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    かけはし2017.年3月20日号

安倍政権追い詰める共同の闘いへ


「森友学園」問題と南スーダンからの撤兵

労働者・市民の大衆的行動強めよう

総裁任期延長した自民党大会

 三月五日に開催された自民党の党大会は、党則の改正により総裁の任期を従来の二期六年から三期九年に延長した。これにより、安倍首相は二〇二一年九月まで党総裁の地位に止まり、歴代首相の中で最長となる任期を務めることが可能となった。自民党内には、「五五年体制」時代のような有力な対抗派閥が存在せず、安倍政権の地盤は盤石であるかのように印象づけられていた。安倍総裁体制への異論は封じ込められた。
 それは安倍政権の下で改憲を必ず実現するというメッセージでもある。実際自民党大会で採択された今年度の運動方針は「憲法改正原案の発議に向けて具体的な歩みを進める」としている。朝日新聞(三月六日)の報道によれば、党大会で採択された自民党の今年度運動方針は「憲法改正原案の発議に向けて具体的な歩みを進める」と明記しているが、これは素案で「憲法改正原案の作成・検討を進める」とあったものに安倍首相自ら手を入れ、「発議」という言葉で、改憲手続きに具体的に踏み込むようにさせたということである。
 同「朝日」の記事では、現在の衆参で与党三分の二という改憲発議可能議席を維持するために、執行部は衆院の解散・総選挙を任期いっぱいの二〇一八年末にまで先送りする戦略を描いている、と報じられた。
 しかし、それからわずか一週間もたたないうちに、一見「盤石」に見えた安倍政権の足場を揺るがせる事態が起こっている。

「森友学園」が示したもの


安倍政権の足元に走った亀裂の第一は、言うまでもなく「森友学園」問題である。この問題は、安倍政権の基盤となっている極右天皇主義者「日本会議」の有力メンバーである「森友学園」理事長の籠池泰典が開設しようとしている「瑞穂の國記念小学院」をめぐって国有地を破格の安値で売却させ、その売却のために鴻池元防災担当相の事務所が財務省に圧力をかけたことから始まっている。その結果、財務省は地価一〇億円近い国有地を「ゴミ撤去費用」を名目に八億円値引きし、わずか一億三四〇〇万円という八割引きの値段で「森友」側に引き渡すことになった。
この売却に対して、財務省の佐川宣寿理財局長は国会で「不当な働きかけは一切なかった」とした。その理由を問われると「二〇一二年の閣僚懇談会の申し合わせで、不当な働きかけには記録を保存することになっているが、不当な働きかけが一切なかったので記録は保存されていない」という強弁でごまかしているのだ。
こうした国・財務省による異例の措置は、「森友学園」が経営している幼稚園で、園児たちに「教育勅語」を暗唱させ、「安全保障法案が通って良かったです」「安倍首相ガンバレ」と運動会で叫ばせる教育を行っており、かつ学校の名に「安倍晋三記念」と銘打ち、安倍首相夫人の安倍昭恵が名誉校長を引きうけていたという現実と無関係ではありえない。まさに「森友学園」の天皇主義教育や中国・韓国に対する排外主義教育と安倍政権のイデオロギーの本質的一体性が明らかになっている。
そうであるがゆえに安倍首相は国会答弁でムキになって「印象操作だ」などと、森友学園との関係を否定せざるをえないのである。そして野党からの籠池の参考人招致の要求を「違法性がない」との理由で拒否し続けてきたのだ。
三月一〇日、ついに森友側は、おそらく安倍に近い筋からの圧力もあって今年度の小学校設置認可申請を取り下げた。しかし問題はこれで終わったわけではない。「瑞穂の國小学院=安倍晋三記念小学校」問題とそのイデオロギーは、たんなる時代遅れの妄想ではない。「教育勅語」の思想が多数派になるとも思えないが、多少とも形を変えた形で、今後さらに政治の主流・社会の多数派の中により広い基盤を持ちうることに、われわれは敏感でなければならない。とりわけ東アジア情勢の軍事的緊張と天皇の「生前退位」=代替わりの流れの中で、それがどういう形を取って登場するのかについて注意すべきである。

