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    かけはし2017.年8月14日号

9条改憲戦略にとどめを


安倍第3次改造内閣の発足

挙党態勢による新たな攻勢はねかえそう

安倍政権のつまずき

 八月三日、安倍第三次改造内閣が発足した。第三次改造内閣の性格は、少なくとも当面のところは、改憲スピードアップ戦略を表面化させない「挙党体制」を印象づけるものとなっている。
 安倍首相は五月三日の憲法記念日にあたって、極右「日本会議」系集会へのビデオメッセージ、同日の読売新聞インタビューで二〇二〇年を「新しい憲法」で迎えると公言し、九条3項に自衛隊の存在を明記する方式での「加憲的」改憲案を二〇一八年にも「国民投票」にかけるというスケジュールで動き出していた。
 安倍政権にとっては、天皇の「生前退位」と改元、東京五輪の開催は、この改憲構想を実現に移すプログラムの中にはっきりと位置付けられていた。二〇一五年の戦争法に続き、今年の通常国会で共謀罪法を強行成立させた安倍政権は、今年秋の臨時国会中に自民党改憲案を衆参両院の憲法審査会に提出するという方針で突っ走ったのである。
 しかしこの安倍改憲戦略は、「一強」とうたわれた安倍・自民党にとって急速な凋落の始まりとなっていった。「森友・加計」スキャンダル、稲田防衛相の「南スーダン自衛隊PKO」関連の情報隠し、暴言・失態による閣僚の相次ぐ辞任などによって、安倍連立政権の支持率低下は急速に進行し、支持が不支持を大きく下回る結果となった。安倍政権の支持率は三〇%を割るようになり、不支持率は五〇%を超える政権末期の「危険ライン」に到達した。何よりも七月二日投票の東京都議選での自民党の大敗北(五七→二二)、七月二三日投開票の仙台市長選の敗北は、安倍政権の改憲プログラム自体の行方に、赤信号を点灯するものだった。

タイムテーブルの変更も


新政権は、こうして安倍首相に強制された「軌道修正」を特徴づけるものになった。麻生太郎副総理、高村正彦自民党副総裁、菅義偉官房長官、二階俊博自民党幹事長などの内閣・党の要の部分は留任させつつ、野田聖子を総務相に、河野太郎を外相につけ、「次期総裁候補」の一人と目される岸田文雄前外相を党三役の政調会長につけるなど、「挙党体制」再確立が目指されることになった。野田聖子の総務相起用は、昨年の東京都知事選で小池百合子を応援した野田を入閣させることで小池「都民ファースト」との関係を修復し、二〇二〇年東京五輪を「改憲プログラム」に取り込む体制を再構築する姿勢を示したものと考えられる。
安倍は八月三日の自民党臨時総務会で「国民の厳しい目が注がれている。こうした状況を招いたことを深く反省している。反省すべき点は反省し、新たな気持ちで政治基盤を再構築し、しっかり政策を前に進めていきたい」と珍しく低姿勢で語った。同日には、自民党の「憲法改正草案」国会提出目標について、自らが語っていた「秋の臨時国会提出」にはこだわらないと言い出した。さらに八月四日の改造内閣新閣議では、「謙虚に丁寧に一つ一つ結果を出していく」と語り、「スピード感を持って改憲に取り組む」というこれまでの手法の一定の修正を印象付けようとしている。

