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    かけはし2017.年3月20日号

「大阪都」構想再燃に異議あり


2.13

いま大阪のあり方を問う

カジノ・万博を口実に

学習集会で活発な論議

 【大阪】いま大阪では、維新による「大阪都」構想が再燃しつつある。二〇一五年五月の住民投票で葬り去ったはずの「大阪都」構想だが、同年一一月の知事・市長ダブル選挙での維新候補勝利を経て、またもや大阪市解体=「特別区」設置が狙われている。しかも今回は、地下鉄や水道事業の民営化、夢洲でのカジノ・IR建設、万博誘致とセットになっている。こうした状況の中、さまざまな形で「特別区」設置、民営化、カジノ・万博に反対するとりくみが始められている。
二月一三日には、「いま大阪のあり方を問う学習集会」が開かれ、会場のエルおおさかには座りきれないほどの参加者一一〇人が集まった。この学習集会は、南大阪地域の労働組合、NGO、市民団体などが実行委員会を作って主催したものである。

秋に合区問題
が焦点になる

 集会では、まず司会の寺本勉さん(ATTAC関西)が集会開催の経過について説明した後、中山徹さん(奈良女子大学教授、大阪自治体問題研究所理事長)の講演に移った。中山さんは「本来なら住民投票の結果で大阪都構想はなくなったはずで、民意を無視して再び持ち出すのはおかしい。しかし相手が持ち出してきている以上は、きっちりと問題点を指摘して闘っていかなければならない」と維新の進める政策の問題点をわかりやすく説明した。その上で、「状況は住民投票のときより悪くなっている。あの時以上の共同のとりくみを作りださなければならない」と訴えた。(講演要旨は別掲)
質疑応答の中で、中山さんは「この秋が焦点になる。議会だけで合区を決めるのかを問題にすべき。カジノ、地下鉄の売渡し、合区の三つで市民的、府民的議論を作ることが重要だ。市民レベルから共同を進めることが大事」とていねいに質問に答えた。
続いて、各団体からのアピールとして、NPO法人AMネット、カジノ問題を考える大阪ネットワーク、入れ墨調査拒否者への不当処分を撤回させる会から発言があった。

公務員労働者と
市民の連携こそ
最後に、実行委員会から馬場徳夫さん(大阪府・市の労働と人権問題を考えるネットワーク)がまとめをおこなった。馬場さんは「これまでさまざまな課題別集会が開かれ、連携を図ってきたが、さらに発展させるために本日の集会を企画した。問題は維新にある。その意味で都構想、民営化、カジノ・IR、懲戒処分等の労働問題などお互いが連携して、いかに市民的多数派を形成するかにかかっている。公務員労働者と市民が決して対立してはならないし、どちらが犠牲となってもいけない。これを分断してきたのが維新政治だ。
維新政治を終わらせるために、双方の連携を追求しながら頑張っていきたい」と今後の運動の方向性を示した。当面の具体的なとりくみとして「市議会への意見・陳情・要請の集中」を訴え、さらに集会を機に、情報交流・連携のネットワークとして「どないする大阪の未来ネット」(略称・どないネット)を発足させることを確認した。    (森)

中山徹さん講演要旨

「維新」のねらいはどこに

市民の意思を
尊重すべきだ
都構想については決着がついたはずだが、維新は二月議会で法定協議会を立ち上げ,二〇一八年に住民投票をやりたいと言っている。都構想は、日本第二の政令指定都市を解体し、大型開発、経済対策の権限・財源の一部を大阪府に合法的に移し、カジノや万博に使うために大阪市をなくすということだ。
維新は、カジノ誘致を大阪の経済対策の最大ポイントに据えている。なぜ博打に頼らないといけないのか疑問だが、カジノと万博をセットにして、オリンピックの五年後に万博をやるということで世論を誘導しようとしている。今の政府は、維新を巻き込まなければならないので、大阪にカジノが誘致される可能性は大きい。
その一方で、維新は、市民向け施策を大幅に削り、その予算を減らして財源確保しようとする市政改革プランを打ち出している。さらに地下鉄の民営化議案を二月市議会に提出して、三分の二の合意を得ようとしている。水道の民営化、住吉病院の民間移管、幼稚園の民営化、小中学校の統廃合なども進められようとしている。
その先には副首都ビジョンがある。しかし、何をしたいかがよくわからない。そもそも世界中でどこにも副首都を持つ国はない。全く中身のない空論で、都構想の二重行政批判よりもひどい。
維新の存在理由がなくなるから、まだ都構想を掲げているのだろうが、住民投票の結果を無視するのは前代未聞だ。民主的な政党であれば、ラストチャンスだと言っていたのだから、市民の意思を尊重すべき。
今の議論の中では、特別区、総合区、地域自治区、ブロックなど、いろいろ出てきていてややこしい。簡単に説明すると、「特別区」は大阪市をなくして、特別区という基礎自治体を新たに作ることだ。大阪府○○区になる。「総合区」の場合、大阪市は残る。行政区よりは権限が少し強く、市に意見も言えるが、区長は公選ではなく、区議会もない。公明案では、八区に合区したうえで総合区にする。総合区は、市議会の判断だけでできるので、維新はまず公明案の総合区にして、住民投票で総合区か、特別区かを問うとしている。
どんな制度を作っても、市民の声を聞く気がないのであれば、意味がない。議論は否定しないが、市民が理解できないうちに、投票で決める必要性は全くない。

