2.17
2017けんり春闘第二波東京総行動
貧困と格差の促進ヤメロ
日本経団連前で抗議集会
|
争議職場をつな
いだ行動展開
2017けんり春闘実行委員会は二月一七日、各争議職場への抗議行動をつなぐ東京総行動を、けんり春闘第二波行動として終日展開した。そして昼には全体が日本経団連会館前に結集、その場で午後一二時一〇分から、日本経団連が指揮する労働者の生活と権利の抑圧に断固とした闘いを対置する、と宣言する抗議集会を、二〇〇人の労働者の結集(主催者発表)で行った。
掲げられた要求は、総額人件費抑制反対、非正規労働者の賃上げ、原発再稼働・輸出反対、武器輸出反対など。同会館前を埋めた労働者は、歩道の片隅に群がり威圧を加える私服警官の集団をものともせず、多数の警備員に守られ威風堂々の会館内に閉じこもる経団連に対し、次々に怒りの声を突き付けた。
共謀罪、働き方
改革、労契法
集会は、同実行委員会共同代表の金澤壽全労協議長の主催者あいさつから始まった。金澤さんは特に、大衆的闘争の抑圧により労働者の生活と権利の破壊を進める機能を果たしている「官製春闘」的あり方の打破の必要を強調、闘いの突き出しが求められているとして、権利破壊の攻撃そのものである「働き方改革」への攻勢的要求対置と一体的に、あくまで労働者民衆の具体的な要求を押し立てて果敢な闘いを展開しよう、けんり春闘実行委員会がその先頭に立とう、と呼びかけた。
続いて結集した労働者からは、郵政労働者ユニオン、全国一般全国協、全造船関東地協、フジビ争議団、東水労、大阪ユニオンネットワークの代表が次々に闘いの決意を表明、それに応えた。
その中で、郵政労働者ユニオンの日巻直映委員長は、共謀罪まで繰り出し戦争の道を突き進む安倍の暴走政治を許さない闘い、七二〇時間の上限などという許し難い残業規制提案に象徴される「働き方改革」の敵対性に対する残業代ゼロ法案粉砕と一体となった闘い、労働契約法二〇条裁判を軸に一九万人非正規労働者の差別的処遇に真っ向から挑む闘い、を今春闘における自分たちの三大課題にあげ、それを全力で推進すると決意を明らかにし、共に闘おうと訴えた。
また全国一般全国協の平賀雄次郎委員長は、貧困と格差の進行に何としても歯止めをかけようと課題を提起、最低賃金に張り付いた労働者の割合が年々拡大している現状の中で最低賃金の問題は待ったなしの課題、その大幅引き上げの闘いを大きな社会運動にしようと訴えた。また長時間労働の蔓延の責任は日本経団連に名を連ねる大企業にこそある、大企業こそ率先して労働時間を規制せよ、と日本経団連を直截に糾弾、八時間で生活できる条件確立にあらためて立ち上がろう、と闘いを呼びかけた。
東水労の渡邉洋委員長は、労働者の側から時短の闘いを攻勢的に進める必要を提起した上で、小池都政の下で労使協議否定の動きがあると指摘し、小池人気の陰に潜む危険な要素に対する警戒を呼びかけ、不当労働行為に対する闘いの必要を訴えた。
韓国サンケン
労働者も発言
これらの決意表明に加えて全労協の柚木康子常任幹事が、「働き方改革」について発言。まず「同一労働同一賃金」論を取り上げ、「日本的労使慣行」を尊重するとする論理立ては、現在の女性差別、非正規差別の温存そのもの、と鋭く批判した上で、それに真っ向から反撃する闘いとして、東京東部労組メトロコマース分会の労働契約法二〇条をめぐる裁判闘争への注目と結集を訴えた。また時間規制に関する「繁忙期特例」という考え方にも、人間を企業の都合に合わせて生きさせようというとんでもない人間無視、と批判を加え、企業を甘えさせない労働者からの要求突き出しを徹底的に追求しよう、と呼びかけた。
またサンケン電気(本社:埼玉県新座市)の一〇〇%子会社である韓国サンケンの組合員全員解雇攻撃との闘争で来日して行動を続けているサンケン労働者も発言に立ち、韓国地方労働委員会の裁定にしたがわない親会社の傲慢さを許さないと決意を表明、これまでの支援に感謝を表明すると同時にさらなる支援を訴えた。
