沖縄報告:3月4日
辺野古新基地阻止へ、闘いはこれから
沖縄 K・S
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3.1
水曜集中行動に250人
終日ゲート封鎖を実施
工事車両の出入りなし
米海兵隊キャンプ・シュワブ第一ゲート前では夜明け前からスタンディング・アピールが続けられる中、工事用ゲート前での座り込み集会は午前七時過ぎから始まった。基地問題で知事を補佐する政策調整監に就任する吉田勝広さん(前県議で元金武町長)があいさつに立ち、「翁長知事と共に辺野古新基地を阻止するために全力をつくす」と決意を述べた。誠実な人柄そのままに、基地はいらない!との民意を実現するために奮闘してくれるに違いない。雨が降り続き一段と冷え込む天候にもかかわらず、全県各地、全国各地から結集した人々でゲート前は埋め尽くされた。九時半過ぎゲート前テントに場所を移して座り込み集会を継続し、最終的に二五〇人が参加した。
千葉県から参加した一六人は、『標的の村』や『うりずんの雨』を見たことが契機となり連絡を取り合い参加したというグループで、一人ひとりが思いを語った。
島ぐるみ糸満は「街宣車を出し、サンシンと歌でスタンディング行動を行なっている。昨日で二二回目だ。教育勅語を幼児に読ませる森友学園は教育勅語の失効を確認した国会決議に違反する」と糾弾した。権力を私物化し国を食い物にする安倍・官僚・右派政治家の動きは沖縄でも憤怒の対象だ。
高江のヘリパッド建設の現場では三月から六月までノグチゲラなどの営巣期間のため防衛局が重機を使った工事を中止する。「U.S. Forces OUT!」の横断幕を掲げて、高江からは約一〇人があいさつに立った。住民の会の伊佐真次さん(東村議)は「オスプレイが飛ぶと窓枠がガタガタと揺れる。オスプレイの飛行中止とヘリパッドの撤去を求める請願を県議会に出した。ヘリパッドができてしまったからもう終わりではない。基地をそのままにしてヤンバルの森を自然遺産に登録することができるのか」と訴えた。住民の安次嶺現達さんは「子供たちのことを考えるとどうしても引っ越しせざるを得なくなった。隣村に引っ越すが、高江を取り戻す闘いは続ける。東村の村長はヘリパッドを容認して村に人が住めなくなることに責任を感じていないのか」と迫力のある言葉で語った。
平和市民連絡会の北上田毅さんは情報公開で得た資料を基に、「今朝の新聞報道にあるように、北部訓練場のヘリパッド工事費は当初契約から何度も契約変更を重ね五〜六倍に跳ね上がった。こんなことはありえない。会計検査院が入ればアウトだ。原因は九月の安倍の年内完工の号令だった。以降、弾圧と違法工事の反復で、公共工事では絶対に考えられないことだ」と述べた。
高江の奥間政則さんは現場の写真を紹介しながら、「返還式典後も工事が続いている。Gの進入路はまだ手つかずだ。赤嶺政賢議員が国会で追及したように、HもひどいがN1はもっとひどい。悪い工事の見本だ。これはわれわれの税金だ」と怒りを込めて糾弾した。
カヌーチーム「辺野古ぶるー」が新規メンバー募集中
連日海上で監視・抗議行動をくり広げているカヌーチーム「辺野古ぶるー」が新たなメンバーを募集している。「いきなり沖での抗議行動ではありません。まずは日曜日に浅瀬で練習し、十分な技術が身についてからです。一緒に海を守るために行動しましょう」と呼びかけている。詳しくは、辺野古ぶるーのブログやフェイスブックを参照。
2.23
嘉手納爆音訴訟判決
爆音は違法 賠償金倍増
しかし飛行差し止め不能
嘉手納基地周辺の住民二二〇四八人が日本政府を相手に、夜間・早朝の米軍機の飛行差し止めや騒音被害に対する損害賠償を求めた第三次嘉手納爆音訴訟の判決が、那覇地裁沖縄支部(藤倉徹也裁判長)であった。判決は「原告らはかなり激しい航空機騒音に晒されている」「社会生活上受忍すべき限度を超える違法な権利侵害ないし法益侵害と結論すべきである」と述べ、第二次訴訟より賠償の範囲を広げ、賠償金額も総額三〇二億円となった。およそ倍増した賠償月額は次のとおりである(カッコ内は第二次訴訟)。
うるささ指数
W75 7000円(300
0円)
W80 1300円(600
0円)
W85 19000円(90
00円)
W90 25000円(12
