自民・公明・維新の暴挙を許さない
憲法改悪と一体化した民主主義破壊
戦争国家への道を断ち切ろう
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ゴマカシだらけの説明
「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画罪」を焦点にした、いわゆる「共謀罪」法案の強行採決がいよいよ差し迫ったものとなった。自民・公明の与党は勝手に決めた「審議時間三〇時間」に達するとして五月一八日にも衆院での強行採決を図っている。今国会の会期末は六月一八日、東京都議選の日程もあり会期延長は困難である。そのため与党は、準与党で改憲勢力として手を携えている日本維新の会とともに、何がなんでも五月第四週には参議院に送らなければならない、としている。
しかし、相変わらず政府答弁はごまかし、言い逃れ、詭弁に満ちている。安倍首相は共謀罪適用の対象は「テロリズム集団、暴力団、薬物密売組織などの違法行為を目的とする団体に限られる。通常の社会生活を送っている人は捜査の対象とならない」と言い切った。金田は、「一般人は告発されても、嫌疑がなければ捜査の対象にはならない」と、答えた。そもそも「告発」されたのに捜査が行われないということがありうるのか。
金田法相は「一般人は対象にはならない」と言いながら、盛山法務副大臣は「監視対象になれば、組織的犯罪集団と関わりのない人ではない」と答弁している。つまり監視されるようになれば、その人は「一般人ではなくなる」との倒錯した主張なのだ。
既存の法体系の破壊
こうした中で五月一一日、自民、公明の与党と、「準与党」性を自他ともに明らかにしている「日本維新の会」は、五月一一日に録音・録画による「取り調べの可視化」とGPS(全地球測位システム)捜査の制度化についての検討を盛り込んだ「修正」に合意した。しかしこれが「修正」ではないことはあまりにも明白だ。
金田法相は、この間の国会答弁でも「具体的な捜査手法や捜査の開始時期というものは実務的な質問で、直ちに私からお答えすることは困難」(四月二一日、衆院法務委員会)、「花見であればビールや弁当を持っているのに対し、(犯行の)下見であれば地図や双眼鏡、メモ帳などを持っているという外形的事情がありうる」(四月二八日)などと、依然として迷走が続いている。
こうした誰の目にも明らかな詭弁をもてあそばなければならないのは、「テロ等準備対策」を名目にした「共謀罪」法案が既存の法体系を根本のところで覆す内容を持っているからであり、徹頭徹尾、違憲の法案だからである。
小倉利丸氏は「共謀罪は、現行刑法の基本的な枠組みを根底から覆し、自民党改憲草案に対応した国家と刑罰の体制を構築する試みの一環である」(『ピープルズ・プラン』76号、小倉「共謀罪批判――『道義的刑法』の亡霊と自民党改憲の先取り」)と性格づける。
彼はさらに「自民党が構想する改憲後のこの国の憲法体制を踏まえたとき、共謀罪がもたらすであろう問題の射程は、現在の共謀罪の争点とされている越境組織犯罪防止条約やテロ対策などの範囲を大きく越える。共謀罪も改憲草案もその起草の主体は同じ自民党であるから、この両方を睨んで共謀罪を解釈することは、私たちの自由の権利、とりわけ反政府運動にとっての抵抗権の非犯罪化にとっては不可欠な視点だ」と述べている。したがって、安倍首相がこの間、繰り返し強調している改憲日程の具体化との関連で、「共謀罪法案」をとらえることが必要となる。
安倍首相は五月三日の極右改憲派集会(「日本会議」系)に寄せたビデオメッセージの中で現行九条1.2項を維持したまま3項に自衛隊の存在を位置付ける新憲法を東京五輪開催と重ね合わせて二〇二〇年に施行する方針を明らかにした。しかし安倍のねらいは決して、こうした九条への「加憲」にとどまるものではなく、戦略的には野党時代に起草された二〇一二年の自民党「改憲草案」の内容にまで及んでいることは明らかだろう。
この自民党改憲草案は、「国防軍」の設置とともに、憲法二一条の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は保障する」に第2項を加え「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」とされている。
この改憲草案では、「自由と権利」についても「責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」とか、「すべて国民は個人として尊重される」という一三条から「個」の一字を外して「人として尊重される」に変えられた。二四条の「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し」では「のみ」が外され、おまけに二四条一項として「家族条項」が新設され「家族は社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」として「ジェンダー平等」が消されてしまう、という極度に「復古主義」的・「男主義」的な内容につらぬかれたものである。
現代の「治安維持法」
このような経過から見たとき、われわれは「共謀罪法案」が、安倍の構想の中では明らかに改憲とセットのものであり、しかもその射程がたんに「九条」改悪にとどまらない、個人に国家が優先するきわめて反民主主義的な構想と一体であることに注意しなければならない。
その意味で、「共謀罪」法案を「現代の治安維持法」として批判することは、その性格からいって本質をついている。
トランプ政権の成立、ヨーロッパの「民主主義国家」における極右勢力の伸長は、とりわけその移民排除のレイシスト・キャンペーンを通じて、統治機構の強権的再編、民主主義的諸権利への攻撃を全面化させている。
日本においても排外主義と結びついた民主主義の破壊と憲法改悪は完全に一体のものである。すなわち「共謀罪」と改憲に対決する闘いは、朝鮮半島危機を背景にした事実上の「参戦」体制(海自による米艦防護活動!)をはねかえし、民衆による平和と人権を作り出していく国際的な運動である。
沖縄の反基地闘争とともに、戦争国家化=共謀罪と改憲への道に立ちはだかり、押し戻そう!(五月一五日 平井純一)
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