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    かけはし2017.年4月3日号

窮地に追い込まれた安倍を倒せ


籠池の「証人喚問」が浮き彫りにしたもの

今こそ共同の闘いを作り出そう

「想定」を超える事態の展開

 当初「安倍晋三総理大臣記念」と銘打ち、安倍首相夫人の昭恵を名誉校長にして今年四月にも開校予定だった大阪府豊中市の「瑞穂の國記念小学院」問題は、安倍首相本人の政治生命にもかかわる重大なスキャンダルに発展した。言うまでもなく、安倍の名義で、二〇一五年九月に昭恵夫人から一〇〇万円のカンパが渡されたという、「森友学園」理事長・籠池泰典の発言をめぐってである。
三月一六日の参院予算委員会の現地調査の際に、籠池本人からこの話が議員たちに伝えられたことにより、かたくなに籠池の国会での証人喚問を拒否してきた与党も、一転して籠池の証人喚問を三月二三日に受け入れることになった。そこではさらに新しい証言も籠池本人からもたらされた。
二〇一五年五月の定期借地契約後、籠池は国有地の一〇年間定期借地契約期間延長の打診を安倍昭恵の留守電にメッセージとして送った。安倍昭恵の要請に応じて財務省に問い合わせした昭恵付きの政府職員・谷査恵子に、財務省国有財産審理室長の回答が二〇一五年一一月にあり、谷は「現状ではご希望に沿うことはできないようでございますが、引き続き、当方としても見守ってまいりたいと思いますので、何かございましたらご教示ください。なお、本件は昭恵夫人にもすでにご報告させていただいております」という回答の内容をファックスで籠池に送った。
これは明らかに、安倍昭恵が籠池の意を受けて財務省側に「問い合わせ」という圧力を行使し、財務省側に首相夫人の意向を「忖度」させようとしたことをうかがわせるものではないのか。安倍首相は、財務省側による回答が、籠池の要求を認めるものではなかったことをもって、ここには「忖度」の力学が働かなかったと強弁している。
その後の展開を見てみよう。これ以後、籠池の言う「神風」が吹いたのである。二〇一六年三月には、用地内に「新しいゴミ」が見つかったと財務省に連絡が入った。同四月には、ゴミ撤去・除去のための「有益費」一億三二〇〇万円が学園側に支払われた。同六月には国交省大阪航空局が売却の際、土地の鑑定額九億五六〇〇万円から八億円以上を削減して売却額を一億三四〇〇万円とした。お分かりであろう。
籠池側が実質的に負担した土地代金は一億三四〇〇万円マイナス一億三二〇〇万円(森友学園に支払われたゴミ処理費用としての「有益費」)イコール二〇〇万円だったのである。
「私や妻が、(国有地売却や学校認可に)関係していたことになれば首相も国会議員も辞める」と二月一七日の衆院予算委会で豪語していた安倍は、自らの想定を超えた事態の展開に浮き足立っている。
安倍政権と自民党は、「教育勅語」を幼稚園の児童に暗唱させ、中国や韓国・北朝鮮の人びとを罵ることに何のためらいも見せない、極右レイシストたちを自らの支持者として破格の扱いをしてきたことのツケを支払わされようとしているのだ。

国有地叩き売りのプロセス


ここで改めて年表にして事態の経過を時系列的に見ておこう。
?二〇一二年 豊中市の国有地を大阪音大が七億円で購入意向。しかし価格の面で折り合わず。
?同年一二月 総選挙で自民党大勝。第二次安倍内閣成立。
?二〇一三年八月〜森友学園、鴻池元防災相事務所に接近し当該国有地の取得を希望
?二〇一四年四月 鴻池事務所に豊中市の同国有地取得の陳情(賃貸料をまけてほしいという要求も)
?同年一〇月 森友学園、小学校設置認可申請
?同年一二月、安倍昭恵、塚本幼稚園で講演
?二〇一五年一月 大阪私学審定例理事会で森友学園による小学校設置許可申請に条件付き認可適当の判断
?同年二月一〇日 財務省国有財産近畿地方審議会、国有地を学園に貸すことを適当と答申
?同年五月 森友学園、国(近畿財務局)との間で土地の定期借地契約(土地購入を前提)、籠池から安倍昭恵宛留守電に、定期借地期間延長打診のメッセージ
?同年九月四日 財務省近畿財務局と森友側の打ち合わせ
?同年九月五日 安倍昭恵、名誉校長に就任、安倍から「一〇〇万円の寄付」・塚本幼稚園で講演。
?同年一一月 前掲安倍昭恵付政府職員から、籠池への「希望に添えない」とのファックス
?二〇一六年三月 森友側、「新しいゴミの発見」を通告。
?同年四月 ゴミ撤去・除染のための「有益費」一億三二〇〇万円を国が学園側に支払い
?同年六月 国交省大阪航空局が、「森友」側に売却する際、土地の鑑定額九億五六〇〇万円から約八億円を削減
?二〇一七年二月 国会での安倍答弁「理事長の籠池氏は、私の考え方に共鳴されている方」「妻から森友学園の先生の教育への情熱は素晴らしいと聞いている……」

