沖縄報告:6月10日
翁長知事の工事差し止め訴訟方針を受けて
沖縄 K・S
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六月七日、翁長知事は記者会見で「県の岩礁破砕許可を得ずに防衛局が埋め立て工事を進めるのは県の漁業調整規則に違反しており、違法」だとして、工事差し止め訴訟を提訴する方針を明らかにした。同時に工事中止を求める仮処分申請を行なう方針だ。六月定例県議会に議案を提出し、七月一四日予定の県議会最終日に採択されれば直ちに提訴するという。
辺野古新基地建設に向けた工事はこれまで違法に違法を積み重ねて強行されてきた。ごまかしだらけのアセスメント、法的根拠のないフロート設置、海保による拘束の繰り返し、設計概要とは異なる違法な作業の強行など「法治国家」ではありえない不法無法がまかり通ってきた。そもそも、県民の辺野古NO! の民意が県知事選、衆院選、県議選、参院選など主な選挙と世論調査を通じて明らかになっているにも関わらず、辺野古・大浦湾の埋立てを行おうとすること自体が最大の違法行為だ。日本は封建時代の専制君主制ではない筈だ。二一世紀の現代における人権と民主主義、地方自治の真価が問われている。カギは国民の自覚だ。
6.10
辺野古現地集会に1800人
国会包囲と連帯し、辺野古NO! 共謀罪NO!
一八〇〇〇人が集まった国会包囲行動に連帯して、辺野古現地では午前一一時から「辺野古新基地建設阻止!共謀罪廃案!6・10集会」が開かれ一八〇〇人が結集した。
伊波洋一参院議員は「沖縄選出国会議員は午後二時からの国会行動に参加する。安倍の戦争できる国づくりを止めなければいけない。辺野古と共謀罪に反対する闘いはつながっている」とアピールした。
辺野古弁護団の三宅俊司弁護士は「辺野古現地は共謀罪の先取りだ。共謀罪は二七七の犯罪の未遂・準備のその前の単なる話す行為を取り締まろうというものだ。基地包囲の呼びかけが共謀罪になる。共謀罪の次は憲法改悪と緊急事態法だ。今止めなければ戦争への道を転げ落ちていく」と訴えた。
社大党の比嘉京子県議は「瑞慶覧長方さんの父親は、社会主義の本を所持しているという疑いで警察に連行され自白を迫られ投身自殺をした。再びこのような時代にしてはならない。辺野古NO! と共に共謀罪NO! だ」と呼びかけた。統一連の瀬長和夫事務局長は「憲法が道交法で抑え込まれている。本末転倒だ」。
平和市民連絡会の高里鈴代さんは「二〇〇五年の日米合意では二〇一四年までに辺野古新基地を完成させるとなっていた。止めてきたのは私たちの抵抗だ。大衆運動と知事の力で止める」。
ヘリ基地反対協の仲本興真事務局長は「辺野古の運動は誰でも参加できるものだ。集まれば工事が止まる。地域から闘いの輪を広げ、辺野古に集まろう」と訴えた。
集会のあとテントで昼食をとった人々はゲート前に集まり座り込み集会を再開したが、参加者が一〇〇人余りに減ったすきをついて、県警は午後二時、座り込み排除にかかった。若い機動隊員による座り込み排除の行動はまるで荷物を運ぶような機械的なものだ。沖縄の若者が本来持っている平和を求める年配者に対する敬意など若い警察官からは全く感じられない。安倍官邸の沖縄分断策の陰険さ。この日、砕石ダンプや足場を満載したトラックなど二二台が進入した。
他方海上では、防衛局はK9護岸に使用する消波ブロックのテトラポッド約四〇基をクレーンで浜に並べた。
ゲート前水曜行動に150人
ダンプ16台が異例の進入
六月七日水曜日のゲート前行動に約一五〇人結集した。平和運動センターの大城悟さんは「これまで土曜日に資材搬入はなかったが、先週は昼と午後の二回、合わせて二八台のダンプが入った。昨日は一五一台のダンプ、生コン車、トレーラーが入った。今日も警戒を強めて行動しよう」と訴えた。
島ぐるみ「辺野古へ行こう!の看板を沖縄中に」
そのあと島ぐるみの発言が続いた。今帰仁村「機動隊の暴力による被害を記録しよう」、糸満市「辺野古へ行こう! の看板を一八〇枚作った。沖縄中に看板を張り巡らそう。安倍に任せていては日本はダメになる」。
