池田五律さん(有事立法・治安弾圧を許すな!北部集会実)
に聞く E
「武器の支援」はありうるか
|
「正義の戦争」を否定
――南スーダンへの憲法違反の自衛隊派遣に反対するのは当然です。では、内戦を終わらせるためにどうしたらいいのか。アフリカ機構ではアフリカ軍を派遣しています。日本の運動のあり方は「一国平和主義」ではないかという批判もあります。例えば、シリア内戦でクルド民族の人たちが武器支援をヨーロッパの仲間たちに呼びかけました。ヨーロッパのクルド人や一部の左翼は、シリア革命推進のために、「クルド武器支援」に応えようと運動を起こしました。もちろん、こうした紛争に関わるNGOの人たちからは、「軍事よりも、民生支援を」という声もあります。どうお考えですか。
僕はカンボジアPKOに反対する運動の中で、考えが大きく変わりました。以前は、ノンセクトの学生運動で黒いヘルメットかぶってぶつかっていたわけですから、暴力を否定しない立場だった。ソ連×、アメリカ×、だけどもニカラグア革命万歳みたいな、すごい図式的なイメージ。でも、カンボジアPKOに反対する時に、正義の戦争、正義の暴力って何だろうと、真剣に考えさせられた。福富節夫さんなんかとのお付き合いや反天連のからみで逆に九条に対するこだわり、絶対平和主義的なこだわりを発見していった。
ヘルメットをかぶっている過激な若者から、どちらかというと絶対平和主義にカンボジアPKO派兵反対を通して変わっていったので、「武力で平和を作れない」というあの時のスローガンは正しいと思う。ましてや武器を援助するというのは考えられない。
軍隊で平和はつくれない
――日本だからということ?
原理的に。それともっと何かができるというよりも、無力であることに佇まないといけない。「ああ、悲惨だな、何とかしてあげたい」と思ったとしてもどうしようもない、という現実。それをあれこれで、何とかなるじゃないかというのはおこがましい。アメリカでもあるまいし、コミンテルンでもあるまいし。ましてやルワンダでの虐殺はPKO部隊がいれば食い止められたとか、ビックリする。そもそも「他人のふんどし」ですよね。あるものを使おうって発想です。自分が行って人間の盾になるのだったら分かるけど、「自衛隊があるから使おうじゃないか」なんて上から目線ですよね。そんな上から目線で使えるものかよ、自衛隊という軍事組織をなめているって思ってしまいます。
いろいろ災害派遣とかの活躍とかで入ろうとする隊員もいたりする。だけど、本質はやはり武装組織なんです。戦闘するための組織なんです。どんなに役立ったように見えても、その装備それ自体は対人救出用の装備ではないし、避難所に行って女性隊員が聞くのも、ある意味不審者狩りであったりする。防災訓練見てても、だんだんビッグレスキューの時のように自衛隊が出てこない。ようするに本務ではないんです。「あの時はまだ宣伝が必要だ。もう東日本大震災もあっただろう。自衛隊がありがたいものだと分かっただろう。俺らはそれらに出てこないぜ。自助自給、共助でやってくれよな」という話しです。対テロ訓練だとか国民保護訓練だとか増えています。
この前上野であった対テロ訓練の監視行動に行った。それですらあまり自衛隊が出て来ない。もし本当にテロがあった場合、テロリストを追い詰める作戦をやっているはずです。上野の音楽堂でサリンとかまかれて、うーんと言っている人を助けるのは消防庁なんです。前にはそういう所にも出てきていかにも活躍している演技をしていたけれども、もうそういうことしないんです。
むしろ怖いのは対テロ訓練で上野のいくつかの町内会が小学校に避難するとか。それは本当に大規模テロ待避訓練、待避させたところでテロリストグループせん滅みたいなシミュレーションがちゃんとできている。そういうもんなんですよ、軍隊は。そういう軍隊というものを海外での人道的なことに使えると思う発想自身が、軍隊なめている。軍隊なめたらあかん?
