米国
緑の党、選挙後の進路は?
トランプへの統一的反抗の中で
地方から党の選挙基盤の確立を
ホーウィー・ホーキンス
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トランプ政権の危険な性格が隠せないものになる中、この政権に対する民衆的闘いの進め方が米国内での極めて重大な問題になろうとしている。以下は、今回独立した左翼政治勢力への挑戦として大統領選挙を闘った緑の党の主要指導者による選挙戦総括、およびその上に立った今後の闘いへの提言だ。自立した政治をめざす幻想を排した取り組みの重要性が主張されている。7面別掲記事として、大結集を実現した(国際的にも)一月二一日の女性行進の速報も紹介する。トランプ政権と労働者民衆との衝突の発展を予示させるものであり、それにどう準備するかがますます重要課題になっているが、それは世界へも必ず波及するものとして、われわれにも注視を求めている。(「かけはし」編集部)
民主党依存の反トランプは無力
二〇一六年の進歩的第三政党の挑戦に向けて、政治的推進力が大いに論じられた。二人の史上もっとも不人気な主要政党の候補者、そして民主党予備選でサンダースを求めて決起した大々的な進歩的票に基づいて、緑の党ははるかに好成績になる可能性があり、おそらく五%、あるいは二〇二〇年の緑の党大統領選キャンペーン向け総選挙連邦資金を確保するための水準以上に達する可能性がある、との期待は高かった。
しかしキャンペーンは、キャンペーンに向けて地域的な脚を提供する一定の大きさの十分に組織された党員基盤、また緑の党に政治的な重みを与える緑の党被選出公職者の相当な大きさをもつ仲間を欠く中、メディアにより周辺化され、有権者からは無視された。それゆえ、緑の党の限定された結果はまったく驚くべきことではない。
緑の党が十分に組織された実体的力をもつ基盤、党費を払うメンバー、および市議会、州議会、さらに米国下院に被選出の議員を築き上げるまで、それは、ほとんどのメディアやほとんどの有権者からは、大統領選で真剣に考えられることはないだろう。今は緑の党にとって、草の根の組織化と運動建設に戻る時だ。
われわれがトランプの執政期に入る中、緑の党と広範な左翼は、ブッシュ二世時代に彼らが犯した間違いから学ばなければならない。その当時、あまりに多くの者が、民主党を権力に戻そうと、ブッシュでなければ誰でも、との戦略に熱を上げるにいたったのだった。緑の党の場合そのやり方は、党の一分派により、分裂的かつ自滅的な安全州戦略を生み出した。そしてそれは、自立したオルタナティブとして存在するための理論的根拠そのものを掘り崩した。
緑の党は、サンダース/ウォーレン派内部の草の根の民主党員と、彼らが企業民主党を進歩的民主党で置き換えようと現実離れの挑戦に(再び)出ている中でも、友好を保つべきだろう。
緑の党は、移民、マイノリティ、また女性に対するトランプ支持者のスケープゴート化や抑圧、治安国家並びに監視国家の拡張、帝国主義戦争、気候に関する暴走、公的医療や学校の切り捨て、組合つぶし、に対する反攻、さらに他の多くの戦線での反攻において、彼らと共に努力しなければならないだろう。
しかし、民主党の実体的な権力構造――今は企業新自由主義者のチャック・スキューマーが率いる、企業の資金供出者と彼らの代表――は、企業民主党が民主党の進歩的諸個人に対し変わることなくやっていることをやるだろう。つまり、企業民主党をよりマシな悪として支持することに進歩派を誘い込む餌として、彼らを利用する、ということだ。
他方で、よりひどい悪の共和党はトランプを、大金融機関、住宅開発、化石燃料、製造業、刑務所と軍事の利益に集中された、企業の米国という右翼分派に円滑に編入しつつある。現実に、強硬なレイシストと軍国主義者を高位に指名する陰で、トランプの政策や職員配置を求める移行人事は、ヘリテージ財団やアメリカン・エンタープライズ・インスティチュートといった、首位を占める共和党志向の保守的なシンクタンクやロビー団体を主な頼りとしている。
この企業主義的強硬右翼は、今や大統領職と議会両院を、さらにまもなく最高裁をも支配下に置き、富裕層向け減税、規制解体、組合つぶし、メディケアや社会保障や公立学校の私有化を特徴とする、新自由主義のトリクルダウン経済理論のもっとも過激な変種を実効化することに向け、大統領就任後すぐに動くだろう。
労働者のエリートへの強い憤り
トランプのレイシズムキャンペーンは下劣だった。彼の選出が引き起こすものは危険に満ちている。むき出しのレイシストは、マイノリティを迫害し傷付けることが認められていると感じている。雇用や教育や住宅提供に関し権力をもっている内心のレイシストは、差別に対しより多くの許可があると感じている。
