3.1
超党派議員と市民の勉強会
共謀罪は監視社会加速
「横浜事件」の教訓学べ
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三月一日、共謀罪を考える超党派の議員と市民の勉強会は、参議院議員会館講堂で「共謀罪の問題点」をテーマに勉強会を行い、二五〇人が参加した。
司会は福島みずほ参議院議員(社民党)。
浅田和茂さん(立命館大学教授)は、「刑事法から見た共謀罪の問題点」をテーマに、「実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪の遂行」罪(共謀罪)を批判し、とりわけ「新たな捜査方法の危険性がある。犯罪捜査の前倒しだ。共謀罪の嫌疑だが、人が集まって話をしているだけで捜査対象になり得る。そのために室内盗聴ないし会話盗聴への拡大をねらっている。一旦認められればじきに拡大される。室内監視もありうる。監視社会の加速だ」と批判した。
さらに「隠密捜査官(身分秘匿捜査官)の投入も行ってくる。密告も奨励するだろう。無関係な人を巻き込む危険があり、えん罪発生の原因になる」ことなどを明らかにした。
これでは現代版
の治安維持法だ
海渡雄一弁護士は、「治安維持法と共謀罪」について報告し、「戦前の治安維持法制定以降、共産党から周辺組織へと弾圧が広がっていった。一九三三年の小林多喜二拷問虐殺、一九三五年大本教事件など宗教関係団体にまで広がっていった。一九四三年、治安維持法違反で横浜事件(改造社、中央公論社など出版関係者をはじめ、日本共産党再結成の謀議関与で大量逮捕)がデッチ上げられた。このような弾圧史をみればわかるように、共謀罪法案には現代の治安維持法と呼ぶことのできる、強い濫用の危険性が潜在している」と批判した。
横浜事件のビデオ上映後、永田浩三さん(ジャーナリスト・武蔵大学教授)は、「横浜事件が問いかけるもの」をテーマに問題提起し、「共謀罪・秘密保護法などが浮上するたびに、横浜事件の被害者たちは声を上げてきた。同じ時代が二度と繰り返されてはならないという血の叫びだ。社会の矛盾・理不尽に声を上げる。そして人々がつながり、連帯の輪が広がる。それを『共謀罪』とみなすのだ。いまこそ『わたしたちの人権宣言をしたい』(横浜事件元被告・木村亨さん/一九九八年死去)の訴えを重く受け止めたい。一九二五年の治安維持法から九二年、横浜事件から七五年。声をあげ続けてきた歴史でもある」と発言した。
続いて、横浜事件国賠訴訟原告の木村まきさんが裁判報告と共謀罪反対をアピールした。
国会議員も駆けつけ、共産党、民進党、社民党、糸数慶子さん(沖縄の風)から共謀罪反対に向けて国会で奮闘していくことをアピールした。 (Y)
3.1
日弁連が院内学習会
「対テロ戦争」参加と連動
「東京五輪」を人質にした強弁だ
三月一日、日本弁護士連合会は、衆議院第二議員会館で「いわゆる共謀罪に関する法案の上程に反対する院内学習会」を行い、一三〇人が参加した。
司会は山下幸夫弁護士(日弁連共謀罪法案対策本部事務局長)。
開会あいさつが矢野真之さん(日弁連副会長)から行われ、「日弁連は、すでに共謀罪法案対策本部を設置して反対運動を取り組んできた。安倍政権は、今国会に共謀罪を上程し制定しようとしている。日弁連は、『いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書』(二月一七日)を発表した。国民の権利自由を侵害する共謀罪反対の取り組みを強化していきたい」と述べた。
基調報告を海渡雄一弁護士(日弁連共謀罪法案対策本部副本部長)が行い、@共謀罪の基本的な問題点Aテロ対策はすでに十分国内法上の手当がなされているB組織犯罪条約はテロ対策の条約ではないなどを提起し、政府の共謀罪制定に向けた説明、答弁を批判した。
とりわけ「日本政府が国連組織犯罪条約の第二回起草特別委員会(一九九九年三月八―一一日)に提出した修正案では、『日本の国内法の原則では、犯罪は既遂か未遂段階に至って初めて処罰されるのであり、共謀や参加については、特に重大な犯罪に限定して処罰される。したがって、すべての重大な犯罪について、共謀罪や参加罪を導入することは日本の法原則になじまない』と表明していた。だがアフガニスタン戦争など米国の対テロ戦争への傾斜によって、いつのまにか投げ捨ててしまったらしい。しかし、この時期の態度と現在の真逆の態度の整合性は、いったいどういうことなのか。説明が必要だ。追及していく」と強調した。
メディアの存在
意義も問われる
リレートークに入り、篠田博之さん(日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長)は、二月一五日に「共謀罪に反対する」声明を出したことを報告し、「現行法で十分なテロ対策が可能であるにもかかわらず、共謀罪を新設しなければ東京オリンピックを開催できないというのは、オリンピックを人質にとった詭弁であり、オリンピックの政治利用である。このような法案を強引に成立させようとする政府の姿勢を許すわけにはいかない」と訴えた。
