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    かけはし2017.年2月27日号

米軍に対峙する住民の思い


投書

成田平和映画祭実行委員会:「標的の村」上映会

高江ヘリパッド建設に抗して

沢中 仙

 二月五日、千葉県成田市のもりんぴあこうづにて成田平和映画祭実行委員会の主催で、映画「標的の村」(三上智恵監督 2013)の上映会があり、行ってきました。まず小泉英政さんが実行委員会から「トランプ政権が誕生し、世界を考える上でとても貴重な映画だ」とあいさつをしました。
 映画は一九九六年日米両政府のSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意により「基地の整理縮小」による「北部訓練場の返還の代替施設」として沖縄本島の東村(ひがしそん)高江にヘリパッドを計画し、住民への説明や合意がないまま座り込み闘争を排除して二〇〇七年工事を強行したところから始まり、二〇一二年普天間基地でのオスプレイ配備反対闘争で終わります。その闘いの現場をカメラはとらえつつ、かつてベトナム戦争時代、北部訓練場での米軍の演習に「ベトコン」(南ベトナム解放民族戦線の兵士)役で高江の住民がかり出されていたという事実をえぐり出します。米軍は高江の村落を「ベトナム村」と呼び、やんばるの森をベトナムの森林に見立て、村民を仮想敵にして軍事演習を行っていたのです。元アメリカ海兵隊員の証言では、枯葉剤の散布やナパーム弾(焼き尽くすことを目的に使われた焼夷弾の一種)で家を燃やす訓練まで行っていたそうです。
 当時沖縄本島北部の高江一帯は、陸路がなく海上からしかアクセスできまなかったそうです。村民は「食事がもらえる」ということもあったようですが、「断れる雰囲気ではなかった」そうです。また昨年秋に最高裁の不当判決が出た沖縄防衛局が起こした「通行妨害禁止を求めた訴訟」(いわゆるスラップ裁判)の闘いも緊張感を持って追っています。ぜひこの映画を多くの人に観てもらい、冒頭小泉さんがおっしゃった通り、トランプ政権発足後の世界情勢を考える糸口にしてもらいたいと思います。
 上映後監督の三上智恵さんが登壇しましたので、発言を一部紹介します。

三上智恵監督の講演

 「標的の村」がなぜ大事かというと、これは辺野古の前哨戦だからだ。辺野古と高江はまったく一緒の問題だ。辺野古はオスプレイが一〇〇機配備される場所、高江と伊江島がその主な訓練場所だ。今辺野古は大変なことになっている。ポセイドンという無人島平島(辺野古の基地建設予定地にある島の半分くらいある船、大型特殊船)がやってきて、明日から大きいコンクリートが投下される、その状況でも寒い中カヌーで反対をする理由は、「これ以上沖縄の基地負担が増えるのがいやだ」という理由だけで反対をしているのではない。そのようなレベルではない。
辺野古建設の目的は軍港建設だ。核兵器や化学兵器があるといわれている辺野古弾薬庫と直結でき、かつ沖縄には大浦湾しか深い海がない。私たちは普天間基地がきついからという理由で騙され続けてきた。沖縄の放送局がどんなにレポートとしても全国のマスコミは追いかけてきてくれない、伝えてくれない。辺野古は軍港と弾薬庫と二本の滑走路が一体となった出撃拠点になってしまう。普天間基地は戦争の出撃拠点としては全然使えない場所だ。