豊見城市「経済産業省敷地内のテントを撤去するにも法的な手続きが必要だった。ところが沖縄では、高江でのテント撤去、辺野古の座り込み排除・拘束など、何ら根拠のない横暴がまかり通っている」。
八重瀬町「みんなで集まって看板を一〇〇枚作り町内に張り巡らした」。
南城市「戦後七二年を経て基地がある沖縄の現実を変えて行こう。マジムン(悪霊)安倍の政治を許さない」。
南風原町「昨日の新聞の投書で気になった記事を紹介したい。共謀罪法案に問題があるなら選挙で投票し改めればよい、と言っているが、甘い」。
糸満市「五・二七集会にはバス二台で参加した。バスの中で一人ひとり自己紹介とあいさつをして交流を深めた。二〇二〇年まで安倍を存続させてはいけない」。
名護市「看板一〇〇枚作った。大浦湾は市民の宝、というスローガンも入れた。スタンディングは毎週月曜、一四〜五人で続けている。頑張り抜こう」。
宜野座村「私たちが諦めないうちは新基地はできない。現場に来ると元気になる。みんなの顔を見、腕を組んで闘い基地建設を阻止しよう」。
国頭村「先月三〇日に総会を開いた。決意も新たに辺野古阻止に立ち上がる」。
那覇市「漢字もまともに読めない劣等生の内閣の人々に政治を任していてはならない。私たちの運動は非暴力だが無抵抗ではない」。
ラミスさん「自衛官中心のVFP日本支部が結成される」
元米海兵隊員で政治学者のダグラス・ラミスさんは「VFP(ヴェテランズ・フォー・ピース)の日本支部が結成される。主に元自衛隊員だ。日本の歴史上実に画期的だ」と述べて、連帯の寄せ書きのピース旗を広げた。平和市民連絡会の城間勝さんは「県庁前から毎朝九時に大型バスが出ている。まだ周知されていない。満員にしよう。ゲート前に二〇〇人以上いたら入れない。一人ひとりが力だ。新基地建設を止めるのは県民の権利だ」と檄を飛ばした。
座り込みの人数の減った午後二時半ごろ、警察機動隊の座り込み排除のあと砕石を積んだダンプなど一六台が工事用ゲートから進入した。
海では、カヌー13艇、抗議船3隻で闘う
他方、海上行動は、カヌー一三艇、抗議船三隻で朝から夕方まで闘い抜かれた。カヌーチームは午前二回、午後二回フロートを越えて作業現場に肉薄し抗議した。K9護岸づくりの作業現場では、砕石を積んだダンプからクレーンを使ってものすごい音と土煙を立てて次々と砕石が海に落とされていく。そして、陸で警察機動隊の暴力が激しくなっているように、海でも海保の暴力が再び激化し始めている。カヌーメンバーの一人がフロートを越え作業現場へ全力で向かっている時、海保の高速ゴムボート一台が正面からぶつかってきたのだ。ガツンという大きな音と共に正面衝突。幸いカヌーメンバーはカヌーの後部に乗っていたため衝突によるけがはなかったが、まかり間違えば命に関わる惨事を起こしたかもしれないきわめて危険な行為だ。安倍官邸の暴走を真似るような海保の乱暴は断じて許されない。
6.6
辺野古ゲート前行動
激しい抗議のなか
計151台が搬入
六月六日、海上行動チームは早朝浜のテント二に集まり海上行動の準備に入ったが、海上の波風が予想以上に強く危険が予想されたため、この日の海上行動を取りやめた。カヌーチームもゲート前行動に合流した。
九時前、機動隊の座り込み排除と歩道での囲い込みが始まった。南の久志方面から砕石ダンプ二台、北の二見方面から砕石ダンプ十数台、また南から四台、北から生コン車四台。基地内から空のダンプ一二台が出たのに続き、北から生コン車四台、同じく北からダンプ一一台が入った。空のダンプ九台出たあと、北からダンプ四台、少し間をあけてダンプ一一台、ショベルカーなどを積んだトレーラー五台、南からビニールシートに覆われた鉄骨・鉄箱など資材を積んだトレーラー五台が入り、空のダンプ二五台が出たのちにやっと県警による囲い込みが解除された。時間にして一時間一〇分、炎天下に二〇数人が拘束され続けた。ダンプの会社は一〇社に上り、名のないダンプも多い。防衛局は資材搬入に総動員体制をとっている。
「道交法」逮捕に第1ゲート前で抗議
