米国
気候と科学の行進
ソリダリティ・エコソーシャリズム作業グループ
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トランプ政権は、露骨に科学を敵視し、長年環境保護政策に真っ向から敵対してきた人物を米環境保護局(EPA)長官に指名するなど、環境保護政策の全面的逆行を進めようとしている。この愚行に対し、米国では大きな民衆的な抵抗が発展中であり、そこにはこれまであまり街頭に出ることがなかった科学者も大挙して加わっている。その一部として、四月二二、二九日には大規模なデモが米国各地で、また世界各地で行われ(気候と科学の行進)、日本でも在日米国人が行進した。ソリダリティ・エコソーシャリズム作業グループによる以下の声明は、先の行進向けリーフレットとして公表された。エコソーシャリズムの観点からの要求を検討する一つの素材として紹介する。(「かけはし編集部」)
6500万人の
難民という現実
トランプ政権は、連続的なばかげた「オルタナティブファクト」をもって、諸々の体系的な環境危機を指摘している科学的分析をもみ消そうと策動している。大破局を回避するためには、われわれはエネルギー資源としての炭素使用を大々的に引き下げ、二〇年以内に持続可能なエネルギーへの移行を進めなければならない。石炭、天然ガス、石油、あるいは原子力発電の、技術的に適切でより効率的な、機能を発揮できる利用法はまったくない。
エネルギー資源としての炭素は、他の環境上の、また社会的な諸問題に結びついている。おそらく、もっとも印象的なことは、その多くが戦争から逃げ出している、六五〇〇万人の難民という現実だ。
ソマリア、スーダン、そしてシリアの戦争に先立っては、不安定化が激しくなっている干ばつがあった。この環境的な危機が、田舎のコミュニティと先住民衆が彼らの暮らしのやり方を維持する能力を脅かしていた。そして、他の国に避難場所を求めている人々でさえも、彼らの受け入れ国の、最悪の環境的悪化にさらされている居住区に自らが押し込められると分かる、ということもあり得るのだ。気候変動からの避難は安全を約束しない。
いのちと職守る
経済の再組織化
トランプは、健康規制や安全規制の切り下げ、およびEPAの劇的な縮小を通して、石炭、石油の生産、フラッキング(シェールオイルやシェールガスの採掘法であり、高圧で岩盤に細かい亀裂をつくり、岩盤中に分散して閉じ込められている原油や天然ガスを抽出する方法:訳者)を強化すると約束している。建設労組の役員たちや失業した鉱山労働者のある者たちは、これらの約束に大喜びした。それでもこれらの人々は、彼らの仕事が原因となっている慢性の健康障害に苦しんでいるまさに同じ人々なのだ!
商品生産と産業化された農業の拡大によって「進歩」の計測を続けることは、文明を袋小路――より多くの干ばつ、嵐の強大化、より大きな不平等、不健康化の進行、難民の増大――に導くだろう。
農業生産と工業生産の資本主義的方法が依拠するものは、化石燃料の利用だけではなく、継続的拡大を求める競争でもある。ビジネスは、その所有者のためにより大きな利潤を蓄積しつつ成長しなければならず、そうでなければ消滅するしかない。利潤を求めるこの推進力が、各企業は最低のコストで労働力と諸々の資源を見出さなければならない、と指令するのだ。
気候変動だけではなく、われわれが呼吸する空気と、海洋酸性化、珊瑚礁破壊、種の縮小、大気汚染の高まり、また土壌劣化間のつながりについても、科学界が警報をならしていることに基づき、われわれは経済的な再組織化を、食料主権と大量輸送をはじめとして、環境の均衡を回復できる再組織化を求める。
それでは、この国が化石燃料への依存を引き下げるとすれば、どこに仕事があるだろうか? われわれは、きれいな水を提供する川や湖の下と先住民の土地を通過するパイプラインをもっと多く建設する代わりに、太陽光、風力、水力のエネルギー向けの、また公共交通の、また断熱性があり耐気候性の革新的な建物向けの、そうしたインフラを建設している必要がある。それはまた、われわれの資源を食いつぶし、われ自身を守る方法は暴力であるとわれわれに教える軍事予算を終わりにすることを意味している。
経済移行の代価
を払う者は誰か
われわれの安全は、気候変動に正面から立ち向かうことの中にある。われわれは、化石燃料が支配する産業の代わりに、われわれのコミュニティに利益となる安全な仕事を要求する。われわれの支配者は、環境の持続可能性に向かう移行のコストを労働者に払わせようとするだろう。われわれはそれを許してはならない! 労働者がこの窮地をつくったのではないのであり、労働者がその対価を払わなければならない理由はまったくない。われわれは、職場が閉鎖されたりその設備が変更される場合、勤労民衆とコミュニティは全面的に補償されなければならない、と強調する。基本となるのは、「公正な移行」への要求だ。