南スーダンPKOから撤収


安倍政権を揺るがす亀裂の第二は、南スーダンPKOからの撤退問題である。「森友学園」の小学校新設申請取り下げと籠池の理事長辞意表明の同日、安倍内閣は国家安全保障会議を開き、南スーダンPKOに派遣している陸上自衛隊の施設部隊を五月末までに終了させ、撤収すると発表した。
昨年一一月、安倍政権は初めて「駆けつけ警護」という実戦任務を付与された陸上自衛隊施設部隊を南スーダンに派遣した。昨年七月、南スーダンではキール大統領派とマシャール副大統領派の戦闘が激化した。首都ジュバでも大規模な戦闘が勃発し、数百人の戦死者が出た。安倍内閣は、二〇一五年の安保法制改悪の一環であるPKO法への「駆けつけ警護」「宿営地共同防衛」という新任務付加の最初のケースとして、南スーダンPKOへの自衛隊派兵を強行したのである。「ジュバは比較的平穏」という現実無視の無責任な「楽観主義」の言葉を語りながら。
しかし現実はどうだったか。すでにこの間の国会質疑で明らかになっているように、日本のジャーナリストから情報公開請求があった南スーダンPKO自衛隊の活動についての「公報」では「戦車や迫撃砲を使用した激しい戦闘」などの緊張感みなぎる言葉が書かれている。しかし防衛省はこの「公報」の開示要求を「破棄した」という虚偽の理由で拒否したのである。
「公報」が存在するという事実が明らかになった後でも、「戦闘」の事実を否定し、「戦闘行為はなかったが武器を使って殺傷あるいは物を破壊する行為はあった」「戦闘ではなく、勢力間の衝突である」と、安倍首相は言い放った。稲田防衛相にいたっては「法律用語で言う戦闘はなかった。戦闘があったとするなら憲法九条違反だ」と答弁し、「憲法九条に違反するから戦闘はなかった」というとんでもない詭弁をもてあそばざるを得なかったのである。
自らが作りだした虚偽によって自縄自縛に陥った安倍政権は、五月をもって南スーダンPKOの任務を終了させ、陸上自衛隊を撤収させると発表せざるを得なかった。憲法九条の「縛り」から抜け出ようとしてきた安倍政権は、ついに「任務終了」を口実に自衛隊を南スーダンPKO活動から撤収させることになった。
PKO五原則(@中立的立場の維持A当該地域の属する国を含む紛争当事者がPKO及び日本の参加に同意B中立的立場の厳守C上記の基本方針のいずれかが満たされない場合は部隊を撤収できるD武器の使用は要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られる)に依拠する限り、自衛隊は南スーダンから撤退せざるをえなかった、ということが依然として安倍政権が抱えるジレンマである。その意味で、憲法九条はギリギリのところで「戦争国家」「派兵国家」の全面展開を阻止する歯止めの役割を果たしている、と言えるだろう。そうであればこそ安倍首相にとって自らの任期中に憲法改悪を実現しようという焦りがますますつのっている、と見るべきである。
労働者・市民は今こそ様々な分野で、安倍政権のほころびを拡大し、安倍打倒をめざす共同の隊伍を拡大しよう。     (純)

3.6

共謀罪NO!実行委

法案国会提出許すな!

国会前に350人

 三月六日、共謀罪NO!実行委が主催し、「戦争させない・九条を壊すな!総がかり行動実行委」の協賛で、「共謀罪の国会提出を許さない!」総がかり国会前行動が正午から衆院第二議員会館前で開催された。行動には三五〇人が集まった。
 「テロ対策」を看板に掲げながら、法案に「テロ」という言葉がないことに与党からも疑問が出される「組織的犯罪処罰法」改悪案の国会上程が遅れている。政府は新たに「テロ等準備罪」を新設した法案とするとしているが、それが言論・表現の自由を根本から破壊する「戦争国家」体制のための治安弾圧法規であることが、多くの人びとにとって指摘されている(本紙前号1面、遠山論文参照)。それがいかに民主主義的権利と自由を破壊するものであるかは、国会の審議権を否定するかのような金田法相の答弁を見れば明らかになっている。
 国会前の集会では、民主法律家協会の米倉さんが共謀罪に反対する連絡協議会を作り、そこに日本労働弁護団も参加したことを報告。評論家の佐高信さんに続いて発言した海渡雄一弁護士が、「偽証罪」への「共謀」適用はきわめて危険である、と指摘。さらに政治資金規正法の条項や「贈賄罪」には「共謀」の適用が除外されていることが、きわめて恣意的だと批判した。
 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)は当局が目を付けた団体はすべて共謀罪の対象になっている、として、その治安立法的性格を訴えた。さらにかながわアクション、「秘密保護法廃止をめざす藤沢の会などから地域での取り組みが報告された。
 午後には院内集会も行われた。       (K)


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