しかしトランプの選出を、白人のレイシズムそれだけで説明はできない(レイシストの票は、レーガン以後、あるいはむしろニクソン後、一つの堅固な共和党ブロックとなっている)。クリントンと企業民主党のエリート主義と傲慢さに対する労働者階級の憤りも、大きな役割を演じたのだ。
ニューヨーク州の遠く離れた北方のラストベルトで、そのほとんどは白人だが、数人は黒人を含む、労働者階級のトランプ支持者から私が聞いたことは、クリントンに対する彼らの激烈な嫌悪(そしてサンダースに対する親近感)は、専門家かつ管理者的階級の典型としての、彼らの彼女に対する印象を基礎としていた、ということだ。そしてその階級の者と言えば、職場では恩着せがましく彼らをこき使い、市場では、公益事業体、銀行、保険会社、医療システムの代表者、弁護士、判事として、彼らからはぎ取るのだ。
投票におけるジェンダーギャップが示すように、まったく疑いなく、男の一定数には女であることがしつこくモノを言った。しかしクリントンの、階級を基礎とした経済的訴えというよりもむしろ、トランプの悪徳な気質と彼女の能力を対比させた結論的訴えは、彼女は向こう側の人間という彼らの印象を強めたにすぎなかった。
地方通じ制度の中に足場を
ポピュリスト的経済変革への期待は、オバマとトランプ両者に向かった白人の労働者・中間階級民衆票の中にある共通の糸だった。それは、オバマに向かう投票においてはレイシズムに打ち勝った。そして二〇一六年には、彼らのレイシズムが、変化を求める投票の中で、トランプのレイシズムに口実を与えた。
経済的救援、およびインサイダーの横柄さと腐敗を終わりにすることを約束する外部からの変革代理人としてトランプに投票した、そしてトランプが配分できないことがはっきりするにしたがい早々に失望することになる、そうした労働者階級と中間階級の不機嫌なトランプ派ポピュリストと、緑の党もまた組み合わなければならない。
主要両党は、経済的に不安定な労働者階級と中間階級の票田に不満を抱かせてきた。そして彼らにとって、サンダースとトランプのキャンペーンが出口となった。われわれは、民主党陣営を改革しようと(再び)挑むリベラル主義の再興、また共和党側では、一時的なハネムーンの後に経済的ポピュリスト内部で新たになる怒りを予想できる。
これらのポピュリストたちは、支持すべき信頼でき競争力のあるオルタナティブを見るまでは、各々の党内の改革者になりそうに見える者への支持をやめないだろう。大衆的党員組織と資金作りを備えた代わりとなる左翼政党は必然的に、草の根の教育、公的諸行動、各戸訪問、電話資金集めや基金づくり、こうしたことが企業資金で支えられる民主党と共和党を相手に競合できる地方選挙を通じて、選挙制度の中に一つの足場を確保しなければならない。
地方政府は実体的な権力をもっている。それは、立法、規制、課税、雇用、契約、購買、さらに基本的な公共サービス、公益事業体、また鍵となる当該地域の産業を社会化する優れた分野をも含むものだ。そして最後の分野としてはたとえば、労働者企業や消費者企業を含んだ、金融、住宅や商業の開発、さらにビジネス開発があげられる。地方で選出される公職者は、州や連邦の公職者に対する候補者として実現可能な者になる。
しかし、底からの積み上げを出発点として左翼の政治的オルタナティブを建設するという戦略は、自らを自治体や郡の選挙に限定してはならない。自治体や郡の公職をめざし効果的なキャンペーンを展開できる地方の緑の党はまた、州議会や国会に向けた効果的なキャンペーンもまた展開できる。州の予算や諸政策は、地方政府や学校資金に大きな影響を及ぼすのだ。
真剣な自治体改革の綱領は、州の予算や諸政策を扱わなければならない。そうした改革綱領に立って運動する州議会をめざす独立左翼の候補者は、その改革に対する支持の中で、他のあらゆるロビー活動や公的行動に、より多くの効力を与える。独立した挑戦者に票を奪われることを、現職は心配しなければならないからだ。
「経済的権利法案」軸に団結へ
同じことは連邦予算やその政策に関しても当てはまる。左翼は連邦の闘いにおいてはじめて、連邦の退行的な課税策、規制解体、私有化、また軍国主義化に対するオルタナティブを提起できる。
その綱領は、一九六八年の「貧しい民衆のキャンペーン」が要求した、「経済的権利法案」を復活させ、現代化した、「経済的権利法案」を軸に集中すべきだろう。「貧しい民衆のキャンペーン」は、一九六三年の「職と自由を求めるワシントン行進」の諸要求から生じた、一九六六年の「自由予算」の綱領を前進させた。
「自由予算」は、職の保証、最低所得保障、普遍的な公的医療、質の良い全員にとっての人種分離のない住宅と学校を求めた。