なぜシステム
変更が必要か
持続可能な未来に向けた移行の構想で中心となるものは、勤労民衆がわれわれの前にある環境上の諸課題を集団的に解決する能力をもてるような社会に関するビジョンだ。それは、干ばつ、戦争、抑圧体制から逃れようとしている人びとは受け入れというよりも恐れられるべき、という意見を拒絶することを意味している。米国の市民は、ブラック・ライヴス・マター運動を支持して諸々の連携が行われたように、資本の世界的な惨害により影響を受けている人々と連帯して立ち上がることができる。
われわれは共に、「違法な者は誰もいない」との要求をもって、高まる不平等に挑むことができる。われわれは、四月二二、二九日、また五月一日、もう一つの世界――トランプ政権の半ファシスト的新自由主義とそれが寄りかかっている経済システムを特性づけている、貪欲と冷酷さを、公正と平等と持続可能性で置き換える世界――は可能だと断言するために行進する。われわれには、勤労民衆が集団的に決定を行う社会主義経済が必要だ。今日の闘争は、われわれが必要とし切望する未来をどのようにして築くか、という闘いだ。(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年五月号)
パキスタン
ババ・ジャン他11人の活動家の解放を
国際連帯署名に大きな反響
最終勝利へさらに拡大を
地すべり被災者
の支援への弾圧
パキスタン北西部ギルギット・バルティスタン州にあるフンザ渓谷は、「風の谷のナウシカ」の「風の谷」のモデルとなったと言われ、日本人観光客も多い。
二〇一〇年一月四日にフンザ川に面した山腹斜面が地すべりにより崩壊したため水流が堰き止められ、湖ができ、複数の集落が水没した。
パキスタン労働党(のちにアワミ労働者党に合流)とその青年組織のリーダーの一人ババ・ジャンさんは被災住民たちを支援し、政府・地方当局に補償を求める交渉を行っていた。二〇一一年八月一一日に、政府の無対応に抗議する住民たちに対して治安当局が発砲、住民二人が死亡、怒った住民たちは治安部隊と衝突し、地方行政府の建物の一部を占拠した。
治安当局はこの事件に関連して同年九月にババ・ジャンさんを始め一〇〇人以上の政治活動家を反テロ法の下で逮捕した。ババ・ジャンさんは事件現場にはいなかったにもかかわらずである。
一方、事件の発端となった警察官による発砲と殺人については、調査が実施され報告書が作成されたにもかかわらず、報告書は発表されず、誰ひとり処罰されていない。
パキスタンでは反テロ法は主に政党や労働組合の活動家の弾圧のために使われており、多くの活動家が長期にわたって拘留されており、拘留中における拷問も横行している。
一四年一〇月に反テロ裁判所はババ・ジャンさんと彼の一一人の仲間に「略奪と違法集会」の罪で無期懲役を宣告した。
一五年四月に州高裁はババ・ジャンさんたちの無罪を宣告した。ババ・ジャンさんたちは別件でも拘留されていたため釈放されず、ババ・ジャンさんは同年五月の州議会選挙に獄中から立候補し、選挙区で次点となった。その後、この選挙区で当選した議員が州知事選挙に立候補(当選)したため補欠選挙が告示され、ババ・ジャンさんは再立候補しようとしていた。それを阻止するため政府は一六年六月にババ・ジャンさんの無罪判決に対して州最高裁に上告し、州最高裁(判事は州首相が任命)は高裁の無罪判決を取り消し、無期懲役判決を復活させた。
フンザ渓谷地域をはじめ全国でババ・ジャンさんたちの無罪・釈放を求める運動が広がり、国際的人権団体が「パキスタンの良心の囚人」としてこの問題を取り上げてきた。
緊急オンライン
署名に賛同多数
この中でババ・ジャンさんと支援者たちは、無期懲役を回避する最後のチャンスとして、州最高裁への異議申し立てを提出した。
異議申し立ての審理が五月二五日に行われることが決まり、アワミ労働党は緊急の国際キャンペーンを呼びかけた。
アワミ労働者党の全国指導部の一人であるファルーク・タリクさんからの緊急アピール(五月二一日付)に応えて、各国で大使館への要請行動などが組織され、ヨーロッパ国境なき連帯(ESSF)はオンライン署名を呼びかけた。
