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    かけはし2017.年6月12日号

労働党勝利のために全力を


英国

左翼的転換へのチャンス

ソーシャリスト・レジスタンス


 本紙が読者に渡る時は結果が分かっているが、以下に英総選挙(六月八日投開票)に向け当地の同志が発したアピールを紹介する。コービンの労働党の猛追は既に一般紙でも伝えられているが、これを全力で支えることの訴えであり、この猛追を生み出した政策も一定の批判と共に解説されている。連続的テロ攻撃が与える影響がどう作用するかを含め、結果は今後に重要な意味をもつと思われる。(「かけはし」編集部)

鮮明な反緊縮政策集が好機開く

 労働党総選挙政策集発表が、コービンの選挙キャンペーンを押し上げ、諸集会に国中で何千人をも引き出した。論争は新たなレベルへと移ることになり、労働党指導部に対する際限のない嘲りを、代わりとなる政策、つまり緊縮を終わりにするだけではなく、その逆転を追求する――ほんの一握りではなく多数のために――政策、で置き換えた。
 鉄道、郵便、水道の再国有化を求める政策集は、一九八三年以後ではもっとも急進的なものだ。そしてこれらの公約は、労働者の闘争と政治闘争における二〇世紀の高みの一時点、炭鉱労働者の敗北の前には、あるべき場所を占めていたのだ。
 この選挙では、隠れた保守党的政策という多年の後初めて、緊縮、福祉切り下げ、低賃金、職の不安定化、ゼロ時間労働契約、またフードバンク頼り、という諸政策に対する実体的オルタナティブが売りに出されている。それは、左翼にとっての比類のない好機だ。それは、保守党の絶対多数体制を勝ち取ろうとのもくろみとして、メイが利用しつつあるブレグジットの幻影を切り抜けることのできる政策集だ。
 それは、われわれが強く求めていたものすべてを含んでいるわけではない。しかしそれは、「新現実主義」つまり新自由主義の取り入れとして、キノックとブレア以後の労働党指導部によって差し出されてきた諸政策からの、抜本的な新展開だ。

保守党を勝利させてはならない


この政策集を基礎にエンジンを吹かし、六月八日に政府を率いる労働党を選出するためには、ほんの短い時間しかない。世論調査は、労働党支持率の上昇と彼らが推し進めつつある政策に向けた熱気の広がりを示し始めている。われわれはわれわれの支持者に、労働党に勝利をもたらすために、できるだけの努力を行うこと、全面的に参加すること、全力を尽くすことを訴えている。
それはたやすい任務ではない。UKIP(英国独立党)は同党化した保守党へと崩れ落ち、メイは一七〇〇万人のブレグジット支持者に、国民投票の決定が完全に遂行されることを望むのであれば彼女に投票せよよ、と訴えている。しかし、保守党の緊縮の七年が生み出した社会的危機を基礎に据えれば、そこには勝利に賭けるすべてがある。
保守党の勝利は一つの惨害になるだろう。それが意味するものは、保守党の緊縮政策に基づく次の五年間の全力での前進、強硬な反労働者階級的ブレグジットであり、そこには、英国における政治的かつ社会的諸条件に極めて長期にわたって意味をもつすべてが伴われるだろう。コービンが語るように、それは希望というよりも恐怖の政治だ。
メッセージは鮮明だ。つまり、賃金が上がらないままでいることを望むのであれば、NHS(国民医療サービス)が破壊されるのを望むのであれば、職場での無権利が続いてほしければ、また強硬ブレグジットを望むのであれば、その時は保守党に投票せよ、ということだ。

労働党右派との闘い推進不可欠


労働党の右派は、コービンを故意に妨害する試みをあきらめていない。ブレア、マンデルソン(イラクの「大量破壊兵器」に関する悪名高い情報操作により、スピンドクターの異名を取ったブレア側近:訳者)、ハタースリー(キノックが党首を務めた時代の労働党有力議員:訳者)はそのために彼らがやれることを尽くしてきた。
しかし、コービンの下での団結を呼びかけ、「やるならやってみろ、そうでなければ黙っていろ」と彼らに告げたジョン・プレスコット(ブレア政権で副首相を務めた労働党政治家、現在はミラー紙日曜版のコラムニスト:訳者)により、彼らはミラー紙日曜版で厳しく批判されることになった。彼は、コービン指導部の政策の人気が定着する中で、統一したキャンペーンは労働党を優勢にするだろう、と論じた。その時から、ベン・ブラッドショウのような先鋭な反コービン派議員は、労働党の政策集を認めることも拒否し続けている。
労働党内部では今、右派の妨害者に対しコービン指導部を守るための巨大な戦闘が起き進行している。それは、今回の総選挙がどちらに向くか――労働党が政権をとるか、あるいは敗北するかのどちらか――に関わりなく、むしろさらに強度を増して続くと見られる戦闘だ。そしてわれわれは、可能性をもつ活動家すべてにそれに加わるよう強く促す。

