新エネルギー基本計画」の審議を開始する。九月には原子力規制委委員長に水戸市出身の更田豊志が就任する。一〇月二二日はいずれも原子力立地県、青森四区と愛媛三区の衆議院補選、宮城県知事選が予定されている。
残念ながら鶴田陣営の主張で全国レベルで通用するものは少ない。「原発は四〇年前に茨城からはじまった」など初歩的な誤りもある。一九六三年、JPDRが日本初の原子力で発電した一〇月二六日は閣議決定で「原子力の日」とされた。六六年運転開始の原電東海発電所は九八年から廃炉が、大阪万博に電気を送った敦賀第一原発も廃炉が決まっている。福島第一原発一号機は四〇年を迎える直前に爆発した。
かつて東海村で日本原子力研究所の労働組合は研究者の過半を組織し、共産党の原子力政策を指導する研究者を輩出してきた。田中俊一規制委員長は原研労組の中央執行委員経験者である。共産党は、かつて原子力村の一角を占めていたことを自覚しなければ県民の支持は集まらない。
八・二六は東海村の人間の鎖への参加を。明確に再稼働反対を政策に掲げ、弱者に寄りそう鶴田まこみさんを支持し、投票を訴える。  (8月7日 斉藤浩二)


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