安倍首相の施政方針演説批判
反トランプの闘いに呼応しよう
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「新しい国づくり」とは?
一月二〇日、米大統領の就任式と同じ日付だが、時差の関係で半日以上先だって、二〇一七年の通常国会(第一九三通常国会)が始まった。会期は六月一八日までの一五〇日間である。
同日に行われた安倍首相の施政方針演説は冒頭で、天皇の「生前退位」問題(「天皇陛下のご公務の負担軽減等」)について言及し、「近々論点整理が行われる」と語った。その上で、年末にオバマ米大統領と行ったハワイ真珠湾での「追悼」式典について語り、「戦後七〇年」の「その先」の「新しい国づくり」へのスタートを切る、とアピールしている。
短い「はじめに」と「おわりに」を除くと五章立てで構成された二〇一七年施政方針演説の見出しは、いずれも「国づくり」という言葉で統一されている。「世界の真ん中で輝く国づくり」「力強く成長し続ける国づくり」「安全・安心の国づくり」「1億総活躍の国づくり」「子どもたちが夢に向かって頑張れる国づくり」である。そして「おわりに」の項では「憲法施行七〇年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、さらなる七〇年に向かって、日本をどのような国にしていくのか、その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」と、改憲へのメッセージを鮮明な形で打ち出したのである。
2020年を
見据えながら
安倍首相の施政方針演説は、毎回一つないし二つのキーワードを多用してイメージ操作を行うという手法で貫かれている。二〇一三年二月の通常国会施政方針演説では「世界一」、同年一〇月の臨時国会所信表明では「意思の力」、二〇一四年九月の臨時国会では「地方創生」と「女性が輝く社会」、戦争法を強行した二〇一五年通常国会施政方針では「改革」、二〇一六年の通常国会では「挑戦」、そして同年一〇月の臨時国会では再び「世界一」だった。
今回の施政方針演説のキーワードは、章見出しに使われた「国づくり」、ならびに二四回使われた「未来」、一二回使われた打ち破るべき対象としての「壁」である。
ここで施政方針演説冒頭の天皇「生前退位」問題、末尾の改憲論議加速化の宣言、そして多用される「未来」のための「壁」の破壊と新しい「国づくり」といった言葉をつなげて考えれば、今回の施政方針演説を貫く安倍政権の戦略は、天皇「代替わり」をも組み込んだ改憲プログラムを二〇二〇年に向けて具体的に発動する、という明白なメッセージと捉えることができるだろう。
安倍政権は、この戦略を着実に現実化させるために与党・公明党と「準与党」とも言うべき「維新」をてんびんにかけている。昨年のカジノ法をめぐっては、安倍政権は「維新に恩を売り、公明を不安にさせる」手法を使って、改憲「三分の二」勢力の強化を図ってきた。各紙の報道によれば、昨年安倍首相は自民党の保岡改憲推進本部長に対し、改憲案に盛り込む内容として「維新」の看板的主張である「教育の無償化」を検討するよう指示したとされる。
「働き方改革」の現実は
今回の施政方針演説も、「アベノミクス」による「経済の好循環」なるものをベースにして「一億総活躍」を基軸にした「力強く成長し続ける国づくり」をうたいあげている。しかしそこでは、米国のトランプ新政権がTPPからの不可逆的離脱を宣言したことの影響、EUからの英国の離脱、そして米国や欧州諸国における保護主義の拡大がもたらす影響については全く触れられていない。
