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    かけはし2017.年3月6日号

「日の丸・君が代」処分撤回を


「建国記念の日」反対

2.11

「日の丸・君が代」強制反対

児童・生徒の五輪動員やめろ

350人が参加


 【大阪】「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク主催の、恒例の二・一一集会が大阪市立港区民センターで開かれ、三五〇人の市民が参加した。
 はじめに、「建国神話と『明治』回帰に反対する闘いを!」と題して、黒田伊彦さん(大阪ネットワーク代表)がアピールした。

愛国心教育と
戦争国家造り
「今年は徳川幕府の大政奉還から一五〇年。明治天皇誕生日を明治節(一九二七年制定)にしてから九〇年。現在は文化の日だが、この日を「明治の日」にしようとする動きがある。稲田防衛相は、「神武天皇の偉業に立ち戻り、日本のよき伝統を守りながら改革をすすめるのは、明治維新の精神だ。その精神を取り戻すべく心を一つにがんばりましょう」と、日本会議国会議員懇談会の「明治の日を実現する院内集会」で述べた。 また、自民党安藤裕衆議院議員は昨年一一月一七日の衆議院憲法審査会で、「本来天皇の地位は日本書紀における『天壌無窮の神勅』に由来するものだ。日本最高の権威が国会の下に置かれている」と主張した。
また、「安倍首相は今年一月四日、伊勢神宮で年頭所感として政治方針を表明した。天照大神の神威性に依拠して政策支持を受け入れさせる魂胆だ」と、明治回帰を目論む政府を批判した。
さらに、最高裁は「日の丸・君が代」への起立斉唱は慣例上の儀礼的所作で思想・良心の自由への間接的制約になるが、起立斉唱せよとの職務命令は合憲である。だが、累積加重し、減給・停職等に至る懲戒処分は裁量権の逸脱濫用である」とし、実質上戒告までを容認している。ところが、大阪の国旗国歌条例は、教職員に率先垂範して起立斉唱させることにより、「我が国と郷土を愛する意識の高揚に資する」ことを服務として命じている。このように、大阪の条例が最高裁判決すらも否定する内容になっていることを指摘した。

「校門一礼」運動
のねらいは何か
続いて、高嶋伸欣さん(琉球大学名誉教授)が、「オリンピック・愛国心教育と『戦争をする国』」と題して講演をした。(別掲)
高嶋さんは、琉球大学の近くにある県立高校の校門横に掲げられている「校訓〜自主・礼節・協調〜実践 校門一礼運動」という看板のことから話を始めた。この看板は、同窓会・PTA・生徒会の名前で掲げられているが、実はある運動部主導の自発的とりくみで、ほとんどの生徒たちは気にもとめていないとのことだが、高嶋さんは、戦時中の御真影や奉安殿への最敬礼のことにふれながら、このような動きの危険性を指摘した上で、実教出版『高校日本史A・B』採択問題と東京オリンピック・パラリンピックを口実にした「日の丸・君が代」問題について報告した。

子どもに疑問を
持たせぬ攻撃
次に、闘いの報告第一部。クリスチャンである奥野泰孝さん(戒告・減給処分)は、起立斉唱が慣例的所作だという判決について、映画『沈黙』を例に出して、「神に従う苦しみと神を裏切る苦しみのどちらを選択するかマニュアルはない、踏み絵を踏むかどうかぎりぎりまで悩む。卒業式の式場外の任務は、処分を避けるための温情なのに、どうして従わないのかと思われている。しかし、信仰は狂信ではないかぎり、いつでも懐疑を伴っている」と述べた。
パギやん(趙博さん)のライブに続いて闘いの報告第二部。辻谷博子さん(戒告・減給処分)「思想良心の自由の問題は、憲法学者の間でも論議が始まったばかりだ。支援の会の二月総会で、西原博史さんを招く」、佐藤訓子さん(戒告・再任用不合格)「地裁で損害賠償請求却下された。控訴した」、井前弘幸さん(戒告)「七名で共同提訴した。最高裁は戒告一回は認めているが、大阪では、起立命令そのものが違法だというものを目指す」、菅平和さん(不起立で再任用不合格)「再任用は合格していたが、不起立で合格取り消しになった。三人で訴訟を起こした。府教委は、外見を理由に、形から押しつけてくる。子どもが疑問を感じない時代が来る前にこの流れを止めたい」、松田幹雄さん(戒告)「歴史をきちんと教え、子どもが判断できるようにしたい」、山口広さん(戒告)「大阪弁護士会が起立・斉唱命令は人権侵害だとの勧告書を出した。この勧告書を配って広げる活動をしている。反応は東京と似ている」。

