米国
トランプの新たな、しかし使い古しの戦争
悲劇はシリアだけではない
二〇一七年四月七日 ソリダリティ全国委員会
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昨晩、アサド政権による化学兵器使用への対抗を言い分に、トランプ大統領はシリア空軍基地へのミサイル攻撃を命令した。これは、当該政権に対する米国の初めての(この戦争における米国の介入ではほとんど初めてとは言えないとしても)直接的軍事攻撃だ。われわれは、社会主義者として、また国際主義者として、帝国主義の介入とシリア政府の暴虐双方に反対する。
問題はつくるが責任負わない者
シリア人の破局的惨状への外国の諸大国――米国、ロシア、イラン、トルコ――による介入すべては、自身の罪については系統的に嘘を言う一方で、反対側の犯罪については多くの真実を告げてきた。
アサド政権の化学兵器攻撃は世界レベルの犯罪だ。われわれは、問題の有毒ガスはアルカイダの貯蔵庫から出たというロシアのカバーストーリーが真実であるかもしれない、というようなありそうもない可能性については無視する。全体の文脈ははっきりしている。アサドは以前化学兵器を使用し、人道援助の車列に爆撃を加え、数え切れない他の暴虐に関与した、ということだ。ロシアは、特に二〇一五年にこの戦争に直接入り込んで以来、それらすべてに援助を与え、けしかけてきたのだ。
トランプは、ヨルダンのアブドラ二世王と共に、この化学兵器攻撃について記者会見の中で語っている。
ハーン・シェイフンの市民と子どもたちは恐ろしい死にさらされた。密集した居住地区を米国が爆撃した際は、イランのモスルでは二〇〇人と見積もられた市民もそうだった。米国が支援するサウジアラビアによる爆撃の下で飢餓と死に直面している、何百万人というイエメンの子どもたちの多くもそうだと推定できる。二月九日、無様に取り繕われた米国の急襲で死亡した二五人のイエメン市民も、三月一六日にサウジの武装ヘリから空襲された逃げまどうソマリア難民数十人もそうだったのだ。これらは、われわれが知っているほんの二、三の例でしかない(そしてわれわれは、空爆された空軍基地に隣接する村落における「付随的損害」についてはまだ知らない)。
帝国主義はそれが解決できない諸問題を生み出しているが、その諸結果に対する責任からは自らを解除している。帝国主義戦争の諸結果に苦しめられている、またその名目の下に米軍が今彼らの戦争を拡張しつつある、そうしたシリア、イエメン、ソマリアの市民と子どもたちは、ドナルド・トランプが大統領令によって米国から締め出したいと思っているその同じ難民なのだ。
国内の失敗から関心をそらす?
おそらく間違いなく、トランプの動機の多くは、民衆の支持を高め、彼の内政課題における諸々の失敗から関心をそらすことだ。少なくとも当面、医療ケアに関する共和党内部の内戦、スティーブ・バノンとホワイトハウス西棟内のジェレド・クシュナーの権力センター、この間にある内輪もめ、現実に人々を助けているすべての政府プログラムを一掃するトランプの「財政青写真」、さらに他のあらゆる者の犠牲によって富裕層と超富裕層のポケットを膨らます未決定の「税制改革」、これらは影が薄くなった。
共和党政治家は、ランド・ポールと二、三の強硬派「アメリカ第一主義者」を除いて、シリア爆撃におけるトランプの「指導性」を歓呼して迎えるために殺到している。議会からの承認を取っておくべきだったとの注意を携えてだが、ほとんどの民主党議員も同様だ(ヒラリー・クリントンは、トランプが実行する以前ですら空爆を求めた)。主流メディアは、リベラル出版物と目されているものを含んで、この介入に正統性を打ち立てようと殺到中だ。
しかし次に来るものは何だろうか? トランプを褒めそやそうと殺到中の政治家たちと暴虐政策の「立案者たち」は、相対立するさまざまな設定すべき課題を抱えている。ある者たちは、米国による一回の空襲が結局は、真剣な政治交渉へのアサド引き出しにロシアを向かわせる、と期待している。それは悪さが最も小さいシナリオであるかもしれない。しかしロシアは、ウラジミール・プーチンがダマスカスの顧客に、さらなる化学兵器攻撃はおそろしく愚かなことだろうとのメッセージを送っているとしても、まさに簡単に、アサドへの関与を倍化するかもしれない。
