3.8
ウィメンズ・マーチに参加して
一人ひとりの思いを受け止め
自分の権利を実現するために
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国際女性デーの
歩みを引き継ぎ
三月八日、東京渋谷にて、ウィメンズ・マーチのデモ行動と集会が行われた。ウィメンズ・マーチは女性を中心とした権利獲得のための世界各地での行動で、現在アメリカを支配するトランプ政権による有形無形の人権侵害への抗議行動に始まり、女性やLGBTQの人々やマイノリティを中心に取り組まれている。今回のアメリカ人民の行動を受け、日本でも有志の人々がアメリカ人民の行動と理念に賛同、連帯し、継続的に活動をしている。
毎年三月八日に一〇〇年以上前より行われている国際女性デーでは今年は「女性がいない日」の呼び掛けもなされた。「有給の仕事も無給の仕事もやめよう。お金を使わないようにしよう。赤い色の服を着て、団結を示そう」、未だに男性中心の価値観が根深く、性による職業差別や家事労働などシャドーワークが蔓延する現代社会が、女性が「課せられた役割」を拒否したらどうなるか、と批判と問題提起がなされている。赤色の服を着用する呼び掛けは当日、行動に参加できない人々も連帯と行動の意思を示すためにSNSでもなされ、賛同の拡散がされている。
当日は世界各地で抑圧への抗議と権利獲得のための共同行動が行われ、日本では駅前でのセックスワーカーの人々による主体的な問題提起、東京渋谷の当行動はじめ社会で行動が行われた。
思い思いの自作
プラカード掲げ
三月八日は午後五時半に渋谷の東京ウィメンズプラザに集合し渋谷、表参道、原宿の周辺をデモ行動した。事前にSNSで呼び掛けられたように赤色の服装で来た人、思い思いの自作のプラカードを持ち寄る人々が集合した。特に印象的なことは、デモ参加者の会話の中で英語をはじめ日本語以外の言語でされている人が多かったことである。言語や文化背景を問わず政治的行動を共同していくことはごく自然なことであるが、日本の社会運動で言語と文化の多様性と共存が考えられているか突き付けられた思いだった。「国民」という言葉が幅をきかせている現状は、性別とアイデンティティへの不寛容と共に、文化と国籍の問題も、価値観の多様性と共存のために考えねばならないのではないか。
デモ行動は一時間かけて行われた。沿道の人々の関心は高く、掲げられているシュプレヒコールに耳を傾けプラカードのメッセージに目を通す人が多くいた。特に二〇代や三〇代と見られる人々の関心が高く、その関心の高さは同時に社会において性差別問題を身近に受け止め考える人が多い状況をあらわしているのかもしれない。
安倍の「女性活
躍社会」とは
デモ行動の後に出発地点の東京ウィメンズプラザに戻り集会が行われた。ウィメンズ・マーチに賛同した三四の団体のうち、九団体が登壇して問題提起を行った。労働問題や自己決定権ど様々な分野からの問題提起をされており、性差別は様々な社会の因習と密接に関わる差別と因習の総体なのであり、当事者一人一人の問題意識と向き合わねばならないと思う。
二四条をかえさせないキャンペーンからの参加者は、自民党の復古的改憲案における個人の位置付けの軽視を批判した。自民党改憲案は家族を基礎的単位と認識している側面を指摘した。家族を「敬え」という圧力と女性の「活躍」を訴える政府の方針は、「活躍しろ、だが分をわきまえろ」という考えが表れている、個人の尊厳を奪いイエ制度を肯定し復活を認める改憲の動きを許すな、と呼び掛けた。同時に社会で選択的夫婦別姓の必要性を訴えた。
働く女性の全国センターから参加した人は労働条件が、個人の時間と自由を奪い心身に負担を課す長時間労働か、雇用をする企業の都合で働いても生計をたてられない短時間の押し付け「こまぎれ労働」のいずれかを余儀なくされている現状を報告した。
「活躍」ではない、「活用」の有り様であり、働く時間を選ぶ権利が必要な旨を訴えた。現代社会が女性に課しているものは「産めよ、増やせよ、働けよ」なのか、との言葉は重い。
SOSHIREN女(わたし)のからだから、からの参加者は優勢保護法改悪阻止の連絡会の活動と以後の取り組みを交えて、優性学の否定と産む産まないを決める権利を訴えた。反動的因習と労働力確保という生産力至上主義の結合が、女性の意思、健康状態、環境を無視する人権侵害をもたらしていることを指摘した。同時に「不要な子孫の出生防止」のために強制的に産む権利を奪ったこと、当事者の人々による訴訟に対しても「当時は合法だったから」と居直る司法を強く批判した。
