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    かけはし2017.年4月24日号

資本の総攻撃をはねかえせ


4.7 雇用共同アクション、厚労省前抗議

労政審は官邸の下請けになるな

今こそ労働者の声を聞け

 四月七日午後五時半、時間外労働月一〇〇時間は撤回せよ、労政審は官邸の下請けになるな、労働者委員は労働者全体の代表であることを自覚せよ、労働者の声を聞け、厚労省前には労働者の怒りに満ちた叫びが響き渡った。
 この日午後六時には、三月二八日の「働き方改革実行計画」決定を受けて、早速にもその内容を法制化するための労政審労働条件分科会が入れられていた。労政審会長の樋口美雄慶応大学教授は、「働き方改革実現会議」にも座を占め、この計画が謳う効率的で早い決定をめざすと公言、自ら労政審の存立意義を傷付けている。この状況を前に、労働者の実効ある労働規制を求める強い要求、およびそれに背を向ける「働き方改革」に対する生の怒りを示そうと、ナショナルセンターを横断して結集する雇用共同アクションが緊急に行動を呼びかけた。

超長時間労働
に怒りこめて
行動は、中立労組懇・全農協労連の黒部清明書記次長と中岡基明全労協事務局長の主催者あいさつから始まった。黒部さんは、実行計画の嘘と詭弁、一〇〇%の権利破壊攻撃を批判し、それに対する全面反撃を呼びかけると共に、労使合意が演出されているがそれに労働者はまったく関与していない、とそうしたあざとい宣伝にも批判を加え、労政審に対し労働者の切実な要求に誠実に向き合い十分な審議をせよ、と呼びかけた。
中岡さんは、アベノミクスは何を招いたと指弾しつつ、もう一度労働者を使い勝手良くしようというものと実行計画を糾弾、特に直前の東部労組メトロコマースの非正規労働者の訴えをめぐる労契法二〇条裁判判決にふれ、コース別処遇の差別を容認した実行計画の実体がここにあると、その人権敵視性格に注意を促した。そして近づくメーデーが八時間労働制に対する全世界的な要求から始まっていることにもふれながら、過労死の放任にも等しい今回の提言の非人道性を絶対許してはならない、労政審を形式だけで終わらせようとの策動をたたきつぶそうと訴えた。
生協労連、全労協女性委員会、自治労連、郵政労働者ユニオン、首都圏青年ユニオン、ネットワークユニオン、全労連と、結集した仲間たちの発言が次々に続く。超長時間労働を野放しにする、命が危険にさらされる、長時間労働を規制せずにテレワークという権利保障のない労働でワークライフバランスをごまかしている、どこが同一労働同一賃金だ、みんな定時で帰れる要員を確保しろ、まさに怒りと要求が尽きない。
たとえば首都圏青年ユニオンからは、連休明けには働き過ぎを心配する親からの労働相談が急増するのがこの数年、との現状が紹介され、この現実に背を向けた計画など意味をなさない、この現実の改善こそが急務、そのためにも最低賃金の大幅引き上げと一体的な時間規制を行え、との抗議を込めた労政審への要求が表明された。
あるいはIT労働者で組織されるネットワークユニオンからは、この業界では年度末家に帰れない労働者が続出している、それを放任するつもりか、労働者の声を真摯に聞き取り仕事の発注のあり方含めその規制こそ行え、と怒りの声があげられた。

「働き方改革」
粉砕へ団結を
報道では、この審議会は月二回ほど行われ、六月までには答申の予定とされている。公表された実行計画の内容(資料含めA4版 79頁)とその重大性に照らせば、これではまさに形式に他ならない。こんなことを許すわけにはいかない。
この日の審議では、当然とはいえ、労働者委員から問題を指摘する意見がさまざまに出されたとも報じられている。「働き方改革」粉砕に向けた労働者の戦列を広くつくり出すと共に、それに同調する声を社会を貫くものにしなければならない。その努力と並行的に、この労政審に対しても労働者の監視と抗議の声をさらに強めることが決定的に必要だ。なお今回の労政審は、意を決した「全国過労死を考える家族の会」の傍聴とその厳しい視線の中で行われている。そのことも特記したい。   (神谷)