他の者たちはあけっぴろげに、ジョン・マケインやヒラリー・クリントンが主唱する飛行禁止空域設定から始まる、シリアへのもっと規模を増した爆撃だけではなく、終局的にはイラン、およびこの国との国際的核取引を潰すことを狙った、より幅広い戦争発動をも欲している。ドナルド・トランプが考えていることは、何人かの専門家の好奇心をそそる、しかし他の者を恐れさせているいわば未知の変数だ。
米国の軍事行動無条件の反対を
しかし結局は、四月六日のミサイル攻撃が一回の抑制された行動であるならば、それが本当にシリア人の惨状の性格、あるいはそれを終わらせることに向けた厳しい見通しを変えることにはならないだろう。そしてそれがより大きな軍事作戦の始まりであるならばそれは、シリアやそれを超えて、すべてをもっと悪くさえする潜在的可能性をはらむだろう。
米国の反戦諸勢力がこの展開中の危機の中で有益な役割を果たすべき存在だとすれば、われわれは、アサド政権やそのロシアやイランの保護者に対するどのような共感も支持も示さずに、まず無条件に米国の軍事行動に反対しなければならない。そしてわれわれは、議会の承認あるいは国際的協力の必要に関して、民主党が押し出しつつある類の要求を支持することに向けた圧力に抵抗しなければならない。まさにそうした要求は、全面的に正統性のない諸行為に対して、正統性という表紙を求めることに帰着するのだ。
われわれはさらに、この地に来たいと思っている難民に米国は開かれているべきという要求、また国内で立ち退かされ生き延びるために闘っている人々に大量の人道的援助を提供するという要求によるものを含んで、右翼の内政の課題設定にも抵抗しなければならない。ドナルド・トランプの新たな、しかし使い古された戦争は、彼の残酷な移民一斉検挙や追放も、ヘイト犯罪の増大も、警察の暴虐に対する司法省の権限付与も、さらに諸々の市民権に対する正面攻撃も隠すことはできない。許してならないことは、他の人々の国に対する爆撃が、この政府に自身の民衆からの略奪をごまかしてやり通すことを可能にするようなことだ。
(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年四月号)
スペイン
声明:フランスの大統領選
今後の闘いの武器に向け
フィリップ・プトーを支持
アンティカピタリスタス
フランス大統領選の第一回投票は四月二二日(現地時間)に行われる。この選挙は特に予測ができない。伝統的右翼政党の元来は先頭に立つ候補者、共和党のフランソワ・フィヨンは、個人的腐敗の告発によって厳しい打撃を受けることになった。極右のマリーヌ・ルペンもまた、EU議会の資金をパリにある国民戦線(NF)本部党職員向けに用立てたことで告発された。現在の世論調査は、ルペン、および「右でも左でもない」オランド政権元閣僚のエマニュエル・マクロンが、マクロンがルペンを負かすという予測を伴って、第二回投票に通過する、と示している。
同時にジャンリュク・メランションは、彼が特別につくり出した「不屈のフランス(FI)」による、またもっと不承不承にだが、左翼戦線を構成する諸政党による支持を受けて、社会党の公式候補者であるブノワ・アモンを上回っている。この後者は、マクロンにすり寄る、前首相のマヌエル・バルスを含む一定数の指導的社会党員によって、見捨てられた。
しかし、一一人の候補者全員による先頃のTV討論では、「マイナーな」候補者たち、特に反資本主義新党(NPA)候補者のフィリップ・プトーが脚光を浴びた。プトーは、フィロンとルペンへの彼の攻撃によって、世界中でニュースの主要項目となった(注)。
ポデモス内部の一潮流であり、第四インターナショナルスペイン支部のアンティカピタリスタスはこの声明で、NPA候補者のプトーへの支持を明らかにする。
次期フランス選挙は、欧州の未来にとって極めて重要だ。マリーヌ・ルペン率いる新たな極右の台頭は、あらゆる民主的な政治的諸勢力に対する、われわれが無視できない挑戦を代表している。それは、欧州と米国における反動勢力と権威主義者の台頭というより全般的な現象の一部だ。
第五共和制の支柱となってきた伝統的政党、社会党とドゴール主義右翼は、そのアイデンティティ、構想、また正統性の点で、さらにその中のある者たちが、たとえばフィヨンのように腐敗事件に巻き込まれることによって、厳しい危機の中にある。他方、エリート層はマクロン、すなわち雇用主や金融界のためだけの「斬新さ」を支持している。彼らは、彼に新自由主義構想を刷新する一つのイカシタやり方を見出したのだ。