さらに重大なことは、自民党が安倍首相の下で政権に復帰して以後、毎回の施政方針演説で必ず言及してきた「二〇二〇年度までに基礎的財政収支を黒字化する」という目標が今回は消えてしまったことである。一月二六日の日本経済新聞は、一月二五日の経済財政諮問会議で示された中長期の財政試算で、二〇一九年一〇月に一〇%への消費増税を行ったとしても二〇二〇年度の「黒字化実現」は困難になったとする記事を一面トップで報道した。ただその数字も二%以上の高成長を前提にしたものである。
「働き方改革」についてはどうか。今回の施政方針演説で、安倍首相は超長時間労働によって自殺に追い込まれた入社一年目の電通の女性労働者のケースに言及し、「二度と悲劇を繰り返さないとの強い決意で、長時間労働の是正に取り組みます。いわゆる三六協定でも超えることができない、罰則付きの時間外労働の限度を定める法改正に向けて、作業を加速します」と強調した。
実際はどうか。朝日新聞一月二九日の一面トップ記事は、政府の「働き方改革」で、残業時間の上限を「月平均六〇時間、年間七二〇時間」、繁忙時には「月最大一〇〇時間、二か月平均で八〇時間」とする方向で調整に入ったと報じている。しかし過労死の労災認定基準とされているのは一カ月一〇〇時間、二〜六カ月の月平均八〇時間であり、政府案自体が「過労死」レベルに達している。
ところがこうした政府案に対しても、資本家たちは「新たな制限を例外なく当てはめることに反発」があり、「調整次第では残業時間の上限をさらに見直す可能性がある」と報じられている。
沖縄の闘いと連帯を
安倍首相は施政方針演説で「抽象的なスローガンを叫ぶだけでは、世の中は変わりません。重要なことは、何が不合理な待遇差なのか、時間外労働の限度は何時間なのか、具体的に定めることです」と息巻いた。その言葉はそっくりそのまま安倍首相に投げ返されるべきである。そして雇用と労働条件、生活と健康を守るための保障は、何よりも労働者自身の団結した闘いであることを、改めて確認しなければならない。
安倍首相の施政方針演説は、全体の章立ての二つ目に位置づけられた「世界の真ん中で輝く国づくり」を「日米同盟」、「地球儀を俯瞰する外交」、「近隣諸国との関係改善」、「積極的平和主義」の四項目に分けて論じている。その第一に置かれているのは言うまでもなく「日米同盟」である。
「これまでも、今も、そしてこれからも、日米同盟こそが我が国の外交・安全保障政策の基軸である。これは不変の原則です。できるかぎり早期に訪米し、トランプ新大統領と同盟の絆を更に強化する考えであります」。
「先月、北部訓練場、四〇〇〇ヘクタールの返還が、二〇年越しで実現しました。沖縄県内の米軍施設の約二割、本土復帰後、最大の返還であります」「更に、学校や住宅に囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の全面返還を何としても成し遂げる。最高裁判所の判決に従い、名護市辺野古沖への移設工事を進めてまいります」。
昨年一一月、大統領選に勝利したトランプと、各国首脳としては初めて会談した安倍首相は二月一〇日にトランプ大統領と初めての首脳会談に臨むことになる。ここでは、辺野古新基地建設を最大の焦点とする米軍基地機能の再編・強化、朝鮮半島と東シナ海、南シナ海を焦点にした対中国・対北朝鮮の実戦的戦略が最大のテーマにならざるを得ない。そしてトランプ政権との関係で言えば、この日米共同戦略における日本の実戦的な役割分担の拡大が焦点になっていくだろう。
われわれは沖縄の「島ぐるみ」闘争との連帯をかけて、トランプ政権下での沖縄・「本土」米軍基地撤去のための闘いに全力で取り組もう。
戦争法案反対闘争以来の「総がかり」大衆行動、「野党共闘」を軸にした国政・地方の選挙共闘を労働者・市民の運動として発展させ、憲法改悪阻止・安倍政権打倒の展望を切り開こう。三・一一以後六年を経過した現在、「帰還」強制、「住宅補償」打ち切りなどを通じて切り捨てられていく福島の被災者を支え、原発再稼働を阻止する運動を強めよう。