緊縮逆転めざす具体的踏み込み

 政策集は、鉄道、郵便、水道、さらにエネルギー産業の一部の国有化に加えて、保守党の福祉カットに関し大きな逆転を提案している。そこには、ベッドルームタックス(スペアの寝室を確保している公共住宅居住者の住宅手当を削減する政策:訳者)や労働能力テスト(障がい者手当て削減のための)の取り止め、介護従事者手当の一七%引き上げ、障がい者社会モデル(障がい者の選択肢を狭めている社会の組織のされ方を問題にし、その取りのぞきを追求するモデル:訳者)にしたがうことが含まれている。
具体的には以下のような項目がある。

【経済】
保守党の七二〇億ポンド減税を逆転し、富裕層へのより高い課税。そこには年収八万ポンド以上に対する四五%までの所得税、さらに一二万三〇〇〇ポンド以上に対する新たな五〇%課税率が含まれる。さらにNHS向けの金融取引税(ロビンフッド税)、法人税の三分の一引き上げ、高給を支払う企業に対する「金持ち」税。そして労働党は、低利率を利用し、二一世紀に見合った交通、エネルギー、デジタルインフラを確保するために、一〇年間を通じて二五〇〇億ポンドを投資するだろう。

【労働者の権利】
最低賃金時給一〇ポンド、労働組合法(サッチャー時代に労働組合の権利が大きく制約された:訳者)の無効化、ゼロ時間労働契約の取り止め、公的部門賃金凍結の取り止め、就労一日目からの労働者の権利完全保証、労働組合の代表権、妊娠した女性の解雇禁止、企業に対するジェンダーによる賃金差の公表義務づけ、労働裁判に対する料金の廃止、医学研修生への賃金支払い、労組の職場立ち入りの保証、公的部門と政府契約入札企業内最大報酬格差を二〇対一に抑えること。

【NHS】
医療・ソーシャルケア法の無効化、所得最高位五%での所得税増大を通した年間六〇億ポンド以上の特別資金供与、私的医療保険に対する増税、私有化の取り止め、現在の救急サービス施設(A&E)閉鎖計画すべての停止など。

【ソーシャルケア】
第一年目中の一〇億ポンドを含め、次期議会任期中の八〇億ポンド追加、一五分介護訪問の取り止め、介護労働者に対する交通費支払い確保。

【教育】
保守党の教育切り下げの逆転、クラス規模の縮小、無料の学校給食、授業料の廃止、メインテナンス助成金の再導入。二―四歳児に対する三〇時間の無料幼児ケア。

【住宅】
半分を公共住宅とする、五年で一〇〇万戸の住宅建設。人間的な居住に適した借家を確保するための悪質家主への対抗行動、家賃引き上げの制限、一八―二一歳に対する住宅手当削減の逆転。

【環境】
パリ協定、フラッキング取り止め、新たな大気清浄法、英国周辺海域への生態系保護域(ブルーベルト)設定、ネオニコチノイド殺虫剤禁止、に対する全面支持。労働党は、全国送電網を公的所有にすることによる脱集中化されたエネルギー供給から始めて、四〇〇万戸を断熱する予定だ。少なくともあらゆる地域に一つの公的所有エネルギー企業が生まれるだろう。それは、地域的に管理され、民主的な説明責任を負い、燃料の不足に取り組みつつ、料金値下げを通して利益を消費者に還元するだろう。

【ブレグジット】
当地に暮らすEU国民はそのままとどまることが認められる、との一方的な宣言。強硬ブレグジットへの反対。プロセス終了時点での下院における意味をもった票決。関税同盟残留の追求。貿易取引として、単一市場への無関税権、職の申込を伴う移動の自由、欧州共同体廃止法案の撤回、およびブレグジットの結果が諸権利の喪失にならないことを確実にする積極的な法でのその置き換え。