000円)
W95 35000円(18
000円)
嘉手納基地の生み出す騒音のすさまじさ
四〇〇〇m滑走路二本を有する嘉手納基地は成田空港の約二倍弱の広さに、F15イーグル戦闘機四八機、KC135空中給油機一五機、MC130特殊作戦機一〇機、P3C対潜哨戒機八機のほか、RC135電子偵察機、E3早期警戒管制機、C130輸送機、救難ヘリなど約一〇〇機が常駐している。加えて、米本国のバーモント州、オクラホマ州、アラスカ州などの州軍F16戦闘機群が数カ月単位で駐屯・訓練し、駐韓米軍のF16や岩国基地のハリアー戦闘機なども飛来する。これらの航空機が滑走路の離着陸・タッチアンドゴー、駐機場、基地周辺上空で年中まき散らす騒音は住民の平穏な生活を根底から破壊している。
地裁判決は「会話、電話聴取やテレビ・ラジオの視聴、勉強、読書等、休息や家族団らん等の日常生活の様々な面での妨害、不快感や不安感等の心理的負担または精神的苦痛、睡眠妨害、さらには高血圧症発生の健康上の悪影響のリスク増大」が生じ、W値の上昇に伴い増加していると指摘した。原告団が指摘した「心臓血管系疾患が深刻で年間四人が死亡しているとの推計」や「騒音による難聴」の主張は受け入れられなかったが、「騒音の高感受性群に属する子どもにより大きな影響を及ぼしている可能性があること、戦争経験を有する住民らにとっては戦争時の記憶をよみがえらせ、より大きな不安を与えるであろうこと」も認めた。さらに地裁判決は「アメリカ合衆国または被告(国)により違法な被害が漫然と放置されている」と評価した。
ところが地裁判決はこれまでと同様「夜間飛行差し止め請求」を棄却した。「飛行場の管理運営の権限はすべてアメリカ合衆国に委ねられており、被告(国)は米国軍隊の航空機の運航等を規制し制限できる立場にない」と述べ、米軍の治外法権を追認したのである。「思考停止」の裁判所。住民が一番望んでいることは金ではない。騒音のない静かな生活だ。損害賠償額がいくら増えようとも満足できるわけがない。米軍を野放しにし国民を守らない日本政府と行政に追随し法の番人たることをやめた司法を前にして、今後、「騒音のない静かな生活を返せ」という住民の正当な要求は、騒音源=基地の閉鎖に向けた目的意識を強固にしていく以外ない。さらに、憲法の上に日米地位協定が君臨する戦後日本政治の根本的転換を求めて闘いの輪を拡大していくだろう。日本の政治を変えよう。オバマのような口先ではない本当のチェンジが必要だ。
2.24
カデナ・ピースアクション
ゲート前で200人が
スタンディングアピール
地裁判決のあった翌二四日金曜日午前、嘉手納基地の各ゲート前にはいつもを倍する二〇〇人の人々が結集し、「NO BASE」「GOOD BYE KADENA」とアピールし、デモ行進した。
第一ゲートでは、続々と出勤する米軍人軍属の車に向かって「GET OUT」「米軍は沖縄から出ていけ」「嘉手納基地を閉鎖せよ」と叫び、国道を通行する車列に向かい「嘉手納基地閉鎖・撤去」「辺野古新基地建設NO!」を訴えた。県警は数十人の警官を配置したが、これまで見たこともないような警官が多数いた。おそらく主に本土からの一〇〇人増員の警官たちなのだろう。
第五ゲートでは、基地内から外に出ようとする米軍の車両に対し数回にわたりピケットを張り封鎖した。基地からはジェット機のエンジン調整音が響き、F15戦闘機が爆音をまき散らして飛行する姿が見える。県警は警備の警官数一〇人と警告灯を点滅させたパトカー三台を緊急配置したが、三時間にわたってゲート前の抗議行動を貫徹した。
カデナ・ピースアクションは昨年3・4和解の後、沖縄駐留米軍の本丸・嘉手納基地をターゲットに毎週金曜日一〇カ月にわたり取り組まれてきた。沖縄には米空軍の嘉手納基地・嘉手納弾薬庫、海軍のホワイトビーチ、陸軍特殊部隊のトリイステーション、そして普天間飛行場、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセン、北部訓練場などの海兵隊基地が存在する。沖縄戦を体験し「命どう宝」を肝に銘じた県民は軍事基地のない沖縄を実現するまで決して闘いを止めない。
2.27
NDシンポジウムに400人
今こそ辺野古に代わる選択
提言をうけて活発な討論