「規制緩和」と天皇制国家主義

 このような経過を見た時、今回の「森友学園」問題は、私立学校の新規開設をめぐる大幅な規制緩和と、「教育勅語」の暗唱に示される極右排外主義・国家主義が結びついた安倍自民党や「大阪維新」の政治が必然的に作りだした政治的スキャンダルであることがきわめて明確である。
「教育勅語」と「カジノの合法化」。これは安倍自民党と橋本・松井の「維新の会」が作りだそうとする改憲の国家構想において幾重にもからみあっているのである。しかし新自由主義と極右国家主義のからみあいには、言うまでもないことだが矛盾がないわけではない。安倍首相も、自らを押し上げた「教育勅語」礼賛の天皇制的原理主義が、今日の国際政治の場においてストレートに貫徹し得るとは考えてはいない。その際、彼は自らを政権へと押し上げるために利用してきた極右的原理主義を切り捨てることにためらいをみせないのである。
他方われわれは、極右の天皇制原理主義者が、多くの場合典型的な「カネの亡者」であることをも知っている。彼らはそれが自らの金銭的利害になりうる範囲での「愛国者」であり天皇主義者なのである。しかしいま相互に利用しあってきた安倍政権と「瑞穂の國小学院」の極右が、相互に「不倶戴天の敵」であるかのように罵倒し合っている現実をせせら笑ったりしていると大きなしっぺ返しをくらうことになる。こうした対立は、そこに労働者民衆の鮮明な対抗勢力としての登場が伴わないかぎり、全体としての政治のいっそうの極右化がらせん的に深まる事態を作り出してしまうだろう。
だからこそわれわれは「安倍対籠池」といった対立の図式の傍観者としてではなく、このスキャンダル的「どたばた劇」の枠組全体に立ち向かう、反改憲、戦争国家反対の闘いを安倍政権打倒に向けて作りだす必要がある。

国会前で労働者・市民の怒り

 三月二三日、衆参両院予算委員会で籠池への証人喚問が行われた日、戦争させない・憲法九条壊すな!総がかり行動実行委員会は、毎週木曜日の「森友疑惑徹底究明・安倍内閣は退陣せよ 緊急行動」を午後六時半から衆院第二議員会館前で行い、五〇〇人が参加した。
主催者あいさつに立った総がかり行動共同代表の福山真劫さんは、「木村豊中市議や地域の人びとの努力なしでは究明の一歩を踏み出すことはできなかった」と語り、「なぜ国有地が格安で払い下げられたのか。なぜ認可事務が進んだのか。なぜ補助金が下りたのか。解明すべきことは山ほどある。安倍は籠池にすべての罪を押しつけている」と批判した。
「沖縄の風」の伊波洋一参院議員は、山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)の釈放を喜ぶとともに、稲田防衛相への相次ぐ追及によって安倍政権の「化けの皮」が剥がれた、と指摘した。そして「米海兵隊のグアム移転は着実に進んでおり、海兵隊のいなくなる沖縄になぜ基地が必要なのか」と訴えた。
日本共産党の辰巳孝太郎参院議員は「今日の証人喚問で疑惑は深まった。安倍昭恵さん、松井大阪府知事の証人喚問が必要だ」と語った。民進党の杉尾秀哉参院議員は「自民党はこの日の喚問でケリをつけるつもりだったが、逆に火が燃えさかることになってしまった」と評価した。社民党の福島みずほ参院議員も「安倍昭恵さん、松井大阪府知事に加えて迫田前財務省理財局長の喚問を」と述べた、
共謀罪NO!実行委の角田富夫さん、市民連合の諏訪原健さんに続いて発言した小森陽一さん(東大教授)は、「憲法を逸脱して国家を私物化する政治、国民の財産である土地を仲間うちで勝手に売り渡す政治に決別しよう」と訴えた。
総がかり行動は、当面毎週木曜日に午後六時半から「森友疑惑徹底究明」の集会を国会前で行う予定だ。(純)

