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    かけはし2017.年5月29日号

未来を決定する主体は私たち


大統領選挙の結果分析と評価

チャン・ヘギョン(社会変革労働者党機関紙委員会)


 異変はなかった。本格的な大統領選レースがスタートした後、世論調査の支持率1位を走っていた共に民主党(以下、民主党)の文在寅(ムン・ジェイン)候補が19代大統領選挙で41・1%の得票率を得て当選した。これで金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権後10年ぶりに再び自由主義勢力の政権時代が開かれた。 しかし政権過程は以前とは異なる様相で行われた。金大中がいわゆるDJP連合(金大中・金鍾泌(キム・ジョンピル)連合)で当選して、盧武鉉が李会昌(イ・フェチャン)候補と超接戦の末に当選した反面、文在寅の当選は保守勢力との連合なしで、2位に圧倒的票差で当選したのだ。

広場が大統領選を作って規定した


このように文在寅が当選した動力には広場闘争があった。朴槿惠(パク・クネ)―チェ・スンシルゲートをきっかけに起きた巨大な怒りはろうそくで燃えて朴槿恵弾劾を牽引してきた。広場闘争の熱望である「弊害の清算」要求と「これが国か」というスローガンは、弾劾で開かれた早期の大統領選挙の場で民主党を通じた政権交代を生んだのだ。
保守政治勢力(自由韓国党と正しい政党)の合計得票率が30・8%に止まったことも広場闘争の結果だ。保守勢力が歴代の大統領選で30%台の支持を受けたのは87年以降初めてのことだ。87年6月抗争後に行われた13代大統領選挙で盧泰愚(ノ・テウ)の得票率は36・6%だったが、当時、金鍾泌が得た得票率8%まで加えると、保守勢力の合計得票率は40%を超える。正しい政党が朴槿恵弾劾に同意した点まで考慮すると、反省のない勢力に対する支持は洪準杓(ホン・ジュンピョ)が得た票と趙源震(チョ・ウォンジン)票(0・1%)の合計でさらに絞られる。
広場闘争は保守政治勢力の政治的分化まで生んだ。以前の時期の保守政治勢力の分裂は政治的分化というよりは大統領選挙を控えた権力闘争的側面が強かった。しかし、自由韓国党―正しい政党への分化は正しい政党、柳承敏(ユ・スンミン)の「温かい保守、保守の革新」というスローガンに見られるように、政治的分化の性格を持つ。柳承敏は、安保観では自由韓国党と差がないが、労働・福祉公約では従来の保守政治勢力と路線的な差別化を一定示した。広場は保守の政治的分化と革新まで強制したのだ。
もちろん、柳承敏が得た6・8%の支持率は洪準杓が得た24%にはるかに及ばない。正しい政党の議員12人が大統領選挙期間中離脱し、自由韓国党復党を待っている点、大統領選挙以降自由韓国党の正しい政党への揺さぶりは一層激しくなるという点を考慮すれば、保守の革新プロジェクトは座礁することもありうる。しかし柳承敏の得票率は、いわゆる合理的な保守勢力が最小限の立地を構築したものとみられる。

洪準杓の支持率と正義党の後の行動

 文在寅の大統領当選が当然視される状況で関心を引いたのは2位に誰がなるかだった。 結果は安哲秀(アン・チョルス)(得票率21・3%)に対する洪準杓の勝利だった。安哲秀は「与野党の既得権勢力審判」と「過去ではなく未来、統合の政治」というフレームで保守票と中道票への拡張を試みたが、1位どころか3位にとどまった。
従来の与野党と政治的な差別化を提示せず、提出された2党体制批判は説得力が落ち、「統合の政治」は積弊を清算する意志の不在を映し出した。サードに対して発言を翻したことも同様に、これまでの与野党支持勢力から挟み撃ちを受けることになった。支持率24%を得た洪準杓の2位は存続の危機に陥った自由韓国党の政治的再生をもたらした。自由韓国党は大統領選候補を出せるかどうかすら疑問視された。しかし洪準杓は、朴槿恵の拘束の中止や赦免を云々する一方、「体制の選択選挙」、「自由大韓民国を守る選挙」、左派撲滅論のような典型的な色分け論を通じて、破倫的言動にもかかわらず、弾劾反対勢力を確実に結集させた。朴槿恵弾劾棄却の世論が20・3%(3月9日、リアルメーターの調査)に達したのに照らしてみると洪準杓の得票率は弾劾の反対勢力に約4%に及ぶ保守層を追加結集させたと考えられる。洪準杓が大統領選挙直後に「自由韓国党の復元に満足している」と所感を明らかにしたことも朴槿惠とチェ・スンシルゲート以降、ぐっと狭くなった保守政治勢力の立地に照らして概ね善戦したという評価の中で出た反応だ。
洪準杓が2位になったのは、現韓国社会の主流の保守政治勢力のフレームと政治的水準を反映してくれる一方で、極右保守勢力のコンクリートの支持層が少なくとも20%はいるという点を示している。自由韓国党は大統領選挙期間、洪準杓が正しい政党からの離党派の復党と親朴系議員の懲戒解除を一括推進したことに見られるように、「セヌリ党のシーズン2」になる可能性が高くなった。これは、今回の選挙を通じて政治的生命を維持して、国会内の第1野党の地位を活用して、自分たちの政治的立地を固める一方、それに基盤を置いた拡張を図っていくことだ。
5党のうち、最も進歩的な政策を打ち出した正義党のシム・サンジョンは6・2%の支持を受けた。歴代選挙に比べて、野党単一化の圧力が少なかった点、広場闘争という巨大な戦い後、行われた選挙だった点を考慮してみると、正義党の得票率は期待より高くなかった。 しかし、進歩政党、最高得票率(2000年の大統領選挙での権永吉(クォン・ヨンギル)候補の3・9%の得票率)を超えながら、一定の政治的立地を確保した。
注目するのは正義党の今後の行動だ。シム・サンジョン候補は、すでに選挙運動中に共同政府の構成を明らかにしている。選挙後、正義党は文在寅政府に参加することを検討できるという態度だ。もし社会正義党が文在寅政府に参加した場合、これは進歩政治勢力が新しい支配ブロックの下位パートナーになることを意味する。
盧武鉉政権時代、民主労働党について、開かれた・ウリ党の2中隊の役割をしているという批判が沸騰した。労働者を政治(進歩政治)の独自性を喪失したという批判だ。もし社会正義党が政権に参加すれば、これは韓国の進歩政治の独自性を毀損させたもう一つの歴史的転機となることだ。

