イラン
5月大統領選に関するイランの別の情景
フリーダ・アファリー
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様々な理由が
棄権を導いた
トランプ政権のイランに関する好戦的な言葉が深刻な懸念を高めている時に重要なことは、米帝国主義への反対を、イランの抑圧的体制並びにイラン自身の地域的帝国主義戦争に対する支持、と同一視しないことだ。守られる必要のあるイランは別にある。
今年五月一九日のイラン大統領選挙に対するメディアの報道は、ハサン・ロウハニに対する高い支持票に焦点を当てた。とはいえ重要なことは、多くのイラン人は、ロウハニが宗教的原理主義部分の中で極右に位置する「原則主義者」に対するただ一人のオルタナティブ、と見たがゆえに彼に投票した、ということを強調することだ。
その上多くが投票しないことを選択した。イラン住民のこの部分がその決定に与えた理由には、次のようなものが含まれていた。
つまり@候補者全員は、イスラム共和国後見評議会からの承認が必要とされた。A二〇〇九年の詐欺的な選挙結果に異議を突き付けた者たちの多くは、投獄されるか殺害された。B訴追数と政治犯の数は、ハサン・ロウハニ政権下でも増大した。Cロウハニが世界の大国との核合意(二〇一五年七月)に賛成していることは前向きなことだったが、この合意の点で彼が名声を得ることはできなかった。この決定は、最高指導者のハメネイ、イスラム革命防衛隊、そして全体としての体制によって行われたからだ。Dロウハニと彼の一番の競合相手であるエブラヒム・ライシとの主な違いは、ロウハニが西側のビジネスによる投資により前向き、ということだった。ライシが彼の選挙基盤に向けて国家の助成金増額を訴えた一方で、ロウハニは、より新自由主義的な改革を支持し、両者は等しく腐敗に巻き込まれていた。また彼らは、イラン人多数の高まる貧困化に本当に気をつかうこともなかった。Eロウハニとライシ双方は、バシャル・アルアアサドと彼の政権を保持するためのシリアへのイランによる軍事介入を強力に支持した。
数百人の政治犯
が今なお獄中に
さらに、イランにはまだ数百人に上る政治犯が獄中にいることも忘れないようにしよう。そこに含まれている人々は、若い学生、女性の権利を求める活動家、労働運動活動家、教員、イランの民族的マイノリティの自決権を求めるクルド人、アザリ人、アラブ人の活動家、イランではその宗教が禁じられているバハイの活動家などだ。
現在、ジャーナリストで女性の権利擁護活動家であるヘンガメー・シャヒディ、フェミニストで人権活動家のアセナ・ダエミ、イラン教員連合の指導者であるエスマイル・アブディは、テヘランにある悪名高いエビン刑務所でハンガーストライキ中だ。労働運動活動家ジャファル・アジムザデーと自由労働者組合〔元の失業労働者組合〕のシャプル・エーサニ・ラドは、「治安妨害と反体制宣伝」の嫌疑で彼らに宣告された一一年の拘禁と闘うために、訴訟手続きを進めている。
ユルトの炭鉱
労働者の訴え
五月三日に四〇人以上の労働者に死をもたらし、他に数十人を負傷させた炭鉱爆発の後、炭鉱労働者たちは、ゴレスタン州のユルト炭鉱の外で五月七日に行われたキャンペーンイベントへのロウハニの出席に抗議した。彼らはロウハニが演説することを妨げ、彼の車を激しく叩き、またそれに飛び乗り、彼らの怒りと耐え難い作業条件への失望を表した。労働条件は、もっとも基本的な職場の健康基準と安全基準を欠き、賃金と手当も支給がなかったのだ。
一人の労働者は「大統領、あなた方は誰も、炭鉱労働者であることが何を意味するのかを分かっていない。われわれが四〇人の鉱夫を失い、一七〇人の子どもたちが父親を失い、四〇人の女性が寡婦となった今になってやっと、あなた方はわれわれを思い出しているのだ。われわれにはなぜ安全な作業条件がないのか」と語った。もう一人の労働者は「われわれには食べるパンがない、私はそうコーランに誓うことができる。私は苦しんでいる……。あなたは炭鉱労働者とは何者かを果たして分かっているのか? われわれは働いているが、どんな保険もわれわれにはないのだ」と語った。
フェミニスト
政治犯の考え
五月一五日、女性に対する石打刑という残忍な行為について公開されていない話を書いたとして、六年の拘禁刑を宣告されたゴルロク・エブラヒミ・イライーが、エビン刑務所から一通の手紙を出した。そこで彼女は以下のように書いている。
「彼の外相が国連で政治犯の存在を否定したというのに、ロウハニが政治犯の釈放を約束したというのは本当なのだろうか? ロウハニ政権下での起訴数が、アフマディネジャド政権に比べ倍化した、というのは真実ではないと言うのだろうか? ……改良主義者の政権下での逮捕、重刑、さらに情報省の恐るべき拘留センターは、原則主義者政権の拘留センターよりも改善されているなどということはまったくない。……イスラム革命防衛隊の隠れ家はどうなっているのか? われわれが逮捕や辱めや訴追に会わなくなるのはどんな政権においてだろうか」。