重大な欠落あるが反撃への基礎

 保守党とメディアの反応は、労働党がどのような政策をもとうが、その指導部にはそれらを実行する能力がないか、その費用をどうまかなうか分かっていないと語ることで、再度コービンを中傷することとなった。
この政策集には確かに、残念なことがある。財政信頼性の遵守、核エネルギー支持、機能の不確かな炭素捕獲テクノロジーの推進、空港の拡張、HS2(英国で計画中の高速鉄道:訳者)の継続とその延長といったことだ。その上トライデント――コービンが指導者になってから左派が勝利できなかった戦闘――の保留もある。ただここでの表現は可能な限り巧み、ということを意味している。
憲法制定会議に向けた提案に下院への比例代表制を含めていないことは大きな誤りだ。そのような約束が、総体として非民主的なシステムが変えられることを強く見たがっている多数から、多くの票を労働党に引きつけるだけではなく、この国の政治構造に起きつつある諸々の変化を前提にしたとき、完全小選挙区制はますます非民主的なものになろうとしているからだ。
しかしながら全体としてのパッケージは、緊縮という課題設定に対する真剣な挑戦であり、この国で左翼政治の再建を始めるための、特にそれがブレグジットの衝撃の下に全体としての政治情勢が右へと動こうとしている時にそれが表れる場合、適切な基礎となる。

進歩連合ではなく反緊縮連合を


労働党がスコットランドで統一の立場を守り続けていること、また二度目のスコットランド独立国民投票でイエス投票に反対していることを条件として、その選挙上の位置取りは変わりそうにない。事実としてそれは、悪化することも十分にあり得る。これが意味することは、下院における労働党絶対多数は極度に難しい、ということであり、それゆえ労働党の「勝利」が実際上意味することは、労働党が他の反緊縮諸政党、つまりスコットランド国民党、ウェールズ民族党、緑の党の支持に基づいて統治する最大の単一党となる、ということだ。
この見通しに対するコービンの現在の敵意はまったく道理性を欠き、それは変わる必要がある。選挙後労働党が最大政党になる場合、他の唯一の選択肢は、政府形成のために保守党を招くことになると思われる。しかしそれこそ意味がないのだ。
しかしわれわれが語っているのは、それが選挙以前の協力であろうが、選挙後の最大政党としての労働党との協力であろうが、あくまで反緊縮連合であり、たとえば慈善団体のコンパスによって擁護され宣伝されている「進歩連合」というような曖昧な概念ではない。不幸なことだが、この後者はまた、緑の党も今押し出しているものだ。
それは、自由民主党を含む連合だ。しかしその自由民主党は、五年間保守党を支え、彼らの緊縮綱領を現在実行され続けている厳しい結論まで保守党が無理強いすることを可能にした、その同じ党なのだ。
それは、どのような傾向をもとうが政治家の間に違いなどまったくないと感じつつ、近頃の選挙で家にとどまってきた何十万人という人々に活力を送り込むメッセージではない。それらの人々は、はっきりした反緊縮のメッセージを軸にしたとき、最も有効に動員可能になるのだ。(「IV誌」二〇一七年五月号)

ベルギー

トランプノー NATOノー

 1万2000人がデモ

トーマス・ウェイツ

 トランプと彼が表象する世界に反対し、さらにNATOにも反対する昨日(五月二四日)のブリュッセルでのデモに、一万二〇〇〇人が参加した。それは、予想され期待されたように極めて多様であり、活気があり、戦闘的なデモだった。七〇以上の組織が、戦争と帝国主義的な冒険行為に反対し、開かれた難民政策、同権、異なった気候を求め、女性の抑圧、性差別主義、ホモ嫌いに反対し、社会的諸権利と民主的諸権利の後退やますます度を高める権威主義的な世界に反対して街頭に繰り出した。被告席に置かれたのはトランプだけではなく、ベルギー政府の諸政策との間につくられたつながりでもあった。
 諸々のフェミニストグループ、許可証をもたない移民と難民の諸組織、環境運動と気候運動、急進左翼諸組織のすべて、エコロとグレオン(両者ともベルギーの環境政党)、左翼の青年運動その他は、大衆的な存在感を示した。これは大成功だった!
 不幸なことだが諸々の労組は、CNE(全国中央労組、金属部門)とACOD(郵便部門の労組)のブリュッセル組織や疑いなく多数の労組活動家個人を嬉しい例外として、ほとんど参加していなかった。これはすでに、見逃されたもう一つの好機だ……。
 このできごとは、数多くの若者たち(多くの若い女性を含んで)を街頭に連れ出しただけではなく、またすばらしい国際主義的特質をも保持していた。
 トルコ人とクルド人の活動家たちは、トランプとNATOに反対するだけではなく、エルドアンの独裁的諸政策にも反対して抗議を続けていた。ちなみにエルドアンもまた、NATOサミットに参加し続けているのだ。さらに、米国とラテンアメリカの民衆も、フランス、ドイツ、オランダ……の大代表団も参加していた。加えて本日も、NATOサミットそれ自身に向けさらなる行動が取られている。平和運動は対抗サミットを組織中だ。(二〇一七年五月二五日)

▼筆者は、第四インターナショナルベルギー支部のSAP/LCRで全国指導部の一員。(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年五月号)

  


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