ろうそくは終わっていない


文在寅大統領時代はどのような変化をもたらすのだろうか。朴槿恵式の世論に鈍感な政治や権威主義的統治の払拭、つまり「光化門(クァンファムン)大統領」という公約はかなり守られる見通しだ。
しかし、「雇用の大統領」、「安保の大統領」、「正義の大韓民国」が守られるかは未知数だ。過去、民主党時代を云々する必要もない。公約を見てもそうだ。非正規職問題の解決は非正規職撤廃のない差別禁止だ。福祉公約は財源確保案がなく、朴槿恵の増税のない福祉と似ている。
文在寅大統領が第1の課題にした「雇用大統領」の核心公約である公共雇用81万件の実状は公務員の雇用17万件創出だ。財閥改革は、財閥の違法な経営承継、皇帝経営、不当な特恵の根絶など経営の透明性を高め株主に親和的な財閥の合理化水準に止まっている。「サード配置」については、選挙期間中、「戦略的曖昧性」路線を維持してきた。就任演説で明らかにしたキーワードの「統合と改革」の関係も曖昧だ。候補時代には「弊害の清算に基づいた国民大統合」を力説したが、大統領という変わった位置では国民統合という大義名分から弊害の清算にどれほど積極的に乗り出すかどうか疑問視される。 大統領の就任演説で弊害の清算という言葉が改革に変わったのも意味深長だ。
すでに保守メディアの攻勢は始まった。東亜(トンア)日報は10日付の社説を通じて「選挙過程で、文候補やその周辺でろうそく民意を〈積弊勢力清算〉や〈主流勢力のすげ替え〉に誤読する声が殺到した」、「80%ほどの国民が朴前大統領の弾劾に賛成したが、それと新たな執権勢力に他の勢力を清算する〈チョジャリョンの古い刀〉を握らせてやったわけではない」と批判した。
弾劾で大統領がいない間、公務員の過度な干渉がなくて経済がかえってうまく回っていたとして、「政府が規制の刀の柄を振り回し、企業の息の根を締めてはいけない」と怒声まで叫んでいる。また復活した自由韓国党の攻勢も少なくないだろう。
それで私たちは新政府が弊害の清算をしっかりしているのかしっかりと見抜かなければならない。文在寅の公約に閉じ込められることのない我々の切迫した要求を掲げて戦わなければならない。「新しい政府の発足は、ろうそくの完成ではなく始まり」という5月10日付の退陣行動の論評通り、私たちがただ「大統領を変えよう」とその寒い冬広場に集まったわけではないだろう。私たちの声が大きくなったとき、私たちが行動に乗り出たときだけ世の中は変わったのではないか。(韓国=社会変革労働者党「変革政治」45号・5月13日付より)