自己回復と自己
実現のために
次に登壇した人はシェルターネットから参加した。シェルターネットは「結婚生活」や「恋愛」における相談や暴力から身と心をまもる場所を確保する活動を二〇年継続している。あらゆる暴力をなくしていかねばならないこと、原発による環境への暴力や戦争を含めて許さず、一人一人が生き延びられる、生きていける社会の実現を訴えた。
明日少女隊から参加した人は、自身の経験、拉致をされた経験を語った。警察に相談したが直ぐに対応をせず、三カ月間にもわたりたらい回しにされ、警察が対応して加害者が逮捕されるまで、同様のつらい経験をした女性が何人もいたと語った。社会全般の性犯罪の軽視が被害と苦しみを拡大させている表れではないか。自身の経験をもとに、悩むすべての人へむけて「あなたは何も悪くないと伝えたい」と語りかけた。現在、体験を基にした映画の製作と、性暴力に反対し刑法を変えるビリーブキャンペーンの活動をしている。
ハラスメントを中心に様々な労働相談の活動をするパープルユニオンから参加した人は自身の体験を語られ、他者へ相談することの難しさ、ハードルの高さをのべた。出口のないトンネルを行くような不安の中、悩みを打ち明けるには勇気と決断が必要なことを語った。セクシャルハラスメントの問題が一人一人の問題であり、同時に社会のすべての人々、世界的な問題であり、被害者への保障と支援を国をはじめ広く行う必要性を訴えた。
登壇した人々の告発は、なぜ被害を受けた人の側が悩んだ上に発言せねばならなかったのか、社会はなぜ告発を受けるまで気付けなかったのか、今、受け止められているのか、参加した私自身を含め突き付けたのではないか。
問題提起の共有
と具体化めざし
続いて会場からの発言と問題提起がなされた。すべての人が自身を含め個人を大切にできる誰も犠牲にならない社会を訴えた人、派遣労働を一七年強いられている現状を訴え、命をにぎるなと政府の無責任な労働政策を糾弾した人、会場の発言者一人一人から語られた言葉は重かった。個人の問題は政治全般の問題、あなたは一人ではない、会場で共有された一つ一つの問題提起は会場の中にとどめてはならず日々の生活で再度提起していかねばならない。
集会終了後に会場の入り口でセックスワーカーの人々による活動が行われ、当事者から語られた訴えと丁寧に告発を手書きされたビラを配布する活動が取り組まれていた。ウィメンズ・マーチの集会に参加した人の積極的にお話を伺う姿が多くみられた。セックスワーカーの人々の現状、当事者の立場と権利の向上を当事者に負わせず、より多くの人々の間で考えねばならない問題だと思う。
一人ひとりが
主体となって
今回の行動では参加者が個人の権利獲得の主体が解放されるべき個人自身であること、悩みを共有し解決していく連帯の規模が国際的であることを、参加者の間で共通の認識となっていた。日本もさることながら世界各国でエスノセントリズムや排外主義が広がり、右翼が台頭している。極右勢力に対抗する勢力さえも右派であり、個人に内向きの意識や他者を傷付ける偏見が浸透してしまっている時代でもある。その時代に幅広い文化的背景や世代を問わず共に歩もうとする動き、参加した二〇代や三〇代の人々による新たな国際主義の台頭は現在の情勢を打開する力にもなり得る。
歴史をさかのぼるとウィメンズ・マーチの行われた丁度一〇〇年前、一九一七年の三月八日の国際女性デーは第一次大戦の影響がのこり愛国主義が各国の世論に蔓延していた厳しい時代だったが、世界各地の女性が立ち上がった。その時のロシア帝国内の女性の闘いは人民の中へ広がり、三〇〇年続いた巨大な帝国を倒したのである。当時のロシア帝国が弱体化していた点を鑑みても、権利の獲得を求める個人の行動と同意して連帯する人々の意思と行動が圧政と権力を乗り越えた実績は、今後も共有されていくべき人民の側の財産だろう。
当事者の行動と連帯が抑圧される人々の解放に繋がること、その一歩となる行動をする人がこの瞬間に世界にいること、行動の主体として一人一人が立ち上がることが大事だと教えて頂けた一日だった。 (S)
3.13
サウジはイエメン空爆をやめろ!