綱領は、「経済的権利法案」に込められた主導的テーマから広げて、他の緊急的諸問題を扱わなければならない。そこには、地球温暖化を最小化するための、クリーンな再生可能エネルギーへの転換というある種突貫的計画、平和のための脱軍国主義化、経済的諸権利への資金供与、市民的自由と公民権の回復、居住や雇用や学校に関する人種分離の解体が含まれる。
一九六六年の「自由予算」の前提は、全米国人に対しての経済的公正が実現するまでは、アフリカ系米国人にとっての人種的公正は保証されないだろう、というものだった。二〇一六年の選挙は、その前提が五〇年前と同様今なお妥当なものとして残っている、ということを示している。
大衆的党員モデルの上に底辺から積み上げる緑の党建設は、組織され活力を与えられた大衆的基盤、民主的説明責任、そして士気を確保するための、また企業権力の構造と民主党と共和党にいるその政治的代表と対決して権力を争うために必要な資金作りに向けた、ただ一つの方法だ。
草の根の大衆的党員制政党はまた、有権者の最大の仲間たちに政治的な家を与えるただ一つの方法でもある。二〇一六年には、票を投じなかった一億人の有資格有権者がいた。彼らは、人口比からかけ離れて低所得労働者階級の中にいる。左翼政党の世界中の大衆的基盤、労働者階級は、米国の選挙では大規模に棄権しているのだ。草の根の大衆的党員制政党は彼らに、彼らの参加が歓迎されていると感じられ、これまでとは違いをつくる、一つの家を提供できる。
トランプの新しい年代は、第二代クリントン大統領の君臨の下で起きたと思われるものよりも悪いものとなるだろう。しかし緑の党が今行う必要のあることは、大統領としてどちらの下であろうと、ほとんど同じとなるだろう。
1)党費を納める党員をもつ、現地に根を下ろした大衆的党員制政党の建設。
2)自治体、郡、州議会に向けた地方選、および米下院議席に焦点を絞ること。3)選挙の間には、組織化と諸課題で活動すること。4)「経済的権利法案」を中心に集中した綱領を軸とした、労働者階級の団結と政治的基盤の建設。
以上がそれだ。
(「アゲンスト・ザ・カレント」二〇一七年一・二月号より)
▼筆者は一九八四年の米国における緑の党共同創設者。二〇一四年のニューヨーク州知事選では、緑の党候補者として五%の得票率を得た。ソリダリティーメンバーでもある。(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年一月号)
パキスタン
メディア活動家たちが行方不明に
政府は即刻の解放を保証せよ
ラホールで諸団体が抗議
一月一〇日、市民社会組織および様々な政党と協力関係にある二〇〇人以上の活動家が、先週拉致された五人のソーシャルメディア活動家の解放を求めて、ラホール・プレスクラブの外でデモを行った。拉致された活動家には、イスラマバードの学者で詩人であるサルマン・ハイデル、社会活動家のサマル・アッバス、ソーシャルメディアブロガーのアーシム・アーエド、ワカス・ゴラヤ、アーメド・ラザ・ナセールが含まれる。
共同の政綱は、政府は市民社会と進歩的政党の活動家の解放を保障する必要がある、と求めた。それは内相のニザル・アリ・カーンに、活動家を拉致した者たちを追跡し、彼らの解放を確実にするという彼の約束を満たすよう求めた。
アワミ労働者党(AWP)スポークスパーソンのファルーク・タリクは、行方不明となっている人たちが取り戻され、ソーシャルメディア活動家たちに対する攻撃が停止されるまで抗議行動は続く、と語った。彼は、NAP(国家行動計画)が進歩的活動弾圧のために利用され続けている、とも語り、その時まで拉致された活動家が解放されていなければ、一月一九日にはラホールで次のデモが行われるだろう、と語った。
社会活動家のディエプ・シエダは、人々の拉致はこの国の法と憲法に反すると語り、情報機関と法の執行機関は、行方不明になっている活動家の安全と生きる権利を保護するというそれらの憲法上の義務を保つという点で、それらの責任を免れることなどできない、と続け、メディアに対して、ソーシャルメディア活動家の不法な拉致を伝えるその義務を満たすよう求めた。
デジタル権利協会のニガト・ダドは、昨年サイバー犯罪法が議会を通された際にあげられた、人権活動家が脅威の下に置かれるだろうとの懸念が本当のことになろうとしている、インターネット上での発言の自由を保護することが重要だ、と語った。
この抗議行動には、AWP、デジタル権利協会、民主学生連合、平和/世俗学習研究所、進歩学生共闘、パキスタン人権委員会、全国労働組合連合、フェミニスト共闘、女性行動フォーラム、パンジャブ都市資源センター、パンジャブ・ロク・サンガト、ラワダリ・テレーク、進歩労働連合、その他が加わった。(一月一二日)(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年一月号)
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