3.20

「竹島の日」を考え直す集会

「領土ナショナリズム」批判を

「歴史認識」の重要性を確認


「本邦とは関係
ない」との判断
 三月二〇日、東京・大崎の南部労政会館で「『竹島の日』を考え直す集会――『固有の領土』論に根拠はあるのか」が開催された。同集会実行委員会、「竹島の日」を考え直す会が共催し、協賛は「独島財団」。この集会は、昨年九月一〇日に開催された集会(本紙昨年一〇月三日号参照)を引き継ぐものであり、これからも東京での活動を着実に積み重ねていくことが確認されている。集会には在日韓国人の方々をふくめて四〇人が集まった。
 集会実行委員会の仲間は、安倍政権による学習指導要領の改訂によって「北方領土」とともに「竹島」、「尖閣」を「固有の領土」とする排外主義的ナショナリズムに貫かれた「領土教育」が強制されることに反対し、侵略戦争による領土併合を正当化する歴史認識に反対しようと呼びかけた。
 講演は日本と韓国の三人から行われた。一人目は元大阪樟蔭女子大教員の黒田伊彦さん。黒田さんは「『隠州視聴合紀』と竹島・独島の日本固有領土論をめぐって」と題して講演。
 「隠州視聴合紀」とは一六六七(寛文七)年に幕府の天領の郡代として松江藩に派遣された斉藤豊仙がまとめたもので「松島」(現在の竹島)を初めて記録にのこしたものとされている。
 日本政府は、斉藤の報告の中で「松島(現竹島)・竹島(現鬱陵島)が言及されている」として、当時、江戸幕府が現在の竹島を日本の領域と見なしていた証拠としているが、しかし斉藤は「隠岐島が本邦の北西の太陽が沈む極地」と書いていること、一六九三年の「元禄竹島一件」で竹島(現在の鬱陵島)が因幡、伯耆には属さないことが宣せられ、鬱陵島への途上にあった松島(現竹島)も放棄されたのが真実である。
 また明治政府も一八七七(明治一〇)年三月の太政官指令で、「竹島(現鬱陵島)外一島(現竹島)の件については本邦(日本)とは関係ない」と述べていたのである。黒田さんは、戦後日本の「外交青書」における「固有の領土」の英文表記の変遷についても指摘しながら、排除と差別を正当化しない立場を貫くことの重要性を訴えた。

古地図が示す
日本政府の嘘
「独島財団」の金秀姫さんは「朝鮮時代、鬱陵島・独島へ渡った朝鮮漁民の独島認知と日本固有領土論を否定する」と題して講演。金さんは、朝鮮王朝時代、一七〜一八世紀から二〇〇年にわたって全羅道の島嶼民たちが「独島」の見える地域で漁業に従事していたこと、一九〇〇年の大韓帝国勅令四一号で領有権を再確認した「ドルソム」の漢字表記「石島」は「独島」に他ならないことを指摘した(「独」と「石」は同音)。
最後に久保井規夫さん(元桃山学院大学教員)は、「資料が明晰にする竹島・尖閣諸島の領有権――外務省見解・検定教科書の『固有の領土論』は歴史の改竄である」と題して報告。時間の関係で「尖閣諸島」問題については詳しく論じる余裕はなかったが、会場に私財を投じて蒐集した多くの古地図を展覧し、とりわけ長久保赤水「日本輿地路程全図」正規版を示しながら、江戸幕府の老中によって竹島・松島(現在の鬱陵島と竹島=独島)が朝鮮領と裁定された事実を、長久保の地図が反映していることを示した。
今回の報告は、安倍政権が新学習指導要領で「領土教育」と排外主義的ナショナリズムを強化しようとしている時、それに正面から立ち向かうことの必要性を改めて提示した、と言えるだろう。      (K)

   


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