もともとなぜ海外派兵させたいかというと日本が経済大国化して、日本企業が海外進出して、その権益を守りたいからじゃないですか。邦人救出はそれがあるからじゃないですか。日揮人質事件で明らかじゃないですか。何でみんな高校では日本史の時間でも山東出兵とか習うのに、邦人救出を理由とした派兵の拡大に反対の声を強く言わないのか。邦人救出ほど危ないものはない。あれなんか邦人なんか守りゃしないですよ。邦人救出を理由として、海外権益を守りにいって、人殺しをするんだから。海外に出していけないにきまっているんじゃないですか。
ソマリアPKOの失敗
PKOというイメージも、すごく素朴に旧来型のPKOのイメージの人が多い。PKO自身は冷戦が終わって大きく変わった。ソマリア型のPKOになって、平和強制型のPKOをやろう。それで今までは非同盟諸国中心、大国を巻き込まないようにやったから中小国中心だったのを、平和を強制するには大国の軍隊が行かなくちゃいけないということで、アメリカ軍とかNATOが入る。ソマリアPKOで大国が入って平和を強制する。即ち、「フェイルドステイツ、失敗国家だ。俺たちが入っていって再建してやるよ」という話。それは、植民地支配者の「『野蛮』な現地人には統治なんてできないだろう。俺らが入って行って統治してやるよ」という論理と同じ。そういうこと自体が、どんな思想の人であれ、右であれ左であれ、原理主義者であれ、原理主義者でなかれ、現地の人たちから、反発を生むんですよ。
だから、ブッシュパパ末期からクリントンにかけてソマリアのPKOは破綻し、アメリカ兵自身が殺されることがあって撤収した。ガリ国連事務総長時代の平和強制型のPKOは挫折した。その次に、今後のPKOをどうするかという議論があるなかで、出てきたものが戦闘は多国籍軍にやってもらいましょう、終わった後で人道復興支援とかで行きましょうといったものだった。
そういう議論があるなかで、アフガニスタン戦争があり、イラク戦争があった。PKOを発展させようと思っていた人とは全然筋違いの方から起こった事態だったかもしれないが、ある種その人たちが言っていたようなものになった。
しかも次のような総括も出されています。戦闘終了と人道復興支援開始の間にタイムラグがあったから反米勢力とかが跋扈したんだだから、戦闘が終わったらシームレスに人道復興にPKOは行くようにすればいい。一応サマワの自衛隊派遣はPKO派兵。戦闘は終わった、国連の暫定組織ができた。それで行った。そうしたタイムラグがあるからダメだったというのです。それから導かれるのは、アメリカやイギリス軍が通り過ぎた翌日には自衛隊が行けるようになったら、反対勢力はできなかっただろうといったこと。
対テロ戦争といった時に、アフガニスタンやイラクなど米軍が中心になるやつばっかり目につくんだけど、アフリカの場合だったらイラク戦争に反対したフランスもバシバシやってるわけですね。旧宗主国の意地かけて、アメリカなんか入ってくるな、俺がやると。ニジェールなんかに介入しているのがフランスです。
南スーダンはスーダンから独立したわけです。スーダンはならずもの国家でレッテルを張られている所。バシル政権は元祖原理主義政権。南スーダンPKOが対テロ戦争と無関係ではありえないわけです。さかのぼれば、PKO派兵は日本が常任理事国になりたいから、人も出して自衛隊員が多少死んでも常任理事国入りしたいというわけの分からない話だ。だから、行かせるな。
沖縄だけではない!
――最後に読者に言いたいことは。
一番言いたいことは米軍・自衛隊再編は沖縄のことだけではなくて、首都圏でも着々と進められている。横田への米空軍の特殊部隊がオスプレイを伴ってやって来る。それから木更津は今のところは沖縄の海兵隊のオスプレイと佐賀に配備されるであろう自衛隊のオスプレイの修理工場。木更津は自衛隊のもやるんです。よく、広島の人が広島湾を見てくださいと言います。呉があって岩国がある。東京湾を見てください。木更津があって横須賀があって厚木があって横田がある。そう意味では東京湾周辺は日米の大軍事基地集約地です。東京湾の上をオスプレイがぶんぶん飛ぶことになる。
キーワードは統合運用力強化なんです。だから陸上自衛隊が総隊になるということは陸海空の自衛隊が統合機動運用をしやすくなるということだ。イコール米軍とも統合機動運用しやすくなる。離島対処と言いつつやっているそれは、さらに米軍と共に海外にまで行く訓練にもつながっている。だから、首都圏での米軍・自衛隊再編にきちっといっしょに反対していきましょう。 (おわり)
3.18
イラク開戦14年
とめよう戦争への道
2017関西のつどい
【大阪】とめよう!戦争への道二〇一七関西のつどいが三月一八日、エルおおさかのシアターホールで開かれ、八〇〇人の労働者・市民が参加した。大阪平和人権センター・しないさせない戦争協力関西ネットワーク・戦争させない一〇〇〇人委員会大阪が主催した。
開会あいさつに続いて、半田滋さん(東京新聞論説委員兼編集委員)が、「南スーダンPKOの問題点とトランプ政権で変わる日米同盟」と題して講演をした。
次に、安次冨浩さん(辺野古ヘリ基地反対協共同代表)が特別報告で、辺野古新基地建設を許さない名護現地からの訴えを行った。
いま、辺野古の海では工事が再開されている。海上には突起のついたブイが並んでいて、中には入れないようにしている。大浦湾に大型のボウリング調査船が来ている。おそらく、辺野古の海は彼らの予想を超えて複雑なので、以前にやった調査は参考にならないということなのかもしれない。
伊江島にステルス戦闘機の訓練をするというので、反対する島民の会が結成された。沖縄は、二七年間の植民地の時代に闘いを積み上げ、勝利を勝ち取った。今、沖縄の企業も海兵隊の撤去に賛成だ。翁長知事は珊瑚礁の破砕を認めない。国は、漁業補償しているので認可は不要だと言っているが、四月には埋めたて撤回の訴訟を起こし、工事を止めさせる。知事を支え毎日現場に立つ。沖縄の未来を永田町や霞が関が決める権利はない。非暴力で徹底的に闘う。
共謀罪法案を
絶対に通すな
最後に、「『共謀罪』四度目の廃案」をめざし、永嶋靖久弁護士が決意表明を行った。
「『共謀罪』はテロ等準備罪と名前を変えても同じ。相談しただけで罪となる。万引き、便所の落書き、原発反対、労働組合などの団交の相談だけで、即逮捕される。六七六個の共謀罪を二七七に減らしてもこれらのことはすべて入っている。組織犯罪集団は、相談した段階でつくられる。後でテロ等という言葉を追加したが、テロの定義はない。はじめは、もっと早く閣議決定するはずだったが、自民党の河野太カが「法務局は六七六個の共謀罪は一つも減らせないと言っていたのに、二七七個にしたのはなぜだと追及し、また石破茂が質問をして大幅に遅れた。『共謀罪あかんやろオール大阪』をつくって運動を盛り上げていく」と述べ、今後予定されている行動提起をした。
集会終了後、西梅田までデモ行進した。 (T・T) |