東京五輪と連動
した動員攻勢
ティーチインとして、三人(教科書採択問題、オリンピック・パラリンピック教育批判・民族学級から)がそれぞれ訴えたいことを述べ、高嶋伸欣さんに質問し答えがあった。
教科書問題:大阪府下の中学生五人に一人が育鵬社教科書(大阪市・東大阪市・河内長野市・四条畷市が採択)。採択には市民アンケートが重要視されるとのことで、育鵬社教科書採択のため、会社員を動員してアンケートを書きに行かせた会社がフジ住宅であることが判明。大阪市教育委員をやっていたサンケイ系の高尾氏が情報を流した疑い濃厚だ。このことは今問題になっている。育鵬社は、道徳の教科化に伴い、小学校用道徳教科書をつくっている。文科省はこの夏、検定基準を改悪して、道徳の教科化にあわせようとしている。教科になったら、評価はどうなるのか。
高嶋:文科省は文章表記をすると言っているが、どういうやり方であれ、教師の主観による評価は避けられない。職権濫用となる。家永訴訟では勝訴した。教師が評価権を放棄できるかどうか。
民族学級から見て:民族教育は、阪神教育事件の成果として大阪府知事との覚え書きに基づいて府内三三校に設置された。一九七〇年代には大阪市内で五校だけが残った。民族学校・民族学級は、歴史・民族の言葉を学び自分が何者であるかを認識する場であり、抵抗の砦だ。現在、大阪市立小中学校の四校に一校の割合で、一〇六校に民族学級が設置されている。国際理解教育事業として非常勤嘱託員一五名が担当している。何が差別なのか考えていける日本人教師とのつながりをつくりたい。
オリンピック教育:東京都教委は有識者委員会を設置し、最終提言を出した。教育の目標の中に、【日本人としての自覚と誇り】が上げられている。基本的視点では、【全ての子どもたちを東京五輪に動員する】ことが重視されている。そして、教育実施方針では、育成すべき五点の中に、ボランティアマインド、日本人としての自覚と誇りが上げられ、それを伸ばすための四つのプロジェクトが組まれている。安倍首相は、昨年九月の所信表明演説で「四年後の東京オリンピック・パラリンピックは必ずや世界一の大会となる。この大会が我が国の未来を切り拓く」と述べた。まるで、国威発揚のためのオリンピックのようだ。批判ビラを撒いていると、こんなビラ撒いていいのかといわれる。生徒は、大丈夫ですといって過ぎていく。
高嶋:学校教育法五一条では、高校生には判断力を育成、小中学生には公正な思考力を育成するとある。児童生徒にビラを受け取るななどいう規制をするのは、法律違反であり、人権侵害に当たる。

 最後に六団体から連帯のアピールがあった。
東京から:根津さんの停職六カ月処分は取り消された。
ピースおおさかの危機を考える会:リニューアルしたとき加害展示を撤去したので、その課程を情報公開したが開示されなかった。そこで理事長・府知事・大阪市長相手に裁判を起こした。
高槻市立小中学校の「日の丸」常時掲揚を許さない会:ポールに旗がないのはよくないというのが理由とのこと。当局は掲揚の根拠を示せなかった。
自治体の自衛隊への「協力」問題を考える:茨木市は二万四〇六三名分の名簿を、本人に知らせず自衛隊に提供した。自衛隊員募集に使うと自衛隊にいわれたからというのが理由。全員の名簿を使ったのか選別したのか、PC入力は外部委託したのか、使った後どうしたのか何も分からない。このような問題について条例がないのが問題だ。
日本軍「慰安婦」問題・関西ネット:釜山にも少女像が設置された。安倍首相は、日韓合意に反するといった。釜山の像は市民が建て区長が承認したもの。日韓合意と関係ない。安倍首相の態度がむしろ解決を難しくしている。大阪市と姉妹都市のサンフランシスコ市にも慰安婦像が建てられる。このことで大阪市吉村市長は、日韓合意に反すると抗議文を送った。これも日韓合意と関係ない。マスコミがきちんと伝えないことが残念だ。
入れ墨調査拒否者への処分撤回を求める会:入れ墨調査拒否での処分は裁判では負けたが、これに伴う配転問題では最高裁で勝訴、安田さんは運転手の仕事に復帰できた。
集会決議を採択して終わった。   (T・T)