故郷を二度と
戦場にさせない
いま辺野古に基地ができてしまうと、アメリカが「ならず者国家」と決めた国に攻撃をしにいく。オスプレイを積めるように改造された強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」が今佐世保にいるが、佐世保にいても沖縄に来なければ何の意味もない。その強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」がオスプレイを積んで「ならず者国家」を攻撃する出撃拠点に辺野古がなってしまう。
千葉県にも航空自衛隊などの基地があるが、皆さんは基地の被害というと何を想像されるだろうか。騒音、環境汚染、レイプ、殺人、放火などたくさんあるが、そんなものとは比べものにならないくらい恐ろしいのは、日本の皆さんは基地を訓練するところだとか抑止力を持つ場所だとかいい面だけを思っているが、基地は戦争に使うために置くのであって訓練するために置くのではない。仮に攻撃されてもいい場所、出撃に使いやすい場所を選んで基地にしていく。一番怖いのは標的にされることだ。ここから攻撃しにいくから標的にされる。
今の映画の次に辺野古を描いた「戦場ぬ止み」(2015)を撮り、三作目として作った「標的の島〜風かたか〜」(3月25日ポレポレ東中野で公開予定)というドキュメンタリー映画は宮古島や石垣島が本当の訓練の標的になるというありえない話だ。石垣島と宮古島に自衛隊が配備されようとしている。反対勢力はあるが、全然まだ弱い。ことの重大さに石垣や宮古の人は気づいていない。辺野古を止めたとしても自衛隊を石垣や八重山に置いてしまったら沖縄県は必ず戦場になる。そのことを考えてものすごく焦りこのドキュメンタリーを作った。
先島戦争という話が出ている。この先島諸島を戦場にするという計画をアメリカが持っている。中国の軍事費がアメリカのそれを超すのが計算上出ている、その軍事力を背景に中国が海洋資源目的で太平洋に出てくるのは目に見えている。アメリカは「エア・シー・バトル構想」という計画に基づき日本列島から台湾に連なる線を第一列島線という防波堤に見立てて、ここで中国を止めるという戦略に二〇一〇年から入っている。日本の防衛省も了解している。
その第一列島線から中国を攻撃するという事態になると、中国が核兵器を出してきて全面戦争になりかねないので、中国を攻撃しないで、戦闘をできるだけ島嶼部でやる、日本列島も含まれる。いま宮古、石垣のあたりを中国の軍艦が頻繁に通ると騒いでいるが、ここに自衛隊を置くというのは、これだけ聞くと「中国も大変だし尖閣もあるから、あの辺りに自衛隊を置くのはいいんじゃない。なんとなく安心なんじゃない」と日本中の人が関心を持たないし反対もしてくれないのだが、これがアメリカの考えている日本を舞台とした制限戦争、日本または韓国を舞台とした小さな小競り合いをおこすことがアメリカにとって有利だという作戦だ。
米軍と自衛隊は今後一体となって行動するし、もっといえば中国が攻撃する事態になったときに、中国のミサイルは南西諸島を射程距離においているので、米軍は即日撤退する。一日ですべて撤退できるそうだ。中国のミサイルが届かないグアムやハワイまで撤退する。戦うのは日本の自衛隊だ。中国と戦う事態になったら、韓国軍と自衛隊が対処すると「エア・シー・バトル構想」に書かれている。
いまだに日本人は中国が攻撃してきたら米軍が戦ってくれると思っているが、それは二〇〇六年の約束の中で米軍は撤退する。戦うのは日本の軍隊。現在水陸機動団という日本版海兵隊を作っている。そこまで事態が進んでいるが、全く報道されない。だから私が放送局を辞めてまで映画にした。ぜひ次の映画を観てほしい。

2.3

「止めよう共謀罪」神奈川集会

人々に知らせ成立阻止へ

治安維持法と同質の法案だ

 【神奈川】二月三日、「止めよう!共謀罪」神奈川集会が横浜で行われた。主催は秘密法反対・かながわ実行委員会、盗聴法に反対する神奈川市民の会、日本国民救援会神奈川県本部、日本キリスト教団神奈川教区・秘密保護法反対特別委員会、さよなら原発・神奈川/オルタナティブ神奈川、住基ネットに「不参加」を!横浜市民の会、すべての基地にNO!ファイト神奈川の各団体、後援は神奈川平和運動センターである。会場の一室は一〇〇人以上の参加者であふれ、法案成立を許さないという熱気でむんむんとなった。
 この日は弁護士の海渡雄一さんが国会闘争などの情勢を踏まえて、今回の法案を平明に解説するというものだった。
 二〇〇六年国会で小泉内閣が廃案にひっこめた話にはじまり、現在の「共謀罪」すなわち「テロ等組織犯罪準備罪」のまやかしを、海渡さんは語った。
 まず、国際越境犯罪条約を批准するために共謀罪が必要だという論理の矛盾は致命的だ。この条約は二〇〇〇年にパレルモ(シチリア島)で採択され、マフィア(越境資金洗浄)撲滅に対して闘い爆殺された判事への追悼という流れで各国の承認が続いたにすぎない。いわゆるテロ行為と意味合いが異なるわけだ。
 第二に共謀罪は、密告奨励罪でもある。共謀したことを盗聴以外にキャッチするとすれば会議出席者などが漏らすしかない。 
 第三に「共謀罪」の成立は盗聴捜査の拡大を伴う。共謀罪が、秘密保護法、盗聴拡大と三位一体になるさまは、治安維持法が軍機保護法、隣組監視と一体である関係に対応する。
 第四に、罪刑既遂主義で定めた刑法の体系が壊れてしまうと海渡さんは訴える。現行刑法で未遂一〇〇、予備罪二〇、共謀は数点にすぎないが、今回の「共謀罪」では六〇〇以上の罪状を新設するという。そんなにしなくても安倍が国会答弁で例に持ち出したハイジャック、あるいは爆弾持ち込みなどの重大犯罪について、事前に処罰する各種法制で事足りる。法体系については、日本政府も以前は同じ理由で「共謀罪」を用いないと言明していたのだ。
 そして秘密保護法ですでに共謀罪の一部は先取りされていることなどを踏まえ、海渡さんが強調したのは「自分(の考え、行動)が良い悪いではない。監視されてはならないコミュニケーションというものがあるのではないか」というところだった。
 また集会の中で、「横浜事件を生きて」というビデオ上映もされ、神奈川県警特高課から弾圧を受けた人たちが、敗戦後、当該警察官らに対する共同告発などを通して裁判をたたかった様子がうつされている。特高警察の面々は組織を自足的に維持膨張させるために暴力を用いた。過酷な弾圧の中で拘束され、拷問と「自白」によって分断されてゆく被弾圧者周辺の光景が心に刻まれる。
 海渡さんは「共謀罪」の問題提起に続いて、治安維持法の経過についても振り返っている。当初限定されていた弾圧対象、弾圧手段が恣意的に、やがて無秩序に拡大されてゆく深刻さを現在の「共謀罪」阻止運動の広がりに引き付ける必要がある。
 講演後、会場から、アメリカの「共謀罪」提案の「指示」についての分析、公開されたばかりの映画「スノーデン」の評価、などについて質疑があり、街頭で知らせていかないとならないという呼びかけがあった。今国会の阻止に全力を尽くしていこう。(海田)

