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    かけはし2017.年2月13日号

闘いを通じた運動の継承


松本耕三 全港湾委員長に聞く(下)

自覚した労働者の横断的団結へ

外に向かう闘いの意識化を

若い世代にどうつなぐか

――労働組合運動の再建という問題が提起されていると思いますが、それについて、全港湾として、あるいは松本委員長として、課題は何だと考えていますか?

 何をしていくかということについて私は、一つは足場をしっかりしていくということで、自分たちの産別、全国港湾の強化をまずメインにしていきたい。二つ目はやはり地域共闘なり、単産共闘なり、組合をどうやって内向きではなく外に向かって広がっていくのか、ということをやっていきたい。もう一つは政治課題に対して、やはりタイミングというか感覚をもう少し敏感にさせて取り組んでいくということを考えていきたい。
そこで全国港湾以外の単産共闘とか地域共闘については、はっきり言えば、どこから始めるという具体的中身を今は持っていない。むしろ可能性のあるところはすべて共闘していきたい。その中で一定の目鼻をつけていきたい。まあ、自分の経験とか、限られた思想でここからと限定するには情報が足りなすぎるし、それは政治課題も同じです。どういう政治勢力と連携していくかというのは、そういう意味ではかなりフリーハンドというか、広く考えていきたい。
その上で、八〇年代のあの世代交代は、まさに総評をめぐる攻防の最後のだめ押しになったと思っています。だからどういうふうに若い世代につないでいくかということが、その道の課題では一番重要だと思っています。特に、世代交代は絶対にやらなければならないことです。しかし、役員体制で世代を若年層に置き換えたから闘いが進むという甘い考えは絶対ダメだと思う。どうやってしっかりと運動の質を、経験を継承するのかなしには、世代交代はむしろ、運動を後退させる交代になってしまうので、それは注意していきたい。
最近で言えば、NHKで放映された「爆笑問題」が出ていたマネーシリーズ、あれは非常に面白く、興味深く見ました。現代に警鐘を鳴らす意味です。結論として資本が国家の統制を超えてしまったと言う。でも考えてみれば、資本主義ができた時は資本こそが世界であって、国家の統制などは効かないところから出発したわけであって、そういう意味では資本の新たな大変な時代に向かっていくんだなと、それは相手の側からも出ました。ところがテレビの中では、「空想から科学へ」を読んでいるような話で、空想的社会主義者みたいな人が出てくる。自分の役員報酬を半分にして従業員の賃金を上げるとかやっているがうまくいかないわけです。そんな人たちが出てきて、次の未来への答えをいずれにしても求めているような気がします。

魅力的な行動への模索

――今、働き方改革とか、現実問題としては労働規制解体に、向こうが本腰を入れてかかってきています。日本の労働者が今ぶつかっている問題ですが、それに対する取り組みをどう考えていますか?

 労働運動を潰すことを、ただ正面戦だけではなくて、労使自治によって決めるのではなく政府によって決めるというサインを出しながら、相手側から労働者を組織しながら労働組合を潰そうという、言うならば非常に本格的な攻防になってきたと思います。少なくとも、相手の方は、資本の利害がある限り、利益追求がある限り、「働き方改革」「同一労働同一賃金」などと表現しようとも真の意味で働く側に立って決めることはないわけだから、労働組合が丁寧に労働者の組織化を怠らないで外に向けた闘いを続けていく他はないと思う。働き方会議は、力による圧力を隠し、資本から労働者を政治的に組織するという点が非常に巧妙であるだけに全港湾としても大きな危機感を持っている。

――いろいろな運動で若い人たちが労働組合を信用しないと言います。それを突破しなければなりませんが。

 若い人から見てかっこよくないとダメでしょう。だから自覚した労働者がどうするかです。やはり階級的に自覚した労働者の結集がはかられていないから連合が今のようになっています。
ついでだが、アメリカのトランプの勝利というのは、もちろん労働者の望むことではないが、ある種の必然的結果に見える。労働者は自分の要求を実現するために、ヒラリーのようなまったくつまらない候補者をたよることはなかったと思います。
その意味で労働組合は今、つまらない運動をやっているように思えてならない。もっと面白くてかっこよい魅力的なものとして闘いを展開しないとダメだと思う。

――港湾関係では連合はほとんどいないのですか

 港運同盟がありますが一緒にやっています。これは連合の主力単産である海員組合の港湾部隊ですが、同じ港湾荷役作業をしており、要求や政策課題では共通することが多いのです。ですから、業界団体との中央団体交渉、国土交通省との行政交渉など共同行動をしています。

――港湾の場合、行政があって、資本があって、個別の企業があってと複雑な関係だと思いますが。

 しかし本当はみんなそうだと思います。会社があっても、そこの産業全体のことがあって、産業に関わる行政もある。だからたたかいとはそういう範囲で組まないと本当はどこの組合もダメなのではないでしょうか。