改憲ブロックの再編

 われわれは、この間の「野党・市民共闘」による戦争法制反対運動以来の取り組みが、国会行動をはじめとする大衆運動の広がり、そして各種選挙での前進によって安倍自民党「一強」政権に大きな危機感を与えてきたことを改めて確認すべきである。それは明らかに「東京都議選」のような惨敗を繰り返してはならないという、安倍政権の恐怖感に発したものだろう。
しかし同時に、今回の内閣改造が、安倍政権の「改憲スケジュール」に一定の「再検討」をもたらす可能性があったとしても、決してその大幅な変更をもたらすものではないこと、また内容的にも「九条1項、2項をそのままにして新たに3項として自衛隊の存在を明記する」という安倍改憲案の出発点を維持するものとなるであろうことは間違いない。
安倍政権はこのような形で自民党内の「リベラル的異論」とも折り合いをつけ、さらに公明、維新などをも取り込みながら、前原ら民進党の一部にも働きかけて、「与野党共同」の改憲というコースを歩む可能性を探ることになるだろう。今回の内閣改造は、これまでの露骨な極右的「お友達」政治を一定程度変更し、党内に限定されないより広範な合意を取り付けていくための布石となる。そこでは繰り返しになるが、自民党内の反安倍的傾向に対して、維新そして民進の一部を「改憲連合」へと再編する方針を提示することで孤立化させていくことが目指されていくのだろう。付記すれば新外相となった河野太郎は改憲反対だった父親の河野洋平と異なり、集団的自衛権行使をも容認する「九条改憲派」である。
先に述べたように昨年の都知事選で「都民ファースト」の小池を支持した野田聖子の入閣は、こうした戦略への布石であり、また蓮舫代表の辞任に伴う民主党の代表選(前原VS枝野)も、安倍にとっては新たな「改憲多数派ブロック」への可能性と捉えられている。
安倍の「極右お友達政治」が、自民党の悲願とする「新憲法制定」にいかに妨害となっているかは、この「森友・加計」スキャンダルを通じた支持率の急速な低下で鮮明になった。安倍自民党が、そうした極右勢力に支えられたものである限り改憲の目標自体が達成できない、ということも明らかになった。公明党の東京都議選での小池与党としての登場も、その証である。今回の内閣改造には、改めて党内の非主流派を含めた「挙党一致」体制による安定化と、それに支えられた改憲実現への志向が示されている。

大衆運動の新しい波を

 こうして、あらためて今、二〇一五年の戦争法案反対闘争以来、二〇一六年参院選などでも一定の成果を収め、大衆運動でも持続的に効果を発揮してきた野党・市民共闘の再強化があらためて求められている。その際、大きな問題とならざるをえないのが民進党の帰趨である。
蓮舫代表の辞任表明を受けて九月に次期代表選が予定されている民進党では、東京都議選でも離党して「都民ファースト」に参加する議員が相次ぎ、八月四日には細野豪志元環境相が「安全保障法や憲法への考え方に疑問を持ってきた」と記者団に語り離党表明するなど「離党ドミノ」が相次いでいる。「高度プロフェッショナル制度」導入など、政府・資本の意に沿った「働き方改革」をめぐる一部連合幹部の「導入賛成」をめぐる混乱と批判の噴出も、連合を最大の支持基盤とする民進党にとって、まさに「解党的」危機を促している。
この時点においてこそ「野党・市民共闘」からの民進党の離脱と、改憲与党化への道に反対する道を労働者・市民ははっきりと宣言しよう。
言うまでもなく、九条改憲を阻止する野党・労働者市民の共同は、何よりも沖縄の「島ぐるみ」の反基地闘争が現に闘っている課題と結びつけて朝鮮半島危機に東アジア民衆の平和の共同行動で立ち向かう運動と一つのものである。それはまた原発の再稼働阻止・脱原発・被災者支援の行動を担い、「働き方改革」という資本の攻撃、福祉切り捨て、失業・低賃金・貧困・差別と闘う運動をその根っこに持った闘いである。
同時にこの広範な共同行動を担いながら、二〇二〇年を見据えた反東京五輪の行動、さらに改憲・五輪と連動した「天皇代替わり」キャンペーンに抗する闘いを訴えよう。
安倍政権を打倒する共同行動は、そのような大きな広がりと深さを持った行動であり、そうした労働者民衆の共同を背景にしてこそ、改憲阻止の闘いに勝利することができる。
一刻も早い安倍政権の退陣、自公政権の打倒へ!
(八月七日、純)



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