高嶋伸欣さんの講演から

国家主義の総動員許さぬ

 一七年四月から使用される『高校日本史A』は、記述が幕末からスタートする教科書で、センター試験向きではないが、実業高校生には人気の教科書だとのこと。本文ではなく欄外の記述はかなり自由が認められたという。実教出版ではこの欄外に、【政府は「日の丸・君が代」は強制しないことを国会審議で明らかにしたのに、一部自治体で公務員への強制の動きがある】ことをのせた。すると、この部分は削除された。また、『高校日本史B』では、【日本の侵略加害の事実を既述する教科書を「自虐的」と非難する立場の人々が執筆した教科書があらわれたことなどに対してアジア諸国から強い批判が起こり、この教科書の採択をめぐって大きな市民運動が起きた】ことを欄外に載せた。この部分も削除された。ところが、検定合格した『高校日本史A』では、欄外で削除された内容が、本文に加筆されたという。
 都教委は、実教出版の教科書を採択させない態度を取ったので、裁判闘争になった。 また、オリンピックの時に使用される旗についてだが、これはオリンピック委員会では国旗ではなく、呼称としてはNOC(各国・地域の国内オリンピック委員会)の旗だ。この点がマスコミなどでも明確化されていないことに加え、実態は、NOCの旗は各国の国旗を使っているという問題がある。
 歌もNOCの歌だが、実際に使用されるのは国歌だ。競技はそれぞれの個人の選手の競い合いだが、国対抗のように扱われている。東京都教委は、オリンピック・パラリンピック学習読本をつくった。表彰式では国旗を掲げ国歌が演奏されること、開会式で選手たちは自国の国旗を先頭に行進する、などと書かれマインドコントロールを狙っている。まさにIOC憲章違反である。この読本は不要支出であると、住民訴訟をする予定だが、この問題に対してマスコミへの働きかけも行っていきたい。

2.11

反「紀元節」行動に100人

天皇「代替わり」を問う

Xデーの攻防は始まっている

 二月一一日、日本キリスト教会館で「天皇制はいらない!「代替わり」を問う 2・11反「紀元節」行動」(主催:実行委)が行われ、一〇〇人が参加した。
 安倍政権は、八月の明仁天皇の天皇制延命・強化に向けた憲法違反である「生前退位表明」(二〇一八年をメドに新天皇に「譲位」するために皇室典範と関連法規の改定を要求)強行に対して、「有識者会議」(天皇の公務負担軽減等に関する有識者会議)を設置し、明仁天皇一代限りの「生前退位」を認める「特例法」で対応しながらグローバル派兵国家建設と憲法改悪プロセスに組み込もうとしている。二〇一八年に天皇制統合装置の一環のイベント「即位・大嘗祭」を設定し、天皇賛美ショーを演出する。
 「天皇代替わり」状況の始まりの中で安倍首相は、デッチ上げの「紀元節」(初代神武天皇の即位)を「祝日」とした「建国記念の日」において四年連続でメッセージを出し、「日本、そして、世界の平和と繁栄のために能う限りの力を尽していく大きな責任があります」、「伝統を守りながら、同時に、変化を恐れることなくより良い未来を切り開く。その決意を新たにしている」などと居直った。つまり、米軍との共同実戦体制を構築しグローバル派兵国家へと民衆をナショナリズム的に統合していくことを強調した。連動して神社本庁など天皇主義右翼らは「日本の建国を祝う会」(明治神宮会館)を行い、「あたらしい憲法の制定を目指して、この機にさらなる努力を積み重ねていく」と意志一致している。自民党の高村正彦副総裁も「党是である憲法改正に向けて議論を深める」と述べ、自民党改憲草案を軸にした改憲勢力の組織化を推し進めていくことを呼びかけている。
 安倍政権と天皇主義右翼勢力が一体となった改憲、戦争国家作りを支える天皇制の延命強化を許さず、天皇制賛美の「建国記念の日」(紀元節)反対行動を取り組んだ。