3.19

総がかり行動実行委

国会前行動に4700人

つぶせ共謀罪、南スーダンから即時撤退を

 三月一九日の日曜日、衆院第二議員会館前をメインステージにした「総がかり行動」(戦争させない・憲法九条を壊すな!総がかり行動実行委)による「一九日行動」が行われた。この日のテーマは「自衛隊は南スーダンから即時撤退、共謀罪反対!」。暖かい日ざしの中で、衆院第二議員会館前から国会図書館の先にまで広がる四七〇〇人が参加した。
安倍政権はついに三月一〇日、五月末をもって南スーダンに派兵された自衛隊の行動を終了させると決定した。南スーダンでは、キール大統領派の政府軍とマシャール副大統領派の反政府派間での内戦が、さらに拡大してきたことは紛れもない事実である。
しかし安倍政権は、「衝突」はあるが「戦闘」はないとの詭弁で現実を隠蔽し続けてきた。そして「戦闘激化」を示す南スーダンPKO派遣自衛隊の「日報」の開示請求に対しても、すでに廃棄したとして、不開示となった。しかし防衛省の説明によれば昨年末に統合幕僚監部内に電子データが残っていた、として、「発見」から一カ月後の今年一月末に、稲田防衛相に報告され、二月一七日に「日報」は公開されることになった。
しかしこの「経過説明」もウソだった。統合幕僚監部内だけではなく、陸自司令部の複数のコンピューターに「廃棄」したはずの「日報」データが残っていたのである。そしてウソの上塗りのために、この陸自内のコンピューターに残されていた「日報」のデータは不開示決定後の二月になってから消去せよとの指示が出された、とされる。この経過は、防衛省・自衛隊の秘密主義・情報隠しが、軍隊という組織の本質に根ざすものであることを明らかにしている。
安倍政権は、このきわめて重大なスキャンダルを隠蔽するために、自衛隊部隊の道路整備などの「任務終了」を理由にして、南スーダンPKO派遣部隊を五月末までに撤収させることにしたのである。

ウソとゴマカシ
だらけの派兵
集会では主催者を代表して筑紫建彦さんが報告。筑紫さんは前日、沖縄の反基地闘争の先頭に立ち、そのために不当逮捕・起訴、長期勾留の弾圧を受けてきた山城博治さんがついに保釈を勝ち取ったことを報告するとともに、南スーダンからの自衛隊PKO撤兵はウソとごまかしに満ちた安倍政権の派兵強行の破綻を示したものである、と訴えた。
安倍政権は、三月二一日にも共謀罪法案を閣議決定し、戦争国家体制と結びついた治安弾圧法制を強行しようとしている。こうした動きを厳しく批判した筑紫さんは、「森友学園」疑惑についても言及し、「愛国心はならず者の最後のよりどころ」というサミュエル・ジョンソン(一八世紀のイギリスの文学者)の至言を紹介した。そして「教育勅語」の暗唱を幼稚園児に強制する教育をほめたたえる安倍首相夫人・昭恵が、公的・私的責任を負っていることを強調した筑紫さんは、彼女もその追及から逃れることはできない、と訴えた。

森友疑獄をも
厳しく糾弾!
国会議員からの発言では、最初に日本共産党副委員長・参院議員の田村智子さん。田村さんは、これまで「森友学園」の籠池泰典理事長の証人喚問を拒否してきた自民党が、「安倍首相を侮辱している」とのご都合主義的理由で証人喚問を認めることになった経過を批判。南スーダンPKO派兵で露わになった防衛省・自衛隊の隠蔽体質を厳しく糾弾した。
民進党から発言した初鹿明博衆院議員は、自衛隊の南スーダンPKOはPKO五原則にあてはまらないものであることを指摘するとともに、「森友」問題の本質を国有地を八億円以上も値引きしたタダ同然価格で売り払った背景がどこにあるのかということだ、と語った。
社民党副代表・参院議員の福島みずほさんは、他の野党議員とともに籠池宅を訪れたことを報告し、「森友」問題の責任が財務省、大阪府、大阪市にあると語るとともに、安倍夫妻と密接な関係にある加計学園が、愛媛県今治市に設立する獣医科大学のために時価三七億円の市有地を無償譲渡する疑惑についても追及すべき、と訴えた。
共謀罪NO!実行委から海渡雄一さん、日弁連の山岸良太副会長が、世論をさらに盛り上げ共謀罪を四たび廃案にしよう、と訴えたのに続き、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックからは山城博治沖縄平和運動センター議長の保釈が報告されるとともに、山城さんの長期勾留問題はアムネスティー・インターナショナルでも取り上げられ、国際的な動きになっていることを指摘した。そして、辺野古基地建設強行のために一二八トンものブロックが投げ込まれている状況への抗議・工事停止の運動を盛り上げようと訴えた。
避難の共同センターからは、福島原発事故被災者への帰還強制、支援打ち切りをやめさせようとのアピールが行われた。
課題は山積している。一つ一つの運動を共有し、相互に連携しながら、安倍政権打倒への大きな流れを作り出そう。五・三憲法集会を成功させよう。  (K)



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