集会は、これらの発言を共通の闘いとして確認し断固とした春闘を展開する、とする集約の下、同じく17けんり春闘実行委員会共同代表の松本耕三全港湾委員長の音頭で団結ガンバロウを三唱しひとまず閉じられ、参加者はすぐさま午後の総行動に移った。(神谷)
北朝鮮
キム・ジョンナムの暗殺
この現実を直視しよう
さる二月一三日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の最高指導者だった故金正日(キム・ジョンイル)総書記の長男・金正男(キム・ジョンナム)がマレーシアのクアラルンプール国際空港でVXと見られる毒物によって殺害された。マレーシアの警察当局は実行犯のベトナム国籍とインドネシア国籍の女性に続き、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)籍の男一人を逮捕し(二月一七日)、さらに北朝鮮籍の男、四人を国際手配した(二月二三日)。北朝鮮側は亡くなった男が金正男であることを否定し、キム・チョルという北朝鮮の外交官ビザを持った男が心臓発作で死亡したと主張している。
メディアは連日、多くの時間を使って、この衝撃的な事件をセンセーショナルに報道している。われわれは、スキャンダルに満ちた報道を批判するだけではなく、この事件を正面から分析する必要がある。北朝鮮の相次ぐミサイル発射、核実験といった軍事的挑発や、社会・経済的危機の深化は、明らかにそれを口実とした米日韓の臨戦態勢の一触即発的緊張を加速させているからである。
戦争への道を断ち切ることこそが、北朝鮮における自由・人権・民主主義の実現と貧困・飢餓の克服を支援する闘いにつながる。そして日本帝国主義の朝鮮半島植民地支配への謝罪と補償のための行動と、国境を超えた人権と民主主義のための闘いはまさに一体のものである。そのためにもわれわれは、北朝鮮におけるあらゆる自由と人権の侵害を批判することにためらいを見せてはならないのである。
北朝鮮分析に関して本紙上で健筆をふるっていた故樋上徹夫同志から、東京新聞の五味洋治記者による金正日(キム・ジョンイル)総書記の長男金正男(キム・ジョンナム)との一五〇通にのぼるメールのやり取り、そして二〇一一年一月に行われた「単独インタビュー」を収録した『父・金正日と私 金正男独占告白』(文芸春秋刊 二〇一二年一月)を、ぜひ読んだ方がよい、と勧められたことを思い出す。金正日総書記が二〇一一年一二月に亡くなり、本書が刊行されてすぐのことだった。
金正男はきわめて慎重にではあるが、本書に収録したメール、インタビューの中でも「社会主義における権力の三代世襲」が「もの笑いの対象」でしかないこと、「経済発展を成し遂げるために改革・開放は必須」ということを主張している。この点では、金正男の支えであった伯母の夫・張成沢(二〇一三年一二月に処刑された)も、経済政策では基本的に同様の考えであったことがあらためて確認できるだろう。
限られた選択の中であったとはいえ、北朝鮮の困難な状況の中でもさまざまな追求は行われてきたし、これからもさらに続けられるに違いない。
今回の金正男暗殺事件を通じて、われわれが何よりも強調しなければならないのは、北朝鮮の現実に目を閉ざすことではなく、直視することによって、何が求められているのかを論議し、模索しつつ行動することだろう――その道がいかに困難であろうとも。(河村)
投書
『父・金正日と私』を読んで
S・M
『父・金正日と私 金正男独占告白』(五味洋治著、文藝春秋)を読んだ。
二〇一一年、北朝鮮の最高権力者、金正日(キム・ジョンイル)総書記が死去した。これは、五味洋治氏と金総書記の長男・正男(ジョンナム)氏の交流から生まれた本だ。
この本を読むと、金正男氏が三代世襲に反対であること、しかし北朝鮮内部の安定のために三代世襲を強行しなければならなかったのならばこれに従わなければならないと考えていること、北朝鮮の経済発展のためには改革・開放が必要だと考えていること、北朝鮮を追い詰めれば北朝鮮の強硬派に力を与える結果を招