それとともに、あらためて「天皇生前退位」をめぐる論議と「特例法」などの中で、「天皇制廃止」の主張と運動を広げること、二〇二〇年東京五輪に異議を突きつける主張と運動を持続的に広げていくことも、左派にとって避けることのできない闘いである。(純)
1.20
国会開会日行動
安倍政権の暴走STOP
野党は共闘し安倍打倒へ
一月二〇日、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会は、衆議院第二議員会館前で「安倍政権の暴走止めよう! 1・20国会開会日行動」を行い、六〇〇人以上が参加した。
この日、通常国会が召集され、安倍首相は、施政方針演説で一六年度第三次補正予算案とともに二〇一七年度政府予算案(民衆生活破壊を強め、大資本奉仕、軍拡、原発再稼働予算)を早期成立させ、憲法施政七〇年の「節目」として憲法改悪に向けて憲法審査会の論議を加速させていくことを強調した。さらに米軍との共同実戦態勢の強化を柱にしたグローバル派兵国家建設の一環として対テロ治安弾圧にむけた新共謀罪の制定を打ち出した。安倍政権の野望を許さず、六カ月にわたる国会審議、悪法制定にむけた悪行を厳しく監視し、成立阻止にむけたスタートを取り組んだ。
沖縄への弾圧
今すぐやめろ
集会は、国会に向けて「戦争法の発動止めよう!今すぐ廃止!共謀罪の新設反対!人権抑圧絶対反対!憲法破壊絶対反対!高江ヘリパッド建設反対!沖縄弾圧今すぐやめろ!安倍政権の暴走止めよう!」のシュプレヒコールから始まった。
福島みずほ参議院議員(社民党)、井上哲士参議院議員(共産党)、福山哲郎参議院議員(民進党)、玉城デニー衆議院議員(自由党)は、南スーダン自衛隊派兵反対、沖縄・高江ヘリパッド建設と辺野古新基地反対、共謀罪反対、労基法改悪反対、憲法改悪反対、安倍政権打倒、野党と市民の共闘強化をアピールした。
伊波洋一参議院議員(沖縄の風)は、「今国会で戦争法廃案、共謀罪NO!を取り組んでいく。多くの機動隊が派遣され、辺野古新基地工事が再開されている。宮古島、石垣島には自衛隊基地が建設されようとしている。昨年の参院選で野党共闘候補が当選したが、来る衆院選に対しても統一して、共闘で声を出していこう。安倍政権退陣に向けて頑張っていこう」と訴えた。
福山真劫さん(戦争をさせない一〇〇〇人委員会)は、「総がかり行動実行委員会は、今年も毎月の『一九日』行動を行い、南スーダンからの自衛隊撤退を要求していく。貧困と格差を許さず、雇用・賃上げを要求していく。山城博治さん(沖縄平和運動センター)が九〇日も不当勾留されている。早期釈放を実現しよう。野党共闘の選挙体制を作り、安倍政権の暴走を止めるために奮闘していこう」と呼びかけた。
共謀罪新設を
絶対許すな!
連帯あいさつが海渡雄一弁護士(秘密保護法廃止実行委)から行われ、「共謀罪新設を絶対に許されない。政府は、テロ対策のために共謀罪が必要だと繰り返しているがウソばかりだ。国連の組織犯罪条約は、テロ対策ではなく、経済的な組織犯罪の取り締まりだ。すでに国連のテロ対策条約は批准しており、国内法を作っている。組織犯罪集団に限定したと言っているが、二人以上の団体が六〇〇以上の刑法に触れれば適応する。また、準備罪、予備罪を導入し、二人で相談のレベルから適応しようとしている。自民党と公明党で修正協議をしているが、懲役四年以上の六七六法を半分にするなどと言っているが、全て茶番だ。しかもマスメディアが正しい報道をしていない。反対運動を広げていこう」と発言した。
最後に行動提起が行われ、再度、国会に向けて抗議のシュプレヒコールを行った。 (Y)
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