シンクタンクのND(新外交イニシアティブ)主催によるシンポジウムが二月二七日夜那覇市で開かれ四〇〇人が参加した。NDは二〇一三年、「従来の外交では運ばれない声を届ける新しい外交のチャンネルを築くこと」を目的に設立された。これまで、稲嶺名護市長や翁長知事をはじめ議員などの訪米の企画・同行・根回し、米国議会・シンクタンク・大学・メディアとの意見交換、沖縄・東京・大阪での講演会・シンポジウムの開催など多方面の活動を推し進めてきた。詳しくは、猿田佐世『新しい日米外交を切り拓く』(集英社、二〇一六年)の一読をお勧めする。
NDは日米関係とアジアに関する新しい外交の提言を行うため、「辺野古オルタナティブ」「地位協定の国際比較」「日米外交システム」「東アジア歴史問題」「日中外交」などのプロジェクトチームを持っている。「ワシントンに通用するレベルとクォリティで議論していく」ことをモットーにしているとのことだ。今回の那覇でのシンポジウムは、日米両政府の「辺野古が唯一」との硬直した政策に対し、「辺野古に代わる選択」が可能であり現実的だということを明らかにするために開かれた。会場には開始時間前から多くの人々が詰めかけ、ロビーはNDの出版物を購入する人や会員申し込みをする人でごった返した。予定定員三〇〇人のところ四〇〇人が集まった。
まず、ND事務局長で日米の弁護士資格を持つ猿田佐世さんが「どうして辺野古唯一となっているのか」と疑問を呈した後、「辺野古に代わる選択」として、@現行の米軍再編計画を見直し、第31海兵遠征隊(31MEU)の拠点を沖縄以外に移転する、A日米JOINT MEU for HA/DR(人道支援・災害救援活動)を常設する、B日米JOINT MEU(ミュー) for HA/DR(ハーダー)の運用などを支援するため、日本が高速輸送船を提供する。米軍駐留経費の施設整備費を移転先で現行のまま日本政府が負担する、CHA/DRへの対応、その共同訓練などアジア各国の連絡調整センターを沖縄に置き、アジア安全保障の中心地とする、の四項目の提言を提起した。
続いて、元沖縄タイムス論説委員の屋良朝博さん(ND評議員)が、スライドを使って「辺野古に代わる選択」の提言の内容を説明した。要旨は、@二〇一二年の日米合意で、沖縄駐留海兵隊は半数が米本土、ハワイ、グアム、オーストラリアへ転出し、沖縄に残るのは二〇〇〇人の31MEUと司令部機能の計一万人になる、A海兵隊機動展開部隊は、大きい順に海兵遠征軍(MEF)四万五〇〇〇人、海兵遠征旅団(MEB)一万七五〇〇人、海兵遠征隊(MEU)二〇〇〇人であり、MEUは大小の紛争にではなく人道支援や災害救援に対応する、B沖縄は佐世保の艦船と米本国からのローテーションで派遣される兵士とのランデブーポイント(待ち合わせ場所)になっているに過ぎない、海兵隊は一カ所にいなくていいC二〇一三年四月の米比共同軍事演習は八〇〇〇人の兵士が災害にあった小学校の復旧作業をし、「テロとの戦い」として子どもの歯の診察をした、D二〇一四年二月の米タイ共同演習には米の招待で中国軍が初参加し、中国軍元司令官は「米中の密接な協力関係」を語った、E民間フェリーの借り上げによる米軍への提供は年間約一一億円で済むので、現在の巨額の在日米軍駐留経費の削減に寄与する、F31MEUを県外・国外に移転させ、辺野古での基地建設を中止することは、沖縄も、日米両政府も納得のいくall-winの解決策となる。
意見交換の中で屋良さんは「海兵隊の一体運用論はまやかしだが、日本のメディアは報道しない。沖縄の海兵隊は沖縄にいる理由がない。県下の全市町村議会で海兵隊の撤退を議論していこう」と訴えた。
東京新聞論説・編集委員の半田滋さんは「沖縄の自衛隊は全国で唯一陸空合わせて八つの高射砲部隊を持っている。何を守っているか。嘉手納基地を守っている。海兵隊が抑止力だという観念からもう目覚めてもいい。アフガン、イラン戦争を通じて米も武力では平和は作れないということが分かり、二〇一〇年から人道支援・災害救援に取り組み始めた。平時においては当たり前で、軍事組織を戦争に使う時代は終わった。沖縄の声を東京にもアメリカにも伝える」と述べた。
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