民主労総、大統領ろうそく候補0番として、「最低賃金1万ウオン」宣言

 民主労総は4月10日午前、ソウル光化門(クァンファムン)広場で記者会見を開き、「最低賃金1万ウォン」は「ろうそくの時代的命令」とし、「全体労働者の半分に達する低賃金労働者の利害を代弁する大統領選挙候補」と宣言した。
 民主労総は記者会見文を通じて「賃金を除いてタバコ価格、税金、公共料金全部値上がりした」、「金の箸ではなく、土のスプーンを代弁する『最低賃金1万ウォン』候補は施行時期を2018年に提示する」と明らかにした。
 民主労総は、文在寅(ムン・ジェイン)、安哲秀(アン・チョルス)大統領選候補の最低賃金の発言も真っ向から批判した。
 彼らは「セヌリ党離党勢力が作った正しい政党の柳承敏大統領選候補さえ2020年まで最低賃金1万ウォンの実現を公約に掲げた」、「政権交代を言う有力野党候補たちは言葉の遊びばかりしている」、と失望を示した。
 文在寅ともに民主党の大統領選候補に対しては「『努力する』というのは話だけで、最初から実現時期を省略してしまった」、「いつかは1万ウォンに到達するから、言葉だけでやらないということ」だと安逸な態度を指摘した。
 安哲秀国民党大統領選候補に対しては「『(最低賃金1万ウォン)2022年までに実現』を掲げたが、1988年最低賃金制度ができて以来、最低賃金は、毎年平均9%の値上げ率を見せた」、「じっとしていても2022年には最低賃金1万ウォンになるが、ふざけているのか」と問い詰めた。
 民主労総は大統領選候補たちに「最低賃金1万ウォン実現の経路と方法をめぐって5千万国民の前でTV討論を行ってみよう」とも提案した。…… キム・ジンスクサービス連盟ホームプラスの労組事務局長は「韓国に上陸してから20年の大型マートは、最低賃金労働者を大量に量産している」、「現在、全国50万人がここで働いているが、労働基準法の死角地帯に置かれている代表的な最低賃金の事業所」と批判した。
 パク・ジョンオ女性連盟5号線支部支部長は「最低賃金1万ウォンも与えられない政府が情けない」とした。パク支部長は「主に60代の女性労働者たちが1日3交代、隔日制で働く長時間労働をしている」、「ソウル市で生活賃金の保障をするとしながらこれを守らず、この2月6日からソウル市庁で、ピケットデモをしている」と明らかにした。
 イム・スングヮン韓国非正規教授労働組合委員長は「大学で講義する10万人が1カ月で稼いだおカネが最低賃金に及ばない」、「非正規職教授をはじめ、掃除労働者、教育公務職を含めれば教育現場で60万人以上が最低賃金、もしくはそれに満たない賃金を受けている」と指摘した。……民主労総は最低賃金を決定しなければならない来る6月29日まで、最低賃金委員会が1万ウォンの引き上げを決定しなければ翌日の6月30日、社会的総ストで打ち返すと明らかにした。(チャムセサンより)

Dさん 命びろい

 予想もしていなかった出来事が起きた。五月八日夕方、編集作業を終えて、中華そば屋さんでDさん(コラム「架橋」の筆者の一人)と軽く一杯やっていた。生ビールをジョッキ一杯半飲んだ頃、手が震えるようで、何か様子がおかしい。具合いが悪いのかと聞くと「少し、気分が…。血圧が一七〇ぐらいで高いので、明日医者に行く。事務所に戻り、横になるよ…」。「動けるか」と聞くと、左足の麻痺が始まっていて立てない。すぐに救急車を呼んだ。二〇分も経たないうちに救急病院に到着。検査の結果「脳内出血が起きていて、左手足が動かない。緊急手術の必要はないが、安定したらリハビリが必要だ」とお医者さんの言葉。
 ろれつが回らず、口から食事ができない。手足が動かない状態になった。治療としては血圧を一二〇ぐらいに下げることしかないという(下げ過ぎると脳梗塞となり危険になる)。これで安定すると血管が塞がり、血の塊は脳内に吸収されてなくなってしまうという。この状態になったところで、リハビリ専門病院に転院してリハビリを集中的に行う。リハビリは早ければ早いほど回復するという。リハビリ病院は二〜五カ月の期間。V字回復するのは最初の三カ月だという。
 メールやフェイスブックを使い、仲間たちにDさんの様子を伝えた。「がんばってくれ」「応援している」などのメッセージが届いた。Dさんに伝えるとうっすらと涙を浮かべながら、「フェイスブックってすごいね。メールを見たと言って見舞いに来てくれた」と喜んでいた。秋田などから弟さんたちも駆けつけ励ました。
 二四時間、栄養剤の点滴。そして左半身が麻痺しているので、自分で寝返りができず、体が痛くなるのがつらいと言う。毎日のように面会に行っているが、眠っていることが多かった。八日後の五月一六日、口からの食事がいったん始まり、一七日からはリハビリが始められた。リハビリは「とても痛い」と言う。それでも、何とか早く回復したいということで一生懸命がんばっている。「面会者へのお願い。麻痺している手足を動かして、脳に刺激を与えてやることが早い回復につながる」とDさんは訴えている。
 しかし、原因不明の四〇度の熱が出て、口からの食事がストップした。その後、五月二〇日から平熱に戻り、五月二二日から口からの食事が再開する。
 多くの仲間の面会や二〇〇〇キロも離れた石垣島から支援金が届いている。Dさんは命びろいしたが長期の闘病生活になるだろう。一日一万一三四〇円の差額ベッド代がかかっている。仲間たちの支援をお願いしたい。     (滝)

 




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