地域を破壊する
カジノの誘致
カジノについて、来場者一三〇〇万人、うち日本人九〇〇万人で、カジノでの雇用効果は三・二万人、税収一二〇〇億円という経済効果を示している。本当にそんな経済効果が起こるのか? カジノは、よそで使っていたお金をかき集めて、カジノで使わせるだけだから、カジノで雇用は増えても、地域の雇用が減る。カジノで税収は上がっても、よその地域の税収は減る。カジノがもたらす負の影響は大きい。日本は今でもギャンブル中毒が多いが、カジノ中毒が必ず起きる。カジノのある地域全体がすさんでしまう。
こうした巨大開発で大阪はいくら使うのか予想すらできない。大阪市交通局が開発に失敗して巨額の負債を抱えたことを維新は批判している。しかし、このIRは交通局の事業とは桁違いの失敗になる。
万博が絶対アカンとは現時点ではいえないが、夢洲は絶対ダメだ。現状では最大級の東南海地震で水没する。万博の最中に地震が起こったらどうするのか。また、夢洲の埋め立て材料は廃棄物で、何が埋まっているかわからない。こんなところで「健康長寿」がテーマの万博とはブラックユーモアだ。

住民投票時以上
の取り組みを!
いまの大阪を活性化させるためには、市民福祉と経済対策の両方を考えなければならない。企業や富裕層に集中している富を庶民・中小企業に回すことが大事だ。富裕層にはしっかり課税すればいい。カジノで使ってもらう必要はない。格差是正と社会保障の拡充が最大の経済対策になる。市民の暮らしている地域で福祉に金を使い、消費を増やす施策の展開が重要だ。
市民参加の問題も大事で、市民の意見をきっちり受けとめることができたら、制度いじりは必要ない。
今の事態は、住民投票の時以上に深刻だと思う。このままでは、本当にカジノができる、地下鉄・水道が売り払われる、大阪市が解体されることになる。もし、大阪市で都構想が実現=特別区設置が通れば、堺市でも議会だけで特別区になれる。
立場は違っても、共同の動きが大事。気を抜くと負けてしまう。世論調査ではカジノは圧倒的に反対が多い。しかし、カジノ万博がくっついているから油断できない。これから住民投票以上の取り組みが必要だ。
(講演要旨、文責編集部)

2.25

朝鮮独立運動98周年集会

日米韓軍事同盟にNO!

韓国民衆の闘いに連帯を

 パク・クネ大統領の退陣と五月大統領選挙に動き出している韓国。その政局をつくりだしたのは「大統領退陣と逮捕」を求めるソウルでの一〇〇万人のキャンドルデモだ。一方、米トランプ政権の登場によって中朝をめぐって軍事的な緊張感が増大している。朝鮮半島を舞台とする状況をどのように捉えようとするのかは、差し迫った緊急の課題だ。
 二月二五日、文京区民センターで「三・一朝鮮独立運動九八周年―日米韓軍事同盟に反対し韓国民衆の闘いに連帯する二・二五集会」が同実行委員会の主催で行われた。この日の集会には一五〇人が参加した。
 集会ではまず、主催者を代表して日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表の渡辺健樹さんが発言した。渡辺さんは日韓政府による初の軍事協定である軍事情報包括保護協定=GSOMIA(ジーソミア)の締結と、米軍による韓国への高高度ミサイル防衛システム=THAAD(サード)の配備に触れて「日米韓三国の軍事同盟を一段階進めたものだ」と厳しく批判した。そしてパク・クネ退陣をめざす韓国民衆の闘いに連帯して、三国軍事同盟の強化に対して「三国の民衆連帯で立ち向かっていこう」と訴えた。

