「森友学園」問題─本質はなにか?
3.11「瑞穂の国小学院問題」を考える
隠された経過から浮上するもの
木村豊中市議が報告、菅野完氏講演
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【大阪】瑞穂の国小学院問題を考える会主催の集会が三月一一日、豊中市立文化芸術センターで開かれ、二〇〇人の市民が参加した。会場の関係で、相当数の人が入れなかったようだ。
提訴した豊中
市議が経過報告
はじめに、この問題を最初に取り上げ広めた豊中市会議員の木村真さんが報告した。
「この小学院の国有地(八七七〇平方メートル)は三〇年ぐらい前は住宅密集地だったが、大阪空港を離発着する飛行機の騒音対策として区画整理がすすめられてきた。道を挟んで片方の国有地(九五〇〇平方メートル)は豊中市が二〇一〇年に一四億二三〇〇万円で購入し公園になっている。市は国に、道を挟んだ両側の無償貸与を申し込んだが断られた。当時は財政非常事態だったので、片方しか購入できなかった」。
「もう片方はどう使われるか気になっていた。しばらくして、現場に行ってみた。生徒募集のポスターが貼ってあった。神社の秋祭り風のもので、教育勅語や神社の鳥居も載っていた。塚本幼稚園のものだった。右翼カルト学園だと思った」。
「そこで、登記を調べてみたら、所有者は運輸省で、貸しているということが分かった。二〇一六年六月、貸し付け契約書を情報公開請求したら、黒塗りのものが出てきた。追及しなければいけないと思った」。
「その後このもう片方の土地は、二〇一三年近畿財務局が売却先を公募し、公共随意契約で一六年六月に学校法人森友学園に売却された。情報公開請求すると、売買契約書も黒塗り金額も黒塗りだった。国有地売却は「原則公表」とされるが、金額非公開の理由は森友学園側からの要請によるものだとされた。森友学園に契約違反があった場合は、国が一億三四〇〇万円で買い戻す特約がついていた。つまり、その金額で国が売却したということだ」。
「マスコミに情報提供したが、記事にはならなかった。そこで、今年一月八日非公表と財務局の決定取り消しを求めて大阪地裁に提訴した。この提訴によって、朝日新聞も積極的になり、共産党や民進党も追及してくれるようになった。昨日(三月一〇日)、籠池理事長は、学校建設の申請を取り下げたが、安倍昭恵や松井知事の関与など何も分かっていない中での幕引きは許されない」。
国の責任こそ
問うべきだ!
次に、『日本会議の研究』の著者で「森友学園」問題の取材を行ってきた菅野完さんが講演した。(講演要旨別掲) 刑事告発について大川弁護士から説明があった。刑事告発の告発人には豊中市民でなくてもなれるので、告発人を募っていくこと、敵は籠池ではないこと、八億円のダンピングについての国の責任を問うとの話があった。最後に再び菅野さんが発言、「日本会議の運動の特徴は、メディアに組織的に抗議電話を集中するやり方だ。これにメディアは弱い。その最初の例が、NHKの番組改編問題だった。ここにいるみなさんは、いい番組には励ましの葉書を出してほしい」と述べた。(T・T)
菅野完さんの講演から
問題の核心はどこに?
「女・こどもは黙れ」の論理
木村さんカッコよすぎる。アリの一穴どころか、国家権力の中枢を揺るがしている。これからの話で、籠池オッサン・オバハンという言い方をあえてする。この問題の核心は三つある。
@ まず土地の問題。九億円がなぜ八億円値引きされたのか。なぜ借地から売却になったのか。この土地をすぐ近くの大阪音大も七億円でほしいと言っていたのに、売らなかったのはなぜか。
A 二〇一四年一二月の定例会の時点で大阪府の私学審議会メンバーのほとんどは、教員の人数や財務上の問題を考えると学校運営はできるはずがないと懐疑的だった。ところが、翌一五年一月急遽臨時の審議会が開かれ、学校建設の認可相当となった。これはなぜか。
B 森友学園自体のあやうさ。君が代や教育勅語のことも大きな問題だが、それ以前のこととして、教育基本法の下での政治活動(例、「安保法制国会通過よかったです」)、ヘイトスピーチの垂れ流し、児童虐待の問題がある。このようにいうと、新左翼は「菅野は問題を矮小化する」と批判するが、そうは思わない。今マスコミでは、土地のことから私学審議会のこと、そして学園のことという順に問題が報じられてきたが、その逆で、学園の問題から私学審、そして土地のことという順に見ていくとよく分かる。
証拠はなかった
が深い闇が……
なぜ大阪音大には売らなかったのか。登記簿が触られていたふしがある。所有権が運輸省から民間の関西エアポートに移り、この部分が削除されている。議事録を見ると近畿財務局と大阪府が繰り返し繰り返しやりとりをしていたことがわかるが、突然事態がダダダーッと進んだ。誰かが調整したとしか思えない。