コラム

原発政策の破綻


 米原発損失七一二五億円・債務超過一九一二億円、二月一五日の朝刊は「東芝解体の危機」を報じた。東芝は一六年四〜一二月期の決算の発表を延期させたが、赤字は四九九九億円の見通しとなった。
 東芝は一五年度にも不正会計が発覚して四六〇〇億円の巨額な赤字を計上していた。その後、経営立て直しのために白物家電を中国の美的集団に五四〇億円で売却し、また医療機器子会社をキャノンに六六〇〇億円で売却した。
 しかし二年連続の巨大赤字は、主力の半導体事業をも分社化して売却することを余儀なくさせた。ちなみに一六年九月までの東芝の営業利益九六八億円の内、半導体事業が七八三億円を占めている。半導体事業売却はまさに「東芝解体の序章」といっても過言ではない。
 こうして債務超過(借金が資産を上回る)におちいった東芝は、東証1部から2部に降格することになった。債務超過を解消して一定の基準を満たせば1部への再昇格も可能なのだが「直近五年間の有価証券報告書に偽造記載がないこと」という要件があり、一五年度決算で不正を行った東芝の昇格は「いばらの道」である。
 また東芝が決算発表を延期した理由にあげている「WHが一五年に買収した米原発建設会社の資産価値評価にあたって、WH経営者による不適切な圧力があった」ということも、どこまで明らかにできるのか不明である。そうなると今年度の正しい決算報告ができるのかどうかも疑わしい。
 今回の決算発表の延期も、そのことを監査法人から指摘され決算を承認しなかったからだ。ちなみに一五年度の東芝不正会計を見抜けなかった監査法人には、金融庁が二一億円の課徴金を支払うよう命じている。
 原発事業失敗による東芝の惨状は、安倍政権の原発建設・輸出政策を破綻させた。政府(経産省)は福島原発事故以降、原発事業の停滞が続くなか東芝・日立・三菱重工の「原発御三家」の統合による国際競争力の強化で輸出を進めたいとする思惑をもっていた。しかしそれも各企業体ごとに炉の型が異なっていたり、連携する海外企業の違いなどで見通しは立っていなかった。
 そして昨年末に東芝が「米原発事業で数千億円の損失」を明らかにすると、三社は足並みを揃えるように原発事業縮小などを発表した。
 東芝は海外原発事業の縮小(英子会社株の売却)と、原発建屋建設から撤退し廃炉・メンテナンスのみにすることを発表した。日立もウラン濃縮新技術開発事業からの撤退を決め、七〇〇億円の損失を計上するとともに「原発事業は収益が見込めない」と判断して「別のことに注力する」と発表した。三菱重工は日本原燃と仏アルパ再建支援のためにアルパ株一〇%分の融資(六〇五億円)を決定したが、社長は「東芝問題は対岸の火事とは思っていない」、国策にどう協力するかは「それぞれの民間企業の経営判断だ」と答えた。
 また東芝への融資継続を決めた三井住友・みずほなどの主力三行は東芝への経営管理を強め、原発事業の情報開示・新規受注の停止を要求する。
 「私は原発で会社をつぶしました」。東芝危機は日本企業の原発事業からの撤退の始まりとなろうとしている。「脱原発は可能だ!」。政府の巻き返しと対決しながら台湾の脱原発に続こうではないか。(星)


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