くと考えていること、弟の金正恩(キム・ジョンウン)氏には「北朝鮮の住民が豊かに生きていけるようにしてほしい」と願っていることなどが分かる。また、金正男氏が核兵器や原発に反対であることも分かる。
北朝鮮は、どこへ行くのか。どうしたら北朝鮮の民衆が幸せに暮らしていくことが出来るようになるのか。いずれにしても、北朝鮮対米日韓の軍事対立の激化からは何も生まれないのではないか。この本を読んで、私はそんなことも考えさせられた。
(2013年3月31日)
最近(2017年2月13日)、金正男(キム・ジョンナム)氏がマレーシアのクアラルンプール国際空港で死亡した。マレーシアの警察長官は金正男氏の遺体からVXが検出されたとの暫定結果を発表した。VXは化学兵器のひとつであるらしい。金正男氏は政治には関わらないようにして来たのに。暗殺だとしたら、あまりにもかわいそうだ。
(2017年2月27日)
コラム
冬の公園
陽気に誘われ近くの公園に出かけた。途中「缶コーヒー」を買いぶらりぶらり。通称「駅裏」と呼ばれた一帯は戦後〜八〇年代まで「猥雑感」が漂う街だった。
◆就職後、初めての下宿は公園から続く坂道を下った駅の近く。夕暮れ、亜炭の独特の匂いを包み込んだ煙が流れ、魚屋の店先から魚を焼く香ばしい匂いが漂い、踏切と交わる道路は人、自転車、車で溢れていた。しばらくぶりに来てみると記憶が呼び覚まされる。昔からこの場所で営業している理髪店。すぐ裏手にあった小さな広場は、子どもたちの「溜まり場」だった。夕暮れ時、「紙芝居」のおじさんがやってきて、割り箸にからめた水飴、のしスルメ、駄菓子等を口にしながら紙芝居に見入るキラキラ目がそこにあった。駅裏も再開発のなかで街の様子が大きく変化している。蝋梅の花が開いたそうで、行ってみると飴色の花から仄かな香りを漂わせていた。梅の花芽も赤く膨らみ、もう少しで開きそうである。
◆この公園は明治以降の戦争の歴史を背負っている。「明治〜昭和」期の侵略と戦争の時代に「陸軍歩兵第四連隊」の兵舎があり、漆喰塗の白壁に囲まれた洋風木造二階建ての旧兵舎は、一四〇年の歴史だそうである。資料館となった兵舎の中には、粗末な布製の軍服、夏・冬の靴下、外套、寝台、日用品、そして三八式歩兵銃。同じフロアに「戦中・戦後」の庶民の生活用品、作業工具、農民が使っていた道具や衣類、「蓑」や「藁靴」「草鞋」等「藁細工」が陳列されている。乏しい材料を工夫・加工し生活に利用した父母の世代の苦労を見る。飾ってあった資料、写真は若人を、働き手を次々と戦地に送り込んだ軍国主義の時代を忘れてはならないと訴えているようだ。進軍ラッパが鳴り響き軍靴の音が轟いていた広大な敷地は、市民の憩いの場となって久しい。
◆訪れる人も少ない「冬の公園」の景色はどこか寒々としている。だが折々の季節の色を紡いでいるのも確かだ。もうじき春。美しい枝垂れ桜が咲き誇る公園は、思い思いに「花見」の一刻を過ごす人達で夜中まで大賑わいになる。桜咲く季節は、職場の仲間との花見で大いに盛り上がったあの日。仕事、世間話、下世話な話、日頃の鬱憤を晴らす「無礼講」の時間を過ごし「二次会」「三次会」へと流れていった遠い日の出来事を想い出す。
◆「テロ等準備罪」と名を変えた共謀罪。根底に潜む「国家統制」の意図は隠そうにも隠せない。「壁に耳あり障子に目あり」の世の中になったら、庶民が集う「花見の宴」での自由闊達な談笑も無くなってしまう。妥協しても成立すれば「よし」とし、後はいくらでも拡大解釈するという思惑を秘めた「等」の一文字。
イラク戦場からの帰還兵は「私たちはテロリストと闘っていると教えられました。ところが本物のテロリストは私だった。そして本当のテロリズムはこの占領だ!」と訴えた。「冬の兵士公聴会」での告発である。
シュプレヒコールの声が街を流れ色とりどりの旗が翻り進む。食糧を求め仕事を求め戦争を憎み平和を願い、夥しい数の民衆が権力への怒りの声をあげ突き進んだ道を、明日のために辿り行く。「主権者は私だ!」と胸に刻みながら。 (朝田)
|