弾圧をはねのけ
元気にデモ行進
前半の闘いは、反「紀元節」行動のデモだ。日本キリスト教会館をスタートに早稲田・高田馬場など一帯にわたって「紀元節反対」「天皇も天皇制もやめちまえ」「元号はいらない」「天皇制いらない」のシュプレヒコールを響かせた。途中で右翼らがデモに対するいやがせを行ってきたが、挑発に乗らず毅然とデモを貫徹した。なお警察機動隊は、不当なデモ規制を行ない、抗議する仲間たちに対して公安政治警察らは「警告 警察官の指示に従え」などのプラカードを提示しながら不当逮捕の機会をねらっていた。警察権力の不当弾圧を糾弾する。

反天皇制の共同
を打ち立てよう
後半は討論集会。
主催者から集会基調が報告され、@天皇「代替わり」過程のなかでA2・11と右派の動向B新天皇即位・「大嘗祭」に反対しようC反天皇制運動の大衆化について提起。
さらに「2020東京オリンピック・反テロを口実とした共謀罪の国会審議が進んでいる。東京オリンピックの名誉総裁には新しい天皇が就任し、一連の儀式を終え、新天皇として国際舞台にデビューするイベントの場としても使われる。その意味で、オリンピック警備と天皇警備も連動するだろう。本格的な天皇『代替わり』に反対する運動陣形・そのためのことばと表現を展望していこう」と呼びかけた
五人の仲間から問題提起が行なわれた。
井上森さん(立川自衛隊監視テント村)は、「平成Xデー状況の襲来 『11・20天皇制いらないデモ』襲撃事件から考える」をテーマに、「まったく惨めな、まったくの無権利状況の再現出と再認識こそ、この日のデモの最大の成果だ。まさにその場所に反天皇制の共同性を打ち立てることだ。破られても破られても、いくつもの旗を掲げていくことだ。平成Xデー闘争の入口にして、最大の成果になるだろう」と集約した。
京極紀子さん(「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会)は、一九八九年一月七日の天皇裕仁死去前後からの天皇漬け状況に抗して「天皇のいない社会を選択する神奈川共同声明」、「天皇代替わりに対するネットワーク」などを総括的に紹介し、「日の丸・君が代」強制を許さない神奈川の会の闘いの成果と「すでに始まっているアキヒトのXデーと日常的に対決する」ための諸課題を提起した。
酒田芳人さん(安倍靖国参拝違憲訴訟弁護団)は、冒頭、違憲訴訟が二月六日の第一二回口頭弁論(東京地方裁判所一〇三号法廷/午後一四時)で結審することを報告し、傍聴等さらなる支援を訴えた。
さらに、靖国神社職員有志の『自衛隊の殉職者も靖国神社に合祀すべきだ。憲法改正されて正規軍が組織されれば、日本軍戦死者も出てくる。戦死者本人の宗教に係わりなく平等に扱うべきだ』という主張が靖国ホームページで掲載されていることを紹介し、自衛隊員の戦死と靖国神社の新たな繋がりを準備していることを批判した。
桜井大子さん(女性と天皇制研究会)は、「天皇メッセージと天皇制の家父長制・血統主義家制度」をテーマに@天皇メッセージで天皇の家父長制的資質が露呈したことを批判A憲法二四条改悪問題と自民党改正草案を取り上げ、家族国家論の強化を許さず、「女性・女系天皇、女性宮家問題に絡んで天皇制の『民主化』と称する傾向がある。いったいどのような社会に変えようというのか。天皇制廃止しかない」と強調した。
藤岡正雄さん(はんてんの会・兵庫〈兵庫反天皇制連続講座〉)は、「『おことば』をめぐる『平和・護憲天皇』論を批判する」というテーマから、「生前退位」問題後のマスコミ等の天皇制賛美キャンペーン状況に触れながら批判論者として横田耕一(憲法学者)、中嶋啓明(通信社記者)、伊藤晃(元千葉工業大学教授)、纐纈厚(元山口大学副学長)、反天皇制運動連絡会の主張を紹介した。「『おことば』をめぐる論争が始まった今、私たちも全国の労働者・市民の力を合わせ、『天皇制廃止』の共同の作業を進めたい」と述べた。
提起後、討論に入る検証作業に入った。最後に今後の取り組みと方向性を確認した。       (Y)

 




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