安倍・サルマン会談に
NAJATが抗議行動
三月一三日午後六時一五分から首相官邸前で「サウジアラビアはイエメン空爆をやめろ!戦争犯罪に手を貸す安倍・サルマン会談に抗議する行動」が 武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)の呼びかけによって行われた。
三月一二日、サウジアラビア・サルマン国王が王族一行一四〇〇人を引き連れて国賓として来日した。一三日午後六時から首相官邸で行われた安倍・サルマン会談に対して抗議行動が取り組まれた。
最初に杉原浩司さん(武器輸出反対ネットワーク)がサウジアラビアによるイエメン空爆や人権侵害を批判した。
「サウジアラビアは公開処刑を続け、宗教警察が監視する世界有数の人権侵害国家である。英米仏などから輸入した高額武器で、中東の最貧国である隣国イエメンを無差別空爆し、戦争犯罪を継続中だ。民間人や子どもが爆撃で殺され、多くの人々が飢餓を含む人道危機にさらされている。サルマン国王を戦争犯罪人として逮捕し、国際刑事裁判所に訴追すべきだ」。
「昨年九月、イエメン空爆を指揮するムハンマド副皇太子兼国防相が来日した際、稲田防衛相はサウジアラビアとの武器開発協力で合意した。今回、経済協力に加えて、日本大使館に駐在武官を置くなど、さらなる軍事協力が合意されようとしている。日本は武器輸出をやめろ」。
「今回の安倍・サルマン会談は、サウジアラビアによる戦争犯罪、人権犯罪を追認するものに他ならない。この恥ずべき安倍・サルマン会談に抗議する」。
その後、参加した仲間たちが次々にサウジのイエメン爆撃し、日本政府の支援・軍事協力に反対するスピーチを行った。 (M)
コラム
モノを言う資格
市民運動圏で人気の東京新聞が、東京本社社前で抗議を受けている。MXテレビ「ニュース女子」問題で、である。
同局は今年一月二日、番組で沖縄県高江の米軍ヘリパッド建設反対運動を取りあげた。その際に「のりこえねっと」と辛珠玉共同代表を名指しで非難。「反対派は雇われて日当をもらっている」「テロリストみたい」などと悪質なデマを垂れ流した。
この放送について東京新聞は、一月二〇日付「こちら特報部」で詳しく取りあげて批判。実際に現地を訪れた市民特派員の証言で、「日当」とされる五万円ではとても足りないこと、機動隊による反対派へのなりふり構わぬ暴力を生々しく伝えた。後半では市民有志によるMXへの抗議行動とBPO(放送倫理・番組向上機構)の対応などを写真入りで載せた。
ところが、デマ番組の司会を務めていたのが、同紙論説副主幹の長谷川幸洋だった。読者部には、二五〇件を超える電話やファクス、メールが届いたという。あわてた同紙は二月二日付の一面で「深く反省」と題する論説主幹のコメントと、発言面では読者部長名で「お詫び」文を掲載した。
私は数年前まで、社会の最底辺で生きる低賃金の労働者や被差別民こそ、自らの窮状を訴えて立ち上がるものと信じ込んでいた。ところがその見かたは間違っていた。むしろ逆だった。生活に余裕のある中間層が、搾取され抑圧された人々のために闘う。貧しい農村出身の警察官が、「スネかじり学生運動」への妬みを転向強要に使うのには、それなりの根拠があった。それは今回のデマ報道に通底する心理でもある。
社会運動に参加する「資格」とは何か。個人の出自や経済的条件が問われるのか。報酬を得ることはいけないのか。芸能人や文化人、元公務員。家や十分な資産、年金を受け取る人々。薄給のなかから交通費を捻出し、遠方の闘争にも駆けつける人。関わり方は人それぞれ、干渉される筋合いのものではない。
一方で、大手メディアから貴重な人材が排除されようとしている。たとえばTBSの「報道特集」。金平茂紀キャスターの降板が囁かれている。通り一遍の官制報道とは一線を画し、マイノリティーの課題を追い続けてきた人物だ。SNSが普及しても、既存のテレビや新聞の影響力には及ばない。社会の地殻変動の契機になるのは、商業ジャーナリズムをも巻き込んだ、地を這うような継続的取り組みだろう。時として相互に利用し、応援し合うべきではないか。
私の部屋には大新聞からのカード類が多数ある。写真や文章への謝礼だそうだ。金欠でも換金する気はない。生活費の足しにもならぬ。それは、ささやかにモノを言った私の個人的記録、協働の証でもある。 (隆)
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