オンライン署名には、二二日の締め切りまでのわずか四八時間に、四九カ国、四二六人の賛同が寄せられた。この中には米国のノームチョムスキーさん、英国のケンローチさんなどの著名人や九カ国、一八人の国会議員が含まれる。
国際キャンペーンの反響は大きく、現地の全国紙でも大きく取り上げられ、関心が高まっている。
現地からの報告によると、二五日に開かれた州最高裁の審理では、判決はイード(断食明けの祝祭)後まで延期された。理由は法務官が審理の準備ができていないということである。ババ・ジャンさんの弁護人側が、慎重審理のため延期を求めていたという事情があり、ババ・ジャンさんの支援者たちによれば、延期の決定は国内および国際的な運動の成果です。
また、この日には同様の弾圧を受けている一四人の活動家(うち二人には無期懲役の判決が下されている)についても異議申し立ての審理が予定されていたが、この二人の無期懲役が執行停止となった。
ババ・ジャンさんの審理は七月第一週に再開されることになった。それまでの期間に、さらにキャンペーンを拡大することができる。
オンライン署名はそれまで継続されることになった。日本でも多くの人々に署名への協力をお願いする。
宗教対立を
超えた奮闘
この地域はカシミール問題や中国の一帯一路構想のモデルケースとなっているパキスタン回廊プロジェクトで地政学的に重要な地域となっており、宗教問題(この州はパキスタンで唯一、スンニ派ではなくシーア派が多数)、分離運動などでも緊張が続いています。アワミ労働者党を始めとする非宗教の左派、民主主義派は、このような複雑な政治環境の中で、住民たちのとのつながりを維持しながら、過酷な政治弾圧と闘っている。ババ・ジャンさんを先頭とする若いリーダーたちが宗教対立を超えて奮闘している。
さらなる支援・連帯を!
オンライン
署名について
ヨーロッパ国境なき連帯(ESSF)のホームページにアピールが掲載されています(英語、フランス語)。長文ですが、右記のような経過と背景を念頭に、次の要求を掲げています。
「われわれはギルギット・バルティスタン州に上告の撤回を要求し、また、最高裁にババ・ジャンさんをはじめとするすべての被疑者を釈放することを要求する。
われわれはまた、司法委員会のこの事件(警察官による発砲から始める一連の経過)に関する報告と勧告を公表することを要求する」。
賛同していただける方は、RSSFのホームページの次のページにアクセスし、http://www.europe-solidaire.org/spip.php?page=contact (本紙のホームページでこのurlをコピーして下さい)
@お名前
A電子メールアドレス
を記入し、
「メッセージ」欄に
B賛同する旨と、お名前、所属団体、国を記入して下さい(本紙のホームページに記入例を示しています)。
C確認ボタン(「Valid」と表示されています)を押して下さい。メッセージを受け付けたことを知らせるメッセージが表示されたら送信成功です。
パキスタン
グッドニュース届く
GB最高裁訴訟延期決定
ファルーク・タリク
ババ・ジャンを含む一四人の活動家の再調査を求めるギルギット・バルチスタン最高裁宛請願が、本日聞き届けられた。全員が二つの終身刑に直面していた。
弁論を経た法廷の決定は次のようになっている。
▼ババ・ジャンを含む一二人の訴訟は延期され、Eid(イード、イスラムの大祭)後に審問が行われるだろう。
―これがわれわれの法廷における主張であり、われわれにもっと時間を与え、ババ・ジャンの代理として何人かの他の古参弁護士も出席させてもらいたい、ということだ。
▼二人の訴訟は審理法廷に差し戻される。それは、彼らの終身刑が保留される、ということを意味する。
先任代理人のアムジャド・フサイン、イーサン・アリ、ナジル・アーメドがわれわれの代理人として出席し、この訴訟の弁論を行った。
代理人のイーサン・アリはギルギット・バルチスタン(GB)における最高裁弁護団協会代表であり、同アムジャド・フサインはGBのPPP(パキスタン人民党)代表だ。
本日の決定はわれわれにとって一種の勝利であり、二人の活動家の終身刑は保留になり、われわれは、ババ・ジャンと他の一一人の訴訟に準備を整えるための時間をもっと多く確保できる。
パキスタン内外でデモを行い、国際アピールに署名したすべての人々に感謝する。そのすべてが本日の助けとなった。
▼上記は五月二五日にファルーク・タリクにより投稿された。(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年五月号)
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