具体的に裏が取れていない段階でこれにふれると、すぐ反撃される(橋下徹はツイッターでそのように言っていた)。でも、近畿財務局と業者が、一億円にするにはどういうやり方があるのかを相談して決めたとしかいいようがない。議事録を読むと、近畿財務局と森友と航空局が何度も話をしている。ゴミの除去費の積算は経験のない航空局がやっている。
不認可から、
突然、認可相当
なぜ定借ではなく売買になったのか。このような例は今までで初めてだそうだ。法律はクリアしているが。籠池のオッサンが辞任するだけでは七つの疑問が一つも解決しない。
昨日、理事長退任の会見で最初に何を言ったか、覚えていますか。規制緩和(学校建設申請の基準の緩和)から五年になるといった。手続き上は問題はない。規制緩和についてのパブリックコメントを募集し、籠池だけがコメントを出し、その通りに規制緩和された。これは便宜供与ではないのか。私学審議会の中では不認可だったのに、一カ月も経たぬ間に認可相当となる。分からない。国会招致するなら、大阪府の私学課の課長を呼んだらいい。いろいろのことを知っていると思う。
園児に託して
改憲署名集め
森友の問題。幼稚園児の運動会での宣誓のDVDは私が流した。しかし、森友の問題はあれだけではない。朝日新聞に広告を出している会社に抗議の葉書を出すように、園児の親に依頼していた。NHKの籾井会長を辞めさせようという運動が起きると、その運動を止めさせるような署名運動をやる。
差別発言もすごい。籠池のオバハンは自分のやり方に疑問を持つ園児の親には、「あんたが支那人だからだ」といって批判する。PTA新聞に「よこしまなシナ人、韓国人」と平気で書く。「シナ人韓国人は嫌いです、あなたも日本に嫁いできたら日本のやり方に染まってもらわなアカン」などと書く。
多様性を全く認めない。園児に殴る蹴るの暴力をふるう。風邪を引いてノロウイルスに感染し、食べたものを戻した園児の親に、連れて帰ってくれという。その子が、家に帰ってからまた戻したとき、右手を挙げてゴメンナサイといいながら戻すので、初めて母親が気づいた。
日本会議は改憲の署名運動をやっている。籠池理事長の名前を入れたその用紙を園児に持って帰らせて、書いて持ってくるとほめる。そのようなことを園としてやっている。新聞に気になる記事が載ったりすると、そのコピーを印刷して持って帰らせる。その裏に、園の行事日程などを書いているので、幸いに資料として残った。
むちゃくちゃだ。どう考えてもおかしい人たちに、国有地を安く売っている。特別待遇で便宜をはかる。籠池のオッサンは、あちこちで「このような学校は行政もつくらねばといっている」と言って回っている。
日本会議のイデ
オロギー的核
この事件は、オッサンがポイントだ。昨日の会見の動画見たでしょう。野党議員は調子に乗りすぎていると、名前を出していった。辻元清美、田嶋陽子……。オバハンは、「夫が戦闘機で自分は航空母艦だ」という。女は夫の後ろからついていくものという考えだ。日本の右傾化は、天皇とか伊勢神宮、日の丸ではなく、安倍首相ガンバレだ。道具は戦前のものを使うが、オッサンらにとっては親学や女性軽視、食育がはやりだ。
安倍昭恵が塚本幼稚園に来たのも親学講座だった。親学では、子どもの発達障害は婚前交渉のせいだとする。日本会議コアーのメンバーは偉大な三流(八木秀次・高橋史郎ら)ばっかりだ。だから、サンケイと『正論』で宣伝する。彼らは、全国を回りながら、塚本幼稚園 などを見つける、ここなら大丈夫だと。「そこまで言って委員会」も三流ばっかりだ。籠池のオッサンは、昨日の会見でも日本教育再生機構のことを知らなかった。大阪の日本会議は傍流だ。フジ住宅然り。
左翼批判する彼らは、同時にアンチフェミニズムだ。日本会議の目標には五つ柱はあるが、慰安婦、子どもの権利、夫婦別姓、男女共同参画などに対する反対がポイント。日本会議は日本のオッサン会議だ。このようないびつな人間観、女性観が今の右傾化の本質。日の君や天皇制ではなく、女・子どもは黙ってろ!だ。
この傾向をより普遍化すると塚本幼稚園になってしまう。この学校の設立を認めることは、いびつな人間観を認めてしまうことになる。籠池夫妻は私たちを写す鏡だ。国や天皇制のことも問題にしなければならないが、子どもはこのいびつな人間観・女性観の犠牲者なのだ。ここと対決せずして先に進むことはできない。(講演要旨、文責編集部)
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