この制度的政治に刻印された諸々の危機はまた、深い社会的危機をも映し出している。つまり、アイデンティティ、緊縮の諸政策、排除、また福祉国家の終焉といった諸問題によって引き裂かれた社会だ。もちろん、この全体の流れの中には抵抗がある。われわれは、ニュイ・ドゥブも、組織された労働者階級の強さに光を当てさせたCGT率いる諸々のストライキも忘れるわけにはいかない。
しかしながら左翼は、幅広く統一された立候補を進めることができずにきた。それは、反自由主義改良主義から反資本主義諸勢力とNPAのような革命派までを寄せ集め、緊縮に対決する一つの綱領に基づきこの潜在力と不満を結集する立候補、ルペンに対する信用できるオルタナティブとなることができる立候補、ということだ。それは、ネオファシストの台頭に対する障壁になり、EUの緊縮と絶縁し、民衆諸階級の利益を図る形で経済的諸権力に立ち向かう、そうした一つの構想のことだ。
現在の環境の下でアンティカピタリスタスとしてわれわれは、フィリップ・プトーとNPAの立候補方針、つまり、労働者階級と国際主義を中心に置き、反レイシズム、環境主義、フェミニズム、そして反資本主義としての立候補、また他の候補者たちが答えていない、そして変革の構想の構築にとっては基本的である、そうした諸問題を持ち込む立候補、に対するわれわれの支持を表明したい。
政治的専門家の一団を前にプトーがこの大統領選に対するただ一人の労働者候補者であるという事実は、われわれにとって、大きな象徴的価値をもつ前向きな表象であるように見える。
われわれが期待していることは、反資本主義が今後に控える戦闘において基本的な武器になることを確実にする助けとなりながら、あなたたちがこの困難な選挙の中で可能な限り最良な結果を得ることだ。
二〇一七年四月六日。
注)ガーディアン四月五日、「フランスの選挙:工場労働者のプトー、TV討論のスターとして登場」、ニューヨークタイムス四月六日、「無礼、承知の上:機械工候補者、フランスの政治エリートたちのバブル破裂さす」、オランダ日刊紙ポリティケン四月五日大見出し、「鋭い工場労働者、ルペンとフィヨンをふらふらに打ちのめす―腐敗政治家たちとのTV討論でトロツキストが突出」。(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年四月号)
パキスタン
新たなラホールでの爆発
国内各地で続く攻撃糾弾
アワミ労働者党
以下の声明は、二〇一七年二月二三日に、アワミ労働者党を代表してファルーク・タリクにより発表された。
この声明は、ラホールの爆発で今日愛する者の命を奪われた人々へのわれわれの深い同情を表すためのものだ。ラホール軍住宅協会のムンバイレストランで、八人が命を落とし、数十人が負傷した。
アワミ労働者党は、パキスタン各地で今も続き、ここ七日間で一二件にもなる、宗教的偏執者による攻撃を強く非難する。偏執者たちは、われわれの文化、民主的な諸々の伝統、さらにわれわれの暮らし方に対する、総力をあげた攻撃を言明してきた。
国家は、宗教的偏執者から自身を引き離すというその政策を放棄してはならない。タリバンに良いも悪いも区別はあり得ず、彼らはすべて同じであり、ある者たちは今爆弾攻撃を実行中、他の者たちはそれを後で行う、というだけだ。
偏執者たちとの話し合いに関しては、どのような僅かなサインも送ってはならない。彼らはネオファシストであり、民主的勢力と進歩的勢力すべては、あらゆるレベルで闘うために団結しなければならない。マドラサ(コーランの学習を主にした私立学校:訳者)のほとんどは、原理主義推進に向けた本拠となっている。
国家は、主要なマドラサすべてを国有化しなければならない。国家は、マドラサにいかなる補助金も与えてはならない。国家は、教育に関し、現在の二%に変えて、全予算の最低一〇%を投じなければならない。
原理主義に対しては軍事的解決などあり得ない。必要なことは、偏執者とのイデオロギー的ぶつかり合いだ。後退はあり得ない。われわれは勝利し、個々のテロリスト集団は敗北するだろう。
アワミ労働者党スポークスパーソン ファルーク・タリク
▼アワミ労働者党は、パキスタン労働党、パキスタンアワミ党、パキスタン労働者党の合同として、二〇一二年一一月に形成された、パキスタンの急進的な社会主義政党。
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