――そこまでやっている組合は少ないと思います。企業別組合にどっぷりつかっている組合はそういう実情にあります。

 一人一人の組合員にしてみればそうだろうと思います。だから中央執行委員会レベル、各地方委員会レベルで意識的に外に向かわせない限りそうはなりません。そういう意味では先輩たちのいろいろな試み、若い人たちを全国で教育するとか、全国で一括でストライキ権をとるとか、中央団交をやるとか、それはまさにすごい財産になっています。
一例として一九六〇年代後半の全国産別共闘を作るときの経験がある。港湾の他の労働組合は、全港湾から分裂していった組合、全港湾と対立し全港湾と組織の取り合いをしてきた組合など、対立関係がある組合です。地方の幹部は、それらの組合とのせめぎあいの最中であり、所によっては、骨肉の争いをしている状態でした。そんな時に中央で産別共闘の必要性を訴えても、地方の支部段階での反発は強かったのです。
しかし、政治的にも港湾産業内でも要求実現のためには全国の港湾でのたたかいを組織する必要があるのです。それでなくても全港湾は地方が多い。六大港がやられてしまったから地方全部をゼネストで止めても日本の貨物の一〇%か二〇%しか止まらない、それでは国を動かせない、最低でも五〇%、できれば一〇〇%にしようと訴えて、産別の重要性を納得させたのは、まさに先輩たちの偉業といえます。
そういうチャレンジは必要だと思います。組織率一七%でどっちが正しいと言っている場合ではない。多くが非正規で未組織に置かれているわけですから。少なくとも自覚した労働者が横の戦線を組む努力を怠ってはならないと思います。

過渡的要求の重要性

――要求での統一の重要性はその通りだと思います。そうであればあるほど、要求の作り方、現場からの要求討論、要求を建前にしない討論が重要になります。地域とか産業全体を意識した要求も後退している感じを受けます。それらの点で考えていることはありますか。

 産業全体を意識するという場合、それはすごく難しいように考えるが、自分たちが好きな時間に休んで、自分たちの仕事がなくらないためにどうするかと考えれば、一つの会社だけで休めば仕事がなくなってしまいますよね。だから本当に休みたい、本当にいい職場環境にしたい、お金が欲しい、それをどう実現するのかということだと思う。それを産業別運動が必要だとか分かったみたいな議論から入るのはダメだと思う。やはり労働者の利害というか、そこから見せないと地に着いたものにならない、それが足場ではないだろうか。
要求は、固定的な発想ではうまくいきません。組合員の身近な要求を通して社会変革の必要性を実感するものでなければなりません。身近な要求と社会変革の課題が別なものとして建てられている限り、企業内意識は克服できません。
要求は常に、身近の要求と社会変革をつなげる過度的要求として意識されなければなりません。過度的要求への意識が、労働組合を階級的に強化していくカギだと考えています。

1.19

南スーダンから即時撤退を

総がかり行動に3000人

沖縄の闘いとつながろう

 一月一九日午後六時半から、戦争させない・9条壊わすな!総がかり行動が「安倍政権の暴走止めよう!自衛隊は南スーダンからただちに撤退を!1・19国会議員会館前行動」を行った。この冬一番の寒風吹きすさぶ中、三〇〇〇人が集まった。
 最初に参加した野党がアピールした。糸数慶子さん(沖縄の風、参議院議員)、近藤昭一さん(民進党、衆議院議員)、吉田忠智さん(社民党党首)、井上哲士さん(共産党、参議院議員)。安倍政権による共謀罪新設の動きを批判し、沖縄での辺野古基地建設反対、山城博治さんらの釈放を求め、次期衆院選で野党共闘を強め、安倍政権を退陣に追い込もうと訴えた。
 次に、小田川義和さん(憲法共同センター)が主催者あいさつを行い、参加した団体が連帯のあいさつを続けた。安保法制違憲訴訟について、武谷弁護士が「全国一五地裁で裁判が起こされ、これからも増えていく。東京裁判では、国は安保法制が合憲か違憲かについて逃げて答えようとしない」と国の姿勢を批判した。東京MXテレビの「ニュース女子番組」(1月2日放送)で、沖縄の闘いを「日当をもらっている。暴力をふるうテロリストなど」と歪曲、ねつ造した報道に対して、謝罪と撤回を求めて抗議行動をする女性から経緯が報告された。
 武器輸出反対ネットの杉原浩司さんが「米軍関係者が訪日し、日本の民間技術が軍用に使えないかと説明会を開いた。それに日本企業六〇社が参加した。また、日本政府は中古になった防衛装備品(武器)を海外に売りつけようとしており政府のテコ入れで、軍産学複合体が飛躍的に進み、武器輸出につながっていると指摘し、共に反対していこう」と訴えた。
 高田健さんが今後の行動提起を行った。二月一九日(日)午後一時半、日比谷野音集会、三月一九日(日)午後一時半、衆院議員会館前行動。沖縄新基地建設反対署名の第二次締め切りを三月三一日とする。署名は一〇〇万筆に届こうとしている、さらにがんばろうと提起した。国会に向けて「戦争法廃止、自衛隊はスーダンから撤退、沖縄に新基地はつくらせない、野党は共闘、安倍を倒そう」とシュプレヒコールを行った。           (M)


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