田近正樹さん(編集倫理委員会副委員長)は、「現代の治安維持法にしてはならない 共謀罪と出版表現の自由」について報告し、「共謀罪が成立すれば、われわれ市民、メディアは日常的に政府や捜査機関から監視されるようになるだろう。そういう力を政府、捜査機関が持っているということ自体が脅威になるし、そのことで、言論、表現空間がドンドンと狭まっていく危険がある。われわれメディアに携わる者は、そこのところを考えて今後の行動を選んでいく必要がある」と発言した。国会議員も多数参加し、共産党、民進党、社民党、糸数慶子さん(沖縄の風)が共謀罪法案上程阻止・廃案の決意表明を行なった。
閉会あいさつが角山正弁護士(日弁連共謀罪法案対策本部長代行)から行われた。 (Y)
2.22
戦争法違憲訴訟第2回口頭弁論
「平和的生存権」の意義問う
「法的保護」に値する権利
【大阪】戦争法違憲訴訟第二回口頭弁論は二月二二日、大阪地裁大法廷で開かれた。午後二時半からの傍聴券の抽選はなかったが、開廷までの間に傍聴者が増え、傍聴席は満席のうえ、さらに二〇人ほどが原告席で傍聴した。
幼時の戦争体験
消えない罪悪感
法廷は、まず今まで提訴された三つの訴訟を一つにまとめる手続きが行われ、次に、原告の意見陳述が行われた。敗戦時五歳だったムツコさんは、空襲で焼け出され、お父さんは仕事を失い、お母さんが行商し食うや食わずの生活を余儀なくされた。敗戦直後、知り合いのお姉ちゃんが疎開先に訪ねてきて、隙を見て釜の飯を手づかみしたのを見つけたお母さんは、その子を追い返したという話。聞いていても本当に辛い話だった。復員したおじさんが日本刀を研ぎながら「これで何人もチャンコロを殺した」と言ったのは今でも鮮明に覚えている。ムツコさんは、自衛隊員が死亡した場合に補償金九〇〇〇万円が税金から支払われることで、自衛隊員の命を買い取るような罪悪感にとらわれると述べた。
もう一人のカヨコさんは戦後生まれ。戦争という暴力が許されると、すべてが戦争につながって、愛国心を強制する暴力、教育やしつけの名による暴力、「正義」のための暴力が生じると述べ、大病をしたときに、やり残したことで、この平和を守るため微力でもすることがあると思ったことを述べた。二人は最後に、安保法をなくしてほしい、無効にしてほしいと訴えた。
続いて、原告提出の第一準備書面の説明が行われ、次回法廷は五月三〇日午後三時からとなった。
共謀罪反対でも
声を上げよう!
閉廷の後、京阪淀屋橋ビルで報告会が開かれた。服部良一さん(訴訟の会共同代表)があいさつ、「国会では、南スーダンに派遣されている自衛隊の日報を自衛隊が隠蔽していたことが大きな問題になっている。戦闘地域には派遣しないという派遣原則に違反しているのに、稲田防衛相は憲法九条に違反するので戦闘とはいえないと答弁した。この問題は、なんらかのかたちで裁判に反映させていきたい。それと、相談するだけで処罰される共謀罪は思想信条に対する重大な侵害であり、基本的人権の根幹に関わる問題だ。五月二一日には弁護士会よびかけの大集会が準備されている。裁判を闘いながら、共謀罪についてもしっかり声を上げていきたい」と述べた。
「門前ばらい」を
させないために
弁護団長の冠木克彦弁護士は、裁判への参加の礼を述べた後、「次回の口頭弁論もまたよろしくお願いしたい。これからが本格的な裁判になる。今日は初めに、憲法ができた時の幣原喜重郎の話に触れておかなければと、これ(「野に叫ぶ国民の意思」)を書面に入れた。憲法九条があり戦争放棄という制度があることで平和的生存権があるとわれわれは主張する。これは積極的な権利であるが、裁判所はなかなか正面から認めてくれない。その一つの対応が門前払いだ。絶対しなければいけないのは、具体的な証拠調べまで入ること。そのためには、門前払いをクリアーしなければいけない」。
「損害賠償するかしないかについての証拠調べについては証人を呼ぶ。学者証人も呼びたいが、戦争被害者も呼び、どれだけ損害が生じているかを明らかにしたい。人格権の侵害や憲法制定権の侵害についても、二五日の東京での全国弁護団会議に桜井弁護士に参加してもらって、知恵を借りたい」、と述べた。
準備書面各章
の要旨を説明
各論の説明に入り、まず第一準備書面第一章「平和的生存権の権利性・裁判規範性」について谷次郎弁護士が説明した。
第一準備書面第一章「平和的生存権の権利性・裁判規範性」については谷次郎弁護士が、第二章「被告の主張に対する反論」は桜井聡弁護士が、第三章「国賠法上保護された権利、法的利益が違法に浸食されたと認められること」については、藤原航弁護士が、それぞれ説明した。
谷次郎弁護士は、二〇一
六年一二月一五日、国連総会で採択された「平和への権利宣言」について語った。そして、人権史の流れの中に「平和的生存権」を位置づけた早野安三郎の指摘を紹介し、「日本国憲法の下での平和は、戦争の放棄と戦力の不保持という具体的な内容として理解されるから抽象的なものとはいえない」という学説を紹介した。
桜井聡弁護士は、「平和的生存権の主張は最高裁判例で否定されている」との国側の主張に反論し、最高裁は平和的生存権の権利性を否定していないことを、指摘した。藤原航弁護士は「国賠法上保護された権利が存在し閣議決定と新安保法制による集団的自衛権の行使容認により、違法に原告の権利ないし、法的利益が侵害されたことは明らか」とした上で、「気持ち焦りの限度を超えれば法的な保護に値する利益になる」と、最高裁判例を使って説明した。 (T・T)
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