一方第2ゲート前で二〇数人と共にダンプの資材搬入に抗議していたNさんを県警は「道交法違反」で逮捕した。違法工事に従事する砕石ダンプを止めることは県民の権利だ。こうした人権監視活動を「道交法」や「公妨」であまりに簡単に逮捕する動きがゲート前で目立つ。
六月一日にも「道交法」で女性が逮捕、五月二二日「公妨」で男性が逮捕、五月一九日「公妨」で男性が逮捕された。Nさんも含め、みんな一泊で釈放されている。逮捕の理由がないからだ。根拠がなくても逮捕されれば圧力になる。権力者は何をやっても構わないという安倍官邸の傲慢は、辺野古の現場ではこのような逮捕の乱発という形で表れている。
Nさんの不当な逮捕に抗議して、参加者は第1ゲートのイエローラインの前に座り込んで釈放を要求した。米兵たちの車両が止まる。防衛局、軍警、県警、さらには米兵たちが慌ててゲート前に集まってくる。サングラスにマスクの防衛局職員が「ゲート前に座り込むのはやめてください」「交通の妨害をしないでください」と叫ぶ。米軍に従属した日本政府の縮図だ。県警は撮影を続ける。本来沖縄県に属し知事の辺野古反対の方針に沿って動くべき県警が、中央政府に従属する公安警察となり県民分断の先端にいる。後ろの方で部外者のような顔で様子見をしているのがキャンプ・シュワブの米兵だ。本当の当事者は彼ら米軍だ。戦後七二年、本国から数千キロ離れたアジアの小さな島に占領軍としてとどまり続ける米軍こそが元凶だ。
防衛局はこの日、県警の暴力的な座り込み排除のもとで大量資材搬入を強行し、午前、昼、午後の三回、合計一五一台のダンプ、生コン車、トレーラーをゲートから通過させた。
辺野古に宿泊所二軒オープン
?一〇人まで宿泊可能な民宿。バスタブ、冷蔵庫あり。一泊二〇〇〇円。
?二〇人宿泊可能なドミトリー。七月中旬完成予定。シャワー、エアコンあり。八月中旬まで一泊一五〇〇円。<問い合わせ>沖縄平和サポート 電話0980-55-2244 Fax 0980-55-2245
2つの講演会
東アジア共同体研究入門がスタート
「東アジア共同体研究入門―『国際的平和の島』実現に向けて」のシリーズが沖縄キリスト教学院大学のチャペルでスタートし、第一回と第二回が連続して開かれた。
第一回の高野孟さんは「徹底検証!中国脅威論の嘘」と題して、「安倍一強の秘密は恐怖心の扇動。米ソ対立の時、札幌のあなたの庭に突然ソ連の戦車が現れる!という同じ脅威の煽り立て論だ。海保のHPを調べてみれば分かる。中国は日本の尖閣国有化に反対しているが、尖閣に現れるその方法は月二〜三回、一回三〜四隻、一時間半という意識的に限定されたものだ。尖閣はかつてないほど落ち着いている。また、北朝鮮にミサイルを撃たせない方法は、@米軍基地を撤去する、A米軍の先制攻撃に歯止めをかける、B38度線の休戦協定を平和協定に変え、相互軍縮と米朝国交を樹立する、だ。冷静に考えることが必要だ」と語った。
第二回は「東アジア共同体構想」と題する鳩山由紀夫元首相の講演。鳩山さんは「中国の脅威を理由に宮古、石垣、与那国に自衛隊を配備するのは間違っている。沖縄はかつてアジアの交易で栄えたようにアジア諸国との共存、共栄の道を進むべきだ」と述べた。講演後、鳩山さんの著作『なぜ今東アジア共同体なのか』(花伝社、二〇一五年)の販売とサイン会が開かれた。六月下旬には、沖縄島、宮古島、石垣島、与那国島で二人の連続講演会が開催される。
「県史各論編6沖縄戦」刊行記念シンポジウム
沖縄戦の県史は一九七一年の「沖縄戦記録1」、一九七四年の「沖縄戦記録2」が発刊され、軍事作戦中心の戦史から住民の証言に基づいた歴史研究が進められるきっかけとなった。今回集大成ともいえる全八二四ページの「県史各論編6沖縄戦」が発刊され、県史にたずさわった人々によるシンポジウムが開かれた。シンポジウムでは吉浜忍沖国大教授が「新県史は沖縄戦研究の集大成だが、これで終わりではない。次の研究につなげてほしい」、林博史関東学院大教授が「本土の人間がもっと関心を持つべきだ」と話した。
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