こうしてエブラヒミ・イライーは「われわれが沈められている渦巻きは、われわれ自身の軽率さによってもたらされた。そこからわれわれを解き放す唯一の道は、われわれが読もうと固く決意することのなかった歴史を直視し、それを見直すことだ」と結論づけた。
亡命イラン人の
ジャーナリスト
現在亡命中の経験を積んだジャーナリストであるハミド・マフィは、欧州で発行されているイラン人左翼雑誌、マンジャニー最新号で、シリアに対するイランの軍事介入の性格に関する体制の嘘を信じるな、とあえてイラン人に要求する。彼は、大統領に向かう二〇一三年のロウハニの台頭がバシャル・アルアアサド支援におけるシリアでのイランの高まる軍事的存在感と同時平行していた、と強調する。
現在ロウハニの支持者となったイラン人反対派活動家たちを批判して、彼は「二〇〇九年の大統領選結果に抗議した一グループは、アフマディネジャドの勝利はクーデターだと考え、この地域の諸々の展開がイランの体制に屈服を強いるだろうと期待した。今になって彼らは、シリアでの戦争におけるイランの役割に注意を払うことなく、リビアとシリアの運命を指さしている。彼らは、イランの『戦争の危険と分割』を避けるためとして、『システムとの和解』の道をとるにいたった」と書いている。
それに代わって彼は「イランの戦争と分割の危険を回避できる条件は、イランの進歩派が同時に、あらゆる国家によるイランへの軍事介入すべてに反対し、この地域のどこであれイランによる軍事介入すべてに反対し、進歩的異論派と抑圧されたマイノリティに対する抑圧を今推進している『イラン民族主義とシーア派主義の連合』に反対する場合だけだ」と主張する。
若い社会主義
活動家の主張
若い社会主義活動家で知識人のマジド・アリアンヌは労働者に、全面的な人権を求めて闘っている女性の闘争、あるいはクルド人、アラブ人、ルル人といったイランの抑圧された民族的マイノリティの闘争を彼らの闘争と分断しないよう訴えている。「主体的要素、世界の見方、仕事と人生の美学に関わる展望を深く考えることなく、労働者階級を単にそこから剰余価値が搾取される者として定義することは、粗雑であり機械的やり方だ」と彼は書く。
(二〇一七年五月二七日、「中東社会主義者連合ブログより」)
▼筆者は前記ブログ向けに書いている。(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年六月号)
モロッコ
リフの民衆決起に連帯する
第四インターナショナル・ビューロー
二〇一七年五月二九日
七カ月間、モロッコ北部のリフ地域では民衆的抗議運動が成長を続け、五月一八日、アル―ホセイマでのデモに決起した数万人の集会で頂点に達した。この運動は、マグレブと中東を貫いた蜂起の力学をモロッコで反映して、二〇一一年二月二〇日からこの地域に根を下ろした民衆的決起にその基礎を置いている。それは、漁師の若者、モウシネ・フィクリがホセイマでゴミトラックの中で押しつぶされて死亡した二〇一六年一〇月に再び始まった。
当地の委員会に組織されたリフの住民は、この死に加えて、二〇一一年二月二〇日のできごとの中で当地の銀行で殺害された他の五人のリフ住民に責任のある者たちに対する法的な判決を求めている。それはさらに、アル―ホセイマ州の軍事化の停止、小規模農民に対する迫害と訴追の停止を求め、医療サービス、教育、住民にとって欠けているインフラに関する他の社会的要求も掲げている。
これは、その巨額にのぼる公的債務返済に向けモロッコ政府により押し進められた経済政策と社会政策の破綻を示すものだ。それは、生産のつながりの破壊、海洋資源と森林資源の略奪、主要な公共サービスの乏しさ、さらに若者向けの雇用の欠如によって明らかにされている。
これらの新自由主義の諸政策はまったく民主的ではない腐敗したモロッコ諸機構により実行され続けているが、国際的な金融・貿易諸機構と帝国主義大国の政府により指示され、外国の大資本と当地の資本の便益に向けられている。君主制システムを構成するさまざまな政府機関、治安機関、またメディアは、リフの住民の声を沈黙させ、抗議運動を犯罪扱いし、その信用性を掘り崩そうとしている。それはこの運動が、周辺化、貧困化、また尊厳という点で同じ条件で暮らしているモロッコの他の都市や地域に対し、一つの事例として役立てられないようにするためだ。
―われわれは、リフ民衆の闘争、下部からの彼らの組織化、彼らの創造性と決意、さらにモロッコでこの闘争を支援している諸勢力に、敬意をもってあいさつを送る。
▼われわれは、モロッコ国家の抑圧政策と情報ねつ造政策を糾弾する。
▼われわれは、この運動が彼らの社会的、民主的、文化的な条件における重要な改善に対するその要求を達成できるようにするため、国際的連帯の拡大を訴える。
これらは、政治的専制と資本主義的搾取からの解放の道を追求している、モロッコと近隣諸国の全民衆階級が共有する要求だ。
▼リフにおける民衆的闘争の勝利を!