GSOMIA
と戦争への道
続いて東京新聞論説・編集委員の半田滋さんが「GSOMIAと安保法制が引き込む戦争への道」と題する講演を行った。
半田さんはまず〇七年八月に締結された「日米軍事情報包括保護協定」の経過について報告した。八八年五月に日本政府はGSOMIAについて「米国と結ぶことはまったく考えていない」と表明していたが、ミサイル防衛(MD)などの各分野で自衛隊と米軍の一体化が進むなか、〇三年一二月に政府はMDシステム導入を閣議決定してPAC3の三菱重工でのライセンス生産にこぎつける。そしてマスコミ報道などを操作しながら〇七年八月に日米GSOMIAを締結する。同時に政府は秘密保護法制の検討に入った。この流れは一体的であった。法的な罰則も厳しくして、政府が「秘密だ」と決めると全てを公開しない。誰も口を開かなくなっている。
これまでGSOMIAは日本が米、豪、印など六カ国と、韓国が米など三三カ国と締結してきた。これまで二回の日米韓ミサイル対処の共同訓練が実施されてきたが、日韓が協定締結したことで三国間で密接な情報を共有することができるようになった。自衛隊にとっては、韓国軍の地上レーダーによる早期の北朝鮮ミサイルの察知情報とスパイ情報も期待できる。また韓国軍にとっては、自衛隊の持つ軍事技術が期待できる。
半田さんは米軍によるTHAADの韓国配備にふれ、日本での配備も検討されていて、MDシステムの強化は国民に安心感を与えて「戦争容認」の選択につながり兼ねないと指摘した。またMDを強めれば強めるほど、相手側はより多くのミサイルの発射態勢をとろうとするので、未曽有のミサイル軍拡につながるとも指摘した。
トランプ政権は中東と朝鮮での戦争を検討することになる。GSOMIA締結とTHAAD配備は、米国の戦争に日本も韓国も加担するということだ。こうした戦争への道に「待った」をかけなければならないと講演を締めくくった。

韓国サンケン
労組に連帯を
集会は続いて特別アピールとして、日系進出企業による整理解雇と闘う韓国サンケン労組訪日遠征闘争団から報告と決意の表明を受けた。
韓国サンケンは日本のサンケン電気の完全子会社で、七三年に馬山自由貿易地域に設立された。LED照明器具などを生産してきたが、会社は経営悪化を理由に生産部門を廃止して、昨年の九月三〇日付で生産現場の労働者三四人全員を整理解雇した。発言した韓国サンケン労組員は、毎日毎朝休むことなく闘いを続けていることを報告し「人権と権利を回復させるために解雇撤回を求めて闘っていく」決意を述べ、支援を訴えた。
続いて韓国ゲストから「韓国のキャンドル革命と平和運動」について、キム・ジャンホさん(民主労働者全国会議前議長・インターネットニュース「民プラス」編集局長)が報告を行った。
報告はまず、一二年の大統領選挙での不正から始まり、一四年のセウォル号沈没事件、一六年のサード配備決定などによって、パク・クネ政権に対する韓国民の不満と怒りが蓄積されていった過程を、写真や資料を示しながら明らかにした。そしてチェ・スンシルの国政不正介入事件の発覚は今日の「キャンドル革命」の導火線となり、怒りのエネルギーの大爆発となって表れた。
パク・クネ政権を追い詰める「キャンドル革命」は、今や「新たな韓国の建設は可能だ」という希望のキャンドルとして高く掲げられている。しかし「キャンドル革命」のエネルギーを組織するためには、「新たな進歩政党」の建設が必要だ。進歩陣営はサード配備阻止・非正規雇用の廃止・財閥改革の闘いに集中すべきである。また政権の交替は、進歩政党建設や自主・平和・統一のための広い道を開けてくれるだろう。キムさんは報告の最後に、日韓の民衆は東北アジアの平和のために連帯し協力していこうと訴えた。

「少女像撤去」
要求許さない
集会は最後に三団体からアピールを受けた。沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック共同代表の大仲尊さんは、人権侵害の不当な長期勾留を強いられている山城さんの釈放を訴えた。VAWW RAC共同代表の中原道子さんは、在日本大使館前などに設置された少女像をめぐって「軍隊慰安婦問題」は女性の運動から韓国民衆の問題となったと語った。「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会事務局の森本孝子さんは、各地での裁判が結審・判決という段階に入ったことを報告し、「世論の力を見せてほしい」と訴えた。        (R)



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