▼自由、尊厳、社会的公正を求める闘争万歳!
(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年五月号)
英国
声明:マンチェスターでのテロ糾弾
集団行動こそが世界を変える
ソーシャリスト・レジスタンス
以下の声明は、二〇一七年五月二三日、第四インターナショナル英国支部であるソーシャリスト・レジスタンスから出された。
ソーシャリスト・レジスタンスは、マンチェスターでのアリアナ・グランデのコンサートにおける攻撃で殺傷された人々の家族に同情を述べる。子どもたちが殺傷された両親の苦痛は計り知れないに違いない。
この殺傷に責任のある者たちは、彼らが殺害し、傷付け、心理的に傷跡を残した人々が圧倒的に若い女性と少女たちであったことを、分かっていたと思われる。彼らが抱いていたものは、その真の神々が虐殺、レイプ、家父長主義である死を呼ぶカルトだ。女性蔑視とホモ嫌いは、どこにおいても原理主義の真髄証明なのだ。
「許しを求めるな」で始まるアリアナ・グランデの「デンジャラス・ウーマン」にあるような歌詞は、殺害者と彼の共犯者が女性と少女に関し憎悪するすべてを集約している。それこそ、五月二二日に彼らがマンチェスターアリーナを標的にした理由だ。女性に対する男の暴力は、このコンサート会場で新たな恐ろしい極端にまで形を取った。
殺人者たちは、この行為やまさに多くの他の行為を、イラクやアフガニスタンにおける西側の戦争、またパレスチナ民衆に対する植民地的抑圧への英国と米国の支援を引き合いに出すことで、正当化しようと試みるかもしれない。われわれは社会主義者として国際主義者であり、帝国主義の敵である。しかしわれわれは、政治的声明の一形態としての、子どもたちや無実の人々の殺害を拒絶する。こうしたことは、反動的な綱領の反動的かつ残忍な表れだ。それは、英国の兵器で殺害され愛する者たちを失ったイエメン人の家族には、あるいは米国政府が費用をまかなっている爆発物でその子どもを殺害されたパレスチナ人の両親には、何の慰めももたらさないだろう。
この恐るべき犯罪は、英国と米国から支援され武装されたサウジアラビアがイエメンで利用している対人爆弾と、またイラク、シリア、さらにその他のところでの際限のないそうした恐怖と比べられるかもしれない。しかしわれわれは、これに関し相対的であってはならない。この事件を他のところの戦争と比べることは、嘆き悲しむ両親、兄弟姉妹、居合わせた人々、マンチェスターや地球上の他の場所での緊急サービスを助けるものではないだろう。
そうした行為は、この国のいたるところでの大衆的催しすべてに悪影響を与えるだろう。あらゆる催しの主催者は今新しい怖れを抱いていると思われる。荷物検査やその透視はすでに日常的決まり事になっている。そして確実に、テート美術館や博物館や劇場やスポーツグラウンドのような催しにもっと広がることになる。そしてわれわれは今、兵士が街頭に立つ、との布告を受けている。しかしそれは、われわれの多くをより安全と感じさせることにはならないだろう。
そしてある人びとは正しくも、こうした残忍な行為のもう一つの影響に関し、トロツキーを引用し続けてきた。つまり「テロリストの行為がより‘有効’になり、それらの影響力がより大きくなればなるほど、それらは、自己組織化と自己教育に対する大衆の関心をより低める」(レオン・トロツキー)と。
この攻撃の夜、何百人もの労働者階級のマンチェスター市民は、ホテルやタクシー会社や病院で市外から来た人々を助けることで、反啓蒙主義者の虐殺者にどう対応するかを示した。この虐殺後の夜、あらゆるコミュニティの何千人という人々が、犠牲者とその家族に対する彼らの愛情と連帯を示すために、マンチェスターの街頭に繰り出した。集団行動こそ、われわれが世界を変え、帝国主義戦争を終わらせ、女性に対する男の暴力に終止